Lost period

ラム25

失われたピリオド(脚本)

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〇研究所の中枢
  広大な研究所。そこに天才が2人いた。
  1人はプログラミングで目覚ましい成果をあげ、C言語を昇華した”D言語”を作り様々なAIを作っている。
  もう1人は脳科学の分野で才能を発揮し、脳から直接記憶を抽出し保存、閲覧できる技術を開発した。
  2人が手を取り合えば更なる科学の飛躍が進む。2人は科学に革命を起こし、科学が人間を幸せにする世界を作ることが目標だった。
日向「暦、君の作ってる意志を持ったAIはなん%進んだんだい?」
暦「・・・50%」
日向「まだ半々ってとこか。流石に難しいね」
暦「日向が解析した脳の構造をAIで再現するとなると、な。だが俺とお前なら作れるはずだ」
日向「僕の方も進んでなくてね、ちょっとまた暦に手伝って欲しいんだよ」
  そう言い日向はマイクロコンピュータを取り出す。
  マイクロコンピュータは手のひら大サイズのデバイスでホログラムを映す。
暦「これに俺のAIを入れればいいんだな」
  そう言い暦はタイピングし、インストールする。ものの数分で終わった。
日向「ありがとう! 今度こそ上手くいくよ、きっと!」
暦「なあ日向。それの正体教えてくれてもいいんじゃないか?」
日向「まだ秘密! ただこいつは人類史に名を残すぞ・・・!」
暦「そうか、まあ楽しみにしてる」
石井「お前たちは本当に研究熱心だな。優秀な部下を持てて幸せだ」
日向「石井さん。僕にはこれしか趣味がありませんから」
石井「そうかね? まあたまには休みたまえよ」

〇高級マンションの一室
暦「ただいま」
琥珀「おかえりなさい。疲れたでしょう」
暦「あぁ、君がいるから頑張れるんだ」
  職場では一貫して無表情だった暦も最愛の妻の前では顔を綻ばせた。
暦「明日は一緒にショッピング行こうか、君の欲しいものなんでも買うよ」
琥珀「あなたとの時間より欲しいものなんてないわよ」
  しかし翌日のことだった。
  琥珀が何者かに刺殺されたのは。

〇研究所の中枢
日向「その、気の毒だったね・・・」
暦「・・・妻は俺の生き甲斐だった」
暦「俺は妻を殺した奴を許せそうにない・・・!」
暦「だが犯人は捕まろうともしてないんだ。・・・何が天才だ、こんなに無力で・・・」
日向「暦・・・」
日向「もし、奥さんを助けられるかもしれないと言ったら?」
暦「何を言ってる? 妻を助けるなど、過去でも変えない限り・・・」
暦「! まさか──」
日向「そう、君に手伝わせたのはタイムマシンの作成なんだ。隠しててすまなかった」
日向「僕はアインシュタインの脳を解析する機会を得た。結果タイムマシンの基礎理論を入手したんだ」
暦「そんな、まさか・・・」
日向「ただタイムマシンは膨大な演算処理をする。それこそ君のAIでなければ処理しきれないような、ね」
日向「それが3日前完成した。まだ実験はしてないから危険だけど・・・」
暦「なら早速俺に使わせてくれないか! 最初の実験台にしてくれ!」
日向「そのつもりだ。ただタイムパラドックスが起きたら何がどうなるか分からない。 くれぐれも気をつけてくれ」
日向「君の奥さんが亡くなったのは3日前だったね。それに時空の座標を合わせる」
  そして日向はマイクロコンピュータを操作しタイムマシンを暦に渡す。
  暦は意を決して起動する。
  そして暦は意識を手放す・・・

〇公園のベンチ
暦「ここは・・・?」
  暦はスマートフォンを取り出して日付を確認する。3日前になっていた。
暦「(成功したか・・・だが妻が殺される時間まで残り5分しかない・・・!)」
  慌てて公園内を散策する。
琥珀「・・・」
  琥珀はベンチに座り、本を読んでいた。
暦「! 琥珀!」
琥珀「あれ? あなた、どうしたの?」
暦「逃げるぞ。ここは危険だ」
琥珀「え、えぇ?」
  琥珀の手を引き、走る。その時だった。
  銃声が響いた。馬鹿な、前回は刺殺だったはず。銃まで用意していたというのか?
  暦は慌てて妻を庇おうとするが・・・
琥珀「・・・ごぼっ」
  琥珀は口から血を流し、倒れた。
  ほぼ即死だった。
暦「馬鹿な! 琥珀! 目を開けてくれ!」
  途方に暮れてるとまた視界が切り替わろうとしていた・・・

〇研究所の中枢
暦「あぁ! 琥珀!」
日向「大丈夫か!? その様子では・・・」
暦「・・・あぁ、しくじった。妻はまたしても殺された」
暦「くそ、もう一度だ!」
日向「待ってくれ、過去には4回まで・・・あと3回しか戻れない!」
暦「大丈夫だ、次こそ・・・」

