働け!羽鱈家!!

スローペンシル

ケーキ屋さん編(脚本)

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〇男の子の一人部屋
凡一(ボンイチ)「──まずい」
凡一(ボンイチ)「非常にまずいぞ」
凡一(ボンイチ)「使える金がこれしかない」
凡一(ボンイチ)「流石にこれじゃ、生活できないよな・・・」
凡一(ボンイチ)「よし──」
凡一(ボンイチ)「働こう!!」

〇おしゃれなリビングダイニング
凡一(ボンイチ)「──そんな訳で、我が家には金がない」
凡一(ボンイチ)「3日食えるかも怪しい状況だ」
琴音(コトネ)「なぜお金がないんでしょうか・・・?」
凡一(ボンイチ)「お前が無駄遣いばかりしているからだ」
身友(ミユ)「ちゃんと働いて稼いでいるはずだぞ・・・」
凡一(ボンイチ)「姉貴がバイト中に割る皿を弁償して、収支はマイナスだ」
父親「一般家庭より収入が低いというのか── 一体なぜだ・・・?」
凡一(ボンイチ)「親父が無職のおっさんだからだ」
凡一(ボンイチ)「いいか、俺もバイトをしているが、 このままではまともに生きていけない」
凡一(ボンイチ)「だからお前たちも──」
凡一(ボンイチ)「働くんだよ!!」
父親「断る!! 人の下に付くことはプライドが許さないのだ!!」
身友(ミユ)「父さん、そんなことを言うな」
身友(ミユ)「働くのは案外、気持ちがいいぞ」
凡一(ボンイチ)「姉貴がしているのは食器の破壊だけだろ」
凡一(ボンイチ)「そういうのは働くって言わない」
琴音(コトネ)「どうせ働くならケーキ屋さんがいいです」
父親「お、いいではないか!!」
父親「私達で作り、私達で売れば、誰の指図も受けずに済む」
琴音(コトネ)「しかも、毎日ケーキ食べ放題です!!」
父親「素晴らしいアイディアだ!!」
父親「それでは早速明日から──」
「頑張るぞおおお!!」
凡一(ボンイチ)「──俺達ケーキ作ったことないだろ!!」

〇男の子の一人部屋
凡一(ボンイチ)「昨日はあんなこと言ってたが、本気じゃないよな」
凡一(ボンイチ)「そもそも、あいつらのやる気が持続するわけないか・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
琴音(コトネ)「──兄様、いつまで寝ているんですか!!」
琴音(コトネ)「ケーキ屋さんの朝は早いのですよ!!」
凡一(ボンイチ)(やる気、継続してた!!)
琴音(コトネ)「琴音は既に一仕事終えましたよ」
琴音(コトネ)「こちらをご覧ください」
凡一(ボンイチ)「メニュー表とポスターか?」
琴音(コトネ)「はい、琴音が描いたのです!!」
琴音(コトネ)「昨日のうちに1000枚ほど発注しておいたのですが、もう届きました」
凡一(ボンイチ)「発注しすぎだろ!!」
琴音(コトネ)「今、姉様が町中に配っています」
琴音(コトネ)「本日、15時に開店しますから、 兄様も急いで準備してくださいね」
凡一(ボンイチ)「開店って昨日今日でできるもんか!?」
父親「凡一、暇なら手伝ってくれんか」
父親「ケーキの作り方が分からなくて、 変な物体しかできんのだ」
父親「私はこれを『賢者の石』と呼んでいる」
凡一(ボンイチ)「そんな、いいもんじゃねぇだろ!!」
父親「これが1000個ある」
凡一(ボンイチ)「1000単位でミスするな!!」

