夢恋花火(脚本)
〇実家の居間
お盆休み。
僕は実家に帰省し、おじいちゃんと
将棋を指していた。
おじいちゃん(長谷川 歳三)「王手!」
長谷川 智(はせがわ さとし)「・・・・・・参りました!」
長谷川 智(はせがわ さとし)「やっぱ、おじいちゃんは将棋が強いなー」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「まだまだ智には 負けていられんよ!」
長谷川 智(はせがわ さとし)「お、じゃあもう一局やる?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「・・・・」
長谷川 智(はせがわ さとし)「どうしたのおじいちゃん?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「智、確認したいんだが・・・ お前今年でいくつになった?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「えっ?先月で30歳になったけど・・・」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「・・・・」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「今から少し変な話をするが 聞いてくれるか?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「なんだい?改まって・・・」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「実はな・・・」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「ウチの家系の男は30歳になると 人の過去を見ることができる」
長谷川 智(はせがわ さとし)「・・・は?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「正確にいうと、写真に写った 親族の過去を断片的に見ることができる」
長谷川 智(はせがわ さとし)「おじいちゃん、何言ってるの?」
おじいちゃんは僕に
一枚の写真を手渡してきた。
〇花火
手渡された写真には
若い父さんと、僕の知らない女性が
写真に写っていた。
〇実家の居間
おじいちゃん(長谷川 歳三)「これは清の高校時代の写真だ」
長谷川 智(はせがわ さとし)「この写真の女性は誰なの?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「それは、今日の夜に自分で確認するのが いいんじゃないか?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「その話が本当だとして どうやって過去に戻るの?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「簡単な事さ」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「寝る時にその写真を 枕の下に置いとくだけでいい」
長谷川 智(はせがわ さとし)「それだけでいいの?」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「ああ、それだけさ」
長谷川 智(はせがわ さとし)「分かった」
長谷川 智(はせがわ さとし)「騙されたと思ってやってみるよ」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「それでいい」
おじいちゃん(長谷川 歳三)「よし、もう1局やるか!」
長谷川 智(はせがわ さとし)「ハハッ、よろしくお願いします!」
〇和室
寝室
長谷川 博美(はせがわ ひろみ)「あなた、何をやっているの?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「いや、何でもない」
長谷川 博美(はせがわ ひろみ)「・・・変な人」
長谷川 智(はせがわ さとし)「それじゃ、電気を消そう」
僕は妻に隠れるようにして
枕の下におじいちゃんから手渡された
写真を置き、寝ることにした。
〇高い屋上
長谷川 智(はせがわ さとし)(うおっ!何だこれ!?)
戸塚 博孝「本当にいいのかよ!?」
長谷川 清「何が?」
長谷川 智(はせがわ さとし)(若い時の父さんだ!!)
戸塚 博孝「明日で夏美ちゃん 海外に行っちゃうんだぞ!」
長谷川 清「そうだな」
戸塚 博孝「お前、夏美ちゃんの事 好きなんだろ?」
長谷川 清「ああ、好きだったよ」
戸塚 博孝「好きだった・・・?」
戸塚 博孝「好きだったって何だよ!?」
長谷川 清「親の仕事で海外に行くのに 好きだ、なんて言ったら迷惑なだけだろ!?」
戸塚 博孝「・・・・」
戸塚 博孝「お前、本当に後悔しないんだな?」
長谷川 清「あぁ、しないさ」
戸塚 博孝「分かったよ、それだけ確かめたかった」
戸塚 博孝「それじゃあ、祭り会場に急ごうか!」
長谷川 清「おう・・・」
長谷川 智(はせがわ さとし)(父さん・・・)
〇大きな公園のステージ
「イエーイ!ありがとー!!!!」
司会A「『おじさんズ』の皆さん ありがとうございました!!!」
相澤 雅「次は私達の番だ!」
長谷川 智(はせがわ さとし)(母さんだ!!)
