一句目(脚本)
〇教室
──自分の中学校生活は”微妙”そのものであった。
部活には入らず、友達も少なく、ぬるま湯のような三年間を過ごした。
「高校こそ・・・」
「今までとは違う自分になろう・・・」
固い決意を胸に秘め、中学を卒業した
はずだった
〇教室
──入学から3週間
鈴木 晴也「翔太!弁当食おうぜ!」
岩岸 翔太「いいね」
何とか無事に、友達を作ることができた
鈴木晴也。隣の席の男子である。
入学初日に話しかけてくれて以来、毎日昼食に誘ってくれる。
鈴木 晴也「高校生活にも慣れてきたな~」
岩岸 翔太「僕はまだ少し慣れないかな」
鈴木 晴也「そうか~」
何気ない会話が続く中、突然"試練"は訪れる
鈴木 晴也「ところで、翔太はクラスの女子は誰がタイプ?」
岩岸 翔太「唐突だね・・・」
岩岸 翔太「入学したばかりで、まだ分からないかな」
岩岸 翔太「・・・女子をそういう対象として 見たことないし」
鈴木 晴也「その純粋さは今時珍しいな」
岩岸 翔太「未だにタイプっていう感覚が よく分からなくて・・・」
岩岸 翔太「こうかばつぐんだ!みたいな感じ?」
鈴木 晴也「一部勘違いしてそうだけど、 まあ大体そんなところだな」
岩岸 翔太「なるほど」
岩岸 翔太「ちなみに、今人気な女子っている?」
鈴木 晴也「うーん、クラスで人気なのは・・・例えば」
鈴木 晴也「クール系な大野さんとかはどう?」
岩岸 翔太「・・・」
岩岸 翔太「喋ってる所を見たことないから、 何とも言えないかな」
鈴木 晴也「そうか! じゃあさ」
鈴木 晴也「ボーイッシュな宮下さんは?」
岩岸 翔太「明るいけど、タイプかと言われると・・・」
鈴木 晴也「それじゃあ」
鈴木 晴也「イケイケギャルな皆森さんは?」
岩岸 翔太「・・・」
岩岸 翔太「イケイケ・・・だよね・・・」
鈴木 晴也「・・・」
鈴木 晴也「イケイケだよな・・・」
岩岸 翔太「うーん」
岩岸 翔太「やっぱり、まだ分からないかな」
鈴木 晴也「まあ、これから探していけばいいさ!」
鈴木 晴也「お前は優しいし、いい出会いがあるはず!」
岩岸 翔太「そうなるといいんだけどね」
〇教室
こうして会話をしていると、時々考える。
自分たち家族が受けた"呪い"のことだ
良くも悪くも
この呪いで、岩岸翔太の高校生活は大きく変わってしまったことだろう。
自分は今までとは完全に別の人間だ。
ある意味、元の自分は晴也が言うような
”純粋な男”とは真逆であったというのに
岩岸 翔太「自分は・・・」
岩岸 翔太「このままで、良いのだろうか?」
〇教室
──放課後
教師「気を付けて帰れよー」
ザワザワ・・・
女子生徒「なつっちー!またコンクール落ちた・・・」
女子生徒「今回はマジで全力で描いて・・・」
皆森 夏葉「うんうん、めちゃ頑張ってた!」
女子生徒「やっぱ私じゃ芸術家の道は厳しすぎるかな・・・」
皆森 夏葉「・・・確かに芸術家の道は険しいらしいね」
皆森 夏葉「けどさ!まりやんの絵、わーしは大好き!」
皆森 夏葉「苦難を乗り越えた先の、魂の一作を!」
皆森 夏葉「わーしは見たいよ!」
女子生徒「ありがとう・・・なつっちー!!!」
鈴木 晴也「翔太、また明日な!」
岩岸 翔太「うん!」
〇学校の校舎
宮下柚子「あっ、いた!翔ちゃん!」
岩岸 翔太「・・・」
岩岸 翔太「学校では話しかけるなとあれあほど・・・」
宮下柚子「一緒に帰ろ!どうせ帰り道は同じだよ!」
岩岸 翔太「もう高校生だし、恥ずかしいよ」
宮下柚子「えー、いいじゃん」
宮下柚子「まだちびっこ翔ちゃんだった頃は」
宮下柚子「一緒に帰ってたんだしさ」
岩岸 翔太「良くないよ・・・」
宮下柚子「あんパンヒーローに夢中だった頃は」
宮下柚子「もっと素直だったのになあ」
岩岸 翔太「確か、宮下みたいな小悪党をやっつける話だよね」
宮下柚子「だれがバイキンじゃ!」
宮下柚子「せめて、オレンジのほうにして欲しいよ!」
