Q.今の○○の心境は? (脚本)
〇豪華なリビングダイニング
福泉家の朝はさわがしい
福泉久栄「問題:ティッシュの消費量が世界一の国は?」
福泉果名「日本」
福泉久栄「正解!」
福泉丸美「問題:ジャイアントパンダの1日の食費は?」
福泉果名「1万850円」
福泉丸美「正解!」
福泉果名「問題:室町時代後期の8人の若者を主人公とする長編伝奇小説は?」
福泉久栄「『ノルウェイの森』?」
福泉丸美「『ホームレス中学生』よ!」
福泉果名「不正解 正解は『南総里見八犬伝』」
福泉正(はぁ、また今日も『フクリーグ』の時間だ)
福泉家の朝はクイズで始まる。
なぜなら──
福泉久栄「問題:今の俺の心境は?」
福泉丸美「ちょーエクセレントな愛娘♡」
福泉久栄「正解♡」
福泉果名「問題:今の私の心境は?」
福泉果名「正解:うざい」
福泉久栄「問題:辛らつだな~と思っているのは?」
福泉丸美「パパとママ」
福泉久栄「正解!」
福泉家は『クイズ形式でしか話せない』家系なのだ。
しかし、正だけにはその特性が遺伝しなかった。
福泉正(手が痛い・・・血豆がつぶれてる)
正は今日も遅刻ギリギリまで拍手係をさせられた。
福泉正(もうこんな家族は嫌だ)
〇教室
花丸高校1年A組
昼休み
福泉正「はぁ・・・」
葉加瀬真実「福泉くんどうしたの?」
福泉正「あ、委員長」
葉加瀬真実「名前で呼んでいいよ! それより大丈夫?」
福泉正(委員長はやさしいな)
福泉正「家族がちょっとね」
葉加瀬真実「ケンカしたの?」
福泉正「いや、実は──」
真実のやさしさに触れて、正は家族の特性のことを話した。
葉加瀬真実「なるほどね」
福泉正(こんなこと話されても困るよな・・・)
葉加瀬真実「その特性、治せるよ」
福泉正「えっ!?」
葉加瀬真実「実はお父さんが遺伝子特性を治す国家プロジェクトに参加しているの」
福泉正「国家プロジェクト・・・」
葉加瀬真実「今なら応募者全員サービス! みんな研究対象になれるよ!」
福泉正(子供向け雑誌みたいな軽いノリでいいの!?)
葉加瀬真実「放課後に源田くんの家で検証するからこない?」
福泉正「あ、ああ・・・」
正は研究対象の源田家に行くことになった。
〇実家の居間
源田家
〇実家の居間
源田玄太「Yo! 委員ちょーと知らんやつYo!」
福泉正(たぶん特性はアフロだろうな)
葉加瀬真実「源田家はお母さんが遺伝特性を持ってるんだよね?」
源田玄太「そうだYo! おかんカモンYo!」
福泉正(源田くん、これで特性ないんだ・・・)
福泉正(さらにクセ強っ)
源田玄花「よく来ただげんぽよ」
福泉正(だ、だげんぽよ?)
葉加瀬真実「父の代理の葉加瀬真実です 『語尾にだげんぽよがつく』遺伝特性を治したいんですよね?」
福泉正(そんな遺伝特性が!?)
源田玄花「そうだげんぽよ。困るだげんぽよ」
葉加瀬真実「具体的にどんなことにお困りですか?」
源田玄花「えっとだげんぽよ、あのだげんぽよ・・・ご飯にするだげんぽよ? お風呂にするだげんぽよ? それとも──」
要約すると『ムードが出ない』ことが玄花の悩みだ。
葉加瀬真実「ムードが出ないと何かと困りますよね」
福泉正(葉加瀬さんもムードがないと困ることあるの!?)
葉加瀬真実「でも大丈夫! 今日は父から薬を預かってきましたから」
葉加瀬真実「あ、間違えちゃった」
福泉正(なんでダイナマイト持ってんの!?)
