蓮水家のお水さま!(脚本)
〇清潔な浴室
ジャー、ザバー。。
蓮水リョウ「やっぱ一日の始まりは朝シャンだよな!温泉街の井戸と天然ガスは最高だぜ! ってアレ?シャワーの勢いが、、」
「なんで?なんでぇ??水が出なくなっちゃったわ」
〇明るいリビング
蓮水リョウ「母さん、水が出ないって、そっちも!?」
蓮水レイ「お皿の洗剤が流せない。どうしましょう!?」
蓮水ミチコ「どうしたもんかの。トイレに行っとったんじゃが、水が流れんようになってしもうた」
蓮水サヤ「え〜!今日、日曜だけどすぐ水道屋さん来てくれるの?」
蓮水ケンジ「いや、キッチンもトイレもお風呂場も、となると井戸に何かあったんじゃないか?」
蓮水リョウ「ちょっと井戸見てみようぜ」
〇枯れ井戸
蓮水ケンジ「うーん、完全に水がなくなってるな。井戸ってこんないきなり枯れるものだっけ?」
「うりゃー! お主ら、お水のありがたみを知らんのかぁ!」
蓮水リョウ「わ!、、な、なんだぁ!?」
スイレン「わしは”お水さま”、名をスイレンと言う。お主ら、わしに助力せよ!」
蓮水リョウ「はぁ!?」
〇明るいリビング
スイレン「これまで15年間、お主らがお水をふんだんに使ってこられたのは、わしが泣いておったからじゃ」
蓮水リョウ「いきなりそんなこと言われてもな。 15年間て、なんで逆に今更泣き止んだんだ?」
スイレン「ふと我に返ったのじゃ。『わしはなんで泣いておるのか』と」
蓮水ミチコ「ああ、よくあるねぇ」
蓮水サヤ「ないわよ、お婆ちゃん」
蓮水リョウ「ぴーぴー泣くのが役目とは大変だな。”お水さま”も」
スイレン「たわけがぁ!お水のありがたみを分かっとらん!」
蓮水リョウ「だぁ!いきなりはたくな!そのハリセン、どっから出てきた!」
スイレン「フン!」
蓮水レイ「はい、スイレンちゃん。あ~ん」
スイレン「それはおやきじゃな。頂こう」
蓮水リョウ「おれが朝ごはんにとっといたやつだよな、それ」
パクッ
スイレン「ん、うう!」
スイレンの顔がみるみるゆがみ、目から涙がボロボロとこぼれ落ちる
と同時に、キッチンと風呂場からジャーと水の音がした
蓮水サヤ「あ!水が出た!どうなってんのか訳わかんないけど、この子の話、ホントみたいね」
蓮水ケンジ「お母さん、おやきの中に何か入れたの?」
蓮水レイ「カラシをお口いっぱい入れたら泣けると思って」
スイレン「があぁ~!たしかに泣いて水が出ていたと言ったが、これはぁ、う、みず、水〜!」
蓮水リョウ「水の精が人間に水を求めるなんてな」
スイレン「うるさい!」
〇明るいリビング
スイレン「そもそも泣くのは役目ではない。わしは儀式をやり直して ”清水のチカラ”を宿した勾玉を得ねばならんのじゃ」
蓮水レイ「儀式は一度失敗したの?」
スイレン「わからん。儀式を失敗したからなのか、泣いておった理由も思い出せんのじゃ」
しかし、とスイレンは俺の方を見る
スイレン「僅かながらそのチカラをお主らから感じるのじゃ。特にお主」
蓮水リョウ「へっ?!」
蓮水ケンジ「う〜ん。なんだか信じられないけれど、でも昔、この土地に伝わる精霊の話を母さんに聞かせてもらったな。ねえ、母さん」
蓮水ミチコ「なんじゃったかの」
蓮水サヤ「精霊はこの土地の五つの神社をめぐり、五芒星を地上に描く」
蓮水サヤ「そうしてチカラの源となる勾玉を得て、人々の家に憑く話でしょ。私もお婆ちゃんから聞いたことあるわ」
蓮水リョウ「その話と、俺らからチカラを感じる理由がどうつながるんだよ」
蓮水サヤ「さあ。あんた昔何かしたんじゃないの?」
スイレン「水のチカラは血との親和性が高い。お主から家族に影響した可能性があるの」
蓮水リョウ「んなこと言われてもな」
蓮水リョウ(ん、でも小さかった頃に妙な目に会ったことがあったような。 大きな黒い影と青い石、、)
蓮水レイ「家族みんなでスイレンちゃんに協力して儀式をしたらいいのね。どうしたらいいかしら?」
スイレン「うむ。こんな感じでじゃな、この温泉街の五箇所の神社をこの順番に廻ってほしいのじゃ」
スイレン「何があるか分からんが、、わしと一緒に神社を廻ってほしい」
蓮水リョウ「そんな不安そうにすんなよ、スイレン。 家族でリレーってワケか。俺の朝シャン生活のためにも、一丁やってやるか!」
〇農村
蓮水ミチコ「家の裏手の神社が水神さまだからここからスタートなんだね。スイレンちゃん。手を繋ごいで行こうかね」
スイレン「うむ。、、温かいの」
蓮水ミチコ「ほほ、大丈夫よ。行きましょう」
〇村の眺望
蓮水ケンジ「よし今度は僕の番だ」
蓮水ミチコ「私はこの神社で儀式の成功を祈っているよ」
スイレン「ありがとうの」
