かせい部かぞく

龍咲アイカ

読切(脚本)

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〇大きな木のある校舎
柔道部部員「来たれ、柔道部!」
クイズ研究会のメンバー「クイズ研究会に入りませんかー!」
笥布さくら(部活の勧誘かぁ)
笥布さくら(私もそろそろ部活決めようかな)
高庭真白「そこの方」
笥布さくら(わ、キレイな人・・・!)
笥布さくら「は、はい!」
高庭真白「私と、家族になりませんか?」
笥布さくら「・・・は!?」
長間なぎさ「真白。 それじゃあ伝わらないよ」
長間なぎさ「ああ、ごめんね。 家政部っていう部活の宣伝なんだ。 良かったらよろしくね」
笥布さくら「はぁ・・・」
笥布さくら(チラシ貰っちゃった)
笥布さくら(家政部?何する部活なんだろ?)
高庭真白「ありがと、なぎさ♡」
長間なぎさ「ちゃんと宣伝しないと、誰も入ってくれないよ」
高庭真白「うふふ、だって貴女と私の『家族』を作るための活動よ。 正直に伝えなくちゃ」
長間なぎさ「まったく・・・」
高庭真白「あ、また人が来たわ! そこの方ー!」
原津サナ「はい?」
高庭真白「私と、家族になりませんか?」
原津サナ「家族?」
笥布さくら(同じクラスの原津さんもあの人に勧誘されてる。 まぁ断るだろうけど)
長間なぎさ「ごめんね、私たちは家政部っていう部活の──」
原津サナ「いいですよ!」
長間なぎさ「えっ」
笥布さくら(えー!?)

〇装飾された生徒会室
  数日後──
  家政部 部室
高庭真白「なぎさ、ただいま♡」
長間なぎさ「ここ部室だよ?」
高庭真白「部活の時は、ここが貴女と私の家庭よ♡」
長間なぎさ「真白・・・」
原津サナ「失礼しまーす!」
笥布さくら「遅くなりましたー」
長間なぎさ「早速来てくれたんだ! ありがとう!」
長間なぎさ「えっと、原津さんと、笥布さんだね。 今日からよろしく」
原津サナ「はい!よろしくお願いします!」
笥布さくら「よろしくお願いします」
笥布さくら(結局、原津さんのこと放っておけなくて入部まで付き合ってしまった・・・)
長間なぎさ「私は副部長の長間なぎさ。 そっちは部長の高庭真白だよ」
長間なぎさ「ところで、家政部って何をする部活か知ってる?」
笥布さくら「わかりません」
原津サナ「家族の勉強をする部活?」
高庭真白「正解ー♡」
長間なぎさ「コラッ!」
長間なぎさ「家政って、簡単に言うと家事全般や家計の管理のことなんだ」
高庭真白「時代の変化で家政部=お料理クラブになっている学校も多いと聞くけど・・・」
高庭真白「うちの部では疑似家族を作って伝統的な家政を学ぶことを目指しているの」
原津サナ「疑似家族って何ですか?」
高庭真白「家族ごっこみたいなものかな。 部員全員が姉妹のような気持ちで想い合うのが理想なの」
原津サナ「家族ごっこ・・・なるほど!」
高庭真白「家族になるためにはまず部員どうしが仲良くならなきゃね」
高庭真白「そのためには『同じ釜の飯を食う』のが一番よ。 今日は皆で一緒に簡単なお料理を作ろうと思ってるの」
長間なぎさ「──といっても、今日は調理室が使えないから本格的な料理はできないんだ」
高庭真白「だから、たこ焼きパーティーなんてどうかなって思ったの。 これなら部室でもできそうでしょ?」
長間なぎさ「1年生の二人は料理の経験とかある?」
原津サナ「カレー程度なら」
笥布さくら「調理実習と親の手伝いくらいしか・・・」
長間なぎさ「大丈夫。 料理は経験積めば上手になるからね」
高庭真白「その通りよ。まずは経験ね」
高庭真白「タコだけじゃ飽きそうだから、色んな具を用意したの。 好きな具を入れてね」
笥布さくら(それはたこ焼きって言うのかな?)
原津サナ「わー!美味しそう! 笥布さんは何を入れたい?」
笥布さくら「うーん、チーズは美味しそう。 あと普通にタコかな」
原津サナ「私はイカ!」
高庭真白「なぎさ、 そろそろホットプレートが温まってきたわ」
長間なぎさ「OK、真白! 油を引いて生地を入れるから、1年生の二人はどんどん具を入れてね!」
高庭真白「焼けてきたらこのピックでひっくり返してね」
原津サナ「もうひっくり返していいですか?」
高庭真白「んー、そうね。 端っこが固まってきたらこうやって区切って・・・」
高庭真白「よし、もういいわよ」
笥布さくら「結構難しいですね」
長間なぎさ「少しずつ回転させるといいよ」
高庭真白「焦らなくても大丈夫よ」
原津サナ「できました!」
笥布さくら「私も何とかなりました!」
長間なぎさ「やったね!お皿に盛り付けよう」