葉加瀬真実「こっちです」
葉加瀬真実「これを飲めば3.49秒で治りますよ」
福泉正「こわっ。あやしっ」
葉加瀬真実「福泉くん、心の声がもれてるよ」
福泉正「ご、ごめんなさい・・・」
源田玄花「飲むだげんぽよ」
福泉正(決断はやっ)
源田玄花「まずいだげんぽよ。本当に良くなるだげんぽよ。不安だわ・・・あれ!?」
葉加瀬真実「もう治りましたよ。ぴったり3.49秒です」
福泉正(すごい)
源田玄花「これで『それともわ・た・し?』ができるわ」
葉加瀬真実「ぜひ終電も逃してくださいね」
源田玄花「まぁ、おませさん」
福泉正(葉加瀬さん、どんだけ人生経験豊富なんだよ)
源田玄太「助かったYo! ありがとYo!」
葉加瀬真実「よかった!」
源田玄太「あばYo!」
福泉正(源田くんの『Yo!』のほうは治らないのかな・・・)
〇住宅街
帰り道
時刻は17:30
葉加瀬真実「どうだった?」
福泉正「すご、いね」
葉加瀬真実「今から福泉家に行こう!」
福泉正「えっ!?」
葉加瀬真実「応募者全員サービスが17:49までなんだ 福泉家までは徒歩15分だからぎりぎり間に合うよ」
福泉正(なんで僕の家知ってるの!?)
葉加瀬真実「1分でも過ぎると1粒2億円かかるけど、どうする?」
福泉正「そんなに!?」
葉加瀬真実「国家プロジェクトだもん」
福泉正(どうしよう・・・でも効果は確かだし、それに──)
〇豪華なリビングダイニング
「問題・・・正解!」
〇住宅街
福泉正(もうあんな家族はこりごりだ)
福泉正「わかった。お願いします」
葉加瀬真実「そう来なくっちゃ!」
〇豪華なリビングダイニング
こうして真実が福泉家にやってきた
福泉丸美「問題:お母さんは何を用意するでしょう?」
福泉正「ミルクティーだろ」
福泉丸美「不正解 正解はロイヤルミルクティーでした」
福泉正(めんどくさっ)
葉加瀬真実「福泉家はクイズが大好きなんだね」
福泉正「うん・・・だから遺伝特性を消すことは3人には秘密にしてほしいんだ」
葉加瀬真実「教えると薬を飲んでくれないもんね」
福泉正「ダメかな?」
葉加瀬真実「ううん、大丈夫! こういうシチュもゾクゾクするし」
福泉正(葉加瀬さんってやっぱりこわい・・・)
真実は『健康サプリ』と偽って薬を3人に渡した。
福泉果名「問題:今の私の心境は?」
福泉果名「正解:あやしい」
福泉久栄「問題:中国の古典「列子」に由来し、『無駄な心配』を表す言葉は?」
福泉果名「杞憂」
福泉久栄「正解!」
福泉丸美「問題:お母さんは家族の何を気にしてる?」
福泉果名「健康」
福泉丸美「正解!」
福泉果名「問題:私の今の心境は?」
福泉果名「正解:親に従うしかない」
こうして3人は薬を飲んだ。
福泉久栄「問題:この薬の効果は?」
福泉果名「現在は不明」
福泉久栄「せ・・・」
「・・・」
「・・・」
〇豪華なリビングダイニング
福泉正「どうしたんだろう?」
葉加瀬真実「なるほど! 特性が消えたからクイズができなくなったんだね」
福泉正「え? 普通の会話も?」
葉加瀬真実「福泉家は玄花さんと違って会話の100%がクイズだったから、ごっそり消えちゃったんだね」
福泉正「そんな・・・」
葉加瀬真実「初めての研究結果! 実に面白い!」
福泉正(この人には人の心がないのか?)
福泉正「戻してくれ」
葉加瀬真実「どうして? 福泉くんが望んだことでしょ?」
福泉正「こんな状況は望んでない 僕の家族を返してくれ」
葉加瀬真実「せっかくいい研究対象だったのに・・・まぁいいよ、解毒剤あるから」
福泉正「ほんとに?」
葉加瀬真実「でも応募者全員サービスは終了したから、3つで合計6億円だよ!」
福泉正(そんなの払えない。どうすれば──)
福泉正(いつも無表情の果名が泣いてる・・・僕がなんとかしないと)
福泉正「葉加瀬さん、なにか勝負して僕が勝ったら解毒剤をくれないか?」
福泉正(そんな簡単にはいかないだろうけど・・・)
葉加瀬真実「面白そう! いいよ」
福泉正(いいんだ!?)
