爆破“後“家族

なし

家族井戸端会議(脚本)

爆破“後“家族

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〇空き地
ないと(父)「なんじゃこりゃあああああ」
みよ(姉)「土・天・海・冥の魔力による四重結界を試みたが数瞬おそかった」
ないと(父)「みよ! 相変わらず会話は通じないが無事でよかったサ」
あるま(次男)「遅かったじゃないか我が父よ」
ないと(父)「完全に理解したのサ ついに爆破したんだなワシの、ワシらの新築を・・・」
ないと(父)「あははははははは」
みよ(姉)「おお父よこの空間の魔素に耐えられなかったか」
あるま(次男)「ちがうと思う」
みよ(姉)「見抜いていたか弟よ。 そう。これは貴様の罪──」

〇綺麗な一戸建て
  城東家
  5時間前──

〇おしゃれなリビングダイニング
あるま(次男)「ネコが欲しい」
ないと(父)「ネコ?」
あるま(次男)「通知表が満点だったから」
めあ(母)「昨日までザリガニほしいって言ってましたよね」
あるま(次男)「生後1週間以内のイリオモテヤマネコがほしいよお血統書付きのアルビノの」
ないと(父)「おとぎ話の王子でもないと所望しないネコ」
みよ(姉)「貴様も覚醒したか、眠っていた“王の血“が・・・」
ないと(父)「みよ、頭が働いてない。ちゃんと寝た方がいいサ」
みよ(姉)「そーそーマジ寝てないわ〜オレってば夏休みだからって3徹してるわ〜」
めあ(母)「徹夜!? いけませんよ 徹夜なんてしたら──」
めあ(母)「背が伸びなくて立派なママさんバレー選手になれないでしょうッ!!」
ないと(父)「ママさんバレーに命賭けすぎなのサ」
めあ(母)「プロですから。これでも中学生の頃からプロママさんバレー選手として活躍してますから」
ないと(父)「う〜ん刑事としては伴侶に不正を誇られると困るのサ」
めあ(母)「刑事ってあなた仕事サボりすぎではないですか? その格好は何ですか!」
めあ(母)「妻はこうして常にユニフォームに身を包んでいるというのに!」
ないと(父)「クールビズなのサ」
めあ(母)「さしづめ南国カフェにでも行こうとしているのでしょう」
ないと(父)「なぜわかった、刑事の素質がある 喫茶店行かないとやる気出せないのサ」
めあ(母)「茶しばきすぎでしょうしばきますよ」
ないと(父)「暴力は犯罪サ」
ないと(父)「あとあの、今更言いにくいんだけどママさんバレーは職業では──」
ないと(父)「いけない! ワシは無邪気さからその真実に踏み込み、妻殺しの汚名を被りかけたことがあるッ!」
あるま(次男)「おい──」
あるま(次男)「お前ら僕のことほっときすぎ!! 泣く子を黙らせすぎ!!」
あるま(次男)「仕方ない。今日中にネコを用意できなければこの家を──爆破する!」
ないと(父)「それウソでも犯罪だからやめてほしいのサ」
みよ(姉)「マナ消費が激しい。しばしの眠りに就くとするか」
めあ(母)「ママさんバレーは職業ではない・・・? そんなはずは──確かめる術は、そう、練習しかないのです」
あるま(次男)「脅迫が完璧にスルーされた。日常のひとコマとして」
ないと(父)「あるま・・・365日中365日爆破予告するのは流石に悪手サ」
あるま(次男)「よろしい」

