エピソード17(脚本)
〇通学路
ザアーーー
マダム「雨も結構降っているし、 急がなくちゃ」
ブロロロー
バイクが近づいてくる。
マダム「きゃっ」
サッ
マダム「あっ、私のカバンが!!!」
マダム「誰かーーーーー! その中には、娘の入院費が・・・」
〇公園の入り口
ザアーーー
オト「雨だよアニキ。 腹減ったよー!」
アニキ「しょうがねえだろ、 もう50円しか、持ってねえんだからさ」
アニキ「傘もねえから、 その辺のビニールと ダンボール被ってるだろ」
オト「アニキの即席傘すげーよ 頭いいー」
ブロロロロー
黒パーカー男「あっ」
オト「すげえ速度で バイクがツッこんできた!!! あぶねえ!!!アニキ!!!」
ドンッ
ガシャーーーーン。
派手にバイクが転倒した。
アニキ「おうっ、あんちゃん!!! 痛えじゃねえか!!! 骨折れちまっただろ!!! 金払えよコノヤロー!!!」
ダダダダダダ
オト「アニキ!大丈夫か!」
アニキ「俺の身のこなしを知ってるだろう? アイツ公園の入り口の柱に、 自分でぶつかりやがったぜ!」
オト「アイツ、走って逃げちまったよアニキ。 なんか落としていったよ」
オト「わっ、 すげぇ大金が入ってる!!! 美味いもの食えるぜ! やったぜアニキ!!!」
アニキ「よせ、オトウトよ。 そんな大金、すぐ足がついちまう。 どうせバイクも盗難車だろ。 壊れてるし、いらねーや」
オト「足がつく? アニキ、足はちゃんと地面についてるよ?」
アニキ「違げーよ、 すぐ捕まるってことだよアホゥ!」
オト「そっか、頭がいいな、アニキは〜」
オト((アニキは頭いいのに、 貧乏でオレの為に 早くから働いて苦労したんだ。 オレ、アニキのために、なにかしてやりたい。))
オト「オレ、晴れたらアルミ缶めっちゃ拾うよ!!!」
アニキ「あ、あぁ」
〇街中の交番
マツナガ「ふぅ。 最近ひったくりが多いなぁ。 今週で、もう三件目だ」
オト「アニキぃ。 どうします?このバッグ。 持ってきたは、いいけど オマワリがいますぜ」
アニキ「交番なんだから オマワリがいて当たり前だろ」
アニキ「あれは?」
マダム「バイクに乗ってた男に、 バッグを盗まれてしまって・・・」
マツナガ「特徴は覚えていますか?」
マダム「雨が降っていて傘をさしていたので、よく見ていなかったんです」
マツナガ「おそらく、バイクは 公園前で事故を起こし、 放置されていたバイクなのでしょう。盗難届が出ていました。」
マツナガ「その後、走って逃げたようですね・・・」
マダム「どうしましょう。 あのバッグには、 入院中の娘の入院費が入っていたのです。 あれがないと困ります」
マダム「娘はエリーと言います。 ○○病院に入院していて、 明日には緊急手術をしないといけなくて」
マダム「病院に手続きと、 費用を届けている最中だったのです。」
マツナガ「それはお気の毒に・・・ 犯人は私どもが全力で探しますね」
マダム「よろしくお願いいたします」
オト「アニキ・・・今の話を聞いた?」
アニキ「あぁ聞いた、間違いねえな。 バッグの持ち主だろう」
アニキ「バッグに書類が入ってたからな。 さて、どうするかな・・・」
〇奇妙な屋台
店主「雨も上がったわね」
謎マッチョ「そうですね。 ワタシは、周りの掃除をしてきます」
謎占い師「じゃあ私は、仕込みの準備を。」
店主「ありがとうねぇ〜 じゃあ美味しいもの、作ろうかしら」
オト「アニキ〜 すげぇいい匂いがする〜」
アニキ「しょうがねえな〜」
アニキ「おい、親父!」
店主「こんにちは。 ちょっと〜「親父」は、 ないんじゃな〜い。 せめてお兄さんて呼んでよ〜」
オト「いい匂いがする〜 それ食わしてくれよ〜 死んじゃうよ〜」
アニキ「オレいま50円しか持ってねえんだけどさ」
オト「アニキ! 金ならここにあるぜ!!!」
