ピコ(脚本)
〇荒野
さすらいのガンマン「ここがネオウエスタンタウンか この街にドルの賞金がかかったピコというやつが潜伏しているらしい」
さすらいのガンマン「まずはあの酒場で聞き込みをしよう」
〇ジャズバー
さすらいのガンマン「なあマスター ピコを知らないか」
マスター「おや、旅の人 あんたもピコのピアノを聴きに来たのかい?」
さすらいのガンマン「え?」
マスター「あと30分くらいしたら来るだろうから待ってな」
子ども「マスター、ピコ来てるー?」
マスター「いや〜まだだ」
ガヤガヤ
酒場に人がどんどん集まってくる
ピコ「やあ、おまたせ〜」
子ども「ピコだー!」
子ども「もう、遅いよ! 待ちくたびれたー!」
ピコ「道端のサボテン眺めてたらおもしろくて ついつい」
さすらいのガンマン「あれが、ピコ・・・? 人相書きの顔と随分違うぞ・・・?」
子ども「早く弾いてよ! 『ピコふんじゃった』聴きたい!」
ピコ「あいよ〜」
ぴこは大きく腕を振り上げて
ふにゃんとピアノに突っ伏した
体が時計回りに回りだす
ぺぺん♪
ぺろぷんぴっぱ♪
ぺろぴんぷっぷ♪
さすらいのガンマン「・・・?!」
ピコの脇腹が笑いだすようなピアノの音が酒場で踊っている
子ども「ひいーひゃははっ」
マスター「ぶっはははー!!!」
さすらいのガンマン「なっなんだ? クールな俺でも笑いだしてしまいそうだ、くっ」
ぺぺんぷん
さすらいのガンマン「やっやめろー!」
さすらいのガンマン「ブーハッハッハッハッ」
ぺんぽん!
拍手が鳴り響く
子ども「ピコふんじゃったさいこうー!」
町の人「ピコのピアノ聴いてたら悩み吹っ飛ぶわ」
子ども「そうそう、どうでもよくなっちゃう!」
マスター「ハッハッハッハッ」
さすらいのガンマン「何をしにネオウエスタンタウンに来ていたのか忘れてしまったぜ・・・」
マスター「どうだい旅の人 ピコのピアノは」
さすらいのガンマン「気に入ったぜ あんなに下手でおかしいピアノははじめてだ」
マスター「ハッハッハッハッ ピコは世界一下手なピアニストなのさ」
マスター「専門家がいうには、人が笑い転げやすい音程やリズムで演奏されているとかなんとからしい」
子ども「次はあれ弾いてよ 魔王!」
ピコ「お〜け〜」
子ども「ピコがひくとパオーンになるんだよね」
子ども「僕、ピコの隣で替歌うたっていい?」
ピコ「いいよ!」
ぴこは大きく腕を振り上げて
ふにゃんとピアノに突っ伏した
体が時計回りに回りだす
ツツツツツツツツツ
ぱぱぱぱぱぱっぱっおーん
ツツツツツツツツツ
ぱぱぱぱぱぱっぱっおーん
子ども「お父さん、お父さん! ぱおーんのささやきが聞こえないの? 落ち着くんだ坊や 僕はおじいちゃんだよ」
子ども「お爺さん、お爺さん! あれが見えないの? 暗がりにいるパオーンの娘たちが! 孫よ、老眼には見えん」
さすらいのガンマン(脇腹が笑いだすようなピアノの音と変な替え歌であたまがすっぽんぽんになってしまった)
ピコ「みんな、今日も聴いてくれてありがとう 僕、そろそろ帰って寝るね また明日〜」
大喝采のなか、ピコは酒場をあとにした
マスター「ピコは毎日この時間帯に俺の酒場に来て、ピアノを弾いていくのさ」
さすらいのガンマン「いいな、毎日これが聴けるなんて ネオウエスタンタウンに移住しようかな?」
マスター「大歓迎だよ〜旅の人」
こうして彼は血なまぐさい賞金稼ぎをやめて、ネオウエスタンタウンで愉快にくらしましたとさ
〇ジャズバー
さすらいのガンマン「なあ、ピコ 俺もピアノを弾いてみたい ピコみたいに面白く弾くコツを教えてくれないか?」
ピコ「自分らしく弾いたらいいんだよ 気取らず力まず・・・なまず!」
さすらいのガンマン「自分らしく、か・・・」
ピコはピアニストというよりセラピストですね。彼の素直で純粋な感性が、音を通して人を魅了するのでしょうね。旅の人の決断もかっこいいです!
イライラしたり怒っているのがバカらしくなるような間抜けな音色って確かにありますよね。だけどちょっとやり過ぎると、今度は聞いてる人の怒りのスイッチが入りそう。ピコのピアノは、その匙加減が絶妙なんでしょうね。ハーメルンの笛吹みたいにピコが移動すると村人もみんなついてきたりして。