〇明るいリビング
　　朝起きたら妹が生まれていた
ごくあく善使徒「僕というアブノーマルな息子がいながら プリティ第二子のお迎えとは どういうことなんだ!?」
サルゥエル「息子が天使の血を 引いてなさ過ぎて焦りました」
えんまん「ぜんぜん悪魔っぽく育たないから 二人目チャレンジしちゃった」
ごくあく善使徒「まるで息子が 一般人であるかの物言い」
サルゥエル（そうですよ）
えんまん「めっちゃ人間って感じ」
ごくあく善使徒「じゃあこのプリティはどうなんだ!! この僕でさえ一般人よりなら──」
　　妹だよ。よろしくねお兄ちゃん
ごくあく善使徒「脳内に直接!? このプリティ、一般人じゃない!!」
ごくあく善使徒「これが天使か悪魔の力・・・」
サルゥエル「天使にこんな力はありませんよ」
えんまん「脳内に直接とか怖」
ごくあく善使徒「軽率に特異点を生まないで」
ごくあく善使徒「こんな高次的な存在を生んで大丈夫なの？ 人間界の終わりに繋がらない？」
　　全知全能すぎて世界に興味ないから
　　何もする気はないよ
ごくあく善使徒「一周回ってニートみたいな思考に」
サルゥエル「人を超越した神秘的な思考。 安心して天界を任せられますね」
えんまん「人を何とも思わない静かな残虐性。 お母さんと一緒に地獄を盛り上げようね」
ごくあく善使徒「人の心と親心は別物なんだ」
ごくあく善使徒「僕だって立派な 天使か悪魔になれるはずだよ」
サルゥエル「もちろんヨシトを信じていますよ」
ごくあく善使徒「父さん」
サルゥエル「でも宝くじだって １枚より２枚買う方が 当たりやすいでしょう？」
ごくあく善使徒「元天使と効率厨って 同時に存在し得るの？」
えんまん「ワタシだってごくあくを信じてるよ」
えんまん「でもごくあくは 悪魔と呼ぶには程遠いわ」
えんまん「思春期の一番キツイ時が ずっと続いてる感じなのは好印象だけど」
ごくあく善使徒「悪魔側の説教はムチしかないのか」
　　お兄ちゃんの名前って本名なの？
ごくあく善使徒「この一生売れない 地下芸人みたいな名前は 確かに僕の本名だよ」
サルゥエル「天使になるはずでしたから 「使徒」とつけたのですが」
えんまん「とにかく悪くなってほしかったんだけど」
ごくあく善使徒「息子の現在を過去形で憂うのやめて」
ごくあく善使徒「「ごくあく善使徒」 なんて名前だから どちらでもない息子になったんだよ」
ごくあく善使徒「ちなみにプリティの名前は決まってるの？」
サルゥエル「元とはいえ私も天使でしたから、 私の名前に寄せれば 将来は天使確定でしょう」
ごくあく善使徒「父さんは天界を追放された際に 名前を剥奪されたことを忘れないで」
ごくあく善使徒「今の父さんは 天使っぽいパンツ的な名前だから、 寄せたら将来パンツ確だよ」
えんまん「ワタシはちゃんと名前について調べたよ」
えんまん「初回は直接的に表現して失敗したから、」
ごくあく善使徒「失敗判定やめて」
えんまん「字画っていうやつが 完璧になるように名前を考えたよ」
ごくあく善使徒「まさかの悪魔要素ゼロ」
えんまん「一番字画が良かった名前は」
えんまん「『島田 納豆だよな』」
ごくあく善使徒「字画に全振りすぎる!?」
ごくあく善使徒「二人に任せるとやばそうだから 僕がプリティの名前を考えるよ」
　　ようやくプリティとかいう
　　ダサ＆キモい呼称から抜け出せるんだね
ごくあく善使徒「僕みたいな キラキラネームはかわいそうだから 仏教用語から漢字を拝借しよう」
ごくあく善使徒「”人の精神をつかさどる気”の意味を持つ『魂』という字を書いて、」
ごくあく善使徒「『たましい』と呼ぼう」
　　嫌がらせすぎない？
サルゥエル「せめて呼び方くらいは 捻ったほうが良いのでは？」
えんまん「悪とか以前に息子がバカ」
ごくあく善使徒「名前は決定!! これに懲りたら 勝手にプリティを生まないでよ!!」
ごくあく善使徒「次またプリティを生んだら そいつの名前は『魂２（たましいツゥ）』 もしくは『も～っと☆魂』にするからね!!」
サルゥエル「さすがに生まれる子を 萌えアニメの２期みたいな 名前にはさせられないですね」
えんまん「最悪な交渉・・・ でも悪魔的には成長して嬉しいよ」
　　全知全能もびっくりだよ
ごくあく善使徒「名前が決まったところで、 魂に人間界での過ごし方を教えてあげよう」
