エピソード1(脚本)
〇魔界
魔王「ふふふ・・・」
魔王「ふふふふ・・・」
魔王「はーっははははは!」
魔王「ようやく西の賢者が倒れたようじゃな」
魔王「後は勇者さえ倒してしまえば・・・」
魔王「世界は我の者!」
魔王「おい!」
魔王「・・・・・・・」
魔王「誰かおらぬか!」
「はい!」
「います! ここにいますよ!」
魔王「お、お主は・・・」
勇者「魔王さん!」
勇者「今日もやってまいりました」
勇者「あなたの勇者です!」
魔王「な、ななな・・・」
魔王「なんで今日もお主がここにおるんじゃ!?」
兄「お邪魔してまーす」
魔王「お主まで来たのか!?」
魔王「どうやってここに・・・」
魔王「そもそも我の配下たちはどうした!?」
魔王「何故こうも易々と、勇者とその兄が魔王城の最奥まで入って来ておるのじゃ!?」
魔王「どうなっておるのじゃーーーーっ!」
勇者「きゃ・・・」
魔王「きゃ?」
勇者「きゃわいいいいいいいっ!」
勇者「今日も魔王さんきゃわいいよぉおおおお!」
勇者「え? なんでそんなに可愛いんですか?」
勇者「人間とは食べる物が違うんですかね?」
勇者「でも昨日はチーズ入りのサラダを食べてましたよね?」
魔王「怖っ!」
魔王「なんで我の食事事情をお主が知っておるのだ!?」
勇者「そんなの決まってるじゃないですか・・・」
勇者「私が魔王さんのファンだからですよ!」
兄(違う)
兄(妹が抱く、魔王ちゃんへの想い。それは)
兄(ファンなんてレベルじゃない)
兄(ファンを通り越して)
兄(もはやストーカーなのだ!)
魔王「おい、誰か! こやつらを叩き出せ!」
魔王「そもそもここまで侵入を許すな!」
魔王「それに勇者!」
勇者「はい?」
魔王「勇者が魔王城に訪れるのは」
魔王「我との決着の時のみ」
魔王「だというのに・・・」
魔王「毎回遊んで帰るとは、どういうことじゃ!!」
魔王「へ?」
魔王「な、何をしておるのじゃ・・・?」
勇者「これ、錬金術師の人に作ってもらったんですよ」
勇者「魔石の力を使って、魔王さんの姿を記録する魔道具」
勇者「その名も、カメラです!」
魔王「ちょ・・・」
魔王「やめて・・・」
魔王「やめろ!!」
魔王「何をしているのか分からんが、やめるのじゃ!」
勇者「えへへ。怒った魔王さんもまた格別」
魔王「っ──」
魔王「どうやら貴様にはどれだけ言ってもわからんようじゃの」
魔王「ならば──」
魔王「ここで決着をつけてやろう!」
魔王「【魔王級破壊光線】(デストロイヤービーム)!!」
兄(封印術式──)
兄(発動)
魔王「あ、あれ?」
魔王「【魔王級破壊光線】!」
魔王「【魔王級破壊光線】!」
魔王「・・・・・・」
魔王「出ない・・・どうなっておるのじゃ」
兄(俺の妹は弱い)
兄(勇者のくせして弱い)
兄(だから俺は妹を守るためにここにいる)
兄(妹も魔王ちゃんも気づいていないようだが)
兄(俺は世界で一番強いと言われている魔王ちゃんよりも強い)
兄(魔王城にいる魔族もモンスターも)
兄(俺が全て気絶させているのだ)
兄(勇者としての役目を全うせず)
兄(魔王ちゃんに現を抜かす妹が、安全に魔王城に侵入できるのは)
兄(俺の助力あってこそなのだ)
兄(俺が強くなったのは親父の言いつけを守った結果だ)
兄(長男たるもの、家族を守るべし)
兄「というか勇者を守るべし」
兄(というか妹ちゃん最強可愛い)
兄「という、親父の戯言のような言いつけ」
兄(だから俺は強くなった。家族を守るために)
兄(ま、面倒になるから、このことは誰にも教えないつもりだけどな)
勇者「あ、もうこんな時間」
勇者「そろそろ帰らないと、お父さんが心配する」
勇者「じゃあ魔王さん、今日こそは十時までに寝てくださいね」
魔王「怖っ!」
魔王「なんで我の寝る時間を把握しておるんじゃ!?」
魔王「確かにいつも、十二時回ってるけれど!」
勇者「じゃあ帰りますね~」
勇者「さようなら~」
魔王「もう来るな!」
魔王「いや、来るなら戦いにこい!」
魔王「いいな!」
兄「魔王ちゃん」
魔王「ん」
兄「バイバイ」
兄「また明日」
魔王「あ、明日来るなら」
魔王「お主一人でこい」
魔王「お主のことは、その・・・」
魔王「嫌いではないからの」
兄(ありがたいことに)
兄(俺は魔王ちゃんに嫌われていないらしい)
兄(理由は見当もつかないが)
魔王「だが妹は別じゃ」
魔王「あやつは勇者じゃからな!」
魔王「我の敵じゃ!」
兄「妹にそう言っておくよ」
兄「話を聞くか分からないけれど」
兄(というか、絶対聞かないだろうけれど)
兄「じゃあな」
魔王「う、うん」
魔王「バイバイ」
魔王を倒す気が無いストーカーと
勇者を一刻も早く倒したい魔王
そして影で妹をフォローする俺
これが俺たちの日常である
魔王ちゃん、最後に「バイバイ」て。カワイイ。勇者と兄が来ない日があったら「今日は遅いのう。はて、何があったのじゃ」とか言って待ってそう。大田さんは「妹萌え」と男一人に女二人の構図がお好きな感じですね。