決戦前夜(脚本)
〇地球
ここは剣と魔法、そして世界征服を企む魔王が存在する世界──
1人の勇者が立ち上がり
魔王を倒す・・・
その『前日』の物語である
〇闇の要塞
魔王城
〇魔王城の部屋
魔王(ついに明日は勇者との決戦の日か・・・)
魔王「娘たちよ、今日は大事な話がある」
娘たち「なんでしょうか?お父様」
〇魔王城の部屋
魔王には3人の妻との間にそれぞれ1人づつ娘がいた
〇魔王城の部屋
魔王「私は明日、勇者と戦う」
魔王「そこで私は敗れ、命を落とすことになるだろう」
娘たち「なぜお父様が殺されなければいけないのですか!?」
娘たち「人間はいつも自分勝手です!!」
娘たち「ゴールドや経験値が手に入るからと言って魔族を攻撃してきたり」
娘たち「アイテムを手に入れるために魔族のお家であるダンジョンに不法侵入して荒らしていったり」
娘たち「ついにはお父様まで手にかけようだなんて・・・」
娘たち「お父様は世界平和のために、あんなに頑張っていたではないですか!!」
魔王「そうだな、私は人間と魔族が共存できる世の中を目指し、世界を統一しようと頑張ってきた」
魔王(友好を築こうと人間の村に何度も使者を送ったこともあったな・・・)
〇村の広場
魔族の使者「ゴんニヂぃわぁあ!!」
「きゃああああーー!!」
魔王(魔族一のかっこいいイケメンを送ったつもりだが上手くいかなかったか)
数日後
魔族の使者「こんにヂューわァー!!」
「きゃああああ──」
魔王(かわいい系でもダメなのか)
数日後
魔族の使者「コンニチハ」
「きゃああああ──」
魔王(人間と同じ形をしていてもダメか)
数日後
魔族の使者「こんにちは」
「きゃああああ──」
魔王(正装してもダメか)
数日後
魔族の使者「ウホッ」
「きゃああああ──」
魔王(変装してもダメか)
数日後
魔族の死者「・・・」
「きゃああああ──」
魔王「使者ではなく死者でもダメか・・・」
〇魔王城の部屋
魔王「こうして友好を築こうと努力を重ねたのだが、いつの間にか私は人間達から恐れられる存在になってしまっていたんだよ」
娘たち「自業自得かもしれない・・・」
娘たち「で、でも魔族は一度も村を襲ったりしてなんていないのに!!」
魔王「それがね、私が一度だけ過ちを犯してしまったんだ・・・」
魔王「私はある日、村の中で1番の高嶺の花だった女性に一目惚れして恋に落ち」
魔王「その日の夜に襲って連れ去ってしまったんだよ!!」
魔王「そう、だから私は恐怖の象徴であり魔族の代表として勇者に倒されなければいけない運命なのだ」
魔王「私が犯してしまった罪によって他の魔族が傷つけられるのはもう耐えられない」
魔王「恐怖の象徴『魔王』を倒すことによって世界に平和が訪れるのであれば喜んで受け入れなければいけないと思っている」
三女母「そんな事ないわ!!」
魔王「聞いていたのか・・・」
三女母「確かに私はあなたに襲われなければ村人として平和に暮らしていたかもしれない」
三女母「でも私は高嶺の花すぎて誰も声をかけてこない村の男達にうんざりしてたの」
三女母「そんな時にあなたがやってきた」
三女母「高嶺の花の私に物怖じせずにアタックしてきたあなたに私は喜んで襲われたのよ!」
三女母「そうして駆け落ちまでしてしまったけど、なにも後悔はしていないわ」
三女母「とっても幸せよ」
魔王「おまえ・・・」
娘たち「そ、そうね・・・」
娘たち「魔王である父様と村人である母様が結婚して幸せなように、人間と魔族が仲良く幸せに暮らせる日がくるかもしれないわね!!」
娘たち「いい事を思いついたわ!!」
娘たち「人間の代表である勇者と魔王の娘が結婚すれば友好の証になんじゃないかしら?」
魔王「それはとても良い案だと思うがお前達はそれでいいのか?」
娘たち「勇者は父様を倒せるくらい強いのよね?」
娘たち「強さが全ての魔族にとっては最高じゃない!!」
娘たち「喜んで勇者と結婚したいわ!!」
魔王「よし! そういう事であれば、三姉妹の中から勇者のお見合い相手を1人決めなければいけないな」
三女母「そうね、人間の世界は一夫多妻制ではないから1人を決めなくてはいけないわね」
〇魔界
魔王「まずは長女から」
長女「はい、父様」
魔王「水龍から生まれた長女は、母親に似て強く気高い女性だ」
魔王「しかし、強く気高い、つまり『かっこいい』ということは、人間にとっては畏怖の対象となってしまうらしい」
魔王「長女には申し訳ないが、勇者のお見合い相手にはなり得ないだろう」
魔王「次女はどうだろうか」
次女「はい、父様」
魔王「ゴーレムから生まれた次女は、母親から受け継いだ機能美とお人形さんのような可愛らしさを持ち合わせた女性だ」
魔王「しかし、どうやら人間は小動物やお人形さんのような『かわいい』ものにも畏怖してしまう習性があるようだ」
魔王「次女にも申し訳ないが、勇者のお見合い相手にはなり得ないだろう」
〇魔界
魔王「やはり勇者のお見合い相手に相応しいのは三女しかいないのかもしれない」
魔王「三女は村の男達が近づき難いほど高嶺の花であった母親の良いとこ取りをしたような女性だ」
魔王「美しく艶のある髪 勇者は触れるだけで惚れ惚れしてしまうだろう」
魔王「そして全てを包み込んでくれそうな胸元 勇者は抱きしめられ、大きな胸に包まれて戦いの疲れを癒すことができるだろう」
三女母「そうね、あの子ならきっと勇者も気に入るわ」
三女母「人間の私から見ても、ハーフなだけあって見た目もほとんど人間と変わらないから違和感もないと思うわ」
三女「お父様、お母様、私」
魔王「ぐすん・・・(泣)」
三女「お嫁に行きます──」
〇教会の中
こうして父のため、魔族のため、人間との共存、世界の平和のため、お見合いという新たな決戦に向かう三女なのであった
終わり
魔王のずれ具合がすごくおもしろかったです!笑
特に「死者」のあたりがツボでした!
でも、なんで三女を行かせようとしたのか…ずれた魔王だから彼女が一番適任だと思ったんでしょう。
確かに…お見合いが成立すれば…魔王は倒されずに済みますが…。
成功するのか心配です笑
私もよくゲームで王様の言われた通りにモンスターを借り続けていますが、確かにモンスター側からしたら勝手に縄張りにきて倒されて…理不尽ですね汗
えっえっ三女(笑)どんな美少女が出てくるかとワクワクして待ち構えていたら、、予想外の展開にちょっとびっくりしました。そして、平和主義な魔王が素敵。いろいろ試行錯誤して使者を送る場面では、次は何を狙ってくるのか、読み進めるのが楽しかったです。