勇者さんは魔王討伐の前に魔術師さん(♂)に告白したい。ただし美しい場所で

眞石ユキヒロ

最高の告白ロケーションを求めて(脚本)

勇者さんは魔王討伐の前に魔術師さん(♂)に告白したい。ただし美しい場所で

眞石ユキヒロ

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〇簡素な一人部屋
  魔王との決戦前日の飛空挺。
  その一室にて、勇者ケヴィンは悶々としていた。
勇者 ケヴィン(明日は魔王との決戦の日だ。命を落とす可能性だってある。 俺にはやり残したこと、いや、やり残したくないことがひとつだけある)
勇者 ケヴィン(それは・・・・・・)
勇者 ケヴィン「同じパーティの魔術師、アルドリックに告白することだ!」
  ウィーン。
魔術師 アルドリック「お邪魔するよ、ケヴィン」
  ケヴィンの部屋のドアが開き、意中の人、魔術師アルドリックが入ってきた。
勇者 ケヴィン「おおおおおおおおおおお、おう! い、今の聞こえてなかったよな?」
魔術師 アルドリック「『告白することだ!』は聞こえたけど、他は聞こえてないから大丈夫。 ・・・・・・がんばりなよ」
勇者 ケヴィン「お、おう! それよりどうしたんだよアルドリック。 朝食か?それとも朝食か?」
魔術師 アルドリック「その前に二人で朝風呂に行かないか?」
勇者 ケヴィン「え?」
魔術師 アルドリック「二人だけで話しておきたいこともあるから・・・・・・」
勇者 ケヴィン(これはもしや、告白のチャンスじゃ!? でも待て、もしも飛空挺の風呂で告白なんかしたら・・・・・・)

〇白いバスルーム
勇者 ケヴィン「アルドリック!お前のことが好きだったんだよ!」
魔術師 アルドリック「え、こんなところで告白するの?センスがなさ過ぎない?」

〇簡素な一人部屋
勇者 ケヴィン(ロケーションが、ロケーションが悪すぎる! ロマンティックさの欠片もない!)
魔術師 アルドリック「もしかして、嫌だったかな?」
勇者 ケヴィン「べべべ、別に嫌じゃない! けど、もっとロマンティックな方が良いというか・・・・・・」
勇者 ケヴィン(そうだ!せっかくのワープ機能付き飛空挺なんだから、今まで行った中で特に綺麗だと思った街で告白しよう!)
勇者 ケヴィン「ちょっと捜し物があるから俺はブリッジに行ってくるよ! アルドリックは朝風呂、楽しんでこい!」
魔術師 アルドリック「え?え!?」

〇コックピット
勇者 ケヴィン「回復術士さん、操縦席貸してくれる?」
回復術師「良いですけど、どうしたんですか?」
勇者 ケヴィン「アルドリックへの告白にふさわしい街、アルドリックへの告白にふさわしい街・・・・・・っと。 ここなんてどうだろう!?」
回復術師(なんか突っ走ってるし。 これだから若造は・・・・・・)

〇荒廃した街
勇者 ケヴィン「綺麗な町並みだったのになんてことに!」
勇者 ケヴィン「ならあそこは・・・・・・」

〇荒廃したショッピングモール
勇者 ケヴィン「まさしくデートスポットって感じだったのに!」
勇者 ケヴィン「待て、まだ諦める時間じゃない。最後の手段・・・・・・」

〇荒廃した教会
勇者 ケヴィン「ここで結婚式を挙げようと思ってたのに!」

〇コックピット
回復術師「魔王、「こんな世界など滅ぼしてくれる!」って言ってましたよね、昨日の夜」
勇者 ケヴィン「魔王め、いくらなんでも行動が早すぎる・・・・・・! 被害に遭った街の人達も心配だけど、今は・・・・・・!」
勇者 ケヴィン「最終決戦の前のやり残しを無くすのが先決だ! 人の少ない場所なら、もしかしたら・・・・・・!」
回復術師(そんなことよりさっさと告白すれば良いのに。 まだまだ青いお子ちゃまか)

〇岩山
勇者 ケヴィン「アルドリックと身を清めた神聖な滝!」

〇火山の噴火
勇者 ケヴィン「アルドリックと二人だけで攻略した火山!」

〇カラフルな宇宙空間
勇者 ケヴィン「アルドリックと初めて出会った・・・・・・海!」

〇コックピット
勇者 ケヴィン「悪夢かよ!」
回復術師「魔王、人間だけじゃなく自然も大嫌いですもんね。 それにしても一晩でこれとは仕事が早い。勇者様にも見習ってほしいものです」
勇者 ケヴィン「何の話だよ!? 給料分しっかり勇者やってるから、俺は!」
勇者 ケヴィン「くそっ、魔王め・・・・・・! 美しい景色まで全滅とか、人の心が無いにもほどがある!」
  ウィーン。
魔術師 アルドリック「ケヴィン、捜し物は見つかった? 一緒に朝風呂・・・・・・」
勇者 ケヴィン「なぁ、アルドリック。朝風呂や捜し物も良いけど、俺はもっと大切なことに気づいたんだ」
  勇者ケヴィンは操縦席を立ち、魔術師アルドリックの細い手をたくましい両手でガシッと掴んだ。
魔術師 アルドリック「な、なに・・・・・・?」
勇者 ケヴィン「俺たちが幸せになるには何がなんでも魔王を倒して美しい世界を取り戻す必要があるってこと」
魔術師 アルドリック「あ、え。えっと・・・・・・?」
勇者 ケヴィン「だからさ、それまで朝風呂は待ってくれないか?」
魔術師 アルドリック「・・・・・・」
魔術師 アルドリック「ケヴィンは言い出したら聞かないって、わかってるよ。 だから僕はずっと待つから・・・・・・」
勇者 ケヴィン「愛するアルドリックとこの世界と素敵なロケーションのためにも、俺は絶対に魔王を討つから!」
勇者 ケヴィン「だから、今日は明日に備えて筋トレとイメトレに集中したい! ・・・・・・いいよな?」
魔術師 アルドリック「・・・・・・わかったけど、無理はしないでくれよ。 君を心配する人間はすぐ近くにいるんだからね」
回復術師(独身歴二百年超えてる私の前でよくいちゃつけるな。 ほんと若いわ)

コメント

  • 告白しなくても、もう魔術師さんは勇者さんのことが好きなのではないでしょうか?笑
    それにしても魔王、1日で思い出の景色を全部壊してしまうとは仕事が早い!

  • タイトルにとっても興味をそそられました(笑)
    みんなの会話の内容、言葉のチョイスが面白くて笑いながら最後まで読ませて頂きました。

  • 魔王討伐の前に心残りなく告白したいという当初の目的から、美しい告白スポットを守るために魔王を討伐するという本末転倒さに笑ってしまいました。

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