パパと私だけのセカイ

ほのかなの

エピソード1(脚本)

パパと私だけのセカイ

ほのかなの

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パパと私だけのセカイ
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〇小さな小屋
  おきたら、パパは、いなかった。
  さいきん、いつも、パパがいない。
  さむいし、おなかがへったよお・・・

〇小さな小屋
パパ「おっ、ひなこ!起きてたのか」
わたし「うん、パパ、おはよう」
パパ「今日はすごいぞ。魚がたくさん取れたんで、朝ごはんは焼き魚だ!」
わたし「わあ、おさかな、だいすき!」

〇小さな小屋
  パパは、わたしのために、いつも、たべものをさがしてきてくれる。
パパ「待ってろ、外で焼いてくるからな!」
わたし「うん!」
  まっていたら、パパはいつだって、ちゃんとおいしいものをみつけて、かえってきてくれる。
  だからパパに「パパのことすきか?」ときかれたら「うん!」とすぐにいえる。
  だけど・・・。

〇綺麗なリビング
  むかしは、いくらまってても、かえってきてくれないことが、あった。

〇綺麗なリビング
  ゆうがたになっても。
  おやつがなにもなくても。
  かえってきてくれなかった。

〇綺麗なリビング
  よるになっても。おなかがすいても。
  ひとりでさみしくても。
  もどってきてはくれなかった。

〇綺麗なリビング
  あさになって、
  おなかがぺこぺこのまま、
  がっこうにいったこともある。

〇綺麗なリビング
  かえってこなかったのは、
  パパじゃない。
  かえってきてくれなかったのは、
  ママだった。
  あのころのわたし。
  いつもおなかをすかせて、
  さみしくて、ないていた。

〇綺麗なリビング
  ママがかえってこなくなったのは、
  ママとパパがいっしょにくらさなくなってから。
ママ「これからは、ママがはたらかなくちゃならないの。かえりがおそくなるけど、しかたないのよ」
わたし「だいじょうぶだよ。ママ、まってるよ」
  ママはいそがしくてたいへんだから。
  わたしためにがんばってくれてるんだから。わたしもがんばってママをまっていた。

〇綺麗なリビング
  そんなあるひ。
パパ「なんだこの部屋!ゴミだらけじゃないか。 おい、ひなこ!すごい痩せてる! 大丈夫か!」
わたし「パパ・・・? なんでここに?」
パパ「担任の先生から、最近日菜子が汚れた服で登校してると連絡が来たから、心配して来たんだよ」
パパ「お前、ドアのカギくらい閉めろよ!なんか食ったか?」
わたし「ううん・・・」
パパ「・・・・・・」
パパ「なんてこった・・・」

〇綺麗なリビング
パパ「よし、日菜子。パパがおいしいもんごちそうしてやるから行こう」
わたし「うん!」
パパ「さ、行くぞ!」

〇小さな小屋
  あれからなんにちくらいたったんだろう。
  わたしは、パパとやまのなかでくらすようになった。
  がっこうには、いってない。
  べんきょうは、パパがおしえてくれる。
  パパとふたりっきりは、すこしさみしいときもあるけれど・・・
  ママをずっとまって、ないていたときより、ずっとたのしい。

〇新緑
パパ「ごめん、魚、ちょっと焦がしちゃったよ」
わたし「だいじょぶだよ。こげてるのもおいしいよ」
パパ「そっか、よかった!今日は天気もいいから、外のテーブルであさごはんにしよう」
わたし「うん! あのね、パパ・・・」
パパ「なんだ?」
わたし「こんど、おさかなのやきかたおしえて! つぎはわたしがやいてあげるね」
パパ「ありがとう。 日菜子はやさしいなあ」
わたし「パパだってやさしいよ!」
パパ「そうかあ?」
わたし「うん!」
  だって、わたしをつれだして、
  まいにちごはんをたべさせてくれるもん。
  わたしはパパがだいすき。
  だから、ずっとパパとふたりきりのセカイでも、きっと、だいじょうぶ。

コメント

  • 初めまして!!
    何も知らず読み進めて、中々名作の予感に震えております。
    子供の視点で書かれている所は、ひらがなにして配慮が細かいですね。
    子供目線の優しいパパの描き方の裏に、すごく不穏なものを感じてドキドキしました。うまいですね。続きが楽しみです🙂

  • 子はかすがいという言葉から程遠い、切なく虚しい家族の崩壊シーンと、実在しえる家族のあり方がとても丁寧に描かれたストーリーだと思いました。

  • 家庭の数だけそれぞれの事情があるから、連れ去った父親との暮らしの方が幸せというケースもあるかもですね。日菜子ちゃんが語る「パパと私だけのセカイ」が、お腹を空かせてママを待っている間に眠って見た夢だったら切ないな、と思いました。

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