だ・い・す・き・おぶ・じ・えんど

高杯秋魚

第2話 買物・おぶ・じ・えんど【1日目・朝】(脚本)

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〇開けた高速道路

〇車内
大樹(だいき)「よっしゃぁあ! 俺の勝ちー!」
苺(いちご)「わああっ騙された~!」
苺(いちご)「絶対右がババだと思ったのに・・・」
苺(いちご)「ズルいよ、大樹~。 わたしが右選ぼうかなーって時に、 そうじゃないのに嬉しそうな顔するなんて」
苺(いちご)「結局そっちはババじゃなかったのに」
大樹(だいき)「ふっふっふ・・・! これがポーカーフェイスってやつだぜ」
大樹(だいき)「つまり! 俺の作戦勝ちってことだ!」
苺(いちご)「うぅ~悔しい~!」
大樹(だいき)「敗者の嘆きが心地いいぜぇ!」
大樹(だいき)「てことで、これで苺がビリッケツだな! ※(ビリッケツ=最下位のこと)」
菊(きく)「そう言う大樹は3位だけどね」
菊(きく)「それにペナルティは3位と4位だから、 結局あんたも負けてるじゃない」
菫(すみれ)「大樹くんが自分で決めたルールだもんね」
菊(きく)「さーて・・・」
菊(きく)「3位と4位は、1位と2位に、 持ってきたお菓子の中で 指定されたものをなんでも1つ譲り渡す」
菊(きく)「これも大樹が決めたルールだけど、 もちろん忘れてなんかないでしょうね?」
大樹(だいき)「ちくしょー・・・ ビリッケツ回避した喜びに もうちょっとくらい浸らせろよぉ・・・」
苺(いちご)「うぅ・・・わたしのお菓子がぁぁ・・・」
菊(きく)「いや、そんなガチ凹(へこ)みされたって こっちが困るんだけど・・・」
菊(きく)「そういうルールでババ抜きしてたんだし」
菫(すみれ)「えっと、ごめんね苺ちゃん・・・」
菫(すみれ)「あ──そ、そうだ!」
菫(すみれ)「じゃあ、逆にあげちゃっても いいよってお菓子があったら教えて? わたし、それ選ぶから・・・」
菊(きく)「なるほど。悪くない案ね」
菊(きく)「大樹も取られたくないって お菓子があったら私に教えなさいよ」
菊(きく)「その中から選んであげるから」
大樹(だいき)「おおっ、そうか? じゃあ──」
大樹(だいき)「って、おかしいだろ!」
大樹(だいき)「菫の提案と似てるようで、 やることがまるで正反対じゃねーかよ!」
大樹(だいき)「悪魔かっ!」
苺(いちご)「うーんとね・・・ あげてもいいやつ、あげてもいい・・・」
苺(いちご)「あっ! これならいいよ」
苺(いちご)「同じのいっぱいあるから、 菫ちゃんにもおすそ分けってことで!」
菫(すみれ)「わぁい、ありがとう」
菫(すみれ)「じゃあ、それにするね」
菊(きく)「誰が悪魔よ!」
菊(きく)「それに、そっちの企みは読めてるんだから」
菊(きく)「このゲームの言い出しっぺはあんただし、 だからどうせ・・・」
菊(きく)「そのバッグの中は 取られてもいいお菓子ばっかなんでしょ?」
菊(きく)「酸っぱいやつとか激辛系とか」
大樹(だいき)「うぐっ・・・さ、流石は菊だ・・・」
大樹(だいき)「俺の作戦を こうもあっさり見抜いちまうとは・・・」
大樹(だいき)「だがなぁ! まだ甘いぜっ!」
大樹(だいき)「たしかにこのバッグの中は 酸っぱいグミやら激辛チップスやら ヤベぇ菓子でいっぱいだ!」
大樹(だいき)「けど、それがわかったところでどうした!?」
大樹(だいき)「ババ抜きで1位になっちまった以上──」
大樹(だいき)「結局おまえはどうあがいたって 絶対ハズレを引くことになるんだぜ!?」
菊(きく)「そのバッグの中から選べばそうかもね」
菊(きく)「け~れ~ど~・・・ねえ、大樹?」
菊(きく)「あんたって辛いのも酸っぱいのも苦手よね」
菊(きく)「このキャンプは2泊3日──」
菊(きく)「その間あんただって 甘いお菓子は食べたくなるはず・・・」
菊(きく)「だから自分用のお菓子は必ず持ってきてる」
菊(きく)「そう、絶対に」
菊(きく)「あんたが こういうイタズラに全力なのは知ってる」
菊(きく)「でも、流石に捨て身にはなれないわよねぇ」
大樹(だいき)「くっ・・・」
大樹(だいき)「け、けど隠し場所まではわかんねーだろ!?」
菊(きく)「残念、とっくに検討は付いてるわよ」
菊(きく)「あんたの甘いお菓子は──」
菊(きく)「そっちの着替えとかが入ってるバッグの 底の方にさりげなく隠してある!」
菊(きく)「さあ、大樹!」
菊(きく)「もし違うって言うなら、そっちのバッグの 中を今すぐ見せてみなさい!」
大樹(だいき)「ぐ、ぐわああぁあぁあぁああああ!!!?」
大樹(だいき)「ち、ちょくしょー・・・」
大樹(だいき)「俺の・・・おれのっ・・・」
大樹(だいき)「────負けだぁ・・・!」
苺(いちご)「す、すごい・・・! 今、銃撃戦が見えた気がしたよ・・・!」
大樹(だいき)「敗者に言い訳はねえ」
大樹(だいき)「好きなの持ってけ・・・っドロボー!」
菊(きく)「そんな断腸の思いみたいな感じで 差し出さなくっても・・・」
菊(きく)「いいわよ、そっちのハズレからで。 ほら、私辛いの好きだし」
菊(きく)「ていうか、あんたも 知ってて辛いやつ用意したんでしょ?」
菊(きく)「・・・酸っぱいのは別として」
菫(すみれ)「苺ちゃんと菊ちゃんは辛いの平気だもんね」
菫(すみれ)「でも大樹くん、あのね・・・ バナナは、多分、お菓子じゃないと思う」
菫(すみれ)「早く食べないと すぐダメになっちゃうよ・・・?」
菊(きく)(まあ、結局──)
菊(きく)(敗者が2人のルールなのも、 辛いのがダメな菫のための保険よね)
菊(きく)(もし菫が勝者側になったら今みたいに、 私か苺のお菓子から選ばせれば 問題ないわけだし・・・)
菊(きく)(苺と菫が前後の席順なのも、 自然とそうなるようにってことよね)
菊(きく)(最初に席順決めたのも大樹だったし・・・)
菊(きく)(ほんと──そういうとこ意外と考えてる やつなんだから・・・)
菊(きく)(まあ、気付いてるのは私くらいだろうけど)
菫(すみれ)「──菊ちゃん?」
菊(きく)「えっ? な、なに?」
菫(すみれ)「ぼーっとしてたから・・・」
大樹(だいき)「ほら、早く選べよ」
大樹(だいき)「酸っぱいのにしてもいいんだぜ?」
菊(きく)「バカ、普通に自分の好きなやつ選ぶわよ」
菊(きく)「あっ、ハバネロあるじゃない」
菊(きく)「これにしよっと」
大樹(だいき)「おまえも苺もよくそんなの食えるよな」
大樹(だいき)「それ辛すぎて食えねーよ俺・・・」
苺(いちご)「その辛いのがいいんだよ。ね~菊ちゃん」
大樹(だいき)「わりぃ、俺にはわからねー・・・」
菊(きく)「わからないなら教えてあげよっか?」
菊(きく)「ほら、口開けなさいよ。あ~んっ」
大樹(だいき)「うわっ、バカっ!? やめろって!!」
大樹(だいき)「あっ!?」
苺(いちご)「おぉ! 菊ちゃん、ナイスコントロール!」
苺(いちご)「大樹の口にすぽっと入ったよ?!」
大樹(だいき)「うっ────」
大樹(だいき)「うぎゃああああああああああああああ!!!?」
大樹(だいき)「から、からぁっ、辛えぇぇえぇぇええ!!!?」
大樹(だいき)「水、水、水、みずー!!!!」
菫(すみれ)「だだだ大樹くん!? お、お水! お水!」
菫(すみれ)「はい、お水だよ!」
菫(すみれ)「あわわ・・・、大丈夫かな・・・?」
大樹(だいき)「ヒィー・・・マジ死ぬかと・・・!」
大樹(だいき)「おい菊! いきなり何しやがる!」
菊(きく)「ごめんごめん。ほら、口直し」
菊(きく)「ひんやりするキャンディ。 口の中を冷やすのには丁度いいでしょ?」
菊(きく)「こっちも最初からあんたに 辛いお菓子食べさせるつもりだったから」
菊(きく)「おあいこってことで」
大樹(だいき)「なーにが「おあいこ」だよ」
大樹(だいき)「まったく・・・ 昔から敵わねーな、おまえには」
大樹(だいき)「けど、次は勝ってやるぜ!」
菊(きく)「あはは・・・。何の勝ち負けよ、もう!」
菫(すみれ)「・・・・・・・・・」

