ゾンビ拾ってきたよ!(脚本)
〇草原の道
テキーラ(・・・・・・)
”ムシャムシャ・・・”
テキーラ(・・・もっと・・・人間の肉・・・)
ミモザ「ねぇ」
テキーラ(・・・??)
ミモザ「何してるの?」
テキーラ(・・・いい匂い・・・)
ミモザ「あそぼ」
テキーラ(・・・うまそう・・・)
ミモザ「おいで」
テキーラ(・・・?)
〇ファンタジー世界
「ひえええええええッッ」
〇城の廊下
おじじ「ミモザ様! なんて物をひろってきたんですか!!」
テキーラ(・・・・・・)
ミモザ「ゾンビ!」
おじじ「見ればわかります!」
ミモザ「1人で寂しそうだったから連れてきたの」
ミモザ「今日から一緒に暮らすからよろしくね」
おじじ「よろしくねって言われましても」
ミモザ「おいでテキーラ 部屋に案内してあげる」
テキーラ(・・・腹減った・・・)
おじじ「テキーラなんて名前まで付けて・・・」
おじじ「あーなんてことだ・・・ 天国へ行った亡き国王に顔向けできない・・・」
〇貴族の部屋
ミモザ「みんな~家族が増えたよ~」
ジン(お?)
ウォッカ(ん?)
テキーラ(・・・・・・)
ジン(ゾンビじゃん・・・)
ウォッカ(ゾンビだな・・・)
テキーラ(・・・・・・)
ジン(まったく姫は何を考えているんだ)
ウォッカ(俺たちがとやかく言う筋合いはない)
ジン(じやあお前、コイツと仲良くできるか?)
ウォッカ(・・・知るか)
ミモザ「テキーラおなか空いてるでしょ? なに食べたい?」
テキーラ(・・・人間の肉・・・)
ミモザ「パン?」
テキーラ(・・・目の前に人間の肉・・・)
ミモザ「フルーツとか?」
テキーラ(・・・うまそう・・・)
ミモザ「わかった、もう全部持ってくる!」
テキーラ(・・・あ・・・)
ジン(大丈夫かコイツ)
ウォッカ(姫はオレたちが守ろう)
〇城の廊下
「あ、ミモザ様! どこへ行かれるんですか?」
ミモザ「んとね、テキーラにご飯持っていくの」
おじじ「ミモザ様、今晩隣国の国王にお食事に呼ばれているのを覚えていますか?」
ミモザ「行かなきゃダメ?」
おじじ「ダメです」
おじじ「まだ未熟なミモザ様を全力でサポートすると仰ってくれているんです」
おじじ「そんな方からのお誘いを理由もなく断るべきではありません」
ミモザ「わかったよ・・・」
ホーホーホーホーホー
ウォーーーーーン
ミモザ「え?」
おじじ「何事だ?」
テキーラ(・・・この匂い・・・)
ジン(やっと止まった・・・)
ウォッカ(勝手に出ていくなよマジでさぁ・・・)
ミモザ「テキーラ! ご飯待てないの? 一緒に行く?」
おじじ「ミモザ様、あまりゾンビを連れて城内をウロウロされては困ります」
ミモザ「大人しいからいいじゃん」
おじじ「そうですが、 もし城外に変な噂でも流されたら」
おじじ「ミモザ様は今大事な時期なんですよ」
ミモザ「・・・おじじのケチ」
おじじ「何とでも言ってください すべてはミモザ様のためです」
ミモザ「わかった じゃあおじじが食べ物持ってきて」
おじじ「かしこまりました 夜までにちゃんと出かける準備しておいてくださいよ」
ミモザ「はーい テキーラお部屋戻ろ」
ウォッカ(なんだか面倒なヤツが来たな)
ジン(まったくだ アイツが何を基準に動いているのかサッパリわからん)
テキーラ(・・・人間の肉・・・)
〇貴族の部屋
テキーラ(”ムシャムシャムシャムシャ・・・”)
テキーラ(うん・・・まぁ・・・うん・・・)
ミモザ「ジン、ウォッカ、 今晩わたしお出かけするの だからテキーラのことよろしくね」
ジン「ウォーーン」
ウォッカ「ホーホーホー」
ミモザ「あなた達はお兄さんなんだからね よろしくね」
ジン(お兄さん・・・)
ウォッカ(・・・・・・)
〇ファンタジー世界
おじじ「さ、行きましょうかミモザ様」
ミモザ「あーあ、行きたくないなぁ」
おじじ「まだそんなこと言って お父様とお母様が天国から見ていますよ」
ミモザ「わかりましたー 行こ」
〇貴族の部屋
テキーラ(”ムシャムシャムシャムシャ・・・”)
テキーラ(・・・うーん・・・)
ジン(よく食うなコイツ)
ウォッカ(図々しい)
ジン(まぁでも姫様が連れてきたんだ あたたかい目で見てやれ)
テキーラ(・・・人間の肉・・・)
ジン(おい、また出ていったぞ)
ウォッカ(やれやれ)
ジン(追うか)
ウォッカ(いや さすがに城外まで出ていかないだろ)
ジン(もし出ていったら?)
