魔法使いの竜葉

さつまいか

第3話 杏奈(脚本)

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〇炎
  町は、炎で包まれていた。
杏奈 10歳「ひっく・・・。 なんで、町が燃えているの・・・?」
  意味が分からず
  泣きじゃくっている杏奈の方に
  足跡が近づいてきた。
???「・・・何か困っているのか?」
杏奈 10歳「・・・え?だ、誰?」
  貴族のような身だしなみ。
  背から生えているそれは羽だった。
杏奈 10歳(もしかして、ヴァンパイア? でも、どうしてこんなところに?)
ヴァンパイア「見て分からぬか? 我はヴァンパイア。 そなたの力に導かれて来た、といったところか・・・」
杏奈 10歳(や、やっぱり・・・)
杏奈 10歳「で、でも力って? あたし、特に何もできないし・・・」
  杏奈はヴァンパイアの
  言っていることに困惑する。
ヴァンパイア「まあ、今は分からなくてもいい。 また、会う日が来るからな。 じゃあね、力を秘めた少女__」
  どこからか来たヴァンパイアは、
  どこかに翼で飛び立っていった。

〇古いアパートの一室
杏奈「う、ううん・・・ 何?さっきのは・・・」
  杏奈は、自分の部屋のベッドの上にいた。
  町を包み込む炎も、
  あのヴァンパイアもいない。
杏奈(夢、だったのかな・・・? いつもは残酷な夢なんて見ないのに・・・)
杏奈「それに、あの風景、どこかで 見たことあるような・・・」
沙利「杏奈ー?大丈夫? さっきから何かぶつぶつ 言ってるみたいだけど」
  気づくと、目の前には沙利が立っていた。
  考え込みすぎて、
  沙利が部屋に入ってきたことにも気づけなかったらしい。
杏奈「う、うん、平気だよ? ごめんね、心配させちゃって」
沙利「ほ、本当に? 何かあったら、遠慮しないで相談するのよ?」
  沙利が心配そうに声をかけてくる。
杏奈「大丈夫! ほんとに沙利って優しいね」
  杏奈は沙利を心配させないように、なのか
  明るめな声を出して答える。
沙利「そう、ならいいけど・・・ あ、杏奈もう朝食出来てるの。 食べれる?」
杏奈「うん!いつもありがと、沙利!」
  杏奈はいつもの調子に戻って、
  沙利と共に居間に向かって行った。

〇古いアパートの居間
杏奈「うわぁ・・・、沙利が作ってくれたの、 本当に美味しそう・・・」
  杏奈は机の上に2つあるパンケーキを見て、
  思わずそう呟く。
沙利「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいわ。 これからも、料理のレパートリーとか 増やしていくわね」
杏奈「うん!じゃあ、食べよっか」
沙利「ええ、いただきます」
  沙利が行儀よく手を合わせて食べ始める。
杏奈「はむっ、ん~♪ 見た目以上に美味しい!! 毎日こんなの食べれて、本当にあたしはついてるなぁ」
沙利「もう、杏奈、それは言い過ぎよ・・・ うまくない方だし・・・」
杏奈「えぇぇ!? この味で下手なんてありえないよっ! 沙利の実家はどうなってるの?」
  杏奈は身を乗り出して沙利に聞き迫ってくる。
沙利「あぁ、パンケーキが、ってこと」
沙利「それと、杏奈? 食事中に机を叩くなんて行儀悪いわよ? ちゃんと座って食べないと」
杏奈「は、はーい・・・」
  驚いていた杏奈をたしなめる沙利。
「だ、誰か!助けてくれ!!!」
  その時。
  どこからか男の叫び声が聞こえてきた。
杏奈「な、何? この町は世界中でも 平和ってことで有名なのに・・・」
沙利「分からないわ。 でも、今は行ってみましょう」
沙利「この町を守るために」
  沙利は真剣な目で杏奈を見つめながら
  そう言う。
杏奈「うん、行こう!」
  その言葉に、杏奈も立ち上がった。

