ままごと#12 冷めたカレーと演奏会 / ままごと#732 家庭崩壊(脚本)
〇女の子の部屋
201✖︎年9月2日 棟方家
くらら「おっ? 何この本」
みそぎ「それ? 多分、占いの本かな?」
くらら「ふ〜む? どれどれ」
くらら「オッ みそぎちゃん、血液型なに?」
みそぎ「O型」
くらら「ふふっ ざーんねん! O型は男運がないって!」
みそぎ「え〜!なにそれ! いみわかんな〜い!」
くらら「ちなみに私はB型だから・・・ 恋人に裏切られないってさ!」
みそぎ「ひどい!ひいきだよ! 編集の人がB型なんだよきっと!」
くらら「へんしゅう?」
くるみ「みんなーおまたせー」
みそぎ「あっ くるみちゃん」
くらら「いらっしゃ〜い 私ん家じゃないけど」
くるみ「待ってね、 ちょっと荷物置くから」
くらら「うわっ ギター!?」
くるみ「えへへ 最近練習してる」
みそぎ「演奏できるの!? 聴きたい聴きたい!」
くるみ「やめてよ〜全然上手くないから〜」
くるみ「ところで、あられちゃんは?」
くらら「まだ来てないなあ」
みそぎ「来るってメールはきてたから・・・ もうすぐ来るとは思うけど」
あられ「今頃どこにいるのかしら」
くらら「ワ! いつの間に!」
くるみ「いつからいたの!?」
あられ「ふふーふ さっきの占いの時から、ずっとカーテンの裏に隠れてました」
みそぎ「すご〜い 忍者みたいだね!」
くらら「それじゃあ、 なんだかんだで四人集まったし、やりますか」
くるみ「カメラセットするねー」
みそぎ「3、2、1、アクション!」
〇おしゃれなリビングダイニング
ままごと #12
冷めたカレーと演奏会
私の名前は浪岡太郎(なみおか たろう)
しがないサラリーマンである
太郎「ただいま〜」
花子「おかえり! あなた」
花子「ごはんにします? お風呂にします? それとも・・・」
日向「あ・た・ち?」
花子「ちょっと! ひなちゃ〜ん それ私のセリフ〜!」
太郎「わっはっは! これはお父さん、日向にとられちゃうかもな」
日向「ホント!? わたち、おとうさんのおヨメさんになれる?」
花子「あらあら 太郎さんとられないように、私頑張らないといけないわね!」
太郎「・・・ムッ この匂い、さてはカレーだな!?」
太郎「腹も減ったし 今日は先にご飯を食べちゃおう」
日向「え〜? 遊んでほしかったのに」
太郎「わかってるよ ごはんを食べたら、一緒に遊んでやる」
日向「やったあ! 約束だよ!」
太郎「あの小さかった日向がもう4才か それに結衣のやつもすっかりお姉さんになって」
花子「お姉さんって・・・ 結衣はまだ6才よ? 小学校も入りたてだし」
太郎「成長かあ」
花子「ちょっと!? 泣いてる!?」
太郎「ん?そういえば結衣は?」
花子「結衣なら今、部屋でギターの練習中 明日レッスン教室で発表会ですって」
太郎「そういえばギターの音が聞こえるな」
花子「あの子すごい緊張しちゃってて 人前に出るの、苦手だしねぇ」
太郎「この前の学芸会も── セリフ忘れたとかで演技の途中に泣いちゃってたよな」
花子「あの時の会場の雰囲気、お通夜だったわね・・・」
太郎「・・・」
太郎「よし! ちょっと励ましにいってやるか!」
〇女の子の一人部屋
結衣「〜ッ どうしよう、すごい緊張する」
結衣「もしこの前の学芸会みたいに失敗したら・・・ どうしよう、こわい」
「結衣、いいか?」
結衣「父さん?」
太郎「ただいま!」
結衣「お、おかえり」
太郎「発表会の練習か?」
結衣「うん、でも・・・」
太郎「なあ、一回俺の前で演奏してみないか?」
結衣「え?」
太郎「いきなり人前で演奏するのは怖いだろ? 一度俺の前で演奏して慣れればいいと思ってな」
結衣「・・・」
太郎「な〜に カラオケ行くのと同じだ! 初めは怖いが、一度やれば大丈夫!」
結衣「うん! やってみる!」
〇おしゃれなリビングダイニング
結衣「・・・」
花子「(どきどき)」
日向「?」
結衣「・・・」
結衣「や、やっぱ怖い・・・」
花子「はわわ」
太郎「ははっ・・・ わかった」
結衣「! ごっ、ごめ・・・」
太郎「俺はカレーを食べながら、結衣の演奏を聴く 結衣のことには注目しない カレーを見てる」
太郎「お前は何も気にせず、 自由に演奏するんだ!」
太郎「(もぐもぐ)」
結衣「・・・」
結衣「んっ」
〜♪
太郎「(もぐもぐチラッ・・・もぐもぐチラッ・・・)」
〜♪
太郎「(もぐも・・・ッ!)」
花子「(・・・!)」
〜♪
太郎「・・・」
日向「(SOULだ・・・)」
〜♪!! ・・・
結衣「・・・」
結衣「あっ、 終わった、けど」
太郎「・・・」
パチ・・・
パチ・・・パチ・・・
日向「お姉ちゃんすご〜い!」
花子「もう・・・ こんなに立派なお姉さんになって・・・」
結衣「な、泣かないで」
太郎「結衣、ごめん」
結衣「え?」
太郎「もう途中から、結衣のことしか見てなかった」
結衣「!!」
太郎「ホントにすごいよ結衣! 発表会が待ちきれないぞ!」
結衣「・・・」
花子「カレーもすっかり冷めきっちゃったわね あ、な、た?」
太郎「ウッ! すまん!」
日向「アハハ! お父さんドジなの〜!」
・・・
私・・・人に見られながら演奏できるようになった・・・
結衣(・・・)
結衣(ありがとう! お父さん!)
