魔法使いの竜葉

さつまいか

第6話 衝撃の再開(脚本)

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〇木造の一人部屋
  留瑋との模擬戦から2日後、沙利の部屋だ。
  今日は杏奈は一日中、町の子供たちと
  ピクニックに出かけている。
  唯一、沙利が一人行動できる日でもあった。
沙利「ふう、杏奈のために昨日の夜に 作り置きご飯作っててよかったわ・・・」
沙利「あの子ったら、 ひとつも料理できないから・・・」
  自室のベッドから起きて、
  沙利は独りごちる。
  杏奈は、朝の6時に子供たちと
  待ち合わせをしている場所に向かった。
  集合時間は7時で、集合場所までは30分も
  かからないのだが、杏奈いわく
  「遅れたらだめだけど、早めなら悪いことはないから!」
  とのことだ。
沙利(せっかく一人なんだし、 今日は前からしたかったことを しましょうか・・・)
  沙利はひとり、そう思う。
  今日は平日で、子供たちも大体が
  ピクニックに行っているので
  町にはあまり人がいない。
沙利「まさに、絶好の機会ね・・・」
  沙利はそう言いながら、居間に入っていく。

〇広い畳部屋
  コーヒーのにおいが鼻腔をくすぐる。
  他にも、パンやそれにつける
  ジャムが机に並ぶ。
沙利「うん、いい感じね」
沙利「やっぱりどんなときでも、 朝ごはんは欠かせないわよね」
  急ぎぎみで朝食をすますと、
  家に鍵をして外に出る。

〇風流な庭園
沙利「・・・ヴァンパイアさん、 見つかるといいのだけれど」
  そう、沙利が今日しようと
  思っていたこととは
  一週間現れなかったヴァンパイアを
  探すことだ。
沙利(まあ、家の周りにはいないわよね・・・)
沙利「大通りに出てみましょうか」

〇寂れた村
沙利「・・・いないわね」
  沙利は辺りをキョロキョロ見回す。
沙利(もしかして、一度来たところだと、 見つかるかもしれないと思って、 違うところに移動しているのかしら?)
  ふと、そんなことを思う。
沙利「よし、町中まわりましょうか・・・ きっとどこかにはいるはず!」
  沙利は意外にも、根気強い方であった。

〇森の中の小屋
沙利「・・・こんなところ、初めて来たわね」
  沙利は森の奥に進んで
  一つの小屋を見つけていた。
沙利(中に入ってみましょうか・・・ ヴァンパイアさん、いればいいのだけれど)
  意を決し、家の中に足を踏み入れる。

〇荒れた小屋
沙利「お、お邪魔します・・・」
沙利(なんだか、 杏奈の部屋くらい汚いわね・・・)
  そんなことを思う沙利である。
  と、その時。
「う、うわぁぁぁ!!!」
沙利(な、何!?)
  小屋の近くから、悲鳴が聞こえてきた。