司会A「続いての紹介です!」
司会A「夜空に咲かせましょう青春花火!」
司会A「地元の高校生バンド『トマト』です!」
戸塚 博孝「誰だよ、こんなダッセェ バンド名つけたの!!」
相澤 雅「い、いいから行くよ!!」
戸塚 博孝「お前かよ!」
相澤 雅「バンド名なんて何でもいいって 言ったのアンタでしょ!!」
戸塚 博孝「でも、トマトはねぇだろ!」
長谷川 清「そんなことはいいから、行くぞ!!!」
〇大きな公園のステージ
「ガヤガヤガヤガヤ」
戸塚 博孝「こんばんはー、僕達が 『トマト』でーす!」
おじさんB「兄ちゃん、ダセェーぞ!」
おじさんA「トマトはねぇだろー!」
おじさんC「逆から読んでもトマトってかー!」
相澤 雅「あぁん!? 誰だ今ダセェって言ったのは!?」
シーーーーン
相澤 雅「出てこいよコラァ!」
戸塚 博孝「雅さん、落ち着いて!」
戸塚 博孝「それでは、先にメンバー紹介しまーす!」
戸塚 博孝「ベース 相澤 雅!」
相澤 雅「ダセェって言った奴、しばく!」
「みーやーびー!見に来たよー!」
相澤 雅「お!ありがとー!!」
戸塚 博孝「ギター&ボーカル 長谷川 清!」
長谷川 清「どうも」
戸塚 博孝「そしてドラムの僕、戸塚 博孝です!」
「清ー!博孝ー!」
戸塚 博孝「へへっ、ありがとよお前ら!」
長谷川 清(夏美は・・・いないか)
戸塚 博孝「僕達は山川高校の軽音楽部です!」
戸塚 博孝「夢はでっかく、武同館!」
戸塚 博孝「この日のために たくさん練習してきました!」
戸塚 博孝「聞いてください! ラピッツの曲で『シェリー』!」
長谷川 清「あなたをいつまでも覚えてるー♪」
長谷川 智(はせがわ さとし)(父さん、歌が上手い!!)
長谷川 清「真っ直ぐな道を駆けていくー♪」
長谷川 清(夏美・・・・・・)
〇音楽室
森川 夏美「ねぇ、清君!ラピッツの『シェリー』 って曲知ってる?」
長谷川 清「ん?」
長谷川 清「・・・知ってるよ」
森川 夏美「本当!?」
森川 夏美「私、あの曲好きなんだー♪」
森川 夏美「ちょっとギター弾いてみてよ!」
長谷川 清「・・・いいよ」
チャカチャカチャカチャカン♪
森川 夏美「そのまま歌って!」
長谷川 清「えっ!?恥ずかしいよ!」
森川 夏美「いいじゃん、私しかいないんだから~!」
長谷川 清「しょうがないな・・・」
長谷川 清「好きだよの言葉だけで~♪」
森川 夏美「上手、上手~♪」
〇大きな公園のステージ
長谷川 清「きっと、妄想だけの世界が続いてく~♪」
長谷川 清(やっぱり俺は夏美が好きだ)
長谷川 清(でも、この想いを伝えたくても もう彼女とは会うことはない・・・)
相澤 雅「(ねぇ、清!前見てごらん!)」
長谷川 清「ん?」
ニヤニヤニヤニヤ
長谷川 清「(お、お前ら!!)」
相澤 雅「(連れてきちゃった♪)」
長谷川 清(ったく・・・)
長谷川 清「好きだよの言葉だけで~♪」
長谷川 清「僕はそれで強くなれた気がしたんだー♪」
長谷川 清「・・・・・・」
森川 夏美「・・・・・・」
相澤 雅「ほらっ、もういいから行きな!」
長谷川 清「うわっ!」
相澤 雅「皆さん、演奏中にスイマセン!」
相澤 雅「今からは、ここに残った戸塚君と 漫才をやるのでお楽しみに~」
戸塚 博孝「えっ漫才!?」
長谷川 清「夏美・・・行こう!」
森川 夏美「うん!!」
〇神社の石段
長谷川 清「ここだよ」
長谷川 清「ここの神社の階段から 見る花火が綺麗なんだ」
森川 夏美「ありがとう」
長谷川 清「うん?」
森川 夏美「私、ずっと長谷川君の事が好きだった」
森川 夏美「でもずっと・・・言えなかった」
長谷川 清「それは引っ越すからだろ?」
森川 夏美「それもあるけど・・・」
森川 夏美「私、婚約者がいるの」
長谷川 清「婚約者!?」
森川 夏美「ごめんなさい、ずっと言えなくて」
森川 夏美「私は手を繋がなくても キスをしなくても」
森川 夏美「あなたの隣に居れる事が幸せだったの」
長谷川 清「・・・・・・」
長谷川 清「それは僕もだよ」
長谷川 清「・・・・」
森川 夏美「・・・・」
〇花火
森川 夏美「わぁ!キレーイ!」
長谷川 清「本当だね!」
森川 夏美「・・・・・・」
森川 夏美「ねぇ、1つ約束をしよう」
長谷川 清「約束?」
森川 夏美「うん、約束」
森川 夏美「この先、私がこの街を出ていって」
森川 夏美「時が経って また、この場所で巡り会う事ができたら」
森川 夏美「私達の今日までの思い出話を咲かせよう」
長谷川 清「思い出話?」
森川 夏美「そう、思い出話」
森川 夏美「それでね、懐かしいなー そんな事もあったなーって 花火を見ながら余韻に浸るの」
長谷川 清「・・・素敵だね」