〇装飾された生徒会室
「いただきます!」
長間なぎさ「どう?美味しくできたかな?」
原津サナ「おいひいです!」
笥布さくら「熱っつ・・・! でも美味しいです」
長間なぎさ「自分で作ると格別に美味しいよね」
高庭真白「好きな人とワイワイ食べるのもいいわよね」
笥布さくら(何だか・・・こういう部活も楽しいかも)
原津サナ「♪」
原津サナ「・・・」
原津サナ「・・・」
笥布さくら「原津さん、どうかした?」
原津サナ「普通の家族って、こんな感じなのかなって」
長間なぎさ「普通って?」
原津サナ「私、家族がいなくて。 施設から学校に通ってるんですけど、卒業したら出ていく予定なんです」
高庭真白「そうなの・・・」
原津サナ「だから。 社会に出る前にちゃんとした、普通の家族を知りたくて」
原津サナ「そう思っていたら先輩が、声を掛けてくれたんです」
高庭真白「ふふ、そっか」
笥布さくら(そんなこと聞いちゃったら、原津さんのことますます放っておけないじゃない!)
笥布さくら(だいたいこの部に入ったのも、 得体の知れない部活に勧誘されてるのを見過ごせなかったっていう側面もないわけでは・・・)
笥布さくら(でも何て声掛けよう?)
笥布さくら「原津さん。あ、あの」
長間なぎさ「普通の家族かー。普通って何だろうね」
高庭真白「そうねぇ。 今の時代、普通って何か考えると難しいかも」
高庭真白「でも、みんな理想の家族像ってあるものじゃないかしら」
笥布さくら「そんなこと、考えたこともなかったです。 何なら中学の時は家族ガチャハズレたって思ってましたし」
原津サナ「どうして?家族と仲悪いの?」
笥布さくら「うーん。 仲は悪くないけど、そういう気分だったとしか」
長間なぎさ「少しわかるよ。 家族って近くにい過ぎると煩く感じることがあるよね」
高庭真白「そうね。 だから私の理想は子供の自由を尊重してくれる親よ」
笥布さくら「私も理想の優しいお姉ちゃんが欲しいって思ったことはあります」
長間なぎさ「私はそうだな・・・ 料理を美味いって食べてくれる父親、かな」
原津サナ「?」
高庭真白「原津さん、その辺にしときましょ」
高庭真白「こんな風にみんな家族の状況は違うし、 ときには現実の家族に苦しんで理想の家族を夢見たりするものなのよ」
原津サナ(そっか。 私も子供の頃は理想の家族を想像してたもんな)
原津サナ(私も普通の人も同じ気持ちってことかな? じゃあ家族がいる意味って何?)
原津サナ「すみません、沢山お話聞いたらよくわからなくなってきました」
原津サナ「普通の家族って、何だろう?」
高庭真白「混乱して当然だと思うわ。 だって私も常識のある『普通の』家族がいないからわからないもの」
長間なぎさ「私もいわゆる普通の家庭で育ったわけではないから、わからない所があるよ」
長間なぎさ「でもたぶん、 ここで色々と活動していったら何かわかるかもしれないよ」
長間なぎさ「私も将来の理想の家族や家庭を想像しながら活動するときがあるもの」
高庭真白「あら、それは私との将来?」
長間なぎさ「真白、話の腰を折らないで」
笥布さくら「原津さん!」
原津サナ「えっ何?」
笥布さくら「サナって呼んでいい?」
原津サナ「いいけど・・・」
笥布さくら「私で良ければサナの家族になるよ! サナの力になりたいの!」
原津サナ「嬉しいけど、どうやって家族になるの?」
笥布さくら「ええっと、勢いで言ったから考えてなかった」
高庭真白「ふふ。そのための、うちの部活でしょ?」
長間なぎさ「はじめは真白が考える理想の家族を体現するのが目的だったんだけどね」
長間なぎさ「家政部の活動を通して、家族や家庭を疑似体験してみたら良いと思うよ」
高庭真白「父親や母親みたいな役割分担はないかもしれないけど──」
高庭真白「互いを大切に想い合って暮らすっていう家族の体験はできるんじゃないかしら」
笥布さくら「わ、私も! 先輩方やサナと家族になれるような活動がしたいです!」
笥布さくら「まだ何もできないけど・・・」
原津サナ「皆さん・・・」
原津サナ「ありがとうございます! 私も皆さんと家族になりたいです!」
笥布さくら「サナ・・・!」
高庭真白「うふふ。 それじゃあ新しい家族に相応しい活動ができるように、今後の計画を立てましょうか」
長間なぎさ「忘れてた。 生徒会に提出しなきゃいけないもんね」
笥布さくら「私、オムライス作れるようになりたいです!」
長間なぎさ「それはまた難易度の高いメニューだなぁ」
長間朝香「皆いつまで活動してるの? もう下校時刻よ!」
長間なぎさ「げっ! お母さ・・・長間先生」
高庭真白「あら、お義母様」
長間朝香「確かに私はなぎさの実母だけど・・・」
長間朝香「顧問なんだから『先生』って呼んでね」
長間朝香「とにかく、早めに下校すること。 料理の後は清掃も徹底してね」
「はーい」
「はい!」
高庭真白「怒られちゃったわね。帰りましょうか」

