私たちの作品、つくってみない?(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
品里 花尋「私たちの作品、つくってみない?」
品里 芹生「お前たち、脚本家になりたいんだろう?」
品里 芹生「だから、俺たちで応援してやろうって考えたんだ」
品里 花尋「ちゃんと勉強できる機会をつくろうって思ったの」
品里 花尋「親で先輩脚本家の私たちがね」
品里 由起人「どんな作品をつくればいいんです? 父さん、母さん」
品里 芹生「それは──」
品里 芹生「まだ決めてない」
品里 花尋「あなた達で考えてもらおうと思ってね」
品里 花尋「いつもは、バラバラでつくってるでしょ?」
品里 芹生「この機会に、お互いを考えてつくってみる」
品里 芹生「そこから、やってみて欲しい」
品里 花尋「公開先は配信サイト SNSで広げていくような作品にしたい」
品里 芹生「誰か、アイデアはないか?」
品里 結世「はいはい!」
品里 芹生「お、結世、聞かせてくれ」
品里 結世「オレだけじゃできなような壮大な話!」
品里 芹生「ははっ 結世らしいなぁ その調子だ」
品里 花尋「でも、今回の件には合わないわね」
品里 花尋「なるべく1話完結を心がけたいの」
品里 結世「ふ〜ん」
品里 うたた「新参にも優しい作品が必要なのね」
品里 うたた「長いストーリーだと中途参入しづらいから」
品里 うたた「まだ実績のない作品にはキツイでしょうし」
品里 うたた「だから、承実姉ちゃんの作品も無理でしょうね」
品里 承実「うん、私もそう思う」
品里 承実「難しいから、広くウケるってわけじゃないし」
品里 由起人「お前のはファンがついてもコアそうだもんな・・・」
品里 由起人「だから一番は現代ものだと思うんだが──」
品里 結世「それは兄ちゃんが好きなだけだろ〜」
品里 結世「ファンタジーだって、しっかり流行ってんだし」
品里 うたた「一理あるわね」
品里 承実「どっちも私のよりはいいんじゃない?」
品里 結世「承実姉ちゃんは俺の方が向いてないか?」
品里 由起人「おい、結世、自分が不利だからって──」
品里 うたた「由起人兄ちゃんも結世も、落ち着いて!」
品里 承実(みんなを活かせないかな・・・)
こうして、話はまとまらないまま
翌日に持ち越されたのでした
〇本棚のある部屋
翌日、由起人と結世の部屋
品里 由起人「で、結世、昨日の話どう思う」
品里 結世「面白いけど難しい、かな」
品里 結世「でも、やっぱり承実姉ちゃんもいるし──」
品里 由起人「結世、お前はなんで空想的な話を書きたいんだ?」
品里 結世「そりゃ、楽しいからだよ」
〇女性の部屋
承実とうたたの部屋
品里 うたた「ねえねえ、承実 昨日の話でなんか考えた?」
品里 承実「うん、少しはね」
品里 承実「綺麗事かもしれないけど」
品里 承実「みんなの個性を活かしたい」
品里 うたた「あはは・・・」
品里 うたた「姉ちゃんの個性マシマシ作品は好──」
品里 承実「だから、空想は封印しようと思ってるの」
品里 うたた「え? 封印?」
品里 うたた「なんでまた」
品里 承実「うたたには、書きづらいでしょ?」
品里 承実「私も似たような経験あるし」
品里 承実「空想的な作品は多分、 その人の趣味とかが色濃く出る」
品里 承実「作家同士が共有するには もっと、普遍的な作品が必要なんじゃないかな」
品里 うたた「私の出番、かな?」
品里 承実「さあ? でも、うたたはオーソドックスな作風よね」
品里 承実「何か考えたんでしょ?」
品里 承実「それ聞かせてよ」
品里 うたた「うん──」
〇本棚のある部屋