ままごと#12
冷めたカレーと演奏会 END
引き続き、
ままごと#732をお楽しみください
〇CDの散乱した部屋
このストーリーはフィクションです。
実在の人物・団体・出来事などとは一切関係ありません。
202✖︎年9月2日 311号室
みそぎ「殺してぇ〜なッ 男共全員・・・」
くらら「また失恋? 可哀想に」
みそぎ「アイツ!何が「なんか違う」だよ! 一度も抱かなかったくせに! 私の何がわかる!?」
くらら「やっぱ三次元の男はダメだね ニ次元だよ至高は なんたって裏切らない」
みそぎ「いいなあ 私も二次元に欲情できればなあ」
くるみ「「欲情」? ウチのバンド部の猿の話?」
くらら「いらっしゃい、くるみちゃん 私の家じゃないけど」
みそぎ「オッ! ギターじゃん懐かしい」
くるみ「生殖器の根が脳までイッちゃってる部長が嫌んなって辞めてきた」
くるみ「そんで機材諸々持ち出して、ついでにこっちに来たって感じ」
みそぎ「下半身から脳まで根が張ってるなら、摘出は難しそうだな・・・」
くらら「くるみちゃん可愛いからなぁ セクハラされちゃうのもむべなるかな・・・」
くるみ「あられちゃん・・・は まだ来てないか」
くらら「まあ、あいつのことだし 気長に待ちましょ」
みそぎ「オッ 噂をすれば」
ゾンビ「ア゛〜」
みそぎ「ゾンビじゃねえか」
くるみ「いや、よく見るとあられちゃんだ。 皮膚病の傷が開いて血まみれなのね」
くるみ「おおかた朝寝坊して、薬つける暇なかったんでしょう」
あられ「バブバブ(おおむね正解)」
みそぎ「うめき声だと思ってたのも バブみを求めての喃語(なんご)か〜」
あられ「あー、しぬ はよミルクしゅわせてくれや」
くるみ「3人揃ったし、 さっさと始めちゃおう」
くらら「カメラセットしま〜す」
あられ「おぎゃあ」
みそぎ「3、2、1、アクション」
〇アパートのダイニング
ままごと#732
家庭崩壊
私の名前は浪岡 太郎
しがないサラリーマンだ
太郎「ただいま」
花子「・・・」
スマホを見ていた妻は私に気づき、テーブルからソファーに移動した
太郎「またカップ麺・・・」
はあ、とため息が出る
それはカップ麺に対してではなく、わざわざそのことを言ってしまう自分にうんざりして
「チッ」
ほら、嫌なら食うなと舌打ちが返る。
だから何も言うべきではないのに
ポッドで湯を沸かし、カップに注ぐ
3分待つ
無言
突如、静寂を破る音が聞こえる
結衣「母さん・・・ どういうこと?」
娘の結衣だ
静かだが怒りを内包した、冷たい鉛のような声が響く
結衣「母さんだよね? 私のギター配信、先生にチクったの」
結衣「最近リスナーも増えてきて調子良かったのに・・・」
花子「ああ、良かった」
結衣「え?」
花子「やめたんだ、あの五月蝿いギター」
結衣「・・・」
結衣「せめて相談くらいしてよ・・・ うるさかったら、そう言えば・・・」
花子「言っても、ギターはやめないんでしょ?」
結衣「・・・最低」
結衣が階段を駆け上がる
逃げるように
日向「おぎゃあ! おぎゃあ!」
まだ赤子の娘、日向が、重い空気を察してか泣き喚いた
花子「ハア・・・」
妻は日向を面倒くさそうにあやす
3分はとうに過ぎた
太郎「いただきます」
太郎「・・・」
太郎「・・・これ美味いね 何処で買ったの?」
花子「ハア・・・ さあ?元々あったから」
太郎(・・・ああ、これ俺が買ったやつか)
太郎「結衣・・・ どうした?ギター持って」
結衣「さよなら」
日向「うぇええん! ああうう」
太郎「大丈夫か? 日向」
花子「もおおおおお!! うるさい!うるさい!」
花子「アンタ達は私に迷惑ばかり!! どうして!?」
日向「うええん」
花子「最悪!! アンタたちがこんなのだって知ってたら産まなかった! もう死んでよお!!」
太郎「・・・」
太郎「このラーメン、始め良かったけど、ダメだな すぐに飽きる」
太郎「昔はこういう味大丈夫だったっけ 歳とって、変わっちゃったのかな」
太郎「なあ、花子・・・」
太郎「・・・」
太郎「花子、 俺たち・・・」
もう、別れよう
ままごと#732
家庭崩壊 END
前半が絵に描いたような夢のようなままごとで、後半が十数年後の地獄バージョンままごとですね。占いで男運なしだったみそぎが成人したらその通りになったり、くるみが職場でセクハラにあったり、大人になったメンバーの悲惨な現実と「ままごとの家庭」の悲惨さがリンクしていて、お化けが出てくるホラーよりも恐ろしかったです。
小学生の時とかに友達同士で、おままごとしてよく遊んだのを思い出しました☺️
私たちのおままごとよりも、リアルな感じがしました😂
#731は、なんかほっこりした気分で読めたけど、#732は家庭崩壊というタイトルだけあって、色々考えさせられながら読ませて頂きました😂