百歩ゆずって

ササキタツオ

1歩目 ~お茶~(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
  こう見えて、僕には、年下の、可愛い妻がいる。
  名前をチヨコ。結婚して3年。彼女に対して文句など一つもない。
  ただ一つだけ。一つだけ、難点を申し上げるとすれば・・・
  それは・・・
翔平「チヨコさん」
チヨコ「仕事中です」
翔平「チヨコさん・・・・・・!」
チヨコ「だから仕事中です」
チヨコ「いいキャッチコピーがそこまできているの」
翔平「邪魔して、ゴメン」
チヨコ「翔平さんもお仕事中でしょ?」
翔平「はい。デザイン案あと一息かな」
チヨコ「お互い、頑張りましょう」
翔平「チヨコさん。そこで、一つお願いが・・・」
チヨコ「それは、ご自身でどうぞ」
翔平「まだお願いとしか、言ってないですよ?」
チヨコ「お茶、ですよね?」
翔平「チヨコさん、エスパー・・・・・・!?」
チヨコ「翔平さんの事なら、大体わかりますよ」
チヨコ「あ。私、エスパーなのかも!?」
翔平「そうだよ。チヨコさん、エスパーだ」
チヨコ「あら。やだ!!」
翔平「超能力者、日本に現る・・・!」
チヨコ「もぉー。世界救わないとだめかなあ!!」
翔平「超能力者だから?」
チヨコ「そうそう」
翔平「僕の心が読めるという、それだけでは、世界を救うのは難しいのでは?」
チヨコ「でも、わかんないよ?」
翔平「それもそうですね」
チヨコ「世界を救う!いざ!」
翔平「その・・・。まずは僕を救ってほしいです」
チヨコ「え?」
翔平「僕のお願い・・・」
チヨコ「それはご自身で」
翔平「チヨコさん・・・!!」
チヨコ「私、世界を救わないと、なので!」
翔平「あの・・・超能力者チヨコさんは、僕の世界を救ってはくれないのですか?」
チヨコ「世界さえ救えないのに、翔平さんの世界を救うことなんてできません!!」
翔平「逆では?」
チヨコ「何がです?」
翔平「チヨコさん。僕は、お茶が飲みたいです・・・」
チヨコ「翔平さん」
チヨコ「ご自身でお願いします」
翔平「僕は、チヨコさんの淹れてくれた、あったかいお茶が飲みたいのです」
翔平「あのおいしさ」
翔平「僕が淹れると、どうもマズイ・・・」
チヨコ「あ!!!!!!!!!!」
翔平「え!?!?!?!?!?!?」
チヨコ「いまちょうどヒラメキ・モードなのです」
チヨコ「いい言葉が、降りてきそうなのです!!!!!!」
翔平「僕だって・・・・・・」
翔平「デザイン、いい感じにまとめられそうで」
翔平「いい感じのところなのです」
翔平「ここにお茶があったら、さらにいい感じになります」
チヨコ「お互いのペースがあります」
翔平「もちろん!?」
チヨコ「私は私でいいところ。翔平さんは翔平さんで、いいところ」
チヨコ「ということで、今回はご自身でお願いします」
翔平「どうしてもダメですか?」
翔平「チヨコさんのお茶がどうしても飲みたいのです」
チヨコ「どうしても。無理です」
翔平「自分で淹れるお茶は本当に味気ない。ただの液体。愛の欠片もない」
翔平「チヨコさんが淹れてくれたら、それはそれは味わい深くなるのです」
チヨコ「なるほど? それで?」
翔平「だから。お願いします」
チヨコ「あっ・・・!!!!!!!!!!!!!!」
翔平「え!?!?!?!?」
チヨコ「では。こういうのはどうでしょう」
チヨコ「私が翔平さんのお茶を淹れる。その代わり、翔平さんは私にコーヒーを淹れる」
チヨコ「それなら平等です」
翔平「え・・・・・・・・・・・・」
翔平「えーっ・・・・・・・・・」
チヨコ「私もちょうどコーヒーが飲みたいと思っていたのです」
チヨコ「翔平さんが淹れてくれるコーヒーには愛がある。愛を感じて、いいコピーを考えたいのです」
翔平「うううむ・・・・・・・・・!!」
チヨコ「どうですか?」
翔平「・・・・・・・・・かしこまりました!!」
チヨコ「じゃあ、お湯わかそー」
  僕とチヨコさんはいつもこんな感じだ。
  ただ一つの難点。彼女は、独特に頑固なのだ。
  でも!! 僕の可愛い妻なのである。

コメント

  • この夫婦最終的にご主人が折れる傾向で持続しているように見えますが、いつかご主人がプイッとよそを向いてしまわないかとこちらがハラハラしました。

  • 禅問答のようなチヨコさんとの会話。論点ずらしの会話が永久に結論にたどり着けない蟻地獄のようでクセになります。このご夫婦は完全に奥さんが一枚上手ですね。

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