クリスマスには奇跡の巡り合わせがあるようです。

絢郷水沙

奇跡は巡るのさ。(脚本)

クリスマスには奇跡の巡り合わせがあるようです。

絢郷水沙

今すぐ読む

クリスマスには奇跡の巡り合わせがあるようです。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇アーケード商店街
バイトのお兄さん「はあ・・・」
  俺は今、ケーキの路上販売のバイトをしていた。
バイトのお兄さん「いらっしゃいませー! クリスマスケーキはいかがですかー!」
  本当はクリスマスにバイトなんてしたくなかったさ。
  だが、クリぼっちになるのは、もっと嫌なんだ。
  だから俺は、バイトで忙しいと言って、言い訳していた。
バイトのお兄さん(リア充よ爆ぜろッ! !)
一人目のお客さん「あの・・・」
バイトのお兄さん「あ、はい!」
一人目のお客さん「ショートケーキ1つ、もらえるかしら」
バイトのお兄さん「ありがとうございます! 540円になります」
  その人は俺のタイプの美人だった。
バイトのお兄さん(一個だけ購入・・・この人もクリぼっちか?)
  そんなこと思いながら、俺は彼女からお金を受け取ると、ケーキを手渡した。
一人目のお客さん「あの・・・」
バイトのお兄さん「はい、何でしょう?」
一人目のお客さん「私、ゲーム会社で働いてまして」
一人目のお客さん「もしよろしければこれ──」
  それはゲームソフトだった。
一人目のお客さん「それ、マニアックすぎるのか、なかなか売れなくて・・・」
一人目のお客さん「宣伝も兼ねたクリスマスプレゼントです」
バイトのお兄さん「ありがとうございます!」
  そして彼女は去っていった。
バイトのお兄さん(ゲームは大好きだ。どれどれ・・・)
バイトのお兄さん(ん?)
バイトのお兄さん「って、二人用かよ!」
バイトのお兄さん「ふざけんなクソッ! !」
  俺はそれを机の隅へぶん投げた。

〇アーケード商店街
バイトのお兄さん「クリスマスケーキはいかがですかー!」
バイトのお兄さん(こうなったらヤケ糞だ)
夏菜子「あの、ケーキを一ついただけますか?」
バイトのお兄さん「はい。どのケーキをご所望で?」
夏菜子「チョコケーキを二つほど・・・あ」
バイトのお兄さん「どうかされましたか?」
夏菜子「そこにあるゲームなんですけど──」
バイトのお兄さん「これですか。これが何か?」
夏菜子「もしよろしければそれ売っていただけませんか?」
バイトのお兄さん「はぁ・・・ 別に構いませんが・・・」
夏菜子「本当ですか! ありがとうございます!」
夏菜子「実はいろんなお店で探してたんですけど、あまり人気ないのか置いてるお店なくて・・・」
バイトのお兄さん「そっすか」
バイトのお兄さん「よければそれ、無料で差し上げますよ」
夏菜子「え!? そんな、悪いですよ」
バイトのお兄さん「別に。それ貰い物なんで」
バイトのお兄さん「二人用だし・・・」
夏菜子「ありがとうございます」
夏菜子「あの、よろしければこれ」
バイトのお兄さん「・・・?」
夏菜子「今夜開催のコンサートのチケットなんですけど」
夏菜子「彼氏にサプライズで誘おうと思ってたんですけど、どうも忙しいみたいで・・・」
夏菜子「代わりと言ってはなんですが、受け取ってください」
バイトのお兄さん「ははは、これはありがとうございます・・・」
  俺はそのチケットと代金を受け取ると、ケーキとゲームを手渡した。
  彼女は微笑み、一度礼をすると、どこかへ消えていった。
バイトのお兄さん(ゲームがチケットに・・・)
バイトのお兄さん「しかもまた二枚・・・」
バイトのお兄さん(クリスマスは俺に嫌がらせしてんのか?)
バイトのお兄さん「ふざけろッ!!」