〇おしゃれなキッチン
凡一(ボンイチ)「親父に任せると、貴重な食料が全部パーだ」
凡一(ボンイチ)「ここは俺がやるしかないな」
凡一(ボンイチ)「さて、まずは、家に何があるか把握しないとな」
凡一(ボンイチ)「──」
父親「──すまない、家中の食材を使ってしまったのだ」
凡一(ボンイチ)「手遅れかよ!!」
琴音(コトネ)「一応使えそうなものもありますよ」
凡一(ボンイチ)「逆になんでチョコが余ってるんだ・・・」
琴音(コトネ)「でも、大丈夫です!!」
琴音(コトネ)「こんなこともあろうかと、姉様に材料のおつかいを頼んでおきましたから!!」
凡一(ボンイチ)「それ、本当に大丈夫か・・・?」
身友(ミユ)「ただいま帰ったぞ!!」
身友(ミユ)「いやー、町中の皆に声をかけていたら、遅くなってしまった!!」
琴音(コトネ)「おかえりなさい、姉様」
琴音(コトネ)「材料は買ってきてくれましたか?」
身友(ミユ)「ああ、もちろんばっちりだ!!」
凡一(ボンイチ)「ちゃんとしたもの買ってきたんだろうな」
身友(ミユ)「失礼な奴だな!!」
琴音(コトネ)「何を買ってきたんです?」
身友(ミユ)「ああ、まずはこれだ」
身友(ミユ)「そしてこれだ」
身友(ミユ)「最後にこれだ」
身友(ミユ)「1000本ほど買ってきたぞ」
「バナナしか買ってない!!」
凡一(ボンイチ)「お前、貴重な金を全部バナナにしたのか!!」
父親「バナナで世界征服でもするつもりかね!!」
琴音(コトネ)「しかも、最後の方ちょっと食べてありますよ!! 完全に途中でお腹空いてますよ!!」
身友(ミユ)「仕方がないだろ・・・」
身友(ミユ)「ケーキの材料なんて、わからなかったんだ!!」
琴音(コトネ)「琴音もわからないですよ!! 姉様に頼めば大丈夫だと思ったんです!!」
父親「私も知らんぞ!!」
凡一(ボンイチ)「誰も知らねぇじゃねぇか!!」
凡一(ボンイチ)「何でケーキ屋開こうと思ったんだ!!」
身友(ミユ)「しかし、参ったな・・・ 町中の人には宣伝してしまったぞ」
琴音(コトネ)「これで何もご提供できなかったら、 いい笑いものですよ・・・」
身友(ミユ)「父さんに『土下座パフォーマンス』をしてもらうのはどうだろうか?」
父親「するわけないだろ!!」
父親「私は無職だが、プライドだけは一人前なのだよ!!」
琴音(コトネ)「厄介な大人ですね」
凡一(ボンイチ)「大体なんでバナナしか買ってこなかったんだ?」
身友(ミユ)「美味しいものと美味しいものを足したら、 もっと美味しくなると思ってな」
父親「いや、それは『とんかつ』と『カレー』みたいに別々のものを組み合わせないと意味ないだろう」
父親「『バナナ』と『バナナ』で喜ぶのは、サルか君だけだ」
凡一(ボンイチ)(──まてよ)
凡一(ボンイチ)(美味しいもの同士を組み合わせるか・・・)
凡一(ボンイチ)「──そうか思いついたぞ!!」
凡一(ボンイチ)「ちょっと待っててくれ!!」
「──?」

