旅するピザ屋・マッタ家

水木辿

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旅するピザ屋・マッタ家

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〇繁華街の大通り

〇開けた高速道路

〇走行する車内

〇山間の田舎道
  待田シローとリヨはキッチンカーでピザを売っている。

〇美しい草原
  ここは、かつての炭鉱町の郊外。
  年1回行われる町共催の食フェスに2人は来ていた。

〇霊園の駐車場

〇奇妙な屋台
「ミックスとレモネード2つください」
待田リヨ「ミックスとレモネード2つですね!」
待田シロー「焼けるまでちょっと待って下さいね!」

〇ヨーロッパの街並み
  チャオ!ピザ職人のルイージです!
  私の1番弟子、ファミリーであるシローのおいしいピザを、ぜひこのマッタで楽しんでください!
  おっと、ハチヤプレミアムはちみつたっぷりのレモネードもご一緒に!
  ピザならマッタ!ボーノ、マッタ!
  ピザならマッタ!まった来てねー!

〇奇妙な屋台
待田リヨ「ありがとうございました!」
待田シロー「ハァ、今日はいい調子だね」
待田リヨ「こんなに来てくれてうれしいね!」
待田リヨ「希さん、お疲れ様です!」
待田シロー「どうも」
炭山希「あ、あのマッタさん! 響見ませんでした?」
  この食フェスの実行委員長の炭山希さん、響ちゃんは4歳の娘だ。
待田リヨ「響ちゃん? 見てませんけど、どうかしました?」
炭山希「それが、お客様と話している間にいなくなってしまって」
待田シロー「響ちゃんが?」
待田リヨ「それは大変!」
炭山希「この辺りの出店者さんに聞いているんですけど、今のところ誰も見てないって」
待田リヨ「私、一緒に探します!」
待田シロー「この広い会場と人混み 僕も手伝い・・・」
待田リヨ「シローちゃんはお店を続けていて 私が必ず見つけるから」
待田シロー「うん、僕はピザを焼く リヨも気を付けて」
待田リヨ「希さん、行きましょ!」
炭山希「リヨさん・・・ ありがとう!」
待田シロー(確かハチさんが近くにいるはずだ)
待田シロー(念の為、ルイージ師匠にも)

〇菜の花畑
蜂谷音矢(ん、シローさんか? 確か近くのフェスに)
蜂谷音矢「こどもが?これは大変だ」

〇貴族の応接間
ルイージ師匠(シローか、こんな朝っぱらから・・・)
ルイージ師匠(こりゃシローもリヨも居ても立ってもいれらないはずだ、何とかしないと)
ルイージ師匠「私だ、ちょっと頼み事があるんだが」

〇車内
炭山町長「ああ、警察には伝えてある すぐ見つかるさ」
炭山町長「希、すまないな、この後の挨拶が終わったら合流する」
炭山町長「問題ないな? ああ頼む」

〇お祭り会場
炭山希「響ー!」

〇武術の訓練場
待田リヨ「響ちゃーん!」

〇土産物屋
炭山希「響ー!」

〇華やかな広場
待田リヨ「響ちゃーん!」

〇仮設テント
炭山希「何も連絡はありませんか?」
警備員A「迷子のアナウンスも我々の捜索も今のところ、手がかりがありません」
炭山希「監視カメラは何も?」
警備員A「元々カメラは少ないのですが、出入り口に関しては娘さんらしき方はいませんでした」
警備員A「まもなく警察も来ると思いますが、 その、事件性も考えておいた方がよいのではないかと」
炭山希「そんな・・・ リヨさん!」
待田リヨ「希さん、いないわ」
炭山希「広場、駐車場、売店とレストハウス、探せる所は探したはずなんだけど あとは・・・」
警備員A「迷路」
待田リヨ「迷路?」
警備員A「そう! 封鎖されている巨大迷路が北側にあります!」
炭山希「夏だけ営業していた迷路ね」
待田リヨ「行ってみましょう!」
炭山希「警備員さんはここで連絡と外部への対応をお願いします!」
警備員A「気を付けて下さいね。 何かあればすぐ連絡を!」
警備員A(グ、グッドラック!)