〇寂れた村
杏奈「はぁ、はぁ・・・ さっき、叫び声が聞こえたのって この辺りだよね?」
  杏奈が息を切らしながら、
  一緒に来た沙利に尋ねる。
沙利「え、ええ。 そうだったはずだけど・・・」
  何もないわね、
  と今にも消えそうな声で呟く。
若い男「ひ、ひぃぃぃ!!! お、俺が何やったって言うんだ!」
杏奈「あ、あの人!さっき叫んでた人じゃない? 声質がよく似てる!」
  目当ての人を見つけて、
  杏奈が指をさしながら叫ぶ。
沙利「そうね・・・ 杏奈、何か面倒事だったら困るわ。 少し声量くらい落として・・・」
杏奈「あ、ご、ごめん・・・ でもなんでさっき助けてって 言ってたんだろう?」
ヴァンパイア「だ・か・ら! どうしてそなたはさっきから大声で叫ぶ? 誰かが来たらどうするのだ」
  男が叫んでいた正体は、まさか、
  今日の朝に杏奈が見た
  夢の中に出てきたヴァンパイアだった。
杏奈(えっ? どうして今日の夢のヴァンパイアが?)
  杏奈は困惑する。
若い男「こ、こんな状況で 静かにいられるやつなんていないだろ!! お、俺は帰るからな!」
  ヴァンパイアに絡まれていた男は
  恐怖のあまり、逃げていった。
ヴァンパイア「はぁ、逃げられたか」
杏奈「あ、あのー・・・」
  ヴァンパイアが嘆息している時に、
  杏奈が興味を持ったあまり、話しかけた。
ヴァンパイア「なっ・・・! そなた、我が探していた者ではないか・・・! この町にいるという情報はあったが 本当だったのか・・・」
  杏奈の顔を見たとたん、
  ヴァンパイアは驚きを隠せない様子だった。
沙利「ちょっと、杏奈!? どうしてあなたはいつも勝手に いろんな人に話しかけるの??」
杏奈「ご、ごめん、沙利・・・ でも、あたし、このヴァンパイアさんに 心当たりがあって・・・」
  杏奈はしどろもどろに
  なりながらも取り繕う。
ヴァンパイア「心当たりって・・・ 我はそなたの故郷を踏みにじってしまった 元凶なのに、覚えていないのか?」
  杏奈の発言に対して、ヴァンパイアが
  驚きの声をあげる。
杏奈「や、やっぱりそうだったんだ・・・」
沙利「えっ?杏奈の故郷を、って・・・ 杏奈は捨て子じゃなかったの? 物心ついたときにはもう親なんて知らなかったって・・・」
  そのことを聞き、動揺の声を出す沙利。
杏奈「えっ? 聞きたいのはこっちだよ・・・ そんなの言った覚えなんて・・・」
ヴァンパイア「あ、ああ、すまない・・・ それは置き手紙だったと思うが、 杏奈、だったか?そなたが捨て子になっていたのを__」
ヴァンパイア「__拾ったのは、我の親族だ。 だが、我ら一族の掟では、人間の子となど、 触れあってはいけなかった」
ヴァンパイア「だから、我の親族にあたる者たちは、 なるべく安全なところに 杏奈を置いていたのだ」
ヴァンパイア「時々、そこに様子を見に行っては、 皆、胸を撫で下ろしていた」
ヴァンパイア「だが__」
  10年前。杏奈は、その森からいなくなっていたという。
ヴァンパイア「我らは子と戯れることが 許されていなかった。 だからもう、誰か優しい方が拾ってくれた、」
ヴァンパイア「そう思うようにして、杏奈のことは 考えないようにしたのだ」
ヴァンパイア「だが、5年前。 我は無意識に〈探索〉(サーチ)の魔術を使い、そして__」
ヴァンパイア「懐かしい魔力を見つけてしまった」
  ヴァンパイアは魔術の能力に長けている。
  覚えたての魔術で制御できていなかったため
  無意識で使ってしまったのだ。
