先生、死んでる場合じゃありません!

大河内 りさ

P1・描いてください!(脚本)

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〇時計
???「──先生」
???「起きてください」
  この声は・・・担当の榊くん?
???「どうかマンガの続きを描いてください」
  いやぁね、
  もう描けないって言ったはずよ。
???「先生・・・」
???「死んでる場合じゃありません!」

〇神殿の広間
まつ江「あら、私・・・」
まつ江「ここは・・・?」
レイヴィダス「気が付かれましたか!」
まつ江「まぁ、派手な格好のお兄さんねぇ」
まつ江「・・・あら?」
まつ江「なんだか声が高いわねぇ」
まつ江「それに、この身体は いったいどうしたことかしら」
まつ江「天国に来ると若返るのね。嬉しいわ」
レイヴィダス「滝松黒江先生でいらっしゃいますか?」
まつ江「あらまぁ」
まつ江「天使様が私のペンネームを ご存知だなんて、なんだか恥ずかしいわね」
レイヴィダス「・・・ッ」
レイヴィダス「先生、お会いしとうございました!」
まつ江「あらあら。 天使様、落ち着いて」
レイヴィダス「も、申し訳ございません」
レイヴィダス「感動のあまり、 いささか取り乱してしまいました」
レイヴィダス「私は天使ではありません」
まつ江「では閻魔様でいらっしゃる?」
まつ江「あらまぁ。 私、地獄に堕ちてしまったのかしら」
レイヴィダス「冥界の王でもございません」
レイヴィダス「そしてここは、地獄とも違います」
レイヴィダス「──ここは、魔界『ヴァンダドラル』」
レイヴィダス「私は魔界の王、レイヴィダス・アルグレール・ヴァンダドラルでございます」

〇黒背景

〇木造の一人部屋
まつ江(家族みんなに見守られながら 逝けるなんて、私は幸せ者ねぇ・・・)
光一「母さん・・・」
郁子「お義母さん」
香苗「おばあちゃん・・・」
琴江「ひいばあば、どうしたの?」
光江「曾祖母ちゃんね、たくさん頑張ったから、 ゆっくりお休みするんだって」
光江「だから、みんなでお見送りしようね」
琴江「そうなんだ」
琴江「ひいばあば!」
琴江「お休みする前に、 ひいばあばの描いたマンガの続き教えて!」
香苗「ちょっ・・・ このタイミングで何言ってんの!!」
琴江「だって、ママも気になるでしょ?」
琴江「ひいばあばのマンガ── 『わたしのアルカディア』の終わり方!」
香苗「そっ、それはたしかに・・・」
光佑「でも、ばあちゃんずっと休載してたろ。 オチは決まってるのか?」
光江「お母さん・・・ 『わたアル』の結末はどうなるの!?」
光一「主人公アイリはどうなるんだ、母さん!」
郁子「シオンとユリウス、 どっちが本命なんですか、お義母さん!」
まつ江「うふふ・・・」
まつ江「それは、ね・・・」
まつ江「・・・・・・」
  あら、どこかから光が・・・
  お迎えが来たのかしら?
医師「・・・・・・・・・」
医師「・・・・・・」
医師「・・・ご臨終です」

