ケンカを止めて人類滅亡を阻止せよ(脚本)
〇一戸建て
ある晴れた日の天動家
〇おしゃれなリビングダイニング
天動雷来「なぁ、雨子」
天動雨子「なんでしょうか旦那様」
天動雷来「この雑炊、なんか変な味するんだけど」
天動雨子「昨日捕まえたGを粉砕して混ぜました」
天動雷来「おぇぇ・・・お前よくも──」
天動雨子「来たる飢饉に備えて昆虫食に慣れねばなりません」
天動彗生(ああ、やばい! またケンカ寸前だ・・・)
〇住宅街の道
外は突然の雷雨に見舞われた
〇おしゃれなリビングダイニング
天動彗生(やばい、このままだと父さんと母さんのせいで災害が起きる)
天動家の人間がケンカをすると天変地異が起こる。そのせいで世界は人類滅亡の危機に瀕していた。
天動彗生(俺がなんとかしないと)
天動雷来「そもそもてめぇが雨降らしすぎて植物が枯れたから飢饉が進んでるんだろうが! 雨女!」
天動雨子「私の地雷を踏んでいるのは旦那様ですけどね。雷だけに」
天動彗生「ねぇ、父さん、母さん」
「なに!? 今取り込み中!!」
天動彗生(こういうときの息はピッタリなんだな・・・)
天動彗生「父さんの雑炊、俺が食べるよ」
「えっ?」
天動彗生「俺、実はGが大好物なんだ」
天動雷来「正気か」
天動彗生「うん! 母さんの料理は絶品だし、このご時世昆虫食の推進は重要だからね」
天動雨子「彗生はよくわかっているわね 流石私の息子!」
天動彗生(ふぅ・・・なんとかケンカは鎮静化した あとは我慢してG雑炊を食べるだけ・・・)
天動雨子「はいどうぞ♡」
天動彗生(なんだこれ!? 雑炊ってより闇鍋!? てか鍋なの!?)
天動雨子「たくさん食べてね」
こうして彗生がお腹を壊すことにより、人類の危機は免れた。
〇教室の教壇
天日高校2年B組
朝
晴山ひかり「彗生おはよ~!」
天動彗生「いや、クラスでは下の名前で呼ぶなって はずい」
晴山ひかり「え~幼馴染なんだからいーじゃん」
天動彗生(こいつは思春期男子の気持ちわかんないのか)
晴山ひかり「そういえば朝の一瞬だけ台風だったけどまたケンカ?」
天動彗生「ああ・・・まぁ、何とか止めたけど」
晴山ひかり「まだ5月なのに台風は145号目だよ? そろそろ食糧不足も深刻化してるし」
天動彗生「うちの家族がすみません」
晴山ひかり「まあ台風くらいならいいんだけどね それより──」
晴山ひかり「くれぐれも彗生はケンカしないでね」
天動彗生「ああ。俺は絶対に家族とケンカしない」
晴山ひかり「さすが彗生~」
天動彗生「だからその呼び方やめろって」
こうしてこの日はつつがなく終わった。
〇一戸建て
それから1週間後
〇おしゃれなリビングダイニング
天動風火「るんるん~♪」
天動彗生「風火、どうしたんだ? 機嫌いいな」
天動風火「ちゅきプリあたったぁ~」
天動彗生「ちゅきプリ?」
天動雨子「今日は風火が好きなアニメの声優ライブに行くの。ほら、今着ている衣装もちゅきプリのよ」
天動風火「とうきょうどーむ!!」
天動彗生「ああ・・・でも、声優ライブって大きいお友達も多いんじゃ?」
天動雨子「それは旦那様がボディガードになってくれるから大丈夫よ」
天動雷来「ああ!? 俺が行くわけねぇだろ」
天動雨子「なんですって!? 昨晩行くって言ったじゃないですか」
天動雷来「んぁ? 酒飲んでて覚えてねぇよ」
天動雨子「アナタって人は」
天動彗生(やばい、このままだと──)