〇学校の裏門
原津サナ「今日は楽しかったです!」
長間なぎさ「楽しんでもらえて良かった。 今度は調理室や被服室を借りて何か作ろうか」
高庭真白「さくらちゃんの希望通り、オムライスも作りましょうね」
笥布さくら「やった!楽しみです!」
高庭真白「サナちゃんも。 放課後は自分のお家に帰るつもりで部室に来てね」
高庭真白「放課後限定の家族だと思ってくれたら嬉しいわ」
長間なぎさ「部室で待ってるからね」
笥布さくら「わ、私も! もっとサナのこと知りたいからさ!」
笥布さくら「気軽に頼ってね」
原津サナ「!」
原津サナ「はい!」
原津サナ(何だか、心がポカポカするなぁ)
原津サナ(普通の家族ってどんな風なのか)
原津サナ(この人達と一緒にいれば、いつかわかる気がする)
  おわり

コメント

  • 擬似家族だからといって両親や子供の役割分担があるわけでもなく、自然な感じでいいですね。実社会ではシェアハウスに近い感覚かも。現代は家族の形態も様々で複雑化しているから、これからはその人にとって居心地の良い相手や場所が家族と呼ばれるようになっていくのかな、と思いました。

  • 原津さん、明るい子だなあと思っていたけど、実は色々抱えていたんですね。
    みんな何も無いように見えて実は色々あるんだなあと思いました。
    家政部での活動が原津さんにとって、心の拠り所になったら良いなと思います!

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