〇黒背景

〇貴族の応接間
まつ江(私は家族に看取られて 老衰で自然死したはず・・・)
まつ江「ええと・・・レイビダス・ アールグレイ・パンダドラムさん?」
レイヴィダス「レイヴィダス・アルグレール・ ヴァンダドラルです」
レイヴィダス「レイとお呼びください、先生」
まつ江「ええと・・・レイさんでよろしいかしら?」
レイヴィダス「はいっ!!」
まつ江「ここは魔界だと仰っていたけれど、 私はこのあとどうなるのでしょう?」
まつ江「できればおじいさん──光太朗さんの 待っている天国に行きたいのですけれど」
レイヴィダス「先生っ!!」
まつ江「レイさん!? 土下座なんてして、どうしたの?」
レイヴィダス「お願いします!」
レイヴィダス「ここ、魔界で『わたしのアルカディア』の 続きを執筆してください!」
レイヴィダス「先生の未完の大作を、 どうか完結させてください!」
レイヴィダス「物語の結末を見届けたいのです・・・!!」
まつ江「あら、まぁ・・・」
ストラスール「レイヴィダス様!!」
アルフォル「レイ!!」
レイヴィダス「何だ騒々しい。 ストラスール、アルフォル──」
ストラスール「先程、儀式の間より膨大な魔力の波動を 感知いたしましたが、何事で──」
まつ江「・・・・・・」
「・・・・・・」
ストラスール「そのホムンクルスは何です」
アルフォル「レイ、お前ロリコンだったんだな」
レイヴィダス「違う。失礼なことを言うな」
レイヴィダス「こちらは漫画家の滝松黒江先生だ」
まつ江「お邪魔いたしております」
ストラスール「漫画家・・・?」
アルフォル「漫画家ってあれか!?」
アルフォル「レイが持ってる本! あれを描いたやつのことだろ!?」
アルフォル「すっげー!!」
ストラスール「あれは異世界の物では ありませんでしたか?」
ストラスール「どうしてそれを ホムンクルスごときが・・・」
ストラスール「あの魔力はまさか・・・」
ストラスール「ホムンクルスを器にして、その漫画家 とやらの魂を転移させたのですか!?」
ストラスール「サムズアップしないでください腹立たしい」
レイヴィダス「正しくは転移ではなく転生だ」
レイヴィダス「先生の本来のお身体は 耐用年数を超えていらした」
レイヴィダス「そこで、誠に勝手ながらホムンクルスへと 先生の魂を移させていただいたのです」
まつ江「あらまぁ・・・」
まつ江「いわゆる、異世界転生というものかしら?」
レイヴィダス「そう考えていただいて 差し支えございません」
まつ江「曾孫がね、転生モノ好きなのよ」
まつ江「聞いたら喜ぶでしょうねぇ」
レイヴィダス「『わたアル』も輪廻転生が テーマでいらっしゃいますね」
まつ江「本当によくご存知なのね・・・」
レイヴィダス「デビュー当時からのファンですから!!」
レイヴィダス「それで先生、先程のお願いなのですが」
レイヴィダス「未完となってしまった『わたアル』の 続きを描いていただきたいのです」
まつ江「続きを・・・」
ストラスール「『わたアル』・・・?」
アルフォル「お前がさっき言ってた異世界の本── マンガだよ」
レイヴィダス「そう!!」
レイヴィダス「正式名称『わたしのアルカディア』!」
レイヴィダス「主人公アイリが自分探しをしながら理想郷を追い求め、過去、現在、未来を渡り歩き旅をする壮大な物語だ!!」
レイヴィダス「少女漫画の草分け的存在で滝松黒江先生の代表作でもある。50年にも及ぶ連載で既刊は97冊。現在は休載中だったが先生の文字数」
アルフォル「あー、はいはい」
アルフォル「器の寿命が尽きて、 マンガが未完になっちゃったんだろ?」
アルフォル「続き描くなら俺も読みたい!」
レイヴィダス「この通りです、先生!!」
まつ江「ええと・・・」
ストラスール「少々よろしいでしょうか、レイヴィダス様」
レイヴィダス「見て分かるだろう、今は忙し──」
ストラスール「マンガの続きが読みたいがためだけに、 禁忌の魔法に手を出したと・・・?」
レイヴィダス「その通りだ!」
ストラスール「何てことを・・・ッ」
ストラスール「ご自身の状況が判っておいでですか!?」
まつ江「私、転生したらいけなかったのかしら」
まつ江「もう一度死にましょうか?」
レイヴィダス「何てことを仰るんですか!! ダメです、絶対ダメ!!」
レイヴィダス「先生に謝罪しろ、ストラスール!」
ストラスール「なぜ私が──」
アルフォル「まあまあ」
アルフォル「もう術は完成しちゃったんだし、 しょーがないじゃん」
ストラスール「では、あなたが命懸けでレイヴィダス様を お守りくださるのですね。アルフォル?」
アルフォル「この人、俺が命を懸けるほど 弱くないっしょ」
ストラスール「弱 い ん で す」
「えっ?」
ストラスール「禁忌である転生魔法を使用した今、 この人の魔力はスカスカのスライム並──」
ストラスール「いえ・・・」
ストラスール「ス ラ イ ム 以 下 な の で す !!」
「えぇーっ!?」
アルフォル「何でお前まで驚いてんだよ」
レイヴィダス「そこまで消耗しているとは思わなかった」
ストラスール「クーデターを起こせば十中八九成功します」
アルフォル「殺るなら今ってことか」
レイヴィダス「物騒なことを言うな!!」
まつ江(私のせいでレイさんの魔力が なくなってしまったのね・・・)
まつ江(どうしたらいいのかしら)
アルフォル「心配しなくても大丈夫だよ」
まつ江「えっ・・・?」
アルフォル「俺、アルフォル・レガルゼス」
アルフォル「きみは? 滝松先生でいいの?」
まつ江「ええと、滝松というのはペンネームでして」
アルフォル「ペンネーム?」
まつ江「世を忍ぶ仮の名前でございます」
アルフォル「おおっ、かっけー!!」
まつ江「うふふ」
まつ江「本名は黒滝まつ江と申します。 よろしくお願いいたします」
アルフォル「わわっ、そんなにかしこまらないでよ」
まつ江「ええと・・・ アルフォンス・レゴデスさん?」
アルフォル「アルフォル・レガルゼス!」
アルフォル「アルでいいよ」
まつ江「アルさんですね」
まつ江「ごめんなさいねぇ。 年寄りはカタカナに弱いんですよ」
アルフォル「年寄りって・・・ まつ江ちゃん、何歳なの?」
まつ江「数えで88でございました」
アルフォル「それって人族の年齢だよな? 魔族でいうと──」
アルフォル「900歳!?」
アルフォル「すっげーババアじゃん!!」
レイヴィダス「アルフォル!!」
アルフォル「あっ、ごめん!!」
まつ江「いえいえ、いいんですよ。 立派なババアですからね」
アルフォル「いや、その見た目で言われても・・・」
レイヴィダス「さぁ、事情が分かったのなら お前たちからもお願いしてくれ」
ストラスール「私は承服しておりません」
アルフォル「俺は読みたいな! 続き描いてよ、まつ江ちゃん」
レイヴィダス「先生、いかがでしょうか・・・?」
まつ江「ええと・・・その・・・」
まつ江「ごめんなさい、 マンガの続きは・・・描けません!!」

次のエピソード:P2・靴をどうぞ!

コメント

  • 魔界にまでファンがいるとは凄すぎる
    しかも、代償があっての転生までさせるなんてよっぽど続きを読みたかったんですね。本人もそこまでとは思ってなかったみたいですが。
    何故、続きを――と、気になるところです

  • この設定からしてタマリマセン!
    レイヴィダスさんの常軌を逸した漫画愛に笑ってしまいます。この斬新な異世界転生モノ、しかもロリババア、最高ですね!

  • ロリババアキタ━(゚∀゚)━!
    そして漫画家転生させる為の代償があまりにもデカすぎる…リスクヘッジ出来ぬ魔王様、現実なら見境なくグッズ買い漁ったり、廃課金者になってそう😂
    続き楽しみにしてます!🙌

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