まだ見ぬクリスマスイブ

碧風羽

まだ見ぬクリスマスイブ(脚本)

まだ見ぬクリスマスイブ

碧風羽

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〇大きな木のある校舎
  街も冬の装いでウキウキしている十二月。
  明日のクリスマスイブは、雪村くんとの初デート。
  イケメンで優しくて、でも控えめな雪村くん。
  私は長いこと彼に片想いしてきて・・・・・・。
  ようやく約束を取り付けた時は、足が軽く五センチくらい地面を離れたよね。
  期末テストも上の空で、着ていく服も伝えたい告白のセリフも、何日もかけてしっかり決めた!
  ・・・・・・んだけど。

〇女の子の部屋
まりな「・・・・・・ま、まただぁ・・・・・・。 二十三日」
  それなのに、夜寝て朝起きても、ずっとデートの前日のままなの。
  十二月二十三日。今日という日が、このところ何度もループしている。

〇クリスマス仕様のリビング
お母さん「まりな、また二十三日だね。 お母さんそろそろクリスマスケーキ買いに行きたいんだけどどうしたらいいのか・・・・・・」
  そう。一部の周りの人も、ループに気がついていて、困っているのだ。
  こうしちゃいられない!
  世界を今日に止めておくわけにいかない。
  私だって、なんとしても明日を迎えてデートしなきゃいけないんだから!

〇渋谷駅前
  まず情報を調べに街に出てみた。
  すると、街頭モニターに衝撃のニュースが表示されている。
  『サンタ 風邪で療養中』
  それを観ているカップルが、
  「なんかこのニュース、ここ数日何度も見てるような・・・・・・」と
  いぶかしそうに話している。
  なるほどね。
  サンタが出動出来ないなら、クリスマスイブが来ないのも納得いくかも。
  不思議な力で、世界がスケジュールをサンタに合わせているのかもしれない。
  うちの風邪の治し方なら、お祖母ちゃんに教わった秘伝のネギ味噌唐辛子汁があるんだからね!
  ・・・・・・でもサンタの住むフィンランドまで会いに行くには、ループ中の二十四時間じゃ足りなすぎるなぁ。
  ニュースをよく見ると、『風邪のサンタは○△ホテル滞在中』とあった。
  奇跡はクリスマスより早くやって来ていた。
  ○△ホテルなら、この街の駅前にあるやつじゃないの!

〇ホテルのエントランス
  ○△ホテルのロビーに着くと、ソファに座るひときわ大柄な白髭の老人をすぐに見つけることができた。
まりな「あなた、サンタさん?」
  私は傍らに飛び付いて話しかける。
サンタさん「わっ! お嬢さん何者だね?」
まりな「サンタさんなんでしょ? 風邪を早く治して、明日を迎えさせてくれない?」
  初対面の私の強引なお願いに、弱々しい声で答えるサンタさん。
サンタさん「風邪というか・・・・・・な。 元気は元気なんじゃが、ちぃっと・・・・・・その・・・・・・自信がなくて」
まりな「ほんとは風邪じゃないっていうの?」
サンタさん「は、はは・・・・・・」

〇大広間
  わけを訊くと、どうやら
  「自分は今年デビューの新米サンタだけど、
  眠る子供たちを起こさずにうまくプレゼントを置いてくる自信がない」
  とのことだった。
サンタさん「失敗できない仕事だからのう。決心がつくまで世界に待ってもらっているんじゃ」
まりな「そ、それで時間が今日で止まってるんだ・・・・・・」
  まあ、初めてってプレッシャーでっかいよね。完璧主義の人なら特にしんどいかもね。
  気持ちはわかる・・・・・・かな。
まりな「何事も勇気は必要だよ。飛び込まないと何も変えられないんだから」
サンタさん「勇気・・・・・・なあ」
まりな「私だってね、片想いしてきた彼にこっちからデート申し込んだの! 足が震えて死ぬかと思ったよ!」
サンタさん「ワシに、できると思う?」
  私は思わずサンタさんのおっきな手を握った。
まりな「できるよ。安心するまで一緒に練習しよう!」

〇イルミネーションのある通り
  夕方までかかって、私とサンタさんは、子供たちへのプレゼントの渡し方の練習をした。
  抜き足差し足忍び足。
  そして足元注意!
  最近の住宅はバリアフリーで段差は気にならないことが多いけど、電源コードには気を付けなくちゃね。
  ペットに警戒されない練習も。
まりな「にゃー!」
サンタさん「ひいぃぃ!」

〇イルミネーションのある通り
まりな「これで大丈夫?」
サンタさん「わからん・・・・・・わからんが、もし起きて話しかけてくる子供がいたり、いたずらを仕掛けてくる子がいたとしても・・・・・・」
まりな「いたとしても?」
サンタさん「さっき君に出会った時ほどは、驚かないと思うのう」
まりな「あはは! その調子だよ!」
サンタさん「ありがとう、お嬢さん」
まりな「いえいえ。元気出して子供たちに夢を届けてね」

〇女の子の部屋
  そして朝はやって来た。
まりな「!!!!」
まりな「あ、ああ・・・・・・嘘でしょ、マジなの」
  気持ちがパーティークラッカーみたいに爆発しそうになった。
  時計の日付は二十四日を表示している。
  あのサンタさんの、勇気が出たんだ!

〇川沿いの公園
  目一杯お洒落して、家を飛び出した。
  待ち合わせ場所に駆けつけると、雪村くんはもう待っていてくれた。
雪村くん「おはよう。寒いね」
まりな「あ・・・・・・ゆ、雪村くん!おはよう!!」
  私、もう号泣しそう。
  目の前にようやく、クリスマスイブ当日の雪村くんがいる。
雪村くん「・・・・・・あの、どうしてそんなに俺をじっと見てるの?」
まりな「えっ!?︎ ・・・・・・あっ、ごめん!  何でもないから気にしないで!」
  思わず彼の顔をガン見してしまったみたい。
雪村くん「そう? ・・・・・・じゃあ行こっか」
まりな「うん!!」
  どちらからともなく、おずおずと手を繋いだ。
  神様仏様サンタ様!
  ありがとう!

〇イルミネーションのある通り
  誰もが幸せなクリスマスをね!
  END

コメント

  • サンタさんが不安になってて時間がループしてたとは!
    初めてのサンタさんの不安がかわいいですね。
    練習に付き合う彼女も優しくて、優しい世界だなぁと思いました。

  • サンタさんの事情で世界の日付が進まなかったのか…。
    ファンタジーな感じがしてとても面白かったです!
    何事も勇気を出して一歩踏み出すことが大事ですね!

  • ハッピーエンドなのが読んでいて嬉しかった♪私も完璧主義で勇気が出ないときがあるからサンタさんの気持ちわかるなぁ。勇気をだして飛び込むぞ!!と前向きになれました。ありがとう♪

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