〇公園のベンチ
暦「・・・」
  暦は過去に戻るとすかさず警察を呼んだ。銃を持った不審な男がいると。
  しかし辿り着くまでに10分かかるとのことだった。
暦「琥珀!」
琥珀「あなた?」
  暦は琥珀を抱きしめる。
暦「琥珀、10分間こうしていてくれ」
琥珀「え、えぇ・・・」
  しかし5分後・・・
  突如大きな地震が起きた。2人は転倒する。
  その拍子に琥珀と分断される。その一瞬だった。
琥珀「・・・かはっ」
暦「そんな馬鹿な・・・何故だ!」

〇研究所の中枢
日向「そうか、またしても・・・」
日向「おそらくだが世界には強力な修正力がある。君の奥さんが亡くなることは確定していて修正力が働いているのかもしれない」
暦「馬鹿な、一体琥珀になんの罪があるんだ・・・」
日向「・・・いや、全て他殺だったね。奥さんが亡くなる、というより犯人が殺人することが因果的に決まってるのかもしれない」
暦「そうなると、次やることは・・・」
日向「・・・あぁ。犯人を見つけるんだ」

〇公園のベンチ
暦「(犯人を見つけるには妻が殺されるのを放置して見張るしかない)」
暦「(すまない、琥珀。君を助けるために一回だけ見殺しにさせてくれ)」
  そして5分後、1人の男が琥珀に歩み寄る。
  上司の石井だった。
石井「道を尋ねていいかな。駅に行きたいんだ」
琥珀「それなら右に行けば・・・」
石井「ありがとう、お礼をさせて欲しい」
  石井はバッグをごそごそと漁る。そして取り出したのは──
  ナイフだった。
暦「やめろ!」
  しかし石井は琥珀の胸を突くとそのままナイフを引き抜くことなく逃げてしまった。

〇研究所の中枢
日向「そんな馬鹿な。石井さんが・・・」
暦「なあ、タイムマシンでもっと前に飛ばないのか。石井のやつを殺してやる」
日向「いや、出来ない。それに君まで咎を刻むことはない」
暦「くそっ! 犯人は分かったのにどうすれば・・・!」
石井「お前たちまだ残ってるのか」
暦「・・・石井! 何故俺の妻を殺した!」
石井「なんのことだね?」
暦「タイムマシンであんたが殺すのを見た」
石井「・・・ほう、流石私の部下だ。教えてやろう。 私の専門がクローンというのは知ってるだろう?」
石井「ただクローンは脳に欠陥が生じる。だがお前が作る意志を持ったAIならあるいは・・・そんな期待を抱いたのだ」
石井「そのためにお前の妻を始末した。そうすれば死に物狂いで作ってくれると思ってな」
暦「馬鹿な・・・俺の血の滲むような研究は・・・妻はあんたのために・・・!」
日向「今のは自白ってことでいいですよね?」
  そういいスマートフォンを取り出す日向。録音していたらしい。
石井「なに!? くそ、私としたことが!」
日向「暦、これを使って過去を変えてくれ!」
暦「あぁ!」

〇公園のベンチ
  これが最後のチャンスだ。
  暦は息を吸うと叫ぶ。
暦「石井、出てこい! いるのは分かってるぞ!」
琥珀「ちょ、どうしたのあなた?」
石井「そんな大声でなんだ? とち狂ったか?」
  そして暦は音声を再生する。
石井「『そのためにお前の妻を始末した。そうすれば死に物狂いで作ってくれると思ってな』」
石井「!」
暦「どうだ、証拠が先にある以上手は出せまい」
石井「・・・くっ!」
暦「・・・琥珀、もう大丈夫だ」
琥珀「え? え?」
暦「ようやく君を救うことが出来た・・・!」
  こうして暦は妻を救うことに成功した。
  その時だった、銃声が響いた。
暦「ごぼっ・・・」
琥珀「あなた? え? 何が起きたの?」
暦「(そうか・・・石井が殺人することは確定している・・・つまりその対象は俺も含まれるのか・・・)」
  そして暦は命を落とした。
  世界は改変される──

〇研究所の中枢
日向「奥さん、本当に過去に戻るのか? あなたが過去に戻れば確かに暦は助けられるかもしれない、しかしあなたが脅威に晒される」
琥珀「夫を救うためならなんでもするわ」
日向「・・・そうか、分かった」
日向「(・・・待て。今僕は取り返しのつかない事をしてしまったんじゃないか・・・?)」

〇公園のベンチ
暦「ここは・・・?」
  暦を救うために琥珀が死ぬ。琥珀を救うために暦が死ぬ。
  こうして世界は無限ループに陥っていた・・・

コメント

  • 無限ループものが好きなので最高でした。後書きを読んだら、物語開始時点で既にループが始まっていたことが分かって愕然。「取り返しのつかないこと」というセリフは暦と琥珀の死の無限ループのことか。タイトルのlost period に納得。長編で読んでみたい。

  • 仲の悪い夫婦ならまだしも、こんなに相手を思い合っている彼等がこんな不幸に見舞われたことが本当に気の毒です。運命に逆らうことができたらいいのですが・・・。

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