ぼくらはキツネ一家

純川梨音

第1話 ぼくはキツネの子ども、なのかな、、?(脚本)

ぼくらはキツネ一家

純川梨音

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〇ボロい家の玄関
  ワタルくんはお風呂嫌いの一年生。
  夕食後は決まってお父さんにつかまる前に隠れます。
  今日は物置きに隠れました。
ワタル「今日こそ見つからないでしょ。なんでか お父さん、ご飯のあといなくなったし。ラッキー」
  物置きは懐中電灯の光に照らされて昼間よりも一層、
  不気味さをのぞかせています。
ワタル「なんか怖いな。でもここ以外にもう隠れる場所思いつかないし。ん、、?」
  中を見渡すと、あちこちに茶色い毛が
  ついているのが見えました。
ワタル「前入ったとき、こんなに毛なんてついてたっけ?」
  ワタルくんはふと、友達のいっくんが家に
  遊びに来たときの会話を思い出しました。

〇古民家の居間
いっくん「わーっ!ワタルくん家って畳の部屋が いっぱいあって妖怪とか出そう! 化けギツネとか!見たことないの?」
  いっくんはそう言って化けギツネの絵を
  見せてくれました。
  ワタルくんは切れ長の目が怖いなと
  思ったのでした。

〇ボロい家の玄関
ワタル「まさかね!」
ワタル「でもそういえば、お母さん、今日スカートに毛がついてた」
  キレイ好きのお母さんには珍しいことでした。
  お風呂のときには決まって、、

〇清潔な浴室
お母さん「昔ね、お風呂に入らなかったご先祖さまがいてね。 ちょっとずつ毛が生えてきて、 最後にはキツネになっちゃったんだぞ~」
ワタル「一日くらい平気だよ!」

〇ボロい家の玄関
ワタル「お父さんたちがいつも絶対にぼくを お風呂に入れるのって、、」
  なんだか寒気がしてきたワタルくん。
  服の下で毛が立っているように感じるのは、
  鳥肌なのか、それとも、、?
ワタル「わぁっっ!!」
お父さん「ワタル!いくら何でもこんなとこに隠れるとはな」
ワタル「あ、、お父さん。ねえ、お母さん、キツネかも知れない」
お父さん「なんだぁ?そんなにお風呂に入りたくないのか」
ワタル「ちがうよ!!」
お父さん「まあでも母さんのキツネらしい 切れ長だけどキラキラ輝く瞳に、 父さん惚れたんだよな。 ワタルも母さんの魅力に気づいたか」
  とりあってくれないお父さん。
  その服にもよく見ると毛が。。
ワタル「お父さんもキツネなの?!」
お父さん「何言ってんだ。さあ、出てきなさい。 お風呂の前にワタルに見せたいものがあるんだ」
ワタル(見せるって何を?キツネのしっぽ、、?)
ワタル「イヤだ!」
お父さん「お風呂嫌いも大概にしろよー」
  おりゃっ、とお父さんに抱えられ、
  連れられるワタルくん。
  お父さんから、動物の匂いがしました。
ワタル(ああ、ぼく、キツネの子どもだったんだ。。)

〇古民家の居間
  居間まで連れられたワタルくんの耳に
  飛びこんできたのはワンッという鳴き声でした。
ワタル「えっ?!」
お父さん「ほら、ワタル!ワンちゃんだぞ〜」
お母さん「昨日、物置に隠れてるのを見つけて 病院で診てもらってて 今日から一緒に暮らせるから ワタルをびっくりさせようと思ったのよ」
ワタル(、、じゃあ、あれはワンちゃんの毛?)
お父さん「どうしたんだ。キツネにつままれたような顔をして」
お母さん「名前はルビーよ。仲良くしてあげてね。さあ、お風呂に一緒に入っておいで!」

〇清潔な浴室
ワタル「キミの毛、明るいとこで見ると赤っぽいんだね」
「ワンッ!」
「そろそろルビーは洗えたかー?先にふいちゃうから」
ワタル「はーい」
  ドアの向こうでドタドタッとルビーが暴れている。
「わっ、大人しくしなさい! お前はドライヤーが嫌いなんだな ワタルと一緒だな」
  ドアのむこうに、しっぽの影が見えます。
ワタル(ルビーのしっぽってあんなに大きかったっけ? 乾いたからかな、それにしても、、)
  思わずバッとドアを開けるワタル。
  そこにあったのは、、
  ルビーのしっぽでした。
お父さん「なんだ?ちゃんと洗ったのか?」
ワタル「いや、、」
ワタル(ルビーのしっぽ。影よりずっと小さかった。 ドアのすりガラスってぼやけて見えたりするけれど、、)

〇ボロい家の玄関
  翌朝、物置きを見に行ったワタルくん
  お母さんが掃除したのか
  毛はキレイになくなっていました
  毛は何色だったんでしょう。
  おしまい。

コメント

  • 毛に焦点を当てるとなんだかホラーのように感じますが、ただお風呂嫌いの男のコの妄想だとしたら、とても可愛い読み物でした。狐か人間か、想像にまかせてみます!

  • 両親はキツネなのか、だとしたらワタル自身もキツネなのか人間なのか、わかりそうでわからない、読者を焦らすような語り口が絶妙で、続きが気になります。犬が好きなのでルビーの姿も見たかったです。

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