ごくあく善使徒「お兄ちゃんに続け!!」
サルゥエル「案外、妹の誕生を喜んでますね。 天使ポイント１です」
えんまん「手下として使役したいんじゃない？ 悪魔ちゃん人形１つ贈呈」
　　毎回プラマイゼロになってるんじゃ・・・

〇住宅地の坂道
　　何をするの？
ごくあく善使徒「ここは急斜面がエグいことから、 僕の中で坂地獄と呼ばれているんだ」
　　地獄坂ではなく坂地獄？
　　お兄ちゃんの中で呼ばれている？
ごくあく善使徒「とにかくここでは──」
買い物帰りのおばあちゃん「スーパーで買った 丸くて転がりやすい品々が坂道を!!」
恰幅の良いおじさん「最後にジャンプしたのは10代後半の私に、 この急斜面を登れるのだろうか!?」
スケボーで風を感じている少年「止まらない!! スケボーは本当に止まらない!!」
スケボーで風を感じている少年「なぜなら最初から 止まる術が欠如している乗り物だから!!」
ごくあく善使徒「問題が発生してやまない」
　　街として大問題じゃない？
ごくあく善使徒「片っ端から親切を押し売って 天使に一歩近づくぞ!!」
　　悪魔的な発想
ごくあく善使徒「魂よ、 やらない善よりやる偽善」
ごくあく善使徒「もしくは悪的な何か、だ──」
　　オリジナリティがしゃしゃったせいで
　　名言が確実に改悪の方向に
ごくあく善使徒「まずはスケボー少年を捕まえる!!」
スケボーで風を感じている少年「サンキュな、兄ちゃん」
　　命の危機に面していた割に軽い感謝
ごくあく善使徒「次に転がってくる丸い品々を捕球する!!」
買い物帰りのおばあちゃん「いつも悪いねぇ」
　　いつも転がしてるんだ
ごくあく善使徒「そして!!」
ごくあく善使徒「急斜面でお辛いでしょうが、 歩いていれば必ずたどり着けますので 頑張ってください」
恰幅の良いおじさん「えっ、あぁ・・・どうも」
　　共感の姿勢
ごくあく善使徒「よし、今日はこんなものだろう」
　　お兄ちゃんは天使になりたいの？
ごくあく善使徒「うーん、なれるならなりたいけど 悪魔もカッコいいしなぁって感じ」
　　でもこんなに良いことをしてたら
　　悪魔にはなれないんじゃない？
ごくあく善使徒「それは問題ない」
ごくあく善使徒「僕は私立の大学を中退して 昼間から人助けをしているから、 天使ポイントは特大のマイナスなんだ」
　　お兄ちゃんって天使にも悪魔にもなれない
　　現代が生んだモンスターなんだね・・・
ごくあく善使徒「魂、まだお兄ちゃんの 世界レクチャーは終わってないぞ」
　　モンスターお兄ちゃんから
　　学ぶことは何もないよ
ごくあく善使徒「魂、待て!!」
　　そんなに焦らないで──
ごくあく善使徒「ここは危険な場所なんだ!!」
ごくあく善使徒「受け身は取ってくれよ!!」
ごくあく善使徒（そういえば死んだら 天国と地獄どっちかにはいけるのか？）
ごくあく善使徒（まだ僕はどっちつかずだから ワンチャン生き返ったりしないかな？）
ごくあく善使徒（あ、でも命をかけて妹を救ったから 天使的にはすごいのかも）
　　お兄ちゃん!!
ごくあく善使徒「・・・」
魂「大丈夫!?」
ごくあく善使徒「何が起きたんだ？」
魂「お兄ちゃんを瞬間移動させただけだよ」
ごくあく善使徒「な、」
ごくあく善使徒「何でもありじゃん、ずるいよ」
魂「えぇ・・・」
ごくあく善使徒「とにかく魂に怪我がなくてよかったよ」
魂「・・・」
ごくあく善使徒「今日は帰ろう。 もう一人で飛び出したりするなよ」
魂「モンスター・・・」

〇明るいリビング
ごくあく善使徒「ってわけで死にかけたけど 魂のチートで事なきを得たよ」
サルゥエル「ヨシトと魂に怪我がなくてよかったです」
えんまん「運転手が地獄に来たら 私情マシマシで裁こ」
ごくあく善使徒「父さん、母さん・・・」
ごくあく善使徒「なんやかんやで息子を 気にかけてくれてたんだね」
サルゥエル（いま死なれてしまうと、 とても天使にはなれないでしょうからね）
えんまん「今はまだ早すぎるんだよね」
ごくあく善使徒「あ、勘違いだったかも」
ごくあく善使徒「何はともあれ、魂を守れてよかったよ」
魂「・・・」
魂「実際、どうとでもできたから お兄ちゃんが無駄死にするところだった」
ごくあく善使徒「あーこの家族おしまいだわ」
ごくあく善使徒「さっさと天使か悪魔にならねば・・・!!」