エリア外の悪魔

藍の雪

エリア外の悪魔(脚本)

エリア外の悪魔

藍の雪

今すぐ読む

エリア外の悪魔
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇宇宙空間
  一世を風靡したVRMMORPG
  『ソル・ノクティス』
  サービス終了の1週間前
  最後のエリア拡張が行われた
  新エリアの名は
  『葬送の丘』
  これは、最期の日の前日
  丘に訪れたとある男の物語である

〇巨大な城門
裸体の男「ぶっ殺してやる!!」
  裸体の男が
  そこらじゅうに紅魔弾をぶっぱなし
  走り去ってゆく
俺「相当キレてらっしゃる・・・」
彼女「ひどいね あなた無実なのに」
  あの狂人に殺意を向けられているのは
  俺だ
  先刻、新エリアにて
  夕焼けを見ながらノスタルジーに浸っていたところ
  ヤツに「俺の装備盗んだだろ」
  と、言いがかりをつけられた
  そこで
  「別にいいじゃないですか
   どうせ明日には全部消えるんだから」
  と、返した
  そしたらこうなった
裸体の男「あの野郎どこ行きやがった!!」
  ちなみに俺たちはこの辺の茂みの中 ↓
  あと彼女↑は
  近くにいたために、とばっちり食らった人
  とりあえず
  ここ↑、東門広場まで逃げてきたけれど
  この調子では、やがて見つかるだろう
  というか、こんな密室
  隣に女性の顔があるだけで耐えられない
  早く出たい
  俺は茂みから顔を覗かせて
  少し離れた場所にいる、狂人の背中をじっと見つめる。
  Lv 999
  
  Name takuwan0141
  Job 魔術師
  ・・・俺のレベルは
  Lv 176
  
  Name FOOLY
  Job 遊び人
  終わった
彼女「戦わないの?」
俺「無理です 死ねます」
  もし仮に、俺のこの
  ”鉄剣レベル30”で切りかかったとしても
  ヤツの皮膚は金剛に等しい
彼女「ふーむ」
彼女「もしさ 私のおかげでアイツから逃げられたら ひとつお願い聞いてくれる?」
俺「もう何でもします」
彼女「やった」
  彼女がふっと消失した
俺「へっ?」
  次の瞬間
  地面から腕が伸びてきて
  そのまま引きずり込まれた
  ──
  目の前が真っ白になった

〇幻想2
  ──
俺「なんだこれ」
  薄霧のようなものが立ち込め
  距離感覚が掴めない
「なかったことにされたエリアだよ ボスもいるマップだからすごく広いの」
  なんだ、バグ技か
  一度、没マップなどの“エリア外”に落ち
  その後、“エリア内”の位置に戻って来れた場合
  マップが正しく読み込まれなくなり
  エリア内外を簡単に行き来できるようになる
  3dゲームでよく見るヤツだ
俺「よくこんなところ見つけま んぐぁ」
  突然、視界が
  紅魔弾の閃光でいっぱいになった
  のけぞり
  つまづき
  腰を強打
俺「死んだっ 絶対死んだ」
彼女「大丈夫!ただの幻影だから 外のエリアの情報が流れ落ちてきてるだけ」
  周りをよく見ると
  確かにうっすらと他プレイヤー達が・・・
プレイヤー「死ねぇ!!」
プレイヤー「ぐわぁああ」
プレイヤー「協力、感謝する!」
プレイヤー「お命頂戴!」
プレイヤー「卑怯なりぃいい」
俺「・・・」
  彼女は、その中をまるで散歩するみたいに歩いている
  楽しげに、幻影とおしゃべりしながら
「惜しいっ! もう少しステータス上げてたらなぁ」
「相手は大振りなんだからもっと攻めないと!」
  俺は、痛みが付与された腰をさする
  幻影たちは、誰もが
  激昂していたり
  狂喜乱舞であったり
  まるで地獄絵図
  あるいは
彼女「まるでモンスターのお祭りみたい」
  滑稽だ
俺「何をこんなに必死になって どうせゲームなんて他のでいくらでも出来るのに」
彼女「・・・君ってさぁ」
彼女「人に勝ったことないでしょ」
俺「は?」
彼女「そもそもボスに勝ったこともない」
俺「別にっ RPGって戦闘だけのゲームじゃないですしっ」
彼女「ねぇ」
俺「例えば・・・観光とかっ?」
彼女「ボス戦、私とやってよ」
俺「いやっ え?」
彼女「さっきの約束」
俺「・・・まぁ」
俺「・・・いいですけど」
  彼女が空を指さす
彼女「ここから出れるんだよ エリアが重なってるから」
  ──
  目の前が薄暗くなる

〇荒野
  ──
  ここは、新エリア?
  引退したプレイヤーの墓石が乱立する
  『葬送の丘』に立っていた
俺「こんなバグ技 デバッカーですかあなた?」
彼女「ふふっ 見てみたら?」
俺「ああ、なるほどです」
  両手を広げて微笑む彼女を
  俺は、じっと見つめる
  Lv NOT FOUND
  Name NOT FOUND
  Job NOT FOUND
  なん?
彼女「もうわかった?」
  いや、は?
  ・・・ちょっと待て
  あのクソ便利な移動方法
  カンストプレイヤーがごろごろいるこの世界
  話にも聞かないっておかしくないか?
  もしも、
  彼女が最初から
  ”エリア外で生成された”のだとすれば・・・
彼女「ずっと待ってたの 永遠に暮れない朝の中で」
  彼女は魔術師ローブの腰紐を緩める
俺「ちょっ、ちょっと! 急にそんなっ」
  月明かりの下に
  白い素肌が晒される
「君も最期なんだから 一緒に楽しもうよ」
俺「俺は」
  一歩、後ずさる
俺「戦うなんて・・・」
「ふふっ やくそくっ」
俺「!?」
  彼女は月に手を伸ばす
「こんなに月が綺麗なのだから」
  静かに
  俺は、鉄剣の柄に指を触れる
「永遠の狂気に興じましょう!!」
  ──ボスゲージ出現
  Hp 350000
  
  Lv 800
  Boss Name ──
  月の悪魔

〇川沿いの原っぱ
  男と悪魔の戦いは一夜に及んだ
  哀れなことに
  悪魔の攻撃には当たり判定がなかった
  その細い腕から発せられる攻撃は
  男の肌を撫で続けた
  一方、男の攻撃は
  悪魔のHPを一寸刻みに削っていく
  悪魔の肉体を、鉄剣が何度も何度も貫いた
  やがて夜が明ける
  朝焼けの眩しさとともに
  悪魔は消えた
俺「お前のせいだ」
  また別の世界にいく羽目になる
  いきたいと望んでしまう
  今宵も月が出ている

コメント

  • ゲームの世界を少し違った視点で描写し、様々なキャラクターの闘いを見る発想は斬新です。果たしてエリア外の悪魔の正体は?次回が楽しみです。

  • ネトゲの終了って、いわば世界の終了ですもんね。
    最後にボスの討伐とかやりますよね!
    彼女の正体は不明でしたが、最後まで楽しめたみたいでよかったです。

  • すっごくいい。面白かったです

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