ウォッカ(アイツが来てまだ一日だ 今ならそこまで悲しむこともないはずだ)
ジン(アイツのこと嫌いか?)
ウォッカ(アイツの兄さんなんかになりたくないだけだ)
〇巨大な城門
テキーラ(・・・人間・・・匂い・・・どこ・・・)
〇西洋の城
〇城の会議室
ギムレット国王「ミモザ女王、お味はいかがかな」
ミモザ「美味しいです」
バレンシア王妃「たくさん食べてね 一国の王になったんだから、食べて元気つけないと」
ミモザ「・・・はい」
ギムレット国王「困ったことがあったらなんでも言っておくれ」
ギムレット国王「恋人が欲しくなった時とか」
バレンシア王妃「ちょっとアナタ ミモザ女王にはまだ早いわよ」
ギムレット国王「けど実際一人でやっていくのは大変だろう」
ギムレット国王「よその国の連中がここぞとばかりに狙いに来るかもしれし」
ギムレット国王「もしくは王朝の誰かがクーデターを起こして王の座を狙っているかもしれんからな」
バレンシア王妃「そこを守ってあげるのが私たちじゃない 違いますか?」
ギムレット国王「・・・そうだった ミモザ女王、余計なこと言ってすまない」
ミモザ「いえ・・・ 私は大丈夫です」
ミモザ「私には、家族がいるから」
ギムレット国王「家族?」
ギムレット国王「ミモザ女王、あなたのご家族は──」
バレンシア王妃「アナタ、この話はここまでにしましょ」
ギムレット国王「・・・そうだな よし、食べよう食べよう」
ミモザ「・・・・・・」
〇月夜
ワォーーーーーーン!
〇貴族の部屋
ジン(今日はやけに月が輝いている)
ウォッカ(姫とはじめて出会った時も、こんな月の夜だった)
ジン(何してた?)
ウォッカ(戦争で弟を亡くして、生きる気力を失っていた)
ジン(ツラい話だ)
ウォッカ(俺の弟は、とっても可愛くて頭が良かった)
ウォッカ(兄として、自慢の弟だった)
ジン(・・・俺も、嫁を戦争で亡くした)
ウォッカ(それは気の毒に)
ジン(一人さびしく歩いているところを姫様に見つけてもらった)
ウォッカ(俺もだ あのまま一人だったら、気が狂って崖から飛び降りていたと思う)
ジン(でもお前空飛べるじゃん)
ウォッカ(・・・それはそう)
ジン(・・・お前さ)
ウォッカ(ん?)
ジン(気になってるんだろ、あのゾンビのこと)
ウォッカ(・・・別に)
ジン(俺は姫が悲しむ姿を見たくない)
ジン(あの時、草原の真ん中で俺の頭を撫でてくれた時、俺は誓った)
ジン(このいのち尽きるまで、俺は姫に仕える)
ウォッカ(あ、おい!)