葉加瀬真実「じゃ、クイズで!」
福泉正(クイズは苦手だ・・・どうしよう)
葉加瀬真実「お互いに問題を出して先に3問正答した方が勝ちね。じゃあ第1問!」
福泉正(やばい、ペースにのまれてる・・・)
葉加瀬真実「問題:タイの首都の正式名称は?」
福泉正(あ、これ進○ゼミでやった!)
福泉正「バンコク!」
葉加瀬真実「不正解!」
福泉正「ええ!?」
葉加瀬真実「正解はクルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・・・」
福泉正(まるで呪文だ・・・)
こうしてあっという間に真実が2点を取った。
〇豪華なリビングダイニング
福泉正(このままじゃ負ける)
葉加瀬真実「問題:ジャイアントパンダの1日の食費は?」
福泉正(これって確か果名が──)
福泉正「1万850円」
葉加瀬真実「ええっ! 正解!」
葉加瀬真実「でも次で私の勝ちよ IQ192の私に死角はない!」
福泉正「知識では圧倒的に不利・・・でも──」
〇豪華なリビングダイニング
「問題:今の──」
〇豪華なリビングダイニング
福泉正(そうだ! うちの家族はいつもあの形式でクイズを出していた)
福泉正「問題:今の福泉家の心境は?」
葉加瀬真実「なにそれ? ルール違反じゃない?」
福泉正「ルールは『3問先取』だけだろ?」
葉加瀬真実「くっ!」
葉加瀬真実「でもだいじょーぶ! 人の気持ちなんて簡単!」
葉加瀬真実「高い薬飲めてラッキー♡でしょ?」
福泉正(やっぱり葉加瀬さんは人の気持ちがわからないんだ)
福泉正「みんな、正解は?」
福泉正「どうみても不正解だ」
葉加瀬真実「そんな~この私が・・・」
『人の気持ちがわからない』という真実の特性を見抜いた正は、同点に追いついた。
福泉正(残り1問 このクイズに答えられれば僕の勝ちだ)
葉加瀬真実「問題:今の私の心境は?」
福泉正(うっ・・・やり返された)
福泉正(一体どうすれば──)
福泉果名「た」
「えっ!?」
福泉果名「た・・・のし、い・・・」
葉加瀬真実「なんで!? お父さんの薬の効果は絶対なのに!」
福泉正(果名は頑張って答えてくれたんだ・・・泣けてくる)
福泉正「葉加瀬さん、正解は?」
福泉正(どうせ不正解と答えるだろうけど)
葉加瀬真実「正解!」
福泉正「えっ!?」
葉加瀬真実「薬に抗えるなんて世紀の大発見! もう、しびれるぅ~」
福泉正(やっぱり葉加瀬さんこわい・・・でも──)
福泉正「約束は約束だ! 解毒剤を渡してほしい」
葉加瀬真実「ま、今日のところはいいよ」
こうして福泉家の遺伝特性は無事に回復した。
〇住宅街の道
葉加瀬真実「いい研究対象ができたわ! 次はアレを試して──」
葉加瀬真実「ふふっ♡」
〇豪華なリビングダイニング
その晩
福泉久栄「問題:今の俺の心境は?」
福泉丸美「ちょーエクセレントな愛娘♡」
福泉久栄「正解♡」
福泉果名「問題:今の私の心境は?」
福泉果名「正解:お兄ちゃんナイス」
福泉正「えっ」
福泉正(いつも拍手するだけだったのに・・・嬉しい)
福泉正「問題:今の僕の心境は?」
「家族最高!」
福泉正「正解!」
こうして正は、家族と一緒にクイズを楽しんだ。
互いを思いやる気持ちさえあれば家族のあり方には正解なんてないんだという貴重な正解を教えてくれるストーリーでした。Q. このストーリーを読んだ読者の正しい感想は?に正解があったら怖いなあ。ドキドキ。
四六時中クイズ形式で会話するとか、すごい家族だなあ、私には絶対無理だなあと驚いていたけど、葉加瀬さんの性格の方がもっとやばくてびっくりでした!🤣
そして、源田くんのキャラがおもしろくて友達になりたいと思いました(笑)
遺伝特性、恐るべし!それ以上に恐ろしい葉加瀬さんの性格ですね!
クイズは出題者と回答者が存在しないと成り立たないので、福泉家はステキなコミュニケーションツールを持っていると考えられますね。何よりも楽しそうですし