家族に必要なもの(脚本)
〇山間の集落
──沼沢村。
〇農村
村人50人ほどの限界集落。
〇平屋の一戸建て
「あ〜腹減った〜」
〇古民家の居間
神楽坂刑事「ね〜メシにしましょうよ」
高井戸刑事「さっき食べたとこだろ」
神楽坂刑事「そうですね、食べましたね、パンと牛乳を」
神楽坂刑事「あー美味しかったなーパンと牛乳 昨日の夜のパンと牛乳より美味しかった いやでも一昨日のパンと牛乳が一番かな」
神楽坂刑事「あれ? 待てよ、もしかして俺、ここ来てからパンと牛乳しか食べてない? ヤバくない? それってかなりヤバくない?」
四谷刑事「うるさい黙れ! 殴るぞクソガキ!」
神楽坂刑事「四谷刑事は腹減らないんですか?」
四谷刑事「私ダイエット中だから」
神楽坂刑事「隠れてチョコ食ってたくせに」
四谷刑事「カ、カロリーオフだし! 撃ち殺すぞクソガキ!」
高井戸刑事「おい、いい加減にしろ 張り込み中だぞ」
神楽坂刑事「電子レンジくらい買いませんか?」
高井戸刑事「そんなもの買う予算はない」
神楽坂刑事「ケチだなぁ警察は」
四谷刑事「お前なぁ!!」
神楽坂刑事「ごめんなさーい」
四谷刑事「課長、アイツのこと甘やかしすぎですよ もっと厳しく言ってください」
高井戸刑事「まぁまぁ とりあえず今は任務が優先だ おとなしく隣の家を監視しよう」
神楽坂刑事「本当に現れるんですか? もう3日目ですよ」
四谷刑事「”まだ”3日」
高井戸刑事「ホシの身寄りは両親しかいないし、 家族想いのやさしい息子だったという証言も得ている」
高井戸刑事「追い込まれたらきっと、ここに戻ってくるはずだ」
神楽坂刑事「そんなやさしい息子が、どうして強盗殺人なんてやったんでしょうね」
四谷刑事「アンタの空っぽのオツムで考えてもムダ無駄」
神楽坂刑事「はあ?!」
高井戸刑事「まずは犯人確保だ 引き続き監視に集中するように」
「ごめんください」
〇ボロい家の玄関
自治会長「どなたかいらっしゃいますかな」
高井戸刑事「あ、はい、何でしょう」
自治会長「どうも この村の自治会長です おじゃましますよ」
高井戸刑事「えっ、いやちょっと待ってください」
〇古民家の居間
自治会長「どうもこんにちは」
四谷刑事「誰このジジイ」
自治会長「じ、じじい!?」
高井戸刑事「おいお前らちょっと来い」
神楽坂刑事「なんすか?」
高井戸刑事「この村の自治会長だ 前にも言ったが、絶対に俺たちが刑事だと悟られるな 張り込みが台無しになる」
神楽坂刑事「わかってますよ 特に自治会長ともなると色んな村人に通じているでしょうからね」
神楽坂刑事「ところで、自治会長って何ですか?」
自治会長「何をコソコソ話しているんですか」
高井戸刑事「あ、いえ 今日はどういったご用件で」
自治会長「様子を伺いに来ただけです 自治会長としてね」
四谷刑事「だからっていきなり来るなよ」
四谷刑事「ハゲのくせに」
高井戸刑事「お前なぁ・・・(ハゲは余計だよハゲは)」
自治会長「はははははっ 気の強い奥さんですな」
四谷刑事「お、奥さん!?」
自治会長「ん? 違うのですか?」
高井戸刑事「あーいえ、奥さんです! 私の妻です!」
高井戸刑事「なっ?」
四谷刑事(キモっ・・・)
神楽坂刑事「ママ~おなかすいたよ~」
四谷刑事「うるさい! お前は畳でも食ってろ!」
自治会長「しかし何もない家ですな 家具も電化製品も見当たらない」
自治会長「本当にここで生活しているのですか?」
高井戸刑事「それは・・・ですね、 これから買い揃えようかと思っていまして」
自治会長「あそお まぁこれからよろしくお願いしますよ 自治会費も忘れず払ってくださいね」
自治会長「では私はこれで」
高井戸刑事「はい、よろしくお願いします」
自治会長「自治会長の私が来たというのに、お茶も出ない家は始めてだ 仲良くしていきたいですな〜」
〇ボロい家の玄関
〇古民家の居間
四谷刑事「・・・ぶん殴りたいあのクソじじい」
神楽坂刑事「自治会長ってなんですか?」
高井戸刑事「住人の代表みたいなもんだ」
高井戸刑事「ここは限界集落だ 変に目立つと村八分にされる恐れがある」
神楽坂刑事「そうなったら捜査の妨げになりますね めんどくさいな〜」
