第1話 一期一会レンタルファミリー(脚本)
〇研究装置
一期一会レンタルファミリー
依頼人の依頼に応じて、家族をレンタルするサービス会社
レンタルする家族は、レンファと呼ばれるアンドロイド
レンタル期間は1週間・・・
テスラ「もうすぐレンファが完成するぞ」
こころ「どこ、どこにいるの?」
テスラ「あせるな。今登場する」
しおり「レンファのしおりよ」
こころ「はじめまして、しおりお姉ちゃん」
しおり「こんにちは、こころ」
しおり「で、こっちが自称・天才博士ね」
しおり「今どき自分のことを天才博士って、笑えるわね」
テスラ「口の悪いレンファだな」
しおり「で、私はどうすればいいの?」
テスラ「君には依頼人の「妻」になってもらう」
しおり「奥さんね」
しおり「相手が金持ちのイケメンだったらいいけど、それはないかー」
しおり「じゃあ、行ってくるわ」
こころ「待って、しおりお姉ちゃん!」
こころ「場所わかるの?」
しおり「あ、知らないわ」
こころ「もう。私が案内するわ」
しおり「助かるよ、こころ」
こころ「博士、じゃあ、行ってくる」
〇平屋の一戸建て
こころ「ここが依頼人のおうちです」
しおり「金持ちそうには見えないなあ」
こころ「あの、依頼人が来ますので、そういうことは・・・」
広太「どーも」
こころ「こんにちは。一期一会レンタルファミリーです」
こころ「こちらが奥様となられるしおりさんです」
広太「こんな美人が俺の妻に!?」
広太「えへ、えへ、えへへ・・・」
しおり「何だ、この変態」
こころ「そういうことは口にしないでください」
こころ「でも、もし変なことされそうになったら、すぐに通報してくださいね」
しおり「大丈夫。その前にぶっ飛ばしてやるよ」
こころ「それでは、後はよろしくお願いします」
広太「えへ、えへへ、えへへへ」
〇応接室
1週間後・・・
こころ「しおりお姉ちゃん、今日までだったよね。大丈夫だったかなあ」
テスラ「何の連絡もないし、異常アラームも鳴っていない。心配ないだろう」
こころ「私、迎えに行ってくる!」
テスラ「おい」
〇平屋の一戸建て
しおり「この変態! 変質者!」
広太「うるさい!」
広太「妻のくせに指一本も触れさせないくせに!」
こころ「あのー・・・」
しおり「私は妻として来たんだ。変なサービスなんてしねえよ」
広太「じゃあ、妻として何をしたんだ?」
しおり「それは、えーと、妻として夫を支えるために・・・」
広太「家事もしないで、テレビを見たり外出したりしてただけじゃないか」
しおり「あれ? そうだったかなー。あはは」
こころ「あの、お取り込み中すみませんが・・・」
こころ「今日でレンタル期間終了ですので、お迎えに上がりました」
しおり「おお、ラッキー。この変態ともお別れか」
広太「それはこっちのセリフだ。とっとと帰れ!」
こころ「最後ですので、お互いにお別れの言葉でもあれば・・・」
「ない!」
こころ「しおりお姉ちゃん・・・」
しおり「おっと、ひと言だけ」
しおり「お前は変態のダメダメ男だった」
広太「ああ? 最後まで悪口か?」
しおり「見た目も性格も最低だった」
広太「まだ言うか」
しおり「けど・・・」
しおり「お前と過ごした毎日は、何だかんだで楽しかったし、私は幸せだったよ」
広太「え!?」
広太「お前、本当は俺のことを・・・」
広太「しおり! 最後にキスだけでも!」
広太「ぐわっ」
しおり「死ね、変態」
しおり「こころ、帰るぞ」
こころ「はい・・・」
〇研究装置
こころ「しおりお姉ちゃんの話は面白いなあ」
しおり「じゃあ、とっておきの話を聞かせてやるよ」
こころ「本当?」
テスラ「そろそろ時間だ」
「・・・」
しおり「こころに会えて楽しかったよ」
しおり「自称・天才博士とあの変態夫に会えたのも悪くなかったな」
こころ「しおりお姉ちゃん」
しおり「こころ、泣くなよ」
こころ「しおりお姉ちゃん! 絶対、絶対、絶対、また会えるよね」
しおり「ああ、きっと会えるさ」
テスラ「しおり、元気でな」
しおり「おう。天才博士もな」
テスラ「時間だ」
しおり「うん」
こころ「しおりお姉ちゃん、絶対また会えるよね」
こころ「だって、私たち、家族だもん」
〇研究装置
1ヶ月後・・・
こころ「ドキドキするなあ」
テスラ「来るぞ」
そら「こ、こんにちは。レンファの、そ、そらです」
こころ「キャー! かわいい!」
こころ「そらちゃん、かわいい!」
そら「よろしくお願いします。こころお姉ちゃん」
こころ「キャー! お姉ちゃんだって。もっと言って」
そら「えっと・・・」
テスラ「こころ、いい加減にしろ」
テスラ「そら、お前は依頼人のお孫さんになるんだ。できるか?」
そら「うん。がんばる」
テスラ「そんなに力を入れることはない。ま、楽しんでこい」
そら「うん」
こころ「そらちゃん、私も一緒に行くよ」
そら「ありがとう、こころお姉ちゃん」
こころ「キャー! もう1回言って!」
テスラ「いいから早く行け」
〇大きな日本家屋
こころ「大きな家ね」
そら「はい」
栄一「こんにちは」
こころ「こんにちは。一期一会レンタルファミリーです」
