最悪な未来(脚本)
〇大きな木のある校舎
満月の夜
時間も空間も超えて
あなたが望むその場所へ
連れて行ってくれる
タクシーがあるとしたら
どうしますか?
〇体育館の裏
宇加治「いいからさ!あるだろ、出せ!」
市川 樹「わ、わかりました」
江口 透「オイ!」
宇加治「はぁ~?やんのか」
江口 透「んっ・・・」
担任の先生「何をしているの」
宇加治「いや~これから、どっか行こうかって、 なぁ~・・・」
宇加治「あいつ、逃げやがったな!」
担任の先生「そうなの?江口くん」
江口 透「いえ・・ちがい・・」
宇加治「余計なこと言うな・・ぶっ殺す」
担任の先生「ちょっといいかしら、 江口くん、相談室で話があるの」
宇加治「じゃぁ!オレは、帰るわ」
宇加治「江口!覚えとけよ」
〇綺麗な会議室
担任の先生「江口くん このままだと、上にあがれないくらい成績が悪いのは、分かっているわよね」
江口 透「はい・・・」
担任の先生「何か、悩みごとでもあるの?」
江口 透「いいえ」
担任の先生「いつでも、相談に乗るから 補習授業には、必ず出なきゃだめよ」
担任の先生「分かった?」
担任の先生「親御さんにもこの事は、連絡します」
江口 透「分かりました」
〇明るいリビング
江口 透「ただいま・・・」
透へ
仕事で遅くなります。
これで、夕ご飯を買って食べてください。
母
江口 透(またか・・・)
江口 透「仕事、仕事、仕事!仕事って言えば、何でも許されると思ってるのかよ」
〇教室の教壇
江口 透(樹、遂に来なくなっちゃったな・・・)
宇加治「よう!江口、おまえが市川の代わりに 俺たちと遊んでくれんだろ!」
担任の先生「ハーイ 席について!」
担任の先生「宇加治君、席に戻って」
宇加治「ハイハイ」
担任の先生「市川君、具合が悪いみたいなんだけど、何か聞いてない?」
江口 透「いえ・・そんなに仲がいいわけではないので・・」
担任の先生「そうなの?でも、幼馴染なんでしょ 何かあったら教えてね」
担任の先生「明日から、冬休みです 今から、成績表渡します」
〇ゲームセンター
江口 透(塾の時間が終わるまで、ここで時間をつぶそう)
江口 透(樹と宇加治・・・)
江口 透(樹、呼び出されてまた金取られてるのか?)
宇加治「いいから、ちょっと来い!」
市川 樹「やめてください」
江口 透(あれ?二人どこ行った?)
江口 透(俺には、関係ない・・・だな・・)
半グレ「一人?良いバイトあるんだけどさ、どうかな?」
江口 透「えっ?いや・・・あの」
逃げるようにゲームセンターを後にした。
〇学生の一人部屋
「透、透!開けなさい! 塾にも行かず何処に行ってたの?」
「このままじゃ、上にあがれないってどうゆう事なの?先生から連絡があったのよ」
江口 透「うるさい!」
「透・・お母さん、仕事が忙しくてしばらく帰れないの」
「ちゃんと塾に行ってよ、いい・・・分かったの?」
〇雨の歓楽街
江口 透(母さんもしばらく居ないし)
江口 透(ゲーセンも飽きた なんか面白いことねーかな)
江口 透(あれ?この間声かけて来た人だ)
江口 透(宇加治?二人でどこに行くんだろ?)
江口 透(・・・コソコソ何してるんだ?)
宇加治が突然振り向き、江口と目が合った。
江口 透「やべっ!」
宇加治「おい!」
人のあいだを縫うように全速力で走った。
〇ラーメン屋のカウンター
タクシー運転手 「いつもの、ラーメンね」
タクシー運転手 「今日のこれからの天気はどうかな?」
タクシー運転手 「おや、今夜は満月かい しかも快晴、綺麗な月が拝めそうですな」
タクシー運転手 「ほ~、いつ来てもうまそうだね」
〇タクシーの後部座席
タクシー運転手 「ラーメンうまかったのう」
突然、道路に人が飛び出してきて、急ブレーキを踏んだ。
タクシー運転手 「おぉ!危ない!」
江口 透「乗せてください、早く!早く!」
ドアを開けると、飛び込むように乗り込んできた。
タクシー運転手 「もう少しで、引いてしまうところじゃったよ」
江口 透「すいません」
タクシー運転手 「これからは、気を付けるんじゃぞ」
江口 透「はい」
タクシー運転手 「どこまでかな?」
江口 透「えーと・・・、ん~・・、とあえず、適当に走ってもらえますか」
タクシー運転手 「何か事情があるようですな」
タクシー運転手 「今日は満月でな、まぁ信じられんかもしれんが、このタクシーはただのタクシーではないんじゃ」
タクシー運転手 「どこへでも行ける!」
江口 透(何言ってんだよ?ヤバい人か?)