〇駐車車両
苺(いちご)「サービスエリアー!」
苺(いちご)「お菓子買い行こうよー! あとお土産も!」
菊(きく)「危ないから駐車場は走らない!」
菊(きく)「トイレ休憩のついでに 飲み物とか必要なものを買うだけよ」
菫(すみれ)「ま、待って2人とも・・・!」
大樹(だいき)「──俺は先に飲み物買おっかな」
大樹(だいき)(女子と一緒になってトイレ行くの、 なんかハズいし・・・)

〇コンビニのレジ
大樹(だいき)(意外と混んでるんだな・・・ そういや駐車場も車でいっぱいだったし)
大樹(だいき)(やっぱ夏休みは みんなどっか出かけたいよな)
コンビニ店員「──162円(税込み)です」
大樹(だいき)「namakoカードで」
大樹(だいき)(これでよし、と──)
大樹(だいき)(あれ? 菫のやつ・・・)
菫(すみれ)「あ・・・大樹くん」
大樹(だいき)「よお。苺と菊は一緒じゃねーの?」
菫(すみれ)「あ、うん・・・」
菫(すみれ)「あのね、苺ちゃんがお土産屋さんを 見に行っちゃったから・・・ 菊ちゃんはその付き添いで・・・」
菫(すみれ)「だから、わたしは先に お買い物済ませておこうかなって・・・」
大樹(だいき)「ふーん? ──あ、なら丁度いいか」

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