兎人の系譜

桃千

覚醒(脚本)

兎人の系譜

桃千

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〇土手
美羽(ミハネ)(帰りが遅くなっちゃった)
美羽(ミハネ)(真っ暗で怖いな。急ごう)
美羽(ミハネ)「あっ」

〇土手
「雲が晴れて、月が・・・」
美羽(ミハネ)「何これ。体が、熱い!?」
美羽(ミハネ)「誰か助けて・・・」
通行人「ややっ、これは大変だ!!」
通行人「娘さん、大丈夫かい!! 貧血かな?」
美羽(ミハネ)「すみません。救急車を・・・」
美羽(ミハネ)「うっ」
美羽(ミハネ)「あれ? 体が楽になった」
通行人「・・・」
通行人「・・・貴様、娘さんをどこに隠した?」
美羽(ミハネ)「隠すも何も、私自身ですが?」
通行人「そんなワケがあるか、たわけぇ!!」
美羽(ミハネ)「ひんっ!!」
美羽(ミハネ)(親切なお爺さんの態度が変わっちゃった。 突然どうしたの!?)
通行人「もしもし、警察ですか?  ウォーキング中に不審者を発見しまして」
美羽(ミハネ)「けけけ警察ぅ!?」
美羽(ミハネ)「待ってぇ!! ホントに私なんですうぅ!!」

  いやあぁぁ!!

〇警察署の入口
美羽(ミハネ)「ぐすっ、怖かったぁ!」
妖子(アヤコ)「誤解が解けて良かったわ」
美羽(ミハネ)「まさか、こんな姿になっているとはね! びっくりだよ!!」
美羽(ミハネ)「お爺さんに謝られたけど、逆に申し訳 なかったな」
美羽(ミハネ)「私がお爺さんでも、絶対に通報してるもん」
美羽(ミハネ)「パパやママに、ひぐっ、迷惑かけてゴメンね」
妖子(アヤコ)「気にしないで、美羽のせいじゃないわ」
美羽(ミハネ)「ママ・・・」
「いいんだよ、美羽。お前は悪くないぞ」
美羽(ミハネ)「パパ・・・」
妖子(アヤコ)「さ、帰りましょう。夕食がまだだから お腹減ったでしょ?」
「こういう時こそ、たくさん食べて ゆっくり休んで英気を養わないとな」
美羽(ミハネ)「ウン!!」
美羽(ミハネ)(パパはいいな。ぬいぐるみみたい)
美羽(ミハネ)(私も、こんなバキバキじゃなく 可愛い姿になりたかったよ!!)
美羽(ミハネ)(兎人は、パパみたいな変身が普通のはず。 なのに、どうして私は・・・)

〇ブリーフィングルーム
  かつて月面に生息し、繁栄した兎型生命体
  ──通称 兎人。
  今や月文明は滅亡し、
  兎人もまた月面から姿を消した。

〇UFOの飛ぶ空
  しかし、月から地球へ移り住んだ
  少数の兎人たちが存在する。
  銀兎一族は、そんな彼らの末裔である。

〇綺麗なリビング
美羽 (ミハネ)「ねぇ、ママ。私もいつかパパみたいに、 ウサギさんに変身するの?」
妖子(アヤコ)「うーん、どうかな。個人差があるし、 ママは魔女族だからね」
妖子(アヤコ)「魔女の特性が強いと、ウサギさんには ならないかも」
妖子(アヤコ)「そのときはママと一緒に、占い師に なってみる?」
美羽 (ミハネ)「えー!! ウサギさんがいいよぉ。 だって、すっごく可愛いんだもん!!」
妖子(アヤコ)「変身した兎人は、最高に可愛いわよね!!」
美羽 (ミハネ)「うん!! ウサギさんになってみたーい!!」
妖子(アヤコ)「美羽の体が大人に近づいて、中学生か高校生くらいになったら、変身できるかな」
妖子(アヤコ)「ただ兎人には、ごく稀に戦闘特化した強靭なタイプが誕生する場合があって・・・」
美羽 (ミハネ)「セントートッカ?」
妖子(アヤコ)「・・・」
妖子(アヤコ)「いやいや、ナイナイ。戦闘型は本当に稀少だし、可愛いウサギに変身するわよ」
妖子(アヤコ)「・・・たぶん」

〇綺麗なリビング
美羽(ミハネ)「めちゃくちゃ戦闘型だったよぉ!! ひぃん!!」
ショコラ「クゥン」
妖子(アヤコ)「気を落とさないで。ショコラも励ましてくれてるよ」
妖子(アヤコ)「パパとママ、それにショコラだって、 どんな美羽でも大好きだからね」
ショコラ「ワフッ!!」
美羽(ミハネ)「ありがどッ!!」
妖子(アヤコ)「ほら、ご飯食べよ?」
美羽(ミハネ)「おいじぞうっ、いだだぎまっす!!」
妖子(アヤコ)「ゆっくり慣れていこうね、美羽」
妖子(アヤコ)「理想と違っていたからって、悪いことばかりとは限らないんだから!」
ショコラ「ワン!!」
美羽(ミハネ)「・・・」
美羽(ミハネ)(そうかな? いいことなんて、ひとつも思いつかないよ)