〇おしゃれなリビングダイニング
凡一(ボンイチ)「──どうにか菓子を作ったぞ!!」
身友(ミユ)「なるほど、チョコバナナか!!」
琴音(コトネ)「これなら皆さんにもご提供できますね!!」
凡一(ボンイチ)「もはやケーキ屋ではないけどな」
父親「しかし、少々味にパンチがないな」
凡一(ボンイチ)「バナナに溶かしたチョコをコーティングしただけだしな・・・」
身友(ミユ)「他にも何か足してみたらいいんじゃないか?」
琴音(コトネ)「もう家には食料がないのです」
身友(ミユ)「そうなのか・・・」
身友(ミユ)「──む、だがこれはなんだ?」
父親「それは『賢者の石』だ」
父親「とても食べる気にはなれない代物だ」
琴音(コトネ)「父様がそれを言うのですか・・・?」
身友(ミユ)「でも、食べられなくはないのだろう?」
身友(ミユ)「ならば、試してみる価値はある」
凡一(ボンイチ)「魔女鍋みたいになっているが・・・」
身友(ミユ)「いただきます!!」
身友(ミユ)「──う、ううぅッ!!」
凡一(ボンイチ)「おい、大丈夫か!!」
琴音(コトネ)「姉様、無理しないでください!!」
父親「やはり劇物だったか!?」
身友(ミユ)「──うまい!!」
「うまいんかい!!」
凡一(ボンイチ)「体は大丈夫なのか!?」
身友(ミユ)「全く問題ない」
琴音(コトネ)「苦しんで見えたのは何だったんですか!!」
身友(ミユ)「思ったより美味しくて驚いただけだ」
父親「紛らわしいのだよ!!」
身友(ミユ)「『賢者の石』の苦みが、チョコバナナとマッチしていて何とも癖になるぞ」
凡一(ボンイチ)「そうなのか・・・?」
琴音(コトネ)「にわかには信じがたいですね・・・」
父親「確かめるには食べてみるほかないだろう」
「・・・いただきます」
「うまい!!」
凡一(ボンイチ)「これならもしかすると・・・」
琴音(コトネ)「皆さんに満足してもらえるかもしれません!!」
身友(ミユ)「しかも、材料は沢山あるから、量産も可能だぞ!!」
父親「一攫千金を狙えるじゃないか!!」
父親「もし売れるようなら、私が責任者となろう」
身友(ミユ)「ずるいじゃないか!! 私が作ったものだぞ!!」
父親「『賢者の石』を開発したのは私だ」
父親「それに君達はまだ未成年」
父親「経営に携わるには早いだろう」
琴音(コトネ)「それはそうですが・・・」
凡一(ボンイチ)「無職の下に付くのも癪だな・・・」
父親「今日からはオーナーだ!!」
父親「それに心配するな、収益は皆で山分けしようじゃないか」
凡一(ボンイチ)「・・・まあ、それなら」
父親「よし、話はまとまったな」
父親「それではお前たち、気合を入れていくぞ!!」
「──おおッ!!」

〇店の入口
  ──それから数日後
女子高生A「あ、ここだ!! ケーキ屋なのにチョコバナナ売ってる店!!」
女子高生B「最近流行りの店じゃん!!」
女子高生A「入ってみよ!!」

〇ケーキ屋
凡一(ボンイチ)「いらっしゃいませ」
女子高生A「えっとー、『チョコバナナ、賢者の石を添えて』をください!!」
女子高生B「あ、私も同じのください」
凡一(ボンイチ)「かしこまりました!! 『チョコバナナ、賢者の石を添えて』2つ入ります!!」
「はい、よろこんでー!!」
女子高生A「居酒屋のテンションでやってるんだ・・・」
  ──あの日から3日
  俺達が作ったチョコバナナは
  空前の大ブームとなっていた
  あまりにも流行ったので、
  店を持つこともできるようになった
  こんな生活がずっと続くといいな
凡一(ボンイチ)「いらっしゃいませ!!」
警察「責任者の方いらっしゃるかな?」
父親「何だね、藪から棒に──」
警察「このお店、保健所の許可を得ていないという疑いがあるのですが──」
父親「えっ、確かに得てはいないが・・・」
警察「それじゃあ、営業しちゃいけませんよ」
警察「ちゃんと許可をもらわないと」
父親「そうなのか!?」
父親「そういうのは物語の都合で、省略されるものだろう!!」
警察「いや、普通にダメですね」
警察「あと『賢者の石』って何ですか? 衛生管理基準満たしてます?」
父親「『賢者の石』は私が開発した物質だ!! 衛生管理基準などは知らん!!」
警察「あ、それ何かしらの法律に引っかかる可能性ありますね」
警察「ちょっと、お話し長くなりそうなので、署でお聞かせください」
父親「え、ちょっと逮捕とかはやめてくれんかね!!」
  父親が警察に連行されるのを見送りながら
  俺達は思った──
「無職に経営なんて任せるんじゃなかった!!」
  おしまい

コメント

  • これほどまでに「一寸先は闇」「万事塞翁が馬」の家族を見たことがない。無人島で生き延びるよりもある意味毎日がスリリングですね。とか言いつつ、チョコバナナ好きの私としては「賢者の石」のレシピを知りたくてたまらないです。

  • こと働くということについて、アカン人の寄せ集めの家族ですねww 行動力とポジティブさにより繰り広げられるドタバタが楽しいですね!

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