アニキ「アホゥ! それは人様に返すやつだろ! しかし返す方法を考えないとな・・・」
店主「あら、なんか面白そうなお話。 聞かせてくれたら、ラーメン 御馳走するわよ〜」
オト「ワァーーーーイ!!! ホント!!!タダでいいの!? 話するする!!!」
アニキ「まったくオトウトよ・・・ まぁそこがカワイイ奴だけどな」
〇奇妙な屋台
アニキ「・・・というわけでさ。 バッグは返したいんだが、 そのまま行ったら、 俺らが捕まっちまう」
オト「俺らも 結構、悪いことをしてるからね・・・」
店主「しょうがないわねぇ。 じゃあこれをお使いなさい」
店主「2着あるから。 まずは着てみてちょうだい」
オト「えーこれ? よいしょ」
キラリラリーン
オト「えっ」
アニキ「お、お前・・・?オトウト・・・?」
オト「アニキも着てみなよ」
アニキ「お、おう」
キラリラリーン
ネキ「うわぁ~ どうなってんだ、こりゃ〜」
店主「来ている間は変身できるわ。 制限時間は、一日4時間。 時間が切れたら、 効果はなくなるからね」
店主「エネルギー補給に時間がかかるのよ。 それなら、お見舞いにも行けるでしょ?」
ネキ「ありがとうよ兄貴!!!」
オト「アニキ・・・じゃない、 ネキ(姉貴)って呼ぶよ」
ネキ「わかったオトウト、いやイモウトよ。 明日にでも行こう。 じゃあまたな」
〇総合病院
オト「ここですかねアニキ」
ネキ「アホゥ、アネキと呼べと言ったろ。 それよりちゃんと バッグは持ってきたか?」
オト「ごめんよアネキ。 バッグはちゃんと中身もバッチリ!」
ネキ「よし行くぞ!」
〇病院の待合室
ネキ「すまねぇー。 ここにエリーさんが入院してるって 聞いたんだがよ!」
受付(口が悪い人ねぇ・・・)
「ご面会の方ですか?」
ネキ「あぁ、そうだ。 通しちゃくれねえか?」
「スミマセン、その方は、
ただいまICU内でして、
ご家族以外は面会を、
遠慮させていただいています。」
ネキ「なんだとぉ!!! 入れねぇって言うのか!!! バッグ持ってきてやったのによう!!!」
マダム「あの・・・ 娘のエリーのお知り合いでしょうか? あっ、そのバッグは!!!」
ネキ「俺っちが見つけたから 持ってきてやったのよ! 黒い男が持っていたぜ!」
マダム「まあ・・・まあ!! ありがとうございます!!! 中身もちゃんと!!! 本当にありがとうございます!!!」
マダム「そう、お礼をしなくては!!! お名前と連絡先を教えては、 いただけませんか!?」
ネキ「い、いやいいよ。 良かったなぁ。 それじゃ!!!」
ネキ(俺たちが捕まっちまうだろう〜)
オト「ま、待ってよう〜」
バタバタバタバタバタ
マダム「なんて 奥ゆかしい方たちなのでしょう・・・」
〇公園の入り口
ハァハァハァハァ
オト「ハァハァ」
アニキ「ま、返せたから、 良かったんじゃねえか」
オト「そうだねアニキ」
〇病室のベッド
マダム「良かったわエリー。 元気になって」
エリー「手術も成功したし、 あとはリハビリすれば 普通に暮らせるって。 早く手術できたのが、良かったみたい」
エリー「それよりママ、 そのバッグのお話をくわしく聞かせてよ。 取り返してくれたワタシのお友達が、いたんでしょ」
マダム「ええ、女のコ二人組で・・・。 クラスメイトなのかと思ったけど、見たこともなかったし、名前も聞けなかったわ」
エリー「元気になって学校行けるようになったら、みんなに聞いてみるよ。」
マダム「そうね、早く元気にならなきゃね。」
〇奇妙な屋台
ミキ「ねー誰なんだろーね」
エリー「その二人組の女のコを、 さがしているんだけど・・・」
店主「そう。 じゃあ占い師さんにでも 占ってもらったらどう?」
「それ、いいね!!! 占って〜」
謎占い師「わかりました。 占ってみましょうか。 むむむむむー」