〇空き地
  現在
みよ(姉)「我が白き鱗粉によって鎮火したが──」
あるま(次男)「消化器ね」
めあ(母)「なんですかこれは。シャワーを浴びようと全速力で帰ってきたのに」
しょうご(長男)「プールにはシャワーがあったぜ」
しょうご(長男)「あるま、一つ残らず爆破したのか?」
あるま(次男)「約束だから」
めあ(母)「ああ、約束は絶対に守るという私の教育が悲劇を」
しょうご(長男)「中学からずっと大好きなママさんバレーで身分詐称してたんだけど、今はそんな矛盾も些細に思えるぜ」
しょうご(長男)「どーすんだよ! 全部燃えちゃったじゃねーか」
ないと(父)「喫茶店のミニチュア模型も、喫茶店に合うBGMプレイリストも、全部燃えた! あはははは」
しょうご(長男)「いや金庫とか、通帳とか、契約書とかさあ」
あるま(次男)「もちろん全てそのまま爆散させた」
みよ(姉)「魔王──!! ならば舞おう、我が最後のバレエ!」
めあ(母)「いいアイデアですが、折角広い庭ができたので我が家はバレーコートとして接収します」
ないと(父)「そっか。家がなくなったなら、憧れの野外喫茶を開けばいいのサ!」
しょうご(長男)「俺は主人公だから平気だが、元々おかしなこいつらはショックに耐えきれないんだな」
しょうご(長男)「──!! 腹が、痛え!」
あるま(次男)「兄さんは主人公じゃない 病弱ヒロインだ」
しょうご(長男)「なん・・・だと・・・」
あるま(次男)「主人公は僕だ。あと1時間で爆発する兄の腹のために、完璧なお金稼ぎを考えてある」
ないと(父)「どうやって!?」
あるま(次男)「賞金稼ぎ」
しょうご(長男)「徹底してアウトロー寄りじゃねーか」
みよ(姉)「アウトロー、いい響きだ。深淵より囁いてくる」
ないと(父)「指名手配犯を捕まえるってことなのサ?」
あるま(次男)「まず、あんたが捜査情報を漏洩する。それを元に姉の魔眼でサーチし、ママさんバレー仕込みのスマッシュでKOだ」
めあ(母)「OKです一肌脱ぎましょう」
ないと(父)「無理すぎる。思い付きで喋っているとしか思えないサ」
ないと(父)「あ、ああああああ」
ないと(父)「カフェインで誤魔化していたがツッコミ役に回るとシラフに戻って──現実に耐えきれない!!」
ないと(父)「頭が! バクハツすりう」
みよ(姉)「──爆ぜろ!」

〇空き地
ないと(父)「はあ、はあ、はあ。ここは?」
あるま(次男)「やっと気が付いた」
ないと(父)「あれ? あるまが家を爆破したのは、夢──?」
めあ(母)「カフェイン中毒になってしまったあなたを正気に戻すために、みんなで一芝居打ったというわけです」
ないと(父)「心配かけたのサ。みんなで家に入って一服──」
ないと(父)「ってやっぱり家が無い!」
あるま(次男)「言えないこともある。癒えない傷もある」
ないと(父)「家無いことはその次元じゃないサ」
めあ(母)「よかったです。やっぱり誰も、この状況でこの相手にツッコミ役を担いたくないですから」
みよ(姉)「帰る家を失い、勇者は出立する──」
めあ(母)「気絶している間に洗脳されて、みよはやる気になってしまいました」
ないと(父)「そんなに長く気絶してたのサ? しょうごはどうなったのサ?」
あるま(次男)「病院送りにしてやった」
めあ(母)「119です」
ないと(父)「誰も付き添ってないこととかワシも運んで欲しかったとか──だめだ正気に戻るとまた頭が割れそうに痛い!」
ないと(父)「賞金稼ぎの旅に出れば、色んな場所の喫茶店に行けるサ」
めあ(母)「この一大事に思考を放棄してはだめでしょう!」
めあ(母)「うっ、たしかに正気になると頭痛が──」
めあ(母)「スマーーーーッシュ!!」
あるま(次男)「決まりだね。みんなで協力してお金を稼ぐ。それしかないんだ」
あるま(次男)「僕たち家族なら、ゼッタイうまくいくよね!」

〇手術室
しょうご(長男)「あるまは根本的なところでピュアすぎる。危険だ」
しょうご(長男)「やっぱり俺が主人公を取り戻す! 絶対に家を建て直してやるぜ!」

コメント

  • お父さん「ないと」とお母さん「めあ」が一緒になるとナイトメア(悪夢)だし、スペイン語やイタリア語でアルマは「武器、兵器」の意味だから、悪夢から兵器が生まれたんだな〜と納得しちゃいました。名前が既にこの家族の行く末を暗示していたんですね。

  • 家爆発させるって冗談で言うならまだしも(冗談でも怖すぎる発言ですが😂)本当にやっちゃうなんて、怖すぎる子供ですね😂
    家族みんな我が家が無くなったんだから、もっと焦ってください😂
    長男だけは、まだ少しまともで良かったです。笑

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