タクシー運転手 「ヤバい人ではないぞ!」
タクシー運転手 「君なら、どこに行ってみたいかな?」
江口 透「未来とか・・・」
タクシー運転手 「なるほど、悪くないのう」
タクシー運転手 「着きましたよ」
〇警察署の入口
江口 透(警察署?どういうことだよ?)
江口 透(なんで父さんと母さんが!)
急いで、警察署に入っていく両親の後を追った。
〇警察署の廊下
透の父親「どうしてこんなことになったんだ!」
透の母親「分からないわ。仕事が忙しくて・・・」
透の母親「あの子、ずっと家に帰ってきてないの 学校も塾にも行ってなくて・・」
透の父親「いつからなんだ 君は、何をしていたんだ」
透の母親「もう、ずっと前からよ・・・ あなたの転勤が決まった頃からかしら」
透の母親「私だって、透に勉強を頑張ってもらいたくて、もっといい塾に変えて・・・」
透の母親「でもね、そのためにはお金がかかるの!」
透の母親「私は、お金がないことで透に不自由な思いはさせたくなかったの・・・」
透の母親「確かに仕事仕事であの子ときちんと向き合って無かったかもしれない」
透の母親「でも、それはあなたも同じでしょ!」
透の父親「・・・そうだな、すまない」
透の父親「ともかく、どんなことになっても私たちで透を守ってやらなくては・・・」
透の父親「もう、遅いかもしれないが・・・」
透の母親「あなた・・・」
江口 透(おれ、警察に捕まったってこと?)
警察官「いいから、おとなしくしろ!」
宇加治「わかったから、放せって!」
警察官「そこの君も来てもらうよ」
市川 樹「はい・・・」
江口 透(オイオイ、なんで樹と宇加治が・・ あいつらも関係あるのか)
江口 透(あっ!あの人)
警察官「おまえが、元締めだな」
半グレ「違いますよ」
警察官「未成年をだまして、でももう言い逃れはできないぞ、覚悟しろ!」
江口 透「あの男にだまされて、何かの犯罪に巻き込まれたってこと?」
江口 透「はぁ~最悪だよ」
頭を抱えてしゃがみこんだ。
〇タクシーの後部座席
江口 透「あれ?ここは・・・」
江口 透「おじさん!あれが未来ってこと?」
タクシー運転手 「まぁ、そうですかな」
江口 透「嘘だろ・・・どうにかならないのかよ」
タクシー運転手 「未来は、常に変化しておる」
江口 透「じゃぁ、変えられるってこと?」
タクシー運転手 「未来と言うものは、自ら切り拓いていくもの」
タクシー運転手 「難しいことではない、未来とは」
タクシー運転手 「今の行いの結果にすぎない」
タクシー運転手 「想像力を働かせてみてごらんなさい」
江口 透「ん~?何かよくわからないけど」
江口 透「今のままじゃ、ダメだってことだよな」
江口 透「おじさん、ここで降りるよ」
〇明るいリビング
江口 透「母さん、おれ塾辞めるよ」
透の母親「何言ってるの!勉強はどうするの?」
江口 透「自分でする、ちゃんとするから」
江口 透「だから、無理して働かなくていいよ」
江口 透「お金が大変なら、おれ、バイトするし」
透の母親「透・・・お金の心配なんていいのよ」
江口 透「できれば、母さんが作った夕飯が食べたい」
江口 透「学校行ってくる!」
透の母親「そうね、気を付けて行ってらっしゃい」
透の母親(あの子に必要なのは、お金じゃなかったのに・・・)
透の母親(ダメな母親ね、そんなことにも気がつかないなんて)
〇一軒家の玄関扉
江口 透「樹いるか?」
市川 樹「透、どうしたの?」
江口 透「早く着替えてこい、学校行くぞ!」
市川 樹「やだよ」
江口 透「いいから行くぞ、待ってるから」
江口 透「行かなきゃ、ダメなんだよ」
江口 透「このままじゃ、逮捕されんだよ!」
市川 樹「なんだよ・・・訳分かんないこと言って」
江口 透「ほら、早く!」
市川 樹「わかった、ちょっと待って」
〇学校脇の道
江口 透「おれ、未来に行ってきたんだ」
江口 透「別に信じなくてもいいけど・・・」
江口 透「おれは樹のこと友達だと思ってる、だから・・・」
江口 透「一緒に卒業しようぜ!」
市川 樹「うん!」
江口 透「ところで樹さ、頭いいじゃん」
江口 透「勉強教えてくれないかな」
市川 樹「いいよ!」
おわり
タクシー運転手の「未来は常に変化している」「未来は今の行いの結果に過ぎない」という言葉は、今の自分を変えることがより良い未来を生む、という作者から読者へのメッセージにも感じました。江口が自分のことだけじゃなくて樹のことも救ってあげたのがよかったです。
過去に戻るエピソードをみてここにたどり着きました。未来に行って、今と未来を変えていく話も素敵ですね。
過去にも行けるなら未来にも行けるのか...!自分の行動次第で変えられると分かっていてもなかなか行動できないのに、偉い!自分も今日からまた頑張ろうと思えました