〇けもの道
沙利「さっき悲鳴が聞こえたのってこの辺りよね?」
  ドキドキしながら、歩を進める沙利。
  と__
活発な男子「うわぁぁ・・・、く、クマ、だ・・・」
ツキノワグマ「ガルルルルルルゥ・・・」
  小さな男の子と大きなクマが
  茂みから出てきた。
活発な男子「ひっ!」
  少年は恐怖で、しりもちをついて
  動けないでいるようだ。
沙利(あら?このクマって・・・)
  何かに気づいた沙利は、
  少年とクマのもとに駆け寄っていく。
沙利「ツキちゃん?何をやっているの? 命令以外では人を襲わないって 約束したはずよね?」
ツキノワグマ「グルルルゥ・・・」
活発な男子「うぇ!? クマが泣いた?」
活発な男子「ね、姉ちゃん、何者ー!?」
  ツキちゃん、と呼ばれたクマを
  泣かせた沙利に対し、
  少年は少し引いている。
沙利「このクマはもともと私が調教した子なの 言うことを聞かないなんて・・・」
  そう、このクマは留瑋との戦闘で
  杏奈が呼び出していたクマだ。
沙利「何があってこうなったのか、 経緯を説明してもらえる?」
  沙利は、少年に説明をせまる。
活発な男子「あ、ああ!」
活発な男子「姉ちゃんに逆らったらそのクマみたいに 泣かされちゃいそうだもんな!」
  はは、と冗談めかして笑う少年。
  それが冗談なのかは分からないが。
沙利「ええ、お願い」
  クマを転移魔術で杏奈の家の
  小屋に送った後、
  森の開けた場所に結界をはり、
  話せる準備をする。
沙利「結界を張ったわ これで誰かに聞かれることも、 何かに襲われることもないから、安心して」
活発な男子「う、うん」
活発な男子(この姉ちゃんがいたら、 結界があってもなくても 意味ない気がするけどなぁ)
  と、人知れずそんなことを
  考える少年である。
活発な男子「今日は朝から杏奈姉ちゃんと一緒に ピクニックに行ってたんだ」
  と、少年が唐突に話し始めた。
沙利「杏奈姉ちゃん? それって、枝里源杏奈のこと?」
活発な男子「ん?ああ、そうだよ 杏奈姉ちゃんはすごいんだ!」
活発な男子「ご飯は野生の魔物を食べちゃうし、 さっきだって!」
活発な男子「俺たちが魔物に襲われていたところを 助けてくれたんだ!」
沙利(ええ、それは杏奈で間違いないようね・・・ 魔物の肉を食べるのはあの子くらいだし)
沙利「それで、その杏奈は今どこなの?」
活発な男子「それが、離れちまったんだ・・・ だから追いかけようと思って歩いてたら クマに襲われて、 姉ちゃんに会った、ってわけだ」
沙利「・・・そう」
沙利「じゃあ、ちょっと待ってて あなたの言うことが本当なら 杏奈は近くにいる、ってことだもの」
沙利「__〈通信呪符〉杏奈に」
  沙利の体が黄色く光り、
  目の前に呪符が表れる。
沙利(杏奈、通じるかしら・・・?)
「・・・沙利ー?どうしたの? 念話じゃなくて、呪符で通信なんて」
沙利「っ、杏奈! よかったわ、何かあったかと思ったから」
沙利「ええと、今あなたのピクニックに 連れていった少年を見つけたのだけれど、 今どこにいるの?」
「わ!そこにいたのかー! 沙利、ありがと! 今6人探してるんだよね・・ あと五人! みんなどこに行ったんだろう・・」
沙利「ええ!?何があったのよ!? 地震が起こったわけでもないのに・・・」
「それが、魔物が地震みたいな 固有スキルを出しちゃって あたしでは手のつけようがなくなって・・・」
沙利「なるほど、分かったわ みんなの魔力情報って送れる? 〈探索〉(サーチ)で 他のみんなも探してみるから」
「うん、今送るねっ!」
  大量の情報が、沙利の頭に流れ込んでくる。
沙利「ありがとう、杏奈 というか、みんなの位置が 分かっているのなら すぐに見つけられるものではないの?」
「あはは、本来ならそうなんだけど・・・ ここ〈迷い〉の魔術がかけられてるみたいで」
「行きたい道に進めないんだよね・・・ でもこれは特定の人にかける 呪詛みたいなものだから、 沙利なら意味ないんじゃないか、」
「って思ったの!」
沙利「それなら、私に任せておいて! これからみんなを見つけて杏奈のところに 連れていくわ」
「ありがと!! 沙利、ほんっとに助かる・・・!」
沙利(とは行ったものの、私、 方向音痴なのよね・・・ 魔術がかかっていなくてもこんな森の中、 行ける気がしないのだけれど・・・)
活発な男子「姉ちゃん、何か困ってるのか?」
沙利「え?」
活発な男子「いやー、だってよ、通信が終わったとたん 難しい顔になってたら誰でも心配するでしょ」
沙利「ええ、そう、ね」
沙利「じゃあ、あなたにひとつお願いいいかしら?」
活発な男子「ああ!」
裕闇「それと、あなた、じゃなくて 裕闇、って呼んでよ!」
沙利「ええ、それがあなたの名前なのね、裕闇」
裕闇「そうだぜ!」
  裕闇はにっこりと微笑む。
沙利「えっと、杏奈が送って来てくれたこの森の 地図を具現化するから、私がみんなの ところに行くサポートをしてほしいの」
裕闇「分かった! 二人でみんなを助けようぜ!」
沙利「ええ!」

〇アマゾン川のほとり
  4時間ほど歩き回って。
沙利「ふう、これで最後の一人ね」
穏やかな少女「ありがと、杏奈姉ちゃんの友達のお姉さん」
沙利「いいえ、どうってことはないわ」
裕闇(ほぼ俺が案内してやったくせに・・・)
  いえいえ、と微笑む沙利に対し、
  そんなことを考える裕闇である。
沙利(最後は杏奈と合流しなきゃ 〈迷い〉の魔術をかけた正体も気になるけど、 杏奈に子供たちを預けてからでよさそうね)
沙利「行きましょう、杏奈のところに!」
穏やかな少女「うん」
裕闇「そうだな!」
  __と、沙利たちが歩を進めたその時。
沙利「な、何?」
  大きな音と共に、地面が揺れた。
沙利(地震よりも、もっと恐ろしいことのような 気がする・・・)
沙利(子供たちを、守らないと)
沙利「みんな、私の後ろに」
  子供たちだけは、と思い、
  沙利は6人をかばう。
穏やかな少女「わ、分かった」
裕闇「・・・おうっ」
沙利(ここで逃げれるのは間違ってる気がする・・・ 立ち向かう!)
  意を決し、茂みにいるはずの何者かに対し、
  誰何する。
沙利「誰?そこにいるんでしょう?」
  と、出てきたのは__
ヴァンパイア「・・・我の正体を知ったからには__」
ヴァンパイア「って、沙利ではないか!! こんなところで何をやっているのだ?」
沙利「え、ヴァンパイアさん? 聞きたいのはこっちなんだけど・・・」
  なんと、あの時のヴァンパイアだった。

次のエピソード:第7話〈機械人間〉

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