あべこべワールド

ラム25

あべこべ(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
暦「ただいま」
琥珀「あなた、おかえりなさい 学校楽しかった?」
暦「いや、周りにレベルを合わせるのは大変だな」
緋翠「お父さんおかえり、お土産は?」
暦「小学生にお土産をねだるのか? 今のお前は27歳だぞ?」
緋翠「見た目は大人、中身は子供、その名も緋翠だもん」
琥珀「あらあら」
  娘が父親の振りをして父親がオカマで母親はどこか子供染みてる。
  そう見えるかもしれない。あるいは遊んでいるように。
  しかし彼らはある時体が入れ替わってしまったのだ。
  事故に巻き込まれ、目が覚めるとそうなっていた。
  病院にも行ったが匙を投げられた。
  神社でお祓いもした。
  しかしまるで効果が無かった。
  そして3人はいつか元に戻れると信じてその本人になりすますことにしたのだ。
  家では唯一自分の口調で話す事が許可されている。

〇研究施設のオフィス
  カタカタ、と暦、いや琥珀がタイピングしている。
  暦にブラインドタッチを教わり、キーボードは問題なく操作できる。
矢坂「おう、お疲れ!」
琥珀「あ、矢坂さん。こんにちは」
矢坂「やっぱ慣れねぇな・・・あんたが記憶を失う前はあぁ、としか言わなかったのに」
  琥珀は記憶喪失という設定で働いている。
  そうでなければ職場に着いて行くことは出来ない。
琥珀「あの人ったら会社だとそんな無愛想なのね」
矢坂「あの人?」
琥珀「なんでもない」

〇教室
教師「緋翠ちゃん、じゅうたすさんは〜?」
暦「13」
教師「はい、よく出来ました!」
暦「(勘弁してくれ、何が悲しくて算数を・・・)」
  そしてチャイムが鳴る。授業終了だ。
優斗「緋翠ちゃん頭いいね」
暦「別にたいしたことないわ」
優斗「緋翠ちゃん急に大人っぽくなったよね」
暦「・・・えぇ? そんなことないよぉ〜」
暦「(娘はこんな感じかな?)」
優斗「何か悩みでも──」
教師「そうそう緋翠ちゃん、今度三者面談あるからご両親に伝えておいてね」
暦「(・・・参ったな)」

〇おしゃれなリビングダイニング
緋翠「お父さんとお母さん早く帰らないかなあ」
緋翠「そうだ、待ってる間にお父さんが用意した宿題やらないと」
  学校を休んでいる間にも勉強出来るよう暦は緋翠に本や問題集を買った。
  家事ができない以上勉強するしかなかった。

〇おしゃれなリビングダイニング
暦「と言うわけで今度三者面談があるんだ。 緋翠、完璧な母親を演じてくれ」
緋翠「うん! 大丈夫!」
琥珀「私は仕事だから緋翠、頑張ってね」
緋翠「大丈夫だって! お母さんは心配性だなあ」

〇おしゃれなリビングダイニング
教師「緋翠ちゃんは学校ではとてもいい子ですよ。 成績も急に優秀になりましたし」
緋翠「そうですか? えへへ・・・」
暦「馬鹿、お前が照れてどうする!」
緋翠「あっごめんなさいお父さん・・・」
教師「・・・お父さん?」
暦「あぁ、いやなんでもないです!」
暦「(笑顔笑顔)」
教師「まさか・・・いえ、それで本題なのですが緋翠ちゃんは急に大人しくなってしまって。お母様、何か知りませんか?」
緋翠「・・・いえ、知りません」
教師「そうですか・・・分かりました、本日はありがとうございました」
暦「ふぅ、なんとかなったか」
緋翠「完璧だったでしょ?」

〇研究施設のオフィス
琥珀「(あなたと緋翠大丈夫かしら・・・)」
矢坂「おう、お疲れ!」
  そう言い矢坂はコーヒーを差し出す。
琥珀「ありがとうございます」
矢坂「やっぱ慣れねえな・・・前のあんたは悪いな、って言ってたのに」
琥珀「すみません」
  琥珀はコーヒーを飲む。
矢坂「あっ悪い、ブラックにしちまった。 あんた砂糖ないと飲めないんだったな」
矢坂「・・・あれ、あんた飲めないはずなのに・・・まさかあんた!」
琥珀「(しまった、飲み干しちゃったわ!)」
琥珀「(どうしよう、正体がバレ──)」
矢坂「さては別人がなりすましてるな! だとしたら最近様子がおかしいのも納得だ」
琥珀「いえ、そんな・・・」
矢坂「なんてな。最近そういう映画見たんだ。 ブラックも食わず嫌いならず飲まず嫌いだったんだろ?」
琥珀「そ、そう、そうなんです!」
矢坂「早く記憶が戻るといいな。あんたがそんなだと調子が出ねえ」
琥珀「(ほっ・・・)」
矢坂「・・・」

〇教室
教師「今日はお父さんにありがとうの手紙を書きましょう!」
暦「(えぇ・・・)」
教師「緋翠ちゃん、どうしたの?」
暦「なんでもないです!」
暦「(くそっ、自画自賛はしたくない・・・いや、娘を父親に置き換えて書けばいいか・・・)」
  30分後
教師「じゃあ順番に読んでもらいましょうか!」
優斗「はい! お父さんへ、いつもお仕事頑張ってくれてありがとう、お父さんは──」
  そして暦の番が迫った。
暦「お父さんへ。 生まれてきてくれてありがとう。 元気でいつもお土産をねだりプロレス技をかけるお父さんはとても愛らしいよ」
教師「(この子のお父様は一体・・・)」

