家族6人でやっと一人前!(脚本)
〇明るいリビング
ママ「みんな、注目~!」
ママ「今日、近くのアパートの大家さんから相談がありました」
ママ「なんでも、アパートの住民が出したゴミを漁っている人がいるそうです」
ママ「みんなで犯人をつきとめましょう!」
パパ「おお、久々の依頼だな。腕が鳴るなぁ」
パパ。
普段は普通のサリーマン。
変装が得意。
黒一点だがあまり出しゃばらず、みんなを見守っている。
ママ「ふふ、あなたの出番があるかは、わかりませんけどね」
ママ。
在宅でウェブデザイナーをしている。
特技は声真似。
ドがつくほどのおっちょこちょい。
一夏「住民のゴミを漁るなんて、ストーカーかな?」
長女・一夏(いちか)。
小さな建設会社の事務員。
特技は目の良さを活かした観察・洞察力。
ママよりしっかり者。
冬二「どんなやつでも、俺が吹っ飛ばしてやるよ!」
次女・冬二(とうじ)。
高校3年生。
特技は格闘技。運動神経の塊。
がさつだが女子にモテる。
三春「わたしでも何か役に立てることあるかな・・・?」
三女・三春(みはる)。
中学1年生。
特技は圧倒的な聴力。
かなりの引っ込み思案だが優しい。
秋四「ゴミを移動させたら、あたしがすぐ気づけるね!」
四女・秋四(あきよ)。
小学2年生。
特技は瞬間記憶。
探偵としての能力は家族の中で随一。
ママ「まあまあ、みんなそう気負わないで」
ママ「私たちは家族全員でやっと一人前の探偵なんだもの」
ママ「それぞれができる範囲で頑張りましょ!」
はーい!
〇二階建てアパート
──翌日──
秋四(ママが言ってたアパート、ここだ)
秋四(ゴミ置き場はしょーめん・・・)
秋四(普段はカギをかけてて、ゴミのかいしゅーびの前日の夜だけカギを外すんだっけ)
秋四(確かにカギがかかってるな・・・)
秋四(一応今のじょーきょーを記憶しとこ)
秋四(もうゴミがあったら、漁られたかどーか、あとから見て確認できるのにな・・・)
秋四(・・・って、あれ?)
秋四(おーやさんは、なんでゴミを漁られたってわかったんだろ?)
〇二階建てアパート
──数日後──
一夏(今日朝一でゴミが回収されるって聞いてたから、気になって来てみたけど)
一夏(いくつかのゴミ袋の口が開いてる・・・)
一夏(どうして漁られたとわかるのか、アキちゃんが不思議がってたけど)
一夏(これなら納得だわ)
一夏(・・・でも、全部の袋が開いてるわけじゃないのね)
一夏(見た感じ、女性が出したゴミの袋だけ開けられているような・・・)
一夏(もしかして、ゴミを出しているところを観察してる!?)
〇二階建てアパート
三春(わたしも一応来てみたけど・・・)
三春(・・・・・・)
三春(ナツ姉は、ゴミを出す人を見張ってる可能性を指摘してたな・・・)
三春(でも、それだったら同じアパートの人がいちばん怪しいよね)
三春(もしかしたら今も見張ってるかも・・・)
三春(ちょっと音を探ってみようかな)
三春「・・・・・・」
三春「あれ?」
三春(遠くから聞こえる生活音に交じって、何か近くからも・・・)
三春(もしかして、ゴミ置き場の中から!?)
〇二階建てアパート
──翌朝──
冬二「三春、ゴミ置き場の中から音がするって?」
三春「う、うん・・・すごく微弱な、何か小さな装置が作動してるような音なんだけど」
秋四「あれ?」
秋四「待って、ゴミ置き場の位置が前とちがーう!」
一夏「それほんと? アキちゃん」
秋四「ぜぇったいそう! あとで役に立つかもと思って、ちゃんと憶えておいたもん!」
秋四「前見た時よりちょっと、右に寄ってる」
冬二「こんなに重そうなのを、誰かが動かしたっていうのか?」
冬二「ゴミを回収する時に、たまたまぶつかったとかじゃないのか?」
三春「・・・あれ?」
三春「でも、昨夜聞こえた音が聞こえなくなってるような・・・」
一夏「つまり、こういうことじゃない?」
一夏「何かの装置の存在を、ハルちゃんに気づかれたと思って慌てて外した」
一夏「もし中に設置してあったらカギがないと取り出せないから、ゴミ置き場の裏に設置してあったのかも」
一夏「それを外すためにゴミ置き場を動かしたから、位置がズレたのよ」
冬二「な、何かの装置ってなんだよ?」
秋四「とーちょーき、かな」
一夏「多分ね」
冬二「ハァ!?」
一夏「最初はゴミ捨てに来る人を誰かが見張ってる可能性を考えていたけど」
一夏「盗聴器なら見張る必要もないものね」
冬二「いや待てよ」
冬二「盗聴器じゃ誰が来たかまではわからないから意味なくね?」
冬二「犯人が特定の誰かのゴミを漁ろうとしてるならさ」
三春「ううん・・・音だけでも結構わかるよ」
