〇葬儀場
ようすけ「じいちゃん・・・」
　　じいちゃんが死んだ
　　突然だった
　　ここ10年は世界中を放浪していて会ってなかったけど
　　こんな形で帰ってくるなんて・・・
じいちゃんの知り合いA「与一さん・・・」
じいちゃんの知り合いB「よっちゃんあんなに元気だったのに・・・」
じいちゃんの知り合いC「与一おじいちゃ〜ん！ うぇ〜ん！」
じいちゃんの知り合いD「ヨイチさん！ ナゼシンジャッタデスカ〜！」
　　老若男女問わず国籍も様々
　　たくさんの人たちが参列している・・・
　　さすがじいちゃん顔が広いな
　　思い返せば本当に元気な人というか
　　アグレッシブというか
　　無鉄砲というか
　　破天荒というか
　　もうエキセントリックだったな・・・

〇綺麗な一戸建て
じいちゃん「おい！孫ぉ！ 公園にライオンが出たらしいぞ！ 俺たちで捕まえてペットにするぞ！」
ようすけ「それ絶対嘘でしょ!? 本当だったとしても絶対行きたくないよ!!!」
じいちゃん「なぁ〜に！しけたこと言うとる孫！ 行くぞ!!」

〇森の中
じいちゃん「見ろ孫！ 見たこともねぇ変な柄の虫じゃあ！」
ようすけ「うわぁっ!! それ絶対毒持ってるよ!! じいちゃん危ないって!!!」
じいちゃん「ほら！受け取れ！」
ようすけ「どぅわぁぁぁぁあっ!!!!!?」

〇岩山の崖
じいちゃん「見ろこの靴！ ヘルメスのブーツと言うらしい！」
ようすけ「ヘルメスってギリシャ神話の？」
じいちゃん「それはよう知らんが、見てみい 羽が付いとるじゃろう これで空が飛べるらしい！」
ようすけ「は!?」
じいちゃん「こっから飛び降りてみるから見とけ孫！」
ようすけ「じいちゃんちょっと待ってぇ!!!!」

〇葬儀場
　　思い返せば大変な幼少期だった・・・！
　　じいちゃんに色々振り回されて・・・
　　てかなんでずっと孫呼び・・・
　　結局ライオンはおもちゃのたてがみを付けられた野良犬で
　　捕まえるのに手こずって服はドロドロ
　　俺だけ腕と足を噛まれた
　　変な柄の虫はやっぱり毒があって
　　触った瞬間、肌が真っ赤に腫れた
　　なぜかじいちゃんだけ素手で触っても無事だった
じいちゃんの知り合いA「お孫さんも涙を流して・・・ きっと仲が良かったのね」
　　崖から飛び降りるじいちゃんを止めようと
　　俺も一緒に落ちて全身打撲
　　じいちゃんは擦り傷だけ
ようすけ「本当にこの人死んだのか・・・？」
　　事故死って聞いてるけど
　　まぁ人間死ぬ時は死ぬか・・・

〇明るいリビング
　　──葬式の翌日──
シロ「ワウ！ワウー！」
そうすけ「シロ、どぉしたの？」
シロ「ワウワウワウ！ワウーン！」
お母さん「こぉら、早くご飯食べなさい 幼稚園に行く時間よ」
そうすけ「ママー！ シロがね おじいちゃんが家に帰ってきたって言ってる」
ようすけ「ゴフッ!? ゲホゲホッ！喉にっ・・・つまっ・・・」
お母さん「!? もー！何変なこと言ってんの！ ご飯片付けちゃうよ!?」
そうすけ「え〜 まだだめー」
　　歳の離れた弟はなんか変なところがある
　　不思議ちゃんというか・・・
　　じいちゃんとは方向性の違う変人になりそうで
　　お兄ちゃんは心配です
ようすけ「じいちゃんが帰ってきたなんて言って 母さん困ってただろ？」
ようすけ「そーゆーの”不謹慎”って言ってな お前みたいのがSNSやると炎上するぞ」
そうすけ「フキンシン？ エンジョー？」
ようすけ「とにかく変なこと言うのはやめろってこと」
そうすけ「ボク変なこと言ってないのに・・・」
じいちゃん「そうじゃぞ！孫！ このチビが言うてることは本当じゃ!!」
じいちゃん「わしはまだこの世におるんじゃ!!!」
　　まだやり残したことがたっくさんある!!
　　わしはまだ死ねんのじゃあぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!

〇シックな玄関
ようすけ「じゃあ いってきまーす」
お母さん「はーい！ いってらっしゃい！」
お母さん「ほら、そうちゃんも早く準備しなさい！」
そうすけ「ほいほい ちょいまち ちょいまち〜」
じいちゃん「おい！犬！」
シロ「ワウ？」
じいちゃん「わしにちぃと体貸してくれんか チビに聞いてくれんか？」
シロ「ワウ？」
そうすけ「ん？シロなに？」
シロ「ワウワウ！ワウー！」
そうすけ「え？おじいちゃんが？ うん、別にいいよ」
じいちゃん「よっしゃあぁぁぁっ!!! チビさんきゅー!!!!」
お母さん「ちょっと！そうちゃん？ 何してるの!?」
そうすけ「なっちゃん待たせたな！ 幼稚園に行く準備は整ったぞ！」
お母さん「!?!?」
お母さん「ちょっ・・・ なんでグラサンなんかしてるの?!」
お母さん「それにその髪・・・ お父さんのワックス使ったの？」
そうすけ「おう！ チビの割にはなかなか似合うとるじゃろ！」
お母さん「も〜！ワックス取ってる時間ないし・・・ とにかくグラサンは取りなさい!! あとオモチャのバットも置いていきなさい!!」
そうすけ「いやじゃ〜!!!!!」