品里 由起人「でも、空想物は軽薄すぎやしないだろうか」
品里 由起人「やはり重厚なリアリティだろう?」
品里 結世「じゃあ聞くけど、兄ちゃんの考えは?」
品里 由起人「僕はな、創作の悩みに焦点を当てたい」
品里 由起人「全員、脚本家とその卵、僕もそうだ」
品里 由起人「なにかしら持っているだろう?」
品里 結世「空想物をつくらせてもらえない、みたいな?」
品里 由起人「ああ、そうだ」
品里 由起人「だから、ここにいる誰もが書けるはずだし」
品里 由起人「この作品を通して向き合うことになる悩みもあるだろうからな」
〇女性の部屋
品里 承実「へぇ、コラボ」
品里 うたた「まあ、パパやママたち協力が必須だけどね」
品里 うたた「私たちの作品自体の拡散力を上げたいなって」
品里 うたた「だからこそ、広く繋がれる作品が欲しいかな」
品里 承実「だったら── 私たちを、作家キャラの家族として キャラ化するのはどう?」
品里 うたた「どういうこと?」
品里 承実「私たち、いちおう脚本家とその卵じゃない?」
品里 承実「だから、脚本家としてコラボできる可能性がある」
品里 承実「それを、作家キャラがやるの」
品里 うたた「キャラはキャラで私たちは私たちでしょ?」
品里 承実「うん、私たちは中の人で作家性担当」
品里 承実「アイドルとかバンドメンバーの替わりに 脚本家」
品里 うたた「あぁ〜」
品里 承実「うたたは、どう思う?」
品里 うたた「ふふっ」
品里 承実「・・・うたた?」
〇本棚のある部屋
品里 由起人「なあ、悪くはないだろう?」
品里 結世「じゃあ、俺たちが主役になるのか?」
品里 由起人「かもな」
品里 結世「・・・だったら、劇中劇も書ける?」
品里 由起人「なに?」
品里 由起人「不可能ではないと思うが」
品里 由起人「1話完結のやつだぞ」
品里 結世「もちろんさ、ちょっと考える」
〇おしゃれなリビングダイニング
品里 芹生「どうだ、お前たち、アイデアは固まったか?」
品里 花尋「固まってなくても聞かせてもらうわよ」
品里 花尋「じゃあ、由起人から」
品里 由起人「僕は作家の悩みをテーマに据えたい」
品里 由起人「これなら全員、持っているはずだ」
品里 花尋「少し、暗いわね」
品里 花尋「ずっと悩んでばかり?」
品里 由起人「うっ、それは」
品里 芹生「でも、脚本家とその卵の話なら、リアリティが出る」
品里 芹生「由起人らしいぞ」
品里 承実「つまり、楽しみも含めて作品にすればいいんじゃない?」
品里 結世「うんうん、情熱とかありだろ」
品里 うたた「葛藤は解決とセットだもんね」
品里 由起人「それは、そうだ」
品里 花尋「そう言えば承実はどんなこと考えたの?」
品里 花尋「聞かせて」
品里 承実「うん、ちょうどいいタイミングだわ」
品里 承実「私たちをキャラ化するの」
品里 うたた「こんな感じにね!」
作家キャラ1号(芹生)「あ〜、うたた?」
作家キャラ2号(花尋)「これは、どういうこと?」
作家キャラ5号(うたた)「キャラと私たちは別もの」
作家キャラ4号(承実)「だから作風に似合うキャラにすべきだと思ったし」
作家キャラ4号(承実)「最終的な登場キャラクター全体のバランスもあるでしょ?」
作家キャラ1号(芹生)「それなら、納得」
作家キャラ2号(花尋)(・・・引っ張られてる)
品里 花尋「コホン 次、結世は何か考えてきた?」
品里 結世「俺は劇中劇がやりたい」
品里 結世「そうすれば、みんなの好きなものがつくれるだろ」
品里 承実「でも、好きなものがウケるかは別よ?」
品里 結世「承実姉ちゃんまで!?」
