episode. 1(脚本)
〇草原
陽だまりに照らされた小高い丘。
白花が咲き乱れる木の下で、目を覚ます。
目覚めたての体は意志に順応しないようで、
大きく伸びをすればボクの喉がゴロゴロと鳴った。
木の幹から反対側を覗く。
日の光がボクの真っ黒な顔を照らした。
×××((・・・眩しい))
一度外に出した体を、再び木陰に避難させる。
喉まで出かかっていた欠伸は、
刃物のように鋭い日差しによって容易く消された。
まあ良い目覚ましになったからいいけれど。
×××((誰かが来る前に、場所を移した方が良さそうだな))
今日は快晴。猫と人間のどちらにとっても散歩日和だ。
街全体を見下ろせるここは、人間には結構人気なのだ。
こんな場所に居たら、人間と遭遇するのも時間の問題。
ボクは花の木に背を向けて、そそくさと丘を下り始めた。
〇西洋の街並み
街に下りてくると、賑やかな声が近づいてきた。
やはり今日はいつにも増して人間が多い。
少女「ママー!ねこさんがいるよ!」
女性「本当?」
女性「・・・!」
女性「ミカ、いい子だからあれには近寄っちゃだめ」
少女「えー?なんで?」
幼い少女とその母親、
そして彼女達の会話を聞いた周囲の人間達が
一斉にこっちを向く。
人間達は、ボクを見た途端に嫌悪の視線を向けてきた。
・・・人間達にとって、黒猫は魔女の仲間の象徴。
つまりは悪モノ。嫌われモノ。
大抵は今の状況みたいに睨まれる。
酷い時は近くにあったありったけのものを投げられたっけ。
近寄ってくるのは、
純粋な子供か、よっぽどの物好きだけ。
でもボクは、人間の言動に一喜一憂はしないさ。
ボクは人間に群がられるのが苦手だから、
むしろ避けてくれるのはありがたい。
・・・それに、
ボクを避ける人間達の中に、
ボクが黒猫以外の姿をとれることを知る人間は
きっと居ないだろうから。
そんなことを考えながら、
人間達に背を向けて、薄暗い路地へとかけていく。
〇中東の街
ボクは、人間の間では
「影」や「闇」と表現されるもの。
影は、本当なら意志を持たない。
大きさは、光の量と物体の大きさによって決められる。
ある物知りな人間から、そう教えてもらった。
でも、ボクは例外である。
──不思議なことに、
気づいたらここに在った。
〇中東の街
〇屋敷の書斎
×××「・・・」
×××「自分の現状を把握していて、ちゃんと使いこなせてはいる・・・」
×××「・・・心配は杞憂だったかしら」
???「『館長』。少し宜しいですか」
『館長』「今お取り込み中、って言ったら?」
???「・・・どうせまた"彼ら"を眺めているんでしょう?入りますよ」
『館長』「別にいいじゃない、これも仕事なのだから」
『館長』「相変わらず君は厳しいわね、『栞』」
栞「館長がマイペースなだけだと思いますが」
栞「・・・この本、ここにあったんですね」
栞「館長、そろそろ一度読んだモノを元の場所に戻す習慣くらいつけてくれませんか」
『館長』「私たち3人しか居ないんだから良いじゃない?」
栞「良くありません。 いつも俺が探し回っているじゃないですか」
『館長』「それはいつも助かっているわ。 ありがとう」
栞「そういう事では無くて・・・」
『館長』「・・・それで。 君はその本を取りに来ただけ?」
栞「・・・嗚呼そうだ、 本題を忘れるところでした」
栞「館長にお聞きしたいことがあるんです。 今、離れられ・・・ますよね?」
『館長』「せっかく良いところだったのに。 仕方ないわね・・・」
栞「安心してください、面倒事では無いのですぐ終わりますよ」
『館長』「そうだと良いんだけれど」
栞「ならば復習がてら、館長が見ていたものを教えてくださいよ」
『館長』「そうね・・・」
『館長』「・・・また君に"観測"を頼むことになるかもしれないから尚更ね」
栞「観測は『詩』に頼んでください。 俺はもう御免です」
???「わっ・・・!!」
『館長』「・・・あら、噂をすれば」
栞「また図書をまとめて運ぼうとしたんですかね・・・」
栞「・・・仕方ない、俺が様子見てきます。 先に行ってもらえませんか」
栞「・・・あ、場所は1階のD3です」
『館長』「分かったわ。 詩をよろしくね」
栞「はい」
『館長』「もう、あの子たちはいつも慌ただしいんだから・・・」
『館長』「ごめんなさい、続きはまた後で」
『館長』(____が、今度は幸せな一生を送れますように)
台詞と環境が大好物過ぎて気に入ってます😆
ずっとこの物悲しさ世界に浸っていたい...♨️
黒猫と図書館が好きな私にはたまらなく好みの雰囲気でした。登場人物それぞれの役割や関係性、「観測」の意味するところなどが謎のままなので、これからの展開に期待大です。
黒という色を軸にしたお話の展開がとても興味深かったです。黒猫に姿を変えることで得られる心の静けさみたいなもの共感できました。