〇綺麗な一戸建て
美羽(ミハネ)「ぴえぇん」
美羽(ミハネ)「パパは元の姿に戻ったのに、 どうして私はそのままなのぉ!?」
雪彦 (ユキヒコ)「なんかごめんな」
美羽(ミハネ)「こういうのは、一晩眠ったら戻るのが 定番でしょお!? 狼男みたいにぃ!!」
雪彦 (ユキヒコ)「映画や漫画じゃないんだから。 戻るかどうかは体調次第だって」
美羽(ミハネ)「そうなの!?」
雪彦 (ユキヒコ)「兎人の体は月の満ち欠けに影響されるんだ。もう少し月が細くなれば元に戻るさ」
雪彦 (ユキヒコ)「・・・たぶん」
美羽(ミハネ)「断言してよー!!」

〇駅前広場
美羽(ミハネ)(学校、行きたくない)
美羽(ミハネ)(でも、これからは月齢に合わせて 変身するんだよね)
美羽(ミハネ)(満月のたび、家に引きこもるのは嫌。 お出かけだって楽しみたいよ!!)
「あれ、もしかして銀兎?」
美羽(ミハネ)(この姿に慣れるには、学校へ行くのが 一番だって分かってる)
「銀兎美羽だよな?」
美羽(ミハネ)(みんなの反応が怖い。 だけど、サボっちゃダメだ!)
美羽(ミハネ)「はぁ・・・ツラ」
「何がツラいの、銀兎? 百面相が丸見えだぞ~」
美羽(ミハネ)「きゃっ、恥ずかし!! 誰!?」
噛皮(カミカワ)「ははっ。おはよ」
美羽(ミハネ)「噛皮くんか、ビックリしたぁ。おはよう」
美羽(ミハネ)「・・・て、待って! なんで分かるの!? 見た目がいつもと、全然違くない?」
噛皮(カミカワ)「においだよ。俺、種族特性で、 鼻がいいの」
美羽(ミハネ)「噛皮くんの種族は、確か・・・」
噛皮(カミカワ)「話してるとこゴメン。 今から、変身に入るかも」
美羽(ミハネ)「大丈夫!? 病院連れてく?」
噛皮(カミカワ)「平気。心配してくれてありがとう。 潮見表を確認してみるよ」
美羽(ミハネ)「潮見表?」
噛皮(カミカワ)「釣りの時に使う、潮の満ち引きの 時刻表みたいなヤツ」
噛皮(カミカワ)「俺、満潮に変身するから、手放せないんだ」
美羽(ミハネ)「満潮のたび変身するの!? 大変じゃない?」
噛皮(カミカワ)「一日に二回、変身するから面倒だね。 もう慣れたけど」
噛皮(カミカワ)「今日の満潮時間は・・・。 やっぱ、今から変身だわ」
噛皮(カミカワ)「くっ」
噛皮(カミカワ)「おまたせ~」
美羽(ミハネ)(鮫人姿の噛皮くんだ)
美羽(ミハネ)(満潮のたびに変身してるなんて知らなかった)
美羽(ミハネ)(私、自分のことばっかりで、ちっとも 周りを見てなかったんだな)
噛皮(カミカワ)「・・・銀兎はさ、変身するの初めて?」
美羽(ミハネ)「うん。まだ、この姿に戸惑ってて 気持ちの整理がつかないんだ」
噛皮(カミカワ)「じゃあ、学校行った方がいいよ。 今日は特に、サボんない方がいい」
噛皮(カミカワ)「学校さ、色んな奴がいるじゃん。 俺の時は、結構気が楽になったよ」
美羽(ミハネ)「・・・」