こころ「こちらがお孫さんになるレンファのそらちゃんです」
そら「おじいちゃん、こんにちは」
栄一「おお。こんなかわいい子がわしの孫に」
こころ「はい」
そら「よろしくお願いします」
栄一「おお、なんて礼儀正しい」
栄一「こんないい子をありがとうございます」
こころ「では、1週間後に迎えに来ます」
栄一「わかりました」
〇応接室
3日後・・・
こころ「今日で4日目か。そらちゃん、大丈夫かな?」
テスラ「依頼人はきちんとした人だ。大丈夫だろ」
こころ「ちょっと様子を見てくる!」
テスラ「おい」
〇大きな日本家屋
こころ「こんにちは。遊びに来ちゃいました」
こころ「いいですか?」
栄一「どうぞ、どうぞ」
〇風流な庭園
こころ「そらちゃん!」
そら「こころお姉ちゃん!」
こころ「どう、ここでの生活は? 楽しい?」
そら「うん。だって、おじいちゃんと一緒だもん」
そら「今もお庭で遊んでたんだ」
こころ「そっか、楽しそうだね」
そら「うん!」
こころ「二人とも楽しそうでよかったです」
栄一「おかげ様で。本当にありがとうございます」
こころ「それでは、3日後に迎えに来ますね」
栄一「・・・」
栄一「すみません、ちょっと用事を思い出しましたので・・・失礼します」
こころ「えっ!?」
こころ「・・・」
〇応接室
テスラ「どうした、暗い顔して?」
テスラ「2人がうまくいってなかったのか?」
こころ「ううん。2人ともすごく楽しそうだった」
テスラ「そうか。それならいいじゃないか」
こころ「うん。それはそうなんだけど・・・」
〇大きな日本家屋
こころ「すみませーん」
栄一「どうも・・・」
こころ「そらちゃんを迎えに来ました」
栄一「そのことなんですが・・・」
栄一「レンタル期間を延長してもらえないでしょうか?」
栄一「いや、このままずっとレンタルできないでしょうか?」
こころ「えっ!?」
こころ「・・・それは、できません」
栄一「頼む! 金はいくらでも払う!」
こころ「できません。お金の問題ではありません」
栄一「わしは1人でずっとさみしい暮らしをしておった」
栄一「ところが、そらが来て人生が一変した」
栄一「毎日がこんなに楽しいなんて・・・こんな気持ちになったのは初めてだ」
栄一「もうそらなしでは生きられない。頼む!」
こころ「それは・・・できません」
栄一「どうしても連れていくと言うのなら・・・」
栄一「どんなことがあってもそらは渡さない」
こころ「栄一さん・・・」
そら「おじいちゃん」
栄一「そら!」
こころ「そらちゃん!」
そら「おじいちゃん、そんなことしちゃダメだよ」
そら「おじいちゃんは、私のことを本当の孫のようにかわいがってくれた」
そら「私、毎日すごく楽しかった」
そら「短い間だったけど、私、おじいちゃんと過ごせて、すごく幸せだった」
そら「おじいちゃん、大好き!」
栄一「そら・・・」
そら「おじいちゃん、いつかまたここに遊びに来ていい?」
栄一「そら・・・」
栄一「ああ、いつでも来なさい。ここはお前の家だ」
そら「うん!」
栄一「馬鹿なことをして申し訳ございませんでした」
こころ「いえ」
栄一「そら、風邪を引かないように気をつけるんだぞ」
そら「うん。おじいちゃんも元気でね」
〇応接室
そら「こころお姉ちゃん!」
こころ「キャー! はい、お菓子あげる」
そら「もうお腹いっぱいだよ」
テスラ「そろそろ時間だ」
こころ「うん・・・」
〇研究装置
こころ「そらちゃん、ハンカチ持った? お菓子は? あとは・・・」
そら「もう、大丈夫だよ。こころお姉ちゃん」
そら「博士、私を創ってくれて、みんなに会わせてくれて、ありがとうございました」
テスラ「元気でな」
そら「はい」
そら「こころお姉ちゃん、ありがとう」
そら「こころお姉ちゃんに会えて、すごくうれしかった。すごく幸せだった」
そら「だから泣かないで、こころお姉ちゃん」
こころ「泣いてないわよ。だって、私はお姉ちゃんなんだから。泣いたりなんて・・・」
そら「こころお姉ちゃん・・・」
こころ「そらちゃん、元気でね」
こころ「次に会ったときは、もっとお姉ちゃんっぽくなってるからね」
そら「うん! こころお姉ちゃん、大好き!」
テスラ「そろそろ時間だ」
そら「はい」
こころ「そらちゃん・・・」
テスラ「何度経験しても、やっぱりこのときは辛いな」
こころ「うん」
こころ「でも、大丈夫」
こころ「いつかきっと、またみんなに会えるもん」
こころ「だって、私たち家族なんだから」
出会いに喜びがあれば別れは悲しいものですが、依頼者が納得して送りだしているところが心温まって凄く良かったです。依頼者も心の成長を遂げていますから、まさに一期一会ですね。
それにしてもこの設定は連載するにはもってこいですね!
とても面白かったです。
レンタルだと分かって借りるわけですが、1週間は短いですよねぇ。揉め事も多そうなので、オムニバスにもしやすい。
レンファって言う、縮めたネーミングがいいですね。
ナルホドこういうのがあると趣が出ますね。
一期一会という設定が切なくて、依頼者との疑似家族より、こころちゃんと博士とも裏側で疑似家族であり、そこでの別れがより切迫してきます😭