〇住宅街の道
外は台風151号が急接近して大荒れとなった
〇おしゃれなリビングダイニング
天動彗生(これはまずい・・・)
「テレビ『続いてのニュースです。現在猛威を振るっている台風151号の影響で、東京ドームで行われるコンサートが中止――』」
天動彗生(おわった・・・)
天動風火「うわぁぁぁぁぁぁぁあん」
天動彗生「風火落ち着いて!」
天動風火「パパとママのせい だいっきらい!!!!!!!!!!」
〇火山のある島
外では各地の火山が噴火しはじめた
〇おしゃれなリビングダイニング
「テレビ『緊急速報です。現在日本各地で噴火が起こっています。直ちに避難を――』」
天動彗生(まずい・・・はやく風火の怒りを鎮めないと世界がマグマの海に沈む)
天動彗生「ふ、風火、元気出して」
天動風火「パパとママのせいぃぃぃい」
天動彗生「ほら、兄ちゃんがコンサートよりもっといいものあげるから」
天動風火「そんなのないぃぃぃぃい」
天動彗生「ちゅきプリの声優さんに会わせてあげるから」
天動風火「えっ!? ほんとう!?」
天動彗生「ああ、兄ちゃん友達なんだよ」
天動風火「わーい♪ ちぇきとはぐとなげきっすもらう~」
天動彗生(今から声優の人脈つくらなきゃ・・・エグッ・・・)
こうして彗生が無謀な約束をすることにより、人類の危機は免れた。
〇住宅街の道
それから2週間
外では常に雨が降っている
〇おしゃれなリビングダイニング
「テレビ『続いてのニュースです。連日の台風により農家が致命的な打撃を受け、野菜の流通が危機的状況に――』」
天動彗生(最近父さんと母さんの仲が悪いせいで世界が・・・)
天動彗生(このままじゃGが主食になる日も遠くない・・・俺が何とかしないと)
天動雷来「なあ、彗生」
天動彗生「なに?」
天動雷来「俺、雨子と離婚しようと思うんだ」
天動彗生「は、はぁ!? なんで!?」
天動雷来「正直、もうGの飯は食えない」
天動彗生「それは父さんが母さんの地雷を踏むせいでしょ」
天動雷来「Gの煮つけ、Gの竜田揚げ、Gのチンジャオロース・・・お前はそんな食生活に耐えられるのか!?」
天動彗生「いや、だけどさ・・・父さんと母さんが離婚したらどうなるかわかってる?」
天動雷来「24時間365日台風だろ?」
天動彗生「そしたら人類が滅ぶのも時間の問題──」
天動雷来「っせぇな! 俺はそれよりGのが耐えられねんだよ!」
天動彗生「もう限界だ!! 父さんはわがまますぎる!!」
天動雷来「はぁ!?」
天動彗生「母さんがどんな思いで大正の花嫁演じてるか、風火がどんな思いで中2なのに5歳児演じてるか知らないだろ!!」
天動雷来「そ、それは・・・」
天動彗生「全部わがままな父さんの機嫌を取るためなんだよ!!」
天動彗生「俺だって・・・俺だって我慢を──」
天動彗生「もう知らないからな!!」
天動雷来「おい、彗生、お前が怒ったらどうなるか未知数なんだが──」
彗生は怒りを爆発させ、自室に籠城した。
〇落下する隕石
その頃宇宙では彗星が猛スピードで地球に迫っていた
〇散らかった部屋
「テレビ『緊急速報です。地球に接近中の彗星はあと24時間で地球に衝突する模様です。NASAは緊急声明を――』」
天動彗生(もう知らない。俺は17年間も耐えたんだ)
天動彗生(人類が滅亡しないように散々頑張って疲れた。死んだってかまわ──)
晴山ひかり「彗生!!」
天動彗生「わぁぁ!? どっから・・・てか服ボロボロじゃん」