品里 花尋「それと、新キャラだけの劇じゃ 作品としてのまとまりが出ないわね」
品里 結世「なんだよ・・・」
品里 結世「あっ!」
品里 結世「これで、どうだ!」
作家キャラ1号(芹生)「また〜?」
作家キャラ6号(結世)「キャラはそのままで──」
〇魔王城の部屋
作家キャラ6号(結世)「コスプレ回みたいにするんだよ!」
作家キャラ6号(結世)「そうすれば──」
〇学校の廊下
作家キャラ6号(結世)「キャラの普段は見せない一面や──」
〇謎の施設の中枢
作家キャラ6号(結世)「声優さんの演技の幅まで魅せられる、 かもしれませんよ」
作家キャラ5号(うたた)「素晴らしいじゃないか、結世」
〇おしゃれなリビングダイニング
品里 結世「どうかな? 失敗してもネタにすればいい」
品里 結世「それと声優さんにやってみたい役を聞いて、俺たちが書く、 なんてコラボもできそうだろ?」
品里 由起人「そう言って、声優に会いたいだけじゃないのか?」
品里 結世「兄ちゃん、要望は 会わなくても聞けるぜ」
品里 由起人「そう、だな」
品里 承実「「役を固定されたくない」ってたまに聴くもんね」
品里 うたた「そして──」
品里 うたた「そのコラボこそ、私の提案したいことよ」
品里 うたた「もちろん、パパとママ さらに多くの人の協力が必須だけどね」
品里 花尋「ほうほう」
品里 由起人「相手は誰だ?」
品里 うたた「地方コラボなんてどうかしら」
品里 芹生「聞かせてくれ」
品里 うたた「一度のコラボで3つのネタをつくれるわ」
品里 うたた「例えば一つ目は取材回―― これは実写にして、アニメーターさんの負担を軽減できれば嬉しいわね」
品里 うたた「キャラは2頭身で登場させてね」
品里 うたた「そして、キャラによる台本執筆回 キャラ目線でその地方とか、コラボ相手の魅力を再発見するわ」
品里 承実「魅力を伝えるためにも、取材シーンとかも挟んで、この回だけで楽しめる回になるよう意識してね」
品里 うたた「そして、その地方を舞台にした劇中劇回」
品里 うたた「地域の魅力を、脚本で魅せるのよ」
品里 承実「まあ、私たちじゃ予算とか、全体の作業量とかは計算できないけど──」
品里 承実「脚本家キャラだからこそ、可能なコラボだと思う」
品里 結世「伝説のあるトコなら、俺と承実姉ちゃんに任せろ!」
品里 承実「うん」
品里 結世「今が熱い場所は、兄ちゃんとうたた姉ちゃんがやる──だろ?」
品里 由起人「もちろんだ」
品里 うたた「ええ」
品里 花尋「あとは、何かあるかしら?」
品里 花尋「――じゃあ私から一つ」
品里 花尋「ぜんぶ、夢みたいな話ね」
品里 由起人「ああ、僕もそう思う だが──」
品里 承実「可能性は十分にあるはず」
品里 うたた「ここに脚本家がこれだけいるんだし、 脚本家を活かしてみたい」
品里 結世「それが、アイデアだ!」
〇黒
私たちの作品、つくってみない?
「脚本家族」を実践的にしたような感じで、面白いアプローチだと思いました。各キャラが生き生きとしてして、すごく楽しいですね!
物語の中で登場人物たちが別の物語を生み出そうと四苦八苦する様を描く一風変わった作風ですね。入れ子式小説やメタフィクションなどに近い試みで興味深いです。劇中劇や作中作品といった広がりも期待できそうな可能性を感じました。
作品を配信サイトで配信したりSNSで広げるのは手軽に読めるし現代に合っていて良い拡散の仕方だなあと思いました😙
家族みんなが脚本家やその卵で、思いが強いゆえに、素敵なアイデアがたくさん出て来る時もあれば、ぶつかり合ったり紆余曲折あるんだなあと思いました!
この家族が素敵な作品を生み出せますように☺️