冬二「へっ? 何も喋らなくても?」
三春「喋らなくても、近づいてくる足音とか、身につけてるアクセの音とかで・・・」
秋四「さすが音魔人!」
一夏「冬二、ちょっとゴミ置き場を動かしてみてくれる?」
一夏「何か痕跡が残ってるかも」
冬二「おっけーい!」
冬二「よっ、と・・・」
一夏「・・・ビンゴね、ゴミ置き場の裏側に両面テープの跡があるわ」
秋四「あたしたちが調べてるって気づいて、急いでとったのかな~?」
一夏「ハルちゃん、盗聴器(仮)の音を追うことはできる?」
三春「ほんとに小さな音だから、ある程度至近距離じゃないとさすがに・・・」
一夏「だよねぇ」
秋四「女の人を狙ってるのは確かっぽいんだよね?」
一夏「開いてた袋が、女性のものばっかりだったからね」
冬二「さすがナツ姉! よく見てんな」
一夏「でも手詰まりになっちゃったよ」
秋四「ねーねー」
秋四「じゃあやり返してみる?」
一夏「その手があったか」
冬二「え? どゆこと?」
秋四「犯人もどーせまた来るでしょ」
秋四「だから今度は、こっちがとーちょーきを仕掛けておいて~」
一夏「ハルちゃんに音をチェックしておいてもらえば、犯行現場をおさえられる!」
三春「それなら確かに、わかりやすいかも」
三春「ゴミ捨て場まで来て、わざわざゴミ袋を開けてガサゴソする人なんて他にいないと思うし・・・」
冬二「じゃあ俺はいつでもやっつけられるように、準備しておけばいいんだな?」
〇二階建てアパート
──盗聴器を設置して、数日後──
──早朝──
冬二(ハルから言われて急いで来たけど、間に合うか!?)
冬二「あっ!!」
冬二「待てコラ、おまえが犯人じゃろうが~~~~!!!!」
〇明るいリビング
冬二「わりぃ、結局逃げられちまった・・・」
冬二「でもほら、そいつが漁ってたゴミ袋は確保できたんだ」
冬二「開いてた袋はこれだけだったから、ターゲットはこのゴミ袋の持ち主で間違いなさそう」
ママ「じゃあママが大家さんに持ち主を確認してみるわね」
冬二「持っていく途中で落とすなよ・・・」
パパ「パパも行くから平気さ」
パパ「そろそろ出番が来たようだからね」
〇二階建てアパート
〇アパートの玄関前
「きゃあああっ!?」
「は、放して・・・っ」
そこまでだ!
犯人?「何ぃ!?」
冬二「今度こそたっぷりお見舞いしてやるよ!!」
犯人?「うわぁぁあああ」
冬二「ふぅ~・・・無事捕縛、っと」
「あ、ありがとうございます──」
ママ「──なんてね♪」
???「完全に騙せていたようだな」
パパ「パパの変装も、まだまだいけそうだ」
冬二「何回見ても詐欺だよ・・・」
〇明るいリビング
ママ「──と、いうわけで」
ママ「みんなのおかげで狙われている人がわかったから」
ママ「その女性に変装したパパが、わざと襲われるような隙をつくって」
ママ「ママも声真似で友情出演!」
ママ「その結果、ストーカーは無事に捕まえられたのでした」
ママ「みんな、ありがとう! そしてお疲れさま」
一夏「みんなの能力が、うまくハマったね」
冬二「ストーカー、許すまじ!」
三春「わたしも役立ててよかった・・・」
秋四「とーちょーきの存在に気づいたのがおっきかったね!」
パパ「パパも最後に出番があってよかったよ」
ママ「ママは──」
ママ「──実はママ、みんなに謝らないといけません」
パパ「え?」
ママ「犯人が漁っていたゴミ袋は誰のだったのかを、大家さんに確認に行ってわかったんだけど」
ママ「実は大家さん、ただ世間話をしただけで、捜査を頼んだつもりはなかったんですって・・・」
ええーっ!?
ママ「ほんとごめんなさい! おっちょこちょいで・・・」
一夏「じゃあ私たち、頼まれてもいないのにストーカーを見つけて解決しちゃったんだ」
冬二「まあいいじゃん? それで被害者の人とか大家さんは助かったんだし」
三春「そ、そうだよね。放っておいたらもっと酷いことになったかもしれないし・・・」
秋四「今回もぶじにご近所さんを守れたってことで!」
パパ「一件落着、だね!」
若草物語の探偵バージョンみたいで面白かったです。怪人二十面相やルパンも真っ青なパパの変身能力の高さに一番ビックリして声が出ました。性別や年齢の壁を簡単に超える技術がすごい。
ミステリであり、ほのぼの家族モノでもあり、すっごく面白かったです!
家族それぞれが、自身の得手不得手を認識して、それを噛合わせるように協力するお話って、とても気持ちがいいですね!
最初コメディかな?と思っていたんですが、ちゃんとミステリしてた辺り、さすが咲村先生でした!
このほのぼのミステリならご近所の小さい事件から、学校での謎まで、ジュニア小説みたいになりそう。続編読みたいです!