神楽坂刑事「ところで、村八分って何ですか?」
高井戸刑事「いいか? 張り込みが続く限り俺たちは家族として振る舞う必要がある そのことを忘れるな」
神楽坂刑事「じゃあさっそく、ママごはん作って~」
四谷刑事「調子に乗んなクソガキ 家族ごっこは村人がいる時だけだ」
高井戸刑事「けどせめて家の中は家族が住んでいるようにしないとダメかもな」
神楽坂刑事「じゃあ電子レンジとケトルとホットプレート、あとは・・・」
高井戸刑事「待て待て 色々一気に揃えるほど予算はない」
神楽坂刑事「じゃあせめて電子レンジを」
四谷刑事「いやケルトだね コーヒー飲めるしカップラーメン食べられるし」
神楽坂刑事「そんなの電子レンジで温めればいいじゃないですか」
四谷刑事「どうやって電子レンジでカップラーメン温めるんだよ!」
神楽坂刑事「適当っすよ適当 なんとかなるっしょ」
四谷刑事「お前マジぶっ殺すぞ」
高井戸刑事「まぁまぁまぁまぁ とりあえず俺は今日家に帰る日だから、ついでに署に戻って上に予算のことを掛け合ってみる」
〇ボロい家の玄関
高井戸刑事「じゃあ行って来る 真面目に監視続けるんだぞ」
「美味しご飯も頼みますよ!」
〇農村
高井戸刑事「めんどくさいことになったな・・・ 限界集落は闇が深いとは聞いていたが・・・」
村人A((ヒソヒソ)・・・)
村人B((ヒソヒソ)・・・)
高井戸刑事「まずは疑われないようにしないと」
高井戸刑事「家族か・・・ 何が必要だろう・・・」
〇街の全景
〇警察署の入口
高井戸刑事「よし、少しだが予算は上げてもらった あとは何を買うか・・・」
〇中規模マンション
高井戸刑事「ただいま」
〇アパートのダイニング
高井戸刑事「今日帰ると言っただろ もっとまともなメシはないのか」
高井戸あけみ「どうせまた外で食べてくるんだろうと思った」
高井戸あけみ「せっかく作ったのに、食べてもらえないほど悲しいことはないからね」
高井戸刑事「・・・・・・」
高井戸あけみ「そういや高橋さんち、今度家族でハワイ行くんだって」
高井戸刑事「・・・・・・」
高井戸あけみ「行ってみたいなぁ私も ハワイ いいな〜」
高井戸刑事「タケルは受験だろ ウチはそんなことしている場合じゃない」
高井戸あけみ「あの子受験する気ないわよ」
高井戸刑事「なに?」
高井戸あけみ「あなたから話してみてよ」
高井戸刑事「・・・どうせ言っても無駄だろ」
高井戸あけみ「なんでそうやって・・・」
高井戸刑事「そうやってなんだ」
高井戸あけみ「お願いだから、もう少し家族と対話して」
高井戸刑事「・・・・・・」
高井戸刑事「対話、か・・・」
〇農村
〇古民家の居間
高井戸刑事「どうだ、進展はあったか」
四谷刑事「いえ、動きはありません」
高井戸刑事「そうか」
神楽坂刑事「おかえりなさい課長 おみやげは?」
高井戸刑事「ああ、買ってきたぞ」
神楽坂刑事「おお!! なんですか? 電子レンジ? ケルト? それともホットプレートとか?!」
四谷刑事「・・・ちゃぶ台?」
神楽坂刑事「・・・ウソでしょ?」
高井戸刑事「今日からメシはこのちゃぶ台で食う」
神楽坂刑事「しかもまたパンと牛乳・・・」
高井戸刑事「メシだけじゃない 話し合う時もこのちゃぶ台を囲んで行う」
四谷刑事「本気で家族ごっこするわけですか」
高井戸刑事「すべては容疑者確保のためだ」
神楽坂刑事「はぁ・・・ 先が思いやられる・・・」
Fin
地名が苗字の刑事さんたち、それぞれのキャラクターが際立ってて面白い。家族に必要なもの=対話=ちゃぶ台って発想がいかにもおじさんぽいけど、ちょっとほのぼのしました。
村人にバレないように家族ごっこをするなんて、ハラハラどきどきで面白そうですね!高井戸刑事はかなりやる気出てきたけど、神楽坂刑事と四谷刑事の家族になろうとしてない感じがこれからどうなっていくのか、楽しみです。
小さな町って都会みたいにごちゃごちゃしていなくて穏やかなのは、とても良いところなのですが、噂が広まるのは一瞬なのが少し嫌なところですよね😂
私が住んでいるところも、すぐに噂が広がります😳
無事に犯人を捕まえられますように!