謎占い師「いま〜 公園の〜 ベンチに〜 って、出ましたけど・・・」
「えっ!!!マジで!!! 行ってくる!!!」
バタバタバタバタバタバタ
謎占い師「まぁ〜程々に当たるんで 外れることも有りますけどね〜」
謎マッチョ「マッスルマッスル!」
〇公園のベンチ
オト「アニキ〜腹減ったよ〜 頑張って缶を集めたよ〜」
アニキ「もう少しで食べられるぞ。 これ持っていけばな・・・ ちょっと疲れたから休むか・・・」
オト「俺もうちょっと頑張ってくる。 あっちに落ちてたから」
アニキ「頑張るねぇ」
オト((すこしでもアニキのために))
ダダダダダダダダダッ
エリー「ハァハァハァハァ」
ミキ「ハァハァ、 なによ、いないじゃない。」
アニキ「なんだおまえら?」
ミキ「キャッ 何この人!!!」
エリー「あのぉ〜 この辺で女子二人組を見ませんでしたか?」
アニキ「見ねぇなぁ。」
エリー「ワタシが入院中に、 泥棒に盗まれたバッグを、取り返してくれた二人組がいたんです! お礼を言いたくて・・・」
アニキ「えっ もしかして・・・嬢ちゃん エリーって言わねえか?」
ミキ「なんでオジサン、エリーの名前を知ってるのよ?」
アニキ「そうかい。 お前さんがエリーかい。 退院したのか。 元気になって良かったなぁ」
ミキ「気味悪いよ、行こうエリー。」
パタパタパタ
エリー「ひょっとして・・・ アナタがバッグを取り返してくれた人?」
アニキ「・・・ 人違いじゃねえの?」
エリー「そう・・・。」
パタパタパタパタパタ
アニキ(オレ達は、今まで人様に迷惑をかけ、 悪いことを散々してた。 そしてこれからも、変えられないだろう。 それがオレの運命)
アニキ(でも、少しの良心は持ってるんだ。 だからアンタは、俺らには関わらないほうがいい。迷惑かけちまう。)
ミーちゃん「にゃーん」
アニキ「おぉ、よしよし。 菓子待ってるから分けてやるよ」
ミーちゃん「にゃーん」
ミーちゃんの飼い主「あらー! ミーちゃんこんなところに! はやくお家に帰るわよ!」
ミーちゃんの飼い主「あらアナタ!うちのミーちゃんに、変なものを、あげないで頂戴!!! さ、いきましょうミーちゃん」
ミーちゃん「にゃーん」
アニキ「なんだい!ちきしょう!」
アニキ(俺が優しくしようとしても、必ず相手に嫌がられるんだ。 やっぱりそういうのは、俺には似合わねえよな)
オト「アニキ〜大漁だぜ〜 これでまたラーメン食えるぜ〜」
アニキ「オトウトよ。 やっぱりお前が一番だな!」
オト「なんだよアニキ〜」
〇奇妙な屋台
アニキ「ほら返すよ。 あとラーメンくれよな!」
店主「はーい」
オト「やったぜ!」
店主「そういえば、あなた達、 公園に住んでいるの?」
アニキ「まぁな。俺らは家がないから、 放浪生活だ」
〇池のほとり
それはオレたちが、幼少の頃だ。
子ども時代のオト「アニキーお腹すいた」
子ども時代のアニキ「ここで待ってろ、 いま食べ物を持ってきてやるから」
子ども時代のオト「アニキー・・・」
子ども時代のアニキ「ほら、パン屋の親父が 焦げたパンと、いらないパンの耳くれたぜ。食べな!!!」
モグモグモグモグ
子ども時代のオト「美味しいよ!アニキ! ありがとう!」
両親を事故でなくした兄弟は、
施設に預けられ親戚を転々とし、
大変に辛い思いをした。
〇オフィスのフロア
上司「お前!何度行ったらわかるんだ! お前なんかクビだクビ!」
アニキ「うるせえコノヤロー」
ドゴォ
アニキはオトウトのために、
早くに就職し働いていたが、
嫌な上司を勤務先で殴ってしまい、
大怪我をさせた。
それにより傷害罪で逮捕され
仕事もクビになる。
それから働かなくなり
悪いことをしながら
各地を放浪していた。
〇街中の公園
オト「やっぱりアニキ、ここは落ち着きますね」