〇可愛らしい部屋
夏菜子「ただいまー」
夏菜子(って、彼はまだ仕事中か・・・)
研二「おかえりー」
夏菜子「って、いたの!?」
夏菜子「忙しくて帰り遅くなるかもって・・・」
研二「ははは・・・ごめん」
研二「実は、仕事は早く終わってたんだけど、クリスマスプレゼント探すのが忙しくて・・・」
研二「でも結局欲しかったのは見つからなくてね・・・」
研二「サプライズ失敗だよ」
夏菜子「そうなの。実は、私も・・・」
「・・・・・・」
研二「早速だけどはいこれ。プレゼント」
研二「君があるゲームを探してるって噂で聞いて、それを探してたんだけどね・・・」
研二「代わりと言ってはなんだけど、面白そうなの選んでみたんだ」
研二「喜んでもらえるかな・・・?」
夏菜子「ふふふ」
夏菜子「ありがとう。とっても嬉しいわ」
夏菜子「ねえ、どうして私がゲーム欲しいか知ってる?」
夏菜子「それはね、あなたが前に欲しいって呟いてたからよ」
研二「え? 僕が?」
夏菜子「そうよ。だいぶ前だけどね」
研二「あ、思い出した!」
夏菜子「だからね、はいこれ!」
研二「これ・・・僕がさっきまで探してたゲームだ」
夏菜子「偶然手に入ってね」
研二「なんだか不思議な感じだね」
研二「・・・・・」
夏菜子「どうしたの? 欲しかったんじゃないの?」
研二「ん? いや・・・特別欲しかったわけじゃないんだ。ただ」
夏菜子「ただ?」
研二「ほら、二人用って書いてあるでしょ。だから夏菜子と遊べたら楽しいだろうなって思ってさ」
夏菜子「研二さん・・・」
  二人はその日、夜通しゲームで遊びつづけた。
  お互いサプライズは失敗してしまった。
  けれど二人にとっては、お互いの気持ちを知れたことが、何よりのクリスマスプレゼントだった。

〇アーケード商店街
バイトのお兄さん「ふぅ・・・疲れた」
店長「うぃ〜、お疲れさん」
バイトのお兄さん「店長! お疲れ様です」
店長「はいお疲れっち」
店長「もう上がっていいよ」
バイトのお兄さん「え? でもまだ時間が・・・」
店長「いいって、いいって。サンタからのプレゼントって事で今日は早く帰っていいよ」
バイトのお兄さん「あ、ありがとうございます!」
店長「メリークリスマチュ♡」
バイトのお兄さん「キモ・・・」
  そして俺はご好意に甘えて、帰り支度を始めた。

〇アーケード商店街
バイトのお兄さん(って、言っても結局暇なんだよなあ・・・)
バイトのお兄さん(チケットはあるが一人で行ったって・・・)
バイトのお兄さん「はぁ・・・」
  と、その時──
バイトのお兄さん「あッ!?」
  チケットが風に飛ばされ、とんでゆく。
バイトのお兄さん「おい、待てッ!!」
  すると──
バイトのお兄さん「あ、あなたは・・・」
一人目のお客さん「あら、先ほどのサンタさん」
バイトのお兄さん「ど、どうも・・・」
一人目のお客さん「はいこれ。落とし物」
バイトのお兄さん「あ、あざっす・・・」
一人目のお客さん「じゃあ私はこれで・・・」
バイトのお兄さん「あ・・・」
  彼女が去ってゆく。
  俺は・・・
  おれは──!!
バイトのお兄さん「あの!」
一人目のお客さん「はい?」
バイトのお兄さん「もしよければ、この後一緒にコンサートに行きませんか?」
バイトのお兄さん「嫌じゃなければですが・・・」
一人目のお客さん「・・・・・」
一人目のお客さん「お兄さん相手いないの?」
バイトのお兄さん「・・・はい」
一人目のお客さん「いいわよ」
バイトのお兄さん「え!?」
一人目のお客さん「実は私も一人で過ごす予定だったの」
一人目のお客さん「だからよろしく」
バイトのお兄さん「本当ですか!?」
一人目のお客さん「ええ」
バイトのお兄さん「よっしゃーッ! ! ! !」
  そして俺たちは、聖なる夜を歩き始めた。
バイトのお兄さん(こんなことってあるんだなあ・・・)
バイトのお兄さん「八つ当たりしてたのが馬鹿みたいだ」
バイトのお兄さん(チケットくれたお姉さん、ありがとう・・・)
  その夜、俺はクリスマスの奇跡に感謝した。

コメント

  • クリスマスの出会い、ささやかな奇跡に心が暖かくなりました。ビジュアルがサンタそのままの店長さんが実は本物のサンタで、頑張る彼にクリスマスの奇跡をプレゼントしたのも彼で、最後に「ふふっ」と意味ありげに笑うのかと思いましたがさすがに考えすぎでしたね。

  • 彼が勇気を出したことから、彼女と約束できてよかったなぁと。
    わらしべ長者みたいに、アイテムを介していろんな人間模様があって、読んでて楽しかったです。

  • 良いことないと思っていても人生頑張っていれば,チャンスは巡ってくるのですね!しかも聖なる夜の日はなおさら!登場人物(店長等)のキャラが愛くるしくて面白かったです♪

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