〇研究施設のオフィス
琥珀「あなた、学校でうまくやれてるかしら・・・」
  そう言い琥珀は暦の写真を取り出す。
  暦の寝顔を盗み撮りしたものだ。
琥珀「ふふっ、あなたったらこんな無防備で・・・」
矢坂「(うわ、自分の寝顔眺めてニヤついてる・・・)」
矢坂「な、なああんた。これ、例の書類・・・」
琥珀「あ、ありがとう矢坂さん」

〇おしゃれなリビングダイニング
  チャイムが鳴る。
緋翠「はーい」
販売員「ご機嫌よう奥さん。 今日は奥さんに素敵な品物をお見せしようと思って」
緋翠「素敵な? どんなですか?」
販売員「この飲めばなんでも病気が治る薬です」
緋翠「でも誰も病気じゃないよ」
販売員「そう言わずに! 天才科学者が作ったので効果は保証します! 効果はこの天才! ・・・販売員が保証します」
緋翠「うーん、じゃあ買おうかな」

〇白い校舎
優斗「緋翠ちゃん見て! 逆上がり出来るようになったんだ!」
暦「わ、わー、すごーい」
慎二「僕なんて二重跳びできるよ! 見て、緋翠ちゃん!」
暦「か、かっこいー」
優斗「なんだよ、僕の方がすごいんだぞ!」
慎二「僕の方がすごい! ねぇ、緋翠ちゃんはどっちが凄いと思う!?」
暦「えぇと・・・」
暦「(くっ、娘がこんな人気者だとは・・・考えろ、娘ならなんて言うか・・・)」
暦「お父さんが1番凄い!」
優斗「そっかぁ、緋翠ちゃんいつもお父さん自慢してるもんね」
暦「え、娘が?」
慎二「娘? 緋翠ちゃんのお父さんえりーとって言ってたじゃん」
暦「あ、あぁ、そうよ!」
優斗「変な緋翠ちゃん・・・」
慎二「でもそんなところが・・・」

〇研究施設のオフィス
上司「君、要件は分かってるね?」
琥珀「はい」
上司「はっきり言って記憶を失った君は使い物にならん。前はあれほど優秀だったのに・・・」
琥珀「・・・すみません」
上司「そこで知り合いの科学者に君を見てもらおうと思うんだ。 彼なら君の記憶を取り戻してくれるかもしれない」
琥珀「本当ですか? 厳密には記憶喪失ではないのですが」
上司「? まあいい、仕事は今日はいい、ここへ向かってくれ」
琥珀「はい!」

〇諜報機関
石井「君が噂の記憶喪失者か。天才である私に任せれば解決するだろう」
  琥珀はこの科学者に思い切って話してみることにした。
琥珀「実は私たち体が入れ替わったんです。信じてもらえないかと思いますが・・・」
石井「なに、入れ替わった!? ・・・君たち家族全員で来てくれないか」

〇諜報機関
暦「と言うわけで私は娘と体が入れ替わったんです。 原因も不明です」
石井「入れ替わる前になにかきっかけはなかったかね?」
琥珀「そう言えばバスの事故に巻き込まれました。私たち3人はなんとか一命を取りとめましたが」
石井「・・・なるほどな。原因が分かった」
石井「君たち一家は強いストレスがかかった。それで互いに事故にあった瞬間に側にいた人物の事を考えるあまりその人格が生まれた」
暦「つまり今の私たちは二重人格ということですか?」

〇諜報機関
石井「またストレスを受ければ治るはずだ。そこで電気療法といこうか」
  そして3人は手を繋ぎ、強い電気を浴びる。
石井「(・・・これでいいかな)」

〇教室
優斗「緋翠ちゃん、あそぼ!」
緋翠「うん、いいよ!」
慎二「あっじゃあ俺も!」
緋翠「うん!」

〇おしゃれなリビングダイニング
緋翠「ただいま」
琥珀「おかえり」
暦「大変だったね」
緋翠「まあね、まさか──」
緋翠「今度は私と緋翠が、あなたと私が入れ替わるなんて」
琥珀「まあな・・・確かに人格は変わったがかえって状況は悪化してしまった」
  緋翠と暦が入れ替わったことで完全に仕事が出来なくなってしまった。
暦「ごめんなさい、お父さん」
琥珀「いや、お前は悪くない」
  一家が元に戻れる日は来るのか──

〇教室
教師「・・・もういいかな」
教師「どうやら誰も気付いていないようだね」
優斗「うん、私と優斗君が入れ替わったことに・・・」

〇研究施設のオフィス
上司「どうやら俺とあなたが入れ替わったことには気付かれてないようですね」
矢坂「うむ・・・」

〇諜報機関
石井「どうやら気付かれていないようですね」
販売員「あぁ。天才の私が・・・」

〇田舎町の通り
タマ「にゃ〜ご・・・」
ヤンキー「・・・人は愚かなり」
  世界では入れ替わりが深刻化していた・・・

コメント

  • 一家だけでなく周囲の人間もみんな入れ替わっていたなんて!最初から読み直して、ナルホド、と唸りました。フォークダンスみたいに少しずつ横にズレていって全人類が入れ替わったら収拾つかなくなりそう。

  • 2人で入れ替わるだけでも大変そうだけど
    3人となると、誰が誰に入れ替わったかわからなくなりそうです!😂
    入れ替わった相手の喋り方とかキャラとかをしっかり把握しないといけないし、大変ですよね😂

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