沙利「・・・それが、10歳になった杏奈だった、 ということね・・・」
  話し終えたヴァンパイアに、
  沙利がそう尋ねる。
ヴァンパイア「ああ、そういうことだ。 そして、我はそれは伝えるべき 事項ではないと思い、 皆には伝えるつもりはなかったのだが、、」
沙利「ばれてしまった・・・。 そして、皆は杏奈を取り返そうと その村を蹂躙した、のね・・・」
ヴァンパイア「大体は、そうだな。 我がサーチなど使わなければ 杏奈が苦しい思いをすることなど なかったのだが・・・」
杏奈「そういうこと、だったんだ・・・。 ヴァンパイアさん、教えてくれてありがとう。 あたし、その記憶が何故か曖昧なみたいで・・」
ヴァンパイア「そう、か・・・。 おそらくそれはショックなことだったため そなたの脳から記憶が 無意識に消されていたのだろうな」
ヴァンパイア「今、我が喋ってしまったが、 よかったのか?」
杏奈「うん・・・。 今日の朝、夢を見たんだ。 あなたと、ヴァンパイアさんと 一緒に話していた夢を」
杏奈「そのあたしは泣いてた。 でも、ヴァンパイアさんは、 それを慰めるみたいに駆けつけてきてくれて・・・」
ヴァンパイア「それは、過去の記憶、だろうな。 なぜ今になってなのかは分からぬが、 杏奈の中で閉じ籠っていた力が芽生え始めているようだな」
杏奈「・・・力!」
沙利「杏奈?どうかしたの?」
杏奈「いや・・・、 夢の中でヴァンパイアさんが 『そなたの力に導かれて来た』 って言ってたから、引っ掛かりを覚えて・・・」
杏奈「ヴァンパイアさん、その力って 何か心当たりはある?」
ヴァンパイア「あ、あるにはあるが・・・」
ヴァンパイア(今ここで真実を杏奈に伝えても いいものだろうか・・・?)
沙利「・・・ヴァンパイアさん 杏奈に伝えにくいんだったら、 一度、私に伝えてもらえません?」
沙利「何か、力になれるかもしれないから・・・」
  自信なさげに沙利がそう提案する。
ヴァンパイア「え・・・い、いいのか? それはまぁ、そなたが大丈夫なのであれば ぜひお願いしたいが・・・」
沙利「ええ、いいわよ。 杏奈、私たち__」
杏奈「うん、わかったよ。 自分のこととか気にはなっちゃうけど、 沙利に伝えてくれるなら安心だからね!」
ヴァンパイア「二人とも、ありがとう・・・ 沙利、よ どこか、誰にも聞かれないような 場所はあるか?」
沙利「うーん、そうね・・・」
沙利「あ!ヴァンパイアさんは 魔術が得意ってことは魔力も多いですよね?」
ヴァンパイア「ん?ああ、そうだが・・・ 何か思い付いたのか?」
沙利「ええ、魔術で異空間に移動して そこで話をするの」
杏奈「なるほど それなら魔術で作られてる空間だから 誰にも聞かれる心配がないってことか!」
沙利「えぇ、そういうことよ、杏奈」
  杏奈の答えについて、沙利が頷く。
ヴァンパイア「沙利、配慮感謝する では早速お願いできるか?」
沙利「ええ、大丈夫よ。 杏奈、帰ってくる時 あなたの家に座標を設定しようと思うから 待っておいてくれる?」
杏奈「うん、分かった! 新しい武器でも作りながら待っとくね♪」
沙利「ええ、お願いね」
  沙利はそう言って、魔術の準備を始める。
  すると、沙利の周りが
  ぼんやりと青色に光ってくる。
  そして、ヴァンパイアと沙利は
  その場から魔力で包まれた次元に転移した。

次のエピソード:第4話 約束

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