読切(脚本)
〇田舎駅の待合室
花札が広がる机と、少女
わか「こいこい!」
朝咲(あさ)「はあ?こいこい?ここで?」
相手をするのも、また少女
わか「こいこいっ、こいこい!」
朝咲(あさ)「ったく・・・泣きを見ても知らないよ」
こいこいの宣言で、番は続く
わか「うふふ、んふふ」
継続は駆け引き
相手にチャンスを与えるか
自分の番で手打ちとするか
朝咲(あさ)「はい、アタシの勝ち。 欲をかくからだよ」
朝咲(あさ)「・・・ったく」
朝咲(あさ)「ほらご覧!むやみに『こい』するから」
朝咲(あさ)「もうちょっと場の札を見て言いなよ。 勝負は勝ってなんぼだろう?」
朝咲(あさ)(こいしなけりゃ、アンタが勝ってたのに)
朝咲(あさ)(毎回必ず『こい』する。 さすが──)
わか「・・・」
朝咲(あさ)「なんだい。また続けるのかい?」
わか「こい、こい・・・うぅ・・・」
わか「うぁーん!!」
朝咲(あさ)「ちょっと!お待ち──」
朝咲(あさ)「──またあの子の負け逃げか」
朝咲(あさ)「・・・いつになったら勝ってくれるんだ、あの子は」
「『こいこい女』の名は伊達じゃないのね」
報告
鉄道駅舎の「こいこい女」
報告者
対怪奇特派員 朝咲(あさ)
こいこい女。
姿形は、和服の少女。
花札を持って遊びに誘う。
花札で勝つまで、その場にとどまり
人々を勝負に誘う。
話す言葉は一つだけ
わか「こいこい!」
朝咲(あさ)「──っと。 報告完了」
朝咲(あさ)「『こい』を連呼するから、こいこい女ね」
朝咲(あさ)「ていうか・・・」
朝咲(あさ)「なんの打算もなく『こい』する!? ルール分かってんのかしら?あの子」
朝咲(あさ)「そっか・・・多分、ルールわかってない。 こいこいって言うのが楽しいんだ」
朝咲(あさ)「ほんとに、小さい子どもみたい」
朝咲(あさ)「考えるな。 まずはあの子を勝たすんだ・・・そしたら」
朝咲(あさ)「あ!乗ります、乗ります!」
???「良かったの?わかちゃん。 おねーちゃん帰っちゃうよ?」
???「そっか、おねーちゃんとたくさん遊んで嬉しかったね」
???「また呼んであげるから、もう在るべきところへ帰りな?」
あずさ「朝咲ちゃん、報告ありがと。 悩まなくていいよ?」
あずさ「あずさはね、ただ遊びたいモノに、遊び相手を連れてくるだけ」
あずさ「・・・そうね、場を見て札を揃えて・・・もうちょっと、を欲しがる」
あずさ「欲深いやつって意味なら、あずさも 『こいこい女』ね」
あずさ「ふふ、お客さん。列車に乗り遅れたの?」
あずさ「それともあなた、覗き見かしら」
あなた、欲をかくからよ。
もう少し、見たい、見たいって
面白かったです🌟
私は花札勝負だとさっさと役作ってあがっちゃう性格なので、控えめで欲があまりないと思いたい...🤣
欲深さに気をつけます
花札の「こいこい」と「来い来い」をかけているのかな、と思ってちょっと怖かったです。わかを勝たせないと朝咲は駅舎から永久に出られなくなるのかもと思いましたが、無事に帰れてよかった。最後まで見ていた欲深い傍観者が犠牲者になるというオチが秀逸ですね。