〇学校の校舎

〇教室
海 (マリン)「うっわ、マジか。人相まで変わってるけど、美羽なんだね?」
美羽(ミハネ)「銀兎美羽、兎人バージョンでっす!! 改めて仲良くして下さい!!」
海 (マリン)「ダハハ! よろしく」
海 (マリン)「良かったね。スッゴい強そうだし、 覚醒ガチャ大当たりだよ」
美羽(ミハネ)「どこが!?」
海 (マリン)「スライム族って筋肉無いから、うらやましいんだって。いいな~」
蜂魔来 (ハチマキ)「アンタさぁ、制服着られるだけ幸運 なんだからね!!」
蜂魔来 (ハチマキ)「そりゃ『変身したアタシは最強に可愛い』って思ってるよ? 事実だし?」
蜂魔来 (ハチマキ)「だけど、体温が高すぎて魔族専用の 服しか着れないワケ」
蜂魔来 (ハチマキ)「魔族の服って際どいのばっか。最ッ悪」
美羽(ミハネ)「蜂魔来さん、趣味でそういう格好してるんだと思ってた」
蜂魔来 (ハチマキ)「違う!! 水着みたいな服の中から、 なるべくマシなの選んでんの!!」
皐月 (サツキ)「銀兎さんも蜂魔来さんも、 僕の審美眼では不合格です」
皐月 (サツキ)「衣服の評価は抜きにして、二人合わせて20点」
美羽(ミハネ)「低いなっ!!」
皐月 (サツキ)「表情豊かで妬ましい。何を考えてるか分からないと、引かれた事など無いんでしょうね」
美羽(ミハネ)「うん、それは無いよ」
皐月 (サツキ)「マイナス五億点」
美羽(ミハネ)「えー!!」

〇学校の校舎

〇駅前広場
美羽(ミハネ)「噛皮くん、今日はありがとう。 学校行って良かったよ」
美羽(ミハネ)「皆と話したら、気が楽になった」
噛皮(カミカワ)「兎人の姿、ちょっとは好きになれた?」
美羽(ミハネ)「それは、まだかな・・・」
美羽(ミハネ)「いつか胸を張ってさ、これが私だって 言えたらいいけど、難しいよ」
美羽(ミハネ)「もしかしたら、一生、受け入れられないかもしれない」
噛皮(カミカワ)「そっか」
  あっ、いた! 美羽ー!!
美羽(ミハネ)「ママ!?」
妖子(アヤコ)「心配だから、お店閉めて迎えに来ちゃった。ショコラもいるわよ!」
ショコラ「ワフッ!!」
妖子(アヤコ)「わっ! 待って、ショコラ!!」
ショコラ「ワンワン!!」
ショコラ「ワンッ、ワッフ!!」
通行人「うわぁ、チュパカブラだぁ!!」
通行人「実在したんだ!!」
通行人「ギャアァ、怖いィ!! 牛族は逃げろ、 吸血されるぞォ!!」
美羽(ミハネ)「やだ、ショコラが怯えてる。 おいで、こっちだよ!!」
ショコラ「キャイン」
美羽(ミハネ)「よしよーし! もう大丈夫だからね!!」
ショコラ「クゥン」
噛皮(カミカワ)(チュパカブラを抱き上げて くるくる回っている、だと・・・)
噛皮(カミカワ)「カッケー!!」
ショコラ「ワンワン!!」
ショコラ「ワン!!」
美羽(ミハネ)「あはっ、戻ったね。良かった」
噛皮(カミカワ)「銀兎って、チュパカブラ飼ってるの!?」
美羽(ミハネ)「ショコラはチュパカブラとのミックス犬なんだ。吸血欲求はしないし、ほぼ犬だよ」
噛皮(カミカワ)「UMAに変身したとき、怖くなかった?」
美羽(ミハネ)「最初は怖かったけど、すぐ平気になったよ。ショコラはショコラだもんね!」
ショコラ「ワン!!」
噛皮(カミカワ)「銀兎は凄いな」
美羽(ミハネ)「え?」
噛皮(カミカワ)「お前ならきっと、兎人の自分と 折り合いつけられるよ」
美羽(ミハネ)「そうだといいな」

〇綺麗な一戸建て
「うふ、うふふ」
美羽(ミハネ)「一週間ぶりに、元の姿で学校に行ける」
美羽(ミハネ)「やった~、戻れて嬉しい!!」
「早く行かないと遅刻するわよ、美羽~!」
「昨日までと違って、普通の速さでしか 走れないんだからね!!」
美羽(ミハネ)「やばっ、そうだった!!」
美羽(ミハネ)(あれだけ嫌だった兎人の姿に、 けっこう馴染んでたんだなぁ)
美羽(ミハネ)「ふふっ」
美羽(ミハネ)「いってきまーす!!」

コメント

  • 冒頭では、美羽さんとその家族のみが特殊な存在かと思いきや、学校そして街中で、、なんと賑やかな異(形)文化共生ファンタジー!まさかショコラまで……w

  • 最初に美羽が兎人に変身したときに「かわいそう、学校でいじめられちゃう」と思った私の気持ちを返してほしい。学校の友人どころかショコラまでチュパカブラだなんて、聞いてないよ。噛皮君も自分の姿を棚に上げた発言多めでしたね。「ほのぼの系カオス」を存分に堪能させていただきました。

  • あんないかつい見た目になってしまって、私だったら学校絶対行きたくないし、外に出たく無くなっちゃうだろうなって思ったけど、学校には同じような感じの、わかり合えそうな人たちばっかりなんですね!😂
    何なら美羽が一番マシかもしれないと思っちゃいました😂

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