アニキ「オレ達が、子どものときに過ごした公園だもんな」
〇奇妙な屋台
オト「放浪するのに、疲れてしまって、 それでココに帰ってきたんだ」
アニキ「オレたちは、どこに行っても 厄介者扱いされた。 オレたちの居場所は、 ここしかないんだ。」
店主「まぁ大変だったのね、 もっと、おあがりなさい。 遠慮なくね。」
アニキ「うめえなぁ。 なんて酒だ?」
店主「お酒じゃないわ。 ワタシ特製配合の スペシャルドリンクよ」
オト「へー。 美味しいよ。 もうお腹いっぱいだ・・・」
オト「あれ、なんだか眠く・・・」
アニキ「ホントだ・・・ ねむ・・・」
「グーグーグー」
店主「ウフフ・・・」
〇暖炉のある小屋
オト「うう〜ん、アニキ〜。 はっ!ココ、どこ!?」
アニキ「わからねえ・・・ 外に出てみるか」
〇秘密のアジト
アニキ「なんだコレ!?」
店主「アラおはよう〜」
店主「ここは〜公園の片隅。 管理倉庫よ。 オーナーが公園の管理をしてくれるなら、タダで貸してくれるって〜」
「そう我々も公園の管理を手伝っている〜」
店主「その代わり、草木の手入れや 掃除とかしてもらうけど〜 そう、ウチの賄い付きよ〜 悪い話じゃないでしょ?」
アニキ「掃除なら得意だ。 いいのか?悪い俺らで・・・」
エリー「オジサン達は悪くないわ!」
アニキ「あっ、エリーちゃん!」
エリー「話は、店主さんから聞いたもん。 やっぱりあなた達が届けてくれたのね。 いい人じゃん!」
エリー「ありがとうございます!」
アニキ「い、いいのかよ・・・ 後悔しても、知らねえぞ」
オト「もうゴミを漁って残りを食べなくてもいいし、風呂も入れて、ご飯もあって 暖かい布団もあるのか! うわーん、アニキー!!!」
店主「頑張ってネ♡」
〇奇妙な屋台
店主「確かに彼らの境遇は、人より、 恵まれてなかったかもしれないワ、」
店主「相手から受ける言葉の暴力を、 ジブンの力で取り払ったのに、 周りから断罪された。 その理不尽さを常に持っているのよね」
店主「でも相手に怪我をさせた、という 物理的に犯した罪は消えなくて。 もし自分の我慢ができたなら 違った人生になったでしょう」
店主「本当は、物事には善悪がなくて 善悪は「人が決めた」ことなの 「善悪」や「罪」は、必ず「相手」がいて起こるものなのよ」
店主「物事が多数決なら、 「悪いこと」を受ける被害者が 多いほど、それらを断罪するでしょう」
店主「ですから、人は罪を償うのですね 既に人は生き延びるために、食べることや害とされるもの、多くの命を奪っているのですから」
店主「すべての人は 償わないと、 いけないことになりますよね?」
店主「きっと償うということの先には、 人にとって本当に大切なことが あるのかもしれません」
店主「きっと本当の正義とは、 何か誰かを裁くためのモノではなく、 ジブンの理想や大事なモノを守るために必要なものなのでしょうね」
謎占い師「哲学的ですねぇ」
謎マッチョ「マッスルマッスル。。」
女の子に変身して病院に行くのは兄貴だけでよかったんじゃ…、とか野暮なことは言ったらダメか。二人はいつも一心同体なんだ。珍しく多弁な店主さんのありがたい御高説を聞いた後でも「マッスル、マッスル」で終わらせるマッチョさん。あらゆる場面で使える魔法のフレーズですね。
ただの端役と思っていたアニキとオトにスポットが当たり、何だか嬉しく思ってしまいましたw 悪人として生きる2人、彼らにも物語があり、矜恃も持ち合わせている。とてもステキなお話ですね!
読むたびに店主の人としての素晴らしさ、魅力に感動しています🥲
過去の境遇が原因で生きづらくなってしまった兄弟たちを偏った目で見ることなく、優しく接して、住む場所やお仕事まで見つけてあげて、本当に温かい方だなあと思いました。