〇幼稚園
お母さん「遅れてすいません！」
カオル先生「おはようございます 少し過ぎただけなので大丈夫ですよ」
そうすけ「うひょおぉー！ なんて美人な先生なんじゃあ!!」
そうすけ「いつもチビがお世話になっております！ 先生の名前はなんと言うんじゃ？」
カオル先生「えっ・・・と そうちゃん今日は元気ですね・・・」
お母さん「カオル先生でしょ！ あんたいつもお世話になってるのに失礼でしょ！」
そうすけ「カオル先生かぁ〜 素敵な名前じゃあ〜 漢字はなんて書くんじゃ？」
お母さん「すいません・・・ 今日は朝から変で・・・」
カオル先生「あ、いえ たまには元気過ぎるのもいいことですよ・・・」

〇幼稚園の教室
そうすけ「カオル先生・・・ なんて素敵な人なんじゃ・・・」
もも「そうちゃんやっときた〜！ 遊ぼ〜よ！」
そうすけ「なんじゃあチビ」
もも「チビ？ もも、そうちゃんより大きいよ」
もも「そうちゃんなんか変」
もも「なんで変なメガネつけてるの？」
そうすけ「これはオシャレじゃ！」
もも「髪の毛テカテカしてるよ」
そうすけ「おう！かっこええじゃろ？」
もも「う〜ん・・・」
もも「かっこいい!!」
　　──しばらく経って──
カオル先生「あら、みんなで何してるのかな？」
もも「先生見て〜！ オシャレじゃろ〜!!」
カオル先生「ひっ!? み、みんなオールバックに変なメガネ・・・!?」
カオル先生「そ、そうちゃんの真似!?」
園児「カオル先生〜！ ぼくのも見て〜！」
そうすけ「ぬ!?」
そうすけ（なんじゃあいつ！ カオル先生に抱きつきやがって!!）
そうすけ（は！ 同じ男でも５歳児ならセクハラにならんのか・・・!!!）
そうすけ（今ならわしも同じ５歳児・・・）
そうすけ「カオル先生〜！」
カオル先生「あら、そうちゃんまでどうしたの？」
そうすけ「わしまだ５歳やから母性あるお姉さんに甘えたい気分なんじゃ〜〜!!」
カオル先生（うっ こんなにかわいいのに今すぐ突き飛ばしたいぐらい生理的に受け付けないのはなぜ!?）
そうすけ「カオル先生この手はなんじゃ？」
カオル先生「先生ちょっと忙しいからまた後でね」
そうすけ「カオル先生・・・」
そうすけ「さては恥ずかしがり屋じゃの〜 なんて奥ゆかしい女性なんじゃ・・・！」

〇幼稚園
お母さん「そうちゃん迎えに来たわよ〜 いい子にしてた!?」
そうすけ「おーもう幼稚園は終わりか 早いのう」
もも「そうちゃん！ ももん家で遊ぼうじゃ！」
園児「そうちゃんはオレと遊ぶんじゃ！」
園児「だめ！ そうちゃんはりかと遊ぶんじゃ！」
お母さん「な、なに・・・ この状態・・・」
そうすけ「はぁー ガキにモテても疲れるだけじゃわい」

〇明るいリビング
そうすけ「ふー！ やっとうるさいガキンチョから解放されたわい！」
お母さん「もー 一体そうちゃんどうしちゃったの？」
お母さん「喋り方も態度もおじいちゃんみたい・・・」
お母さん「おじいちゃんとは会ったことないはずなのになんでこんなに真似ができるの？」
そうすけ「ぬ!?」
そうすけ「これは孫の弁当じゃないか!?」
お母さん「あら 忘れて行ったみたいね」
そうすけ「なぁーにぃー!! それは大変じゃ!!!!!」
そうすけ「わしが学校まで届けに行くぞ!!!」
お母さん「!? 何言ってるの！ ダメに決まってるでしょ!!」
そうすけ「なんでじゃ！ 大事な孫が腹を空かせて死にかけてるかもしれんのに!!」
お母さん「あんたが学校に行ったら迷惑がかかるでしょ！ 特に今のそうちゃんは!!」
お母さん「それにもうお昼過ぎてるし、売店で何か買って食べてるわよ」
そうすけ「もしかしたらお金がなくて何も買ってないかもしれん!!」
お母さん「ちゃんとお小遣いは渡してあります！ もうしつこい！」
そうすけ「ぐぬぬ・・・」
そうすけ（せっかく生の現役J kを拝めるチャンスだというのに!! いつか！いつか！ いつか孫の学校に潜入して見せるぞぉ!!!!!!）
そうすけ「ふむ 今日はこの辺で大人しくしとくかのう」
そうすけ「???」
お母さん「ちょっとそうちゃん!?」
そうすけ「な、なんか ママ怒ってる・・・？」
お母さん「はい！怒ってます！」
そうすけ（うぇぇ おじいちゃん何したの〜！）

〇教室
　　──ようすけの学校──
　　いつか孫の学校に潜入してみせるぞ〜!!
ようすけ（なっ なんだ？ 一瞬ものすごい悪寒が・・・）
　　じいちゃんの心の雄叫びはちゃんと孫にも届いていた
　　じいちゃんの死をきっかけに
　　再びじいちゃんに振り回される日々が始まる・・・!?