晴山ひかり「台風で窓の鍵壊れてた!! 外がひどいから服も破れた!!」
天動彗生「か、風邪ひくぞ」
晴山ひかり「私の体調より人類の心配をしてよ!!」
天動彗生「それは・・・」
晴山ひかり「『俺は絶対に家族とケンカしない』って約束したじゃん!!」
天動彗生「だけどもう、限界なんだ・・・」
晴山ひかり「だったら──」
晴山ひかり「だったら私を頼ってよ!!」
天動彗生「えっ!? な、なんで泣──」
晴山ひかり「彗生はひとりで抱え込んで全然頼ってくれないじゃん。見てるこっちがつらかったよ」
天動彗生「ごめん」
天動彗生(まさかひかりがこんな風に思ってくれていたなんて・・・それなら──)
彗生は今まで抱えていた悩みを全部ひかりに打ち明けた。
天動彗生「ごめん、こんなに話して」
天動彗生(嫌われたかな)
晴山ひかり「彗生、つらかったね」
晴山ひかり「そんなの、私だったら2日で限界! 17年も耐えたのは偉いよ」
天動彗生「ひかり・・・」
ひかりは彗生のこれまでの経験をすべて受け止め、労いの言葉をかけ続けた。
天動彗生(こんな風に自分のことをほめてくれる人は初めてだ)
天動彗生(こんなに俺のことを思ってくれるひかりを、死なせるわけにはいかない)
天動彗生「ひかり、俺──」
晴山ひかり「う、うん」
晴山ひかり(もしかして、告白?)
天動彗生「俺、父さんと仲直りしてくる」
晴山ひかり(ちがった・・・)
天動彗生「ひかりを死なせるわけにはいかない」
晴山ひかり(きゃぁぁ・・・死んでもいい)
晴山ひかり「う、うん、頑張って」
こうして彗生は、リビングへ向かった。
〇おしゃれなリビングダイニング
天動彗生(ケンカしたことないから仲直りの仕方がわからない・・・緊張するな)
天動彗生「父さん、俺──」
天動雷来「や~、雨子のG飯マジ最高!!」
天動彗生「えっ!?」
天動雨子「よかったですわ、旦那様。次はタガメにする? コオロギにする? それともハ・チ・ノ・コ?」
天動雷来「あ、ああ・・・い、いいね」
天動彗生「父さん、一体何が──」
天動雷来「おう、彗生。実はさ、」
天動雷来「お前の成長に感動したんだわ」
天動彗生「はっ!?」
天動雷来「絶対に怒らないお前が感情爆発させんのみてたら泣けてきた」
天動雷来「だから俺も改心して昆虫食に慣れるわ!」
天動雷来(ほんとは彗生が怒るとガチで人類滅亡することにビビッたなんて言えねぇけど)
天動彗生(なんかよくわかんないけど、もしかして解決?)
天動彗生「あ、あの・・・俺と父さんの仲直りは──」
天動雷来「さてはお前、仲直りに慣れてねぇな?」
天動彗生(うっ、図星)
天動雷来「面と向かって言うのは小学生以来だけどよ、仲直りしようぜ」
天動彗生「う、うん」
「テレビ『緊急速報です。地球に接近していた彗星の軌道が大幅に逸れ、衝突の危険はなくなったようです』」
こうして天動家と地球に平和が訪れた。
天動彗生「まあこういう家族も、悪くないかも、な」
家族関係の良し悪し、又自身の感情維持で人類を救えるかどうかというとてつもない責任感を負わされるなんて、彼のストレス想像絶します・・・。でも、可愛い家族ですね!
天変地異とGの飯、究極の選択ですよね。彗生君にとってひかりちゃんはまさに希望の光だったってことかな。とにかく地球が無事で良かった。ってか、雨子さんが昆虫食さえ作らなかったら地球はずーっと平和なんじゃ?