森川 夏美「それで話し終わったら、今まで自分達に何があったのか次に話すの」
森川 夏美「こんな事してきたよとか あんな事もしたよって」
長谷川 清「・・・とても面白そうだ」
森川 夏美「・・・・」
森川 夏美「ねぇ、写真撮らない?」
長谷川 清「写真?」
森川 夏美「また、ここで巡り会う約束をした写真」
森川 夏美「カメラは私が持ってるから そこの物陰に隠れている人に 撮ってもらお!」
相澤 雅「えっ!? バレてたの!?」
長谷川 清「雅!!」
森川 夏美「ねぇ、雅、撮ってくれる?」
相澤 雅「ま、任せてくだせぇ!」
相澤 雅「はい、2人とも近づいて」
相澤 雅「笑って、笑って」
カシャ
長谷川 清「おい、撮るよって言えよ!」
森川 夏美「ハハハハッ」
相澤 雅「わ、私はこれで失礼致しますっ!」
長谷川 智(はせがわ さとし)(母さん・・・ 昔はこんな感じだったんだ・・・)
森川 夏美「それじゃあ、清君」
森川 夏美「またね」
長谷川 清「・・・またね」
〇実家の居間
次の日
お父さん(長谷川 清)「そうか、今日は花火大会の日か・・・」
長谷川 智(はせがわ さとし)「父さん・・・」
お父さん(長谷川 清)「ん?どうした?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「あの花火大会の後 夏美さんと会えたのか?」
お父さん(長谷川 清)「お前、何でその事を!!」
お父さん(長谷川 清)「・・・・見えたのか?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「ああ、おじいちゃんから聞いて」
お父さん(長谷川 清)「しっかり、見えたのか?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「えっ?うん」
お父さん(長谷川 清)「良かった・・・」
長谷川 智(はせがわ さとし)「何が良かったんだ?」
お父さん(長谷川 清)「いや、何でもないんだ」
お父さん(長谷川 清)「智、外に出て話さんか?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「分かった」
〇神社の石段
お父さん(長谷川 清)「あの後、彼女から写真と手紙が来たんだ」
お父さん(長谷川 清)「次に会える時を楽しみにしてますって」
長谷川 智(はせがわ さとし)「それで、また会えたの?」
お父さん(長谷川 清)「いや、会えていない」
お父さん(長谷川 清)「だから、こうして今日もここに居るんだ」
長谷川 智(はせがわ さとし)「そんな日に僕とここに居てもいいの?」
お父さん(長谷川 清)「いいさ」
お父さん(長谷川 清)「多分、彼女はここには現れない」
お父さん(長谷川 清)「そんな気がするんだ」
〇花火
お父さん(長谷川 清)「こうやって、花火を見ながら 自分の息子に彼女の思い出話をする事で」
お父さん(長谷川 清)「僕は、あの日の約束を守れたんじゃないかなと思っているんだ」
長谷川 智(はせがわ さとし)「父さん・・・」
森川 夏美「それは違うんじゃない?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「!?」
お父さん(長谷川 清)「えっ・・・夏美なのか?」
森川 夏美「この子が長谷川君の息子さん?」
長谷川 智(はせがわ さとし)「は、はい!」
森川 夏美「はじめまして、森川夏美です」
森川 夏美「よくもまあ、あんな恥ずかしい話を 堂々としていたわね」
お父さん(長谷川 清)「聞いていたのか!?」
森川 夏美「・・・・遅くなったね」
森川 夏美「約束、覚えていてくれて嬉しいよ」
森川 夏美「やっと約束、守れるね・・・」
お父さん(長谷川 清)「ああ・・・」
長谷川 智(はせがわ さとし)「あの、せっかくの再会だから 僕は一足先に帰ってるよ」
お父さん(長谷川 清)「悪いな 気をつけて帰るんだぞ」
振り返ると、2人を祝福するように
花火が咲いて光り
街に広がった花火の焦げた匂いが
2人をあの日に戻したみたいだった。
そして、僕は後日
過去を覗く力を使って
自分の壮絶な生い立ちを
知る事になっていく。
結果的には清と夏美は結ばれず、清は雅と結婚して智が生まれたんですね。二人の写真を撮ったときの雅の気持ちを考えるとちょっと切ないなあ。でもリアリティのある展開だと思いました。智の壮絶な生い立ちも気になるけど、戸塚くんとおじさんズの現在も気になります。
とてもうらやましい能力です😁
私もいろんな写真枕元に敷いて寝たいです😂
でもこういう両親のエピソードで、しかもお父さんはお母さん以外の女の子のことが好きだったとなると、息子としては複雑ですよね!😂
続きがどうなるのか気になります。