ウォッカ(ったく・・・俺だって気持ちは同じだっつーの)
「ホーホーホー!」
〇草原の道
テキーラ(・・・人間・・・あの匂い・・・どこ・・・)
〇巨大な城門
(おいどうするんだ、城の中にいないぞ)
ウォッカ(つべこべ言わずにとっとと探せ!)
ジン(お前が言うな・・・)
〇草原の道
テキーラ(・・・この匂い・・・人間・・・あの匂い・・・)
ジン(おいいたぞ、あれ!)
ウォッカ(あぁ、あのゾンビだ!)
”ワォーーーーーーーーーン”
”ホーホーホーホーホーホー”
ジン(どこまで行く気だ)
ウォッカ(おい見ろよ、あの先に見える城)
ジン(ん?)
〇西洋の城
〇宮殿の部屋
ミモザ「綺麗な月・・・」
ミモザ「みんないい子にしてるかな・・・」
ミモザ「会いたいな、みんなに・・・」
ミモザ「一人はさびしいよ・・・」
〇原っぱ
ジン(おいあのバルコニー! 姫だ!)
ウォッカ(姫・・・泣いてないか?)
ジン(目よすぎだろ)
ウォッカ(おい、姫のとこまで行くぞ)
ジン(どうやって お前は行けたとしても、俺とあのゾンビは──)
ウォッカ(俺のこのでっかい背中に乗れ)
ジン(いやちっちゃ! お前の背中ちっちゃ!)
ウォッカ「しっかり捕まってろよ このままあのゾンビを・・・」
テキーラ「・・・?」
ウォッカ(よし!)
ジン(ナイスキャッチ!)
ウォッカ(んぐッ──重いッ──足が取れそうだ!)
ジン(おい暴れるな! 落ちる! 危ない!)
ウォッカ(ぅおおおおおおおおおおお!)
ウォッカ(姫ェエエエエエエエエエ!)
〇宮殿の部屋
ミモザ「え、ウソ──」
ミモザ「みんな・・・!」
ジン(あっぶねぇ・・・死ぬかと思った)
ウォッカ(ハァハァハァハァハァ・・・)
ミモザ「ジン! ウォッカ! 来てくれたのね!」
ミモザ「・・・あれ? テキーラはいないの?」
ジン(・・・え?)
ウォッカ(・・・・・・あ)
〇西洋の城
テキーラ(・・・??????????)
〇洋館の玄関ホール
ミモザ「こっちだよ 音立てちゃダメだよ 静かにね」
ミモザ「テキーラ、本当にどこも痛くない? 大丈夫?」
テキーラ(・・・この匂い・・・)
ジン(コイツがゾンビで良かった)
ウォッカ(まったくだ 本当に不死身なんだな)
ミモザ「そうだ、みんなおなか空いてない? こっそり取りに行こっか?」
ジン(いやいや姫、ここは他人のお城)
ウォッカ(さすがにそれは・・・なぁ?)
ミモザ「テキーラ、おなか空いたよね?」
テキーラ(・・・俺好き・・・この匂い・・・)
ミモザ「よし、じゃあ行こう!」
ジン(まったく、ホント怖いもの知らずだな)
ウォッカ(ま、そこに惹かれたんだけどな)
ミモザ「なんか盗賊みたいだね、私たち」
ミモザ「フフフ、楽し♪」
テキーラ(・・・食べたい・・・)
Fin
ジンとウォッカ最初は可愛いなあと思っていただけだったけど、2人で深い話をしていたところとかが、何だか絆を感じて素敵なコンビだなあとほっこりしました😌
ゾンビは、すぐにでも人間を食べたいだろうに、ミモザに手を出さないところは偉いと思いました😂
これはもう「ジンとウォッカの恩返し(ときどきゾンビ)」と言ってもいいですね。鳥と犬が好きな私にとって至福の展開でした。空気を読んで姫にノータッチのゾンビ、長生きしそうですね。