岩岸 翔太「じゃあ、そういうことで」
宮下柚子「あっ」
宮下柚子「もう・・・」
〇通学路
〇一軒家の玄関扉
家に入るということは
嫌でも”呪い”に向き合わなければならない
深呼吸をして、覚悟を決める
岩岸 翔太「ただいま・・・」
〇高級マンションの一室
「おかえりー!」
岩岸 翔太「おかえりー じゃないよ!」
岩岸 翔太「バレたら終わりなんだよ!?」
岩岸 翔太「もっと真面目に演じてって言ってるじゃん!」
岩岸 翔太「皆森・・・」
岩岸 翔太「・・・・・・・・・・・・・・・」
岩岸 翔太「いや・・・」
「” お 爺 ち ゃ ん ” !!!」
皆森 夏葉「すまんのー!」
皆森 夏葉「やっぱイケイケギャルがゲキムズで」
皆森 夏葉「ちょびっし慣れないっつーか?」
岩岸 翔太「よく人生相談してるみたいだけど」
岩岸 翔太「やたら貫禄があるギャルになってるし・・・」
皆森 夏葉「若者の力強い息吹を感じて、つい色々助言したくなる的な?」
岩岸 翔太「だから、ギャルからそんな語彙出ないって!」
岩岸 翔太「声色とのギャップで脳がバグる・・・」
岩岸 翔太「大体、わーしって何・・・」
皆森 夏葉「そりゃ、「あーし」と「わし」が奇跡的に出会って」
皆森 夏葉「爆誕したギャルい一人称っしょ!」
岩岸 翔太「多分、その二つは出会わない方が良かったよ」
岩岸 翔太「語感が悪すぎる・・・」
「まあまあ~、二人とも」
「落ち着きなさんな~」
岩岸 翔太「他人事じゃないよ!」
「お 兄 ち ゃ ん !」
岩岸 翔太「男子にちょっかいかけちゃダメっていつも言ってるじゃん!」
岩岸 翔太「男子高校生なんて、飢えた獣なんだし」
岩岸 翔太「一瞬で勘違いされちゃうって!」
宮下柚子「えー、ほどほどに自重してるのにー」
岩岸 翔太「まったく・・・」
岩岸 翔太「少しはお父さんを見習っておとなしくして欲しいよ・・・」
「それは"違う"」
大野 桜「私はクール女子を演じている訳ではないわ」
岩岸 翔太「え?」
大野 桜「女子高生の会話に入れないだけよ・・・」
岩岸 翔太「えぇ・・・」
大野 桜「無理に会話についていこうとして」
大野 桜「『大野さんの話題っておじさんみたいね』」
大野 桜「なんて言われたらと思うと・・・」
大野 桜「老いは嫌なものね・・・」
岩岸 翔太「自然の摂理なのに・・・」
大野 桜「そのうちわかるわ!」
岩岸 翔太「分かりたくない・・・」
〇高級マンションの一室
これが、岩岸家にかかった『呪い』の正体だ
春休みのある日、岩岸家は"反転"した
祖父「岩岸 冬樹」改め、「皆森 夏葉」
兄「岩岸 伊代」改め、「宮下 柚子」
父「岩岸 橘平」改め、「大野 桜」
全員が高校生の肉体に若返った上で、
性別が"反転"してしまった
〇高級マンションの一室
岩岸 翔太「あーもう!」
岩岸 翔太「何これ!無茶苦茶だよ!」
岩岸 翔太「なんでこうなるのさ!!」
皆森 夏葉「あっ」
皆森 夏葉「そんなに興奮したら・・・」
岩岸 翔太「あっ・・・」
翔子「・・・」
そして
「岩岸 翔子」改め、「岩岸 翔太」
正体がバレたら即終了
ドキドキな高校生活が今
始まろうとしていた・・・
翔子「こんなんもう終わってるよ──!!」
to be continued ・・・
よりによってイケイケギャルがおじいちゃんだなんて。「わーし」がナイスです。柚子との会話も兄だと知ってから読むと「ほお」となりました。まさか晴也はお母さんなんじゃ?と思ったけど女性は反転してないんですね。
とてもトンチのきいたタイトルで、お話と凄くマッチしていますね! お爺ちゃんが女子高生に姿を変えると生じる問題は沢山ありそうですが、楽しんで演じてほしいですね。
タイトルの家族が過族になっているところが上手くておもしろかったです😁
翔太、女子になったときめっちゃ可愛いですね☺️
家族で反転って何かととても大変そうだけど1回経験してみたいです😄