〇奇妙な屋台
待田シロー「お待たせしました!」
蜂谷音矢「シローさん!」
待田シロー「蜂谷さん 来てくれたんだ」
蜂谷音矢「それで響ちゃん?はどうなの?」
待田シロー「まだ見つかってないんだ 蜂谷さん、あれ飛ばせるかな?」
蜂谷音矢「もちろん持ってきてるよ! あれで探してみる」
待田シロー「ありがとう」
  そっちの親分に頼んで人員を送った。
  無事見つかることを祈る。
  
  ルイージ
待田シロー(師匠・・・)

〇牢屋の扉(鍵無し)
炭山希「あれが入口かしら」
待田リヨ「あっ、ドアの前に誰かいますね」
炭山希「あれは確か・・・」
配下の男「ふぅ」
配下の男(町長の妹)
炭山希「あなた、兄の仕事を手伝っている方ね? こんな所で何を?」
配下の男「はい 食フェスの来場者が立ち入らないように見張っています」
待田リヨ「響ちゃんを探しているんですけど」
配下の男「ええ、町長から伺っていますが、ここには誰も入っていません」
炭山希「そうですか・・・」
待田リヨ「もう一度確認だけさせて下さい」
配下の男「いませんよ! 誰もこんな所には来ないし入れないんだから」
炭山希「リヨさん、ここには」
待田リヨ「鍵はかかってないですね」
炭山希「あっ」
配下の男「誰もいませんよ!」
配下の男「入るなって!」
炭山希「リヨさん・・・」
待田リヨ「大丈夫、ちょっとここで休んでいてもらいましょう」
待田リヨ「探しましょ、響ちゃん」
待田リヨ「私が先に」

〇空
蜂谷音矢(うーん)
蜂谷音矢(見当たらないな)
蜂谷音矢(希さんはもちろん、 シローさんとリヨさんも誰よりも響ちゃんを早く見つけたいんだ)
蜂谷音矢(よしっ、もう一度!)

〇奇妙な屋台
協力者「待田さん ルイージさんの面子にかけてあたしらが絶対無事に響ちゃんを見つけますよ!」
待田シロー「皆さん 本当に助かります」
協力者「よしっ!行くぞ!おー!」

〇黒背景
待田リヨ「響ちゃーん!」
炭山希「響ー!ママだよ!」
待田リヨ「あら、行き止まり」
炭山希「この迷路、難し過ぎたんです。 ゴールするまで何時間がかかって、お客さんが怒ってしまったり」
待田リヨ「希さん入ったことは?」
炭山希「私こういうの苦手ですし、響がまだ小さかったので入ったことはありません。 それと・・・」
待田リヨ「響ちゃーん!」
炭山希「それと、この迷路は兄のアイデアなんです」
待田リヨ「町長さんの?」
炭山希「ええ どうせ作るなら観光のために日本一難しい迷路にしようって」
炭山希「兄はかつて炭鉱の町として賑わった故郷を取り戻そうと必死なんです そのためには何でも」
炭山希「実は、兄のそんな姿勢が今後、この食フェスにも影響を与えるかもしれないんです」
待田リヨ「はい、シローちゃん 今、迷路の中で・・・」
炭山希「リヨさん!この音は?」

〇牢屋の扉(鍵無し)
協力者「これが迷路か 営業していた時は屋根がないと言っていたが 閉鎖後は幌をかけてあるな」
協力者「こんな難しい迷路を攻略している頭も余裕も俺たちにはないな」
協力者「それじゃ 総力を尽くして」
協力者「うむ よーし!みんな広がれ!」

