闇鍋ショートショート

セーイチ

写真撮影(脚本)

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セーイチ

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〇古書店
ナビゲーター「いらっしゃいませ」
ナビゲーター「闇鍋ショートショートへようこそ」
ナビゲーター「私は当館のナビゲーター、名前はないのでお好きにお呼びください」
ナビゲーター「ここは一人の創造主が、ただただ書きたいものを投下していくゴミ箱のような場所」
ナビゲーター「少しでもお客様のお暇を潰せれば何よりです」
ナビゲーター「それでは、早速今回のお話に参りましょう」

〇ファミリーレストランの店内
泉美(昔の日本には「写真に写ると魂が抜かれる」という噂話があった)
泉美(それは写真というものが一般的ではなかった、古い時代の迷信でしかない)
泉美(私は彼女を見て、そんな話を思い出した)
泉美(彼女は友人。とても優しくて良い子なんだけど、一つだけ理解できないことがある)
泉美(それは、決して写真に素顔を写さないことだ)
泉美(集合写真や防犯カメラの前では、サングラスとマスク、そして帽子を欠かさない)
泉美(逆に言えば、顔が映らなければ写真も動画もOKなのだ)
泉美(コンプレックスでもあるのかも知れないが、同性の私から見ても彼女はとても美しい)
泉美(理由を聞いても・・・)
愛理「ごめんね、何だか恥ずかしくて・・・」
泉美(・・・と、はぐらかされる)
泉美(まぁ、無理強いする気は無いんだけど、やっぱり気になる・・・)
泉美(それはまるで、写真に写ることを恐れているかのようにも見えたから・・・)
泉美(そんなわけないのに)
泉美(そんな私は、ある日「とある作戦」を決行した)

〇女性の部屋
泉美「それは難しいことじゃない、ただ自室にデジタルカメラを仕掛けただけ」
泉美「ただのカメラではなく、動いた物を自動で写す機能が付いている」
泉美「自分の部屋にカメラを置いてるだけなんだから、何も悪いことはしていない」
泉美「まぁ、後でちゃんと謝るつもりだけどね」
泉美「そんなわけで、私は彼女を部屋に招いた」
愛理「おじゃまします」
泉美「いらっしゃい」
泉美(カメラを仕掛けられていることを知らない彼女は、当然サングラスもマスクも、帽子も外す)
泉美(相変わらずの美人さんだ)
泉美(それから他愛のない話をして、ご飯を食べて、また話をして・・・)
泉美(結局、夜まで一緒に居たが・・・)
愛理「それじゃ、またね」
泉美「うん、バイバイ」
泉美(彼女は何事もなく帰って行った)

〇女性の部屋
泉美「何も起こらなかったなぁ・・・」
泉美(迷信を本気にしていた訳ではないけど、少しだけ期待していた自分もいる)
泉美「ひょっとして、彼女は幽霊に取り憑かれてカメラに顔が映らないとか?」
泉美(そう思ってカメラの画像を確認するが、どの画像にも彼女は鮮明に映っている)
泉美「本当に写真が嫌いなだけだったんだな・・・後で消しておこう」
泉美「まぁ、もしも本当にカメラを怖がっているなら「何ともないよ」って教えてあげられるしね」
泉美(私は彼女に対して申し訳なさを覚えながら、撮影された画像を眺めていた)
泉美「ん?」
泉美(その時、ふとした違和感に気が付く)
泉美「今、画像の中の彼女が動いたような・・・」
泉美「・・・これ動画だっけ?」
泉美(そう思って確認するが、静止画に間違いない)
泉美(しかし・・・)
泉美(画像をジッと見つめていると、彼女はユックリとカメラの外にいる私の方に振り向いて・・・)
泉美(ニッコリと笑った)
泉美「ひっ!!!」
泉美(私は悲鳴を上げながらも、カメラの中の彼女から目を離せなかった)
泉美(そして、口元が僅かに動く)
愛理「あ・り・が・と・う」

〇血しぶき
  その瞬間、私はある逸話を思い出した
  それは日本の話じゃなかった気もする・・・
  写真に写るということは、この世にもう一人の自分が生まれたことを意味する
  写真の自分は稀にドッペルゲンガーとなり、現世の自分と入れ替わろうとするのだと
  それを防ぐ方法は、顔を写真に写さないことだった・・・

〇女性の部屋
泉美「ひ・・・ひぃいいい!!!」
泉美(私は慌てて全ての画像を消し、怖くなって布団に潜り込んだ)

〇ファミリーレストランの店内
泉美(次の日から、彼女はサングラスもマスクも、そして帽子も身に付けなくなった)
泉美(そして、彼女は私を見る度・・・)
泉美(ニコリと微笑む)
泉美(その度に画像の彼女を思い出し、背筋が凍る思いだった)
泉美(今私の目の前に居るのは、私の知っている彼女なの?それとも・・・)
泉美(そんなことを考えている私に、彼女は微笑みながらスマホのレンズを向けた)
愛理「はい、チーズ♪」

〇黒
  それが現世の人間として覚えている、私の最後の記憶だった・・・

〇古書店
ナビゲーター「お伽噺や逸話、都市伝説などは世界中に存在してますが」
ナビゲーター「実は類した物語も多いのです」
ナビゲーター「そして、その真実はいつも闇の中にあります・・・」
ナビゲーター「因みに、実世界でも写真に写りたがらない方はいらっしゃいます」
ナビゲーター「皆さんは、決して無理に撮影しようとしないであげてくださいね」
ナビゲーター「さて、今回のお話はいかがでしたか?」
ナビゲーター「少しでもお楽しみいただけましたら幸いです」
ナビゲーター「それでは、またのご来訪を心よりお待ちしております」

コメント

  • ナチュラルな文体での物語展開のラストがゾワッと、、、不思議な恐ろしいホラーですね。
    私自身も、写されることが苦手なのですが、結果としてアレなことを回避できているのかもって思ってしまいました。

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