蓮水ケンジ「、、リョウは口がちょっと悪いけど けっこう熱いとこもあるんだよ」
スイレン「わしがカラシに泣いておったとき、愉快そうに笑っておったがの」
蓮水ケンジ「あはは」
〇寂れた村
蓮水レイ「おつかれさま。じゃあスイレンちゃん、行きましょうか」
蓮水ケンジ「僕もここで成功を祈ってるよ」
スイレン「うむ」
蓮水レイ「儀式が終わったら、おいしいおやきを焼いてあげましょうね」
スイレン「カラシ抜きで頼む」
蓮水レイ「ふふっ、そうね」
〇集落の入口
蓮水サヤ「おつかれ!」
蓮水レイ「気をつけてね。ここで祈ってるわ」
蓮水サヤ「ここまで問題ないみたいね。チカラは取り戻せてきてる?」
スイレン「うむ。胸の中で勾玉がカタチをとり始めた」
見るとスイレンの胸元が青白く光っている
蓮水サヤ「そういえば昔、リョウのやつが家から帰ってきて、青い石の女の子を助けなきゃ!とか騒いだことあったわね。もしかして、、」
ガサッ
突然二人の目の前に黒い大きな影が現れた
蓮水サヤ「!?、、私の背中にのって!神社まで走り抜けるよ!」
〇村に続くトンネル
蓮水サヤ「なんとかセーフ!」
蓮水リョウ「姉ちゃんどうした!? 陸上大会の時みたいな走りだったぞ」
蓮水サヤ「大きな影がいきなり目の前に現れたのよ!でもやっぱり神社には入って来られないみたいね」
鳥居の前に大きな影がひしめいている。影はだんだん集まってきているようだ
蓮水リョウ「ヤバいじゃん、、アレ?なんか見覚えが、ってスイレン?」
スイレン「あ、あいつじゃ、思い出した。あいつに追われてわしは、、わしは井戸に逃げ込んだんじゃ。勾玉のカケラをお主に隠して」
蓮水リョウ「、、そうか!昔、俺は追われてるお前と出会って、とっさに青い石を飲み込むよう言われた」
蓮水リョウ「その後一緒に逃げたけど、家の手前で俺たちは一度追いつかれて別れてしまった、、」
スイレン「もうダメじゃ。再びリョウに勾玉を隠しても同じことのくりかえしじゃ」
スイレン「また一人じゃ。今度はここで消えるのを待つしかない、、」
蓮水リョウ「何言ってんだよ!神さまになるんだろ!」
スイレン「、、でも」
蓮水サヤ「みんなで儀式の成功を祈ってるわ。大丈夫よ」
蓮水リョウ「信じろ、スイレン!俺たち家族の祈りがこの土地の神さまに届いてるはずだ!」
瞬間、鳥居から家の方向へ一筋の光の道が伸びていき、影ははじき飛ばされた
蓮水リョウ「ほら!走り抜けるぞ!」
〇寂れた村
一旦は離れた影だったが再び寄り集まり、どんどん光の道を狭めていく
スイレン「やはりダメじゃ、、お前だけでも逃げよ」
蓮水リョウ「何言ってんだよ!俺たちの血にはお前のチカラの一部が宿ってんだろ」
蓮水リョウ「それに母さん特製のおやきを食べたんだから、お前はもう家族だ! 一人ぼっちにはさせねえ!とにかく家族を信じて走れ!」
スイレン「!?、、わかった!」
神社で祈ってくれている家族を意識するスイレン
すると、神社から4本の光がスイレンに向かって伸びてきた
蓮水リョウ「もうあと少しだ、たどり着くぞ!」
〇農村
光の道がわずかに残される中、神社にたどり着くリョウとスイレン
瞬間、スイレンの胸元から青い輝きが放たれた!
スイレン「勾玉が完成した!」
スイレン「わしはもう一人ではない!! お前らなぞ恐るるに足らん!」
どこからともなく現れた雨雲から洪水のような雨が降り、影を水流で押し流していく
〇明るいリビング
蓮水レイ「は〜いスイレンちゃん! おやきができましたよ」
スイレン「うむ、カラシは入ってないのじゃな」
蓮水ミチコ「こんなにたくさん、今日は何か祝い事かの」
蓮水サヤ「もう!お婆ちゃんたらスイレンちゃんの神さま誕生日をお祝いしよう!って一緒に作ったじゃない」
蓮水ケンジ「おめでとう、スイレンちゃん!」
スイレン「、、ほんとにここにいて、いいのじゃな」
蓮水ケンジ「もちろん!」
蓮水リョウ「つーか、15年前からずっと井戸にいたんだろ」
蓮水リョウ「今度はちゃんとみんな一緒だな」
スイレン「リョウ、、」
蓮水リョウ「俺の朝シャン生活に乾杯!」
スイレン「お主!相変わらずわしをなんだと思っておるのじゃ! たあっ!」
蓮水リョウ「だぁ!ハリセンはやめろー!」
スイレン「ありがとうの、リョウ」
おしまい。
五芒星やら勾玉やら、安倍晴明とファミリーコメディの融合といった感じで読み応えがありました。精霊の「お水さま」が儀式を経て無事に水神様になれて良かった。スイレンの涙が家庭用水になるところがユニークでした。
スイレンちゃんキャラも喋り方も可愛いです☺️
カラシが入ったおやき食べさせられてた時は、お母さん鬼畜でおもしろかったです😂
私もお水を使う時は、ありがたい気持ちを持って使おうと思いました😌