〇黒背景

〇空
待田リヨ「幌が外れた!」
炭山希「これで思うように動けるわ」
協力者「あとちょっとで全て外れますんで! いくぞ!」

〇空
蜂谷音矢(迷路の幌が取れたって? よしっ! これで上から探せる!)
蜂谷音矢「行けー!」

〇古い本
蜂谷音矢「んんーいるかな?」

〇壁
蜂谷音矢(んんー)
蜂谷音矢「あっあれは!」

〇木調

〇木調
炭山希「響!」
炭山希「ねぇ、響 起きて!」
炭山響「ん?ママ!」
炭山響「ピザのお姉ちゃんも? 響、寝ちゃってたよ」
待田リヨ「響ちゃん、ケガは?」
炭山響「大丈夫だよ この迷路響にはまだ難しくて、ママが来てくれるまで待ってたの」
炭山響「ママ、どっちに行ったらいいかわからなくなったら、座って待ってるのもいいって、前に言ってたでしょ?」
炭山希「うん、言ったね」
炭山響「だからここで待ってたんだけど、暗いから眠くなっちゃって」
炭山希「暗くて怖かった?」
炭山響「ちょっとだけ」
待田リヨ「響ちゃん、ひとりで来たの?」
炭山響「ママのちょうちょのお兄ちゃんのお友達が面白いところがあるって、連れてきてくれたの」
炭山希「そんな・・・」
待田リヨ「じゃピザ食べに行こうか? レモネードも?」
炭山響「うん、行くー!」

〇養護施設の庭
炭山町長「そして、この食フェスを一層盛り立て、町の活性化に繋げるため、本日皆さんにお伝えすることがあります」
炭山町長「来年度よりこのフェスの運営を大手イベント企画会社に委託し、食フェスの聖地と言えばこの町!と呼ばれるまでにしたい」
炭山希「待って、ちょっと待って下さい!」
炭山町長「の、これは運営委員長」
炭山希「今の話は、兄、炭山町長の独断で、私達委員会も出店者さんも賛成はしていません!」
フリーライター「横からすみません。 その件について炭山町長と企画会社の間で不正があったのではとの情報があるのですが?」
炭山町長「な、何の証拠があると? まさか、希!?」
炭山希「ええ、取材に協力してるわ 兄さん」
炭山町長「私は町のために・・・」
  炭山町長はこの場に対立する希を立ち入らせず足止めする為に、響ちゃんを一時的に迷路に閉じ込めたのだった。
  希は住人や出店者と地道に作り上げたこの食フェスを維持する為、兄と企画会社の不正を取材するライターに情報を提供していた。
  兄も妹もこの町を思っての行動だった。

〇奇妙な屋台
待田リヨ「ありがとうございます!」
待田シロー「あー今日も焼いた焼いた リヨ、お疲れ!」
待田リヨ「シローちゃんもお疲れ様」
待田シロー「響ちゃんが無事で何よりだったよ」
待田リヨ「蜂谷さんもルイージさんと大勢のお兄さん方にも感謝ね」
待田リヨ「シローちゃん アムに似た人の目撃情報が!」
待田シロー「えっ!」

〇霊園の駐車場
炭山希「今日は本当にありがとう また来年来て下さいね!」
炭山響「ねぇ、アムちゃんもピザ大好きだったんでしょ?」
待田リヨ「うん アムが大好きだったピザをいろんな所で焼いてれば、いつか来てくれるんじゃないかってね」
待田シロー「本当は待ってるのか待たせてるのかわからないんだけどね」
炭山響「アムちゃん きっと待ってるよ」
蜂谷音矢「そうそう」
協力者「待ってますよ、きっと」

〇美しい草原

〇走行する車内
待田シロー「リヨ 僕達はこうしてアムを忘れるための待ち時間をもらってるだけなのかな?」
待田リヨ「シローちゃん アムはまだ私達を待ってる、きっと」
待田シロー「そう、だね」
「チャオ!シロー!大変だったな」

〇橋の上

〇海辺
  おわり

コメント

  • いろんな助っ人が総出で響ちゃんを捜索する様子の緊迫感溢れる場面転換と音響効果が素晴らしかったです。広い場所での迷子の捜索にドローンを活用する可能性、アリですよね。後半の流れでは大人の事情なんかも絡んできて読み応えがありました。

  • ピザのキッチンカーという設定から明るく優しい夫婦をイメージさせられますが、ラストのシーンで彼等にも人知れず心配なことがあるのだと、そのギャップにグッときました。

  • 小さな町のイベントの大騒動、ヒトもモノも総動員しての大捜索でしたね。そして、待田夫婦の事情もラストに垣間見えて、読み応えがありました。

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