飛べない天使(脚本)
〇湖畔
ケンジ「北国生まれ北国育ちこの湖の鶴もだいたい友達! イエ~イ おはようみんな〜!」
ケンジ「おかしいな呼んでも誰も来てくれない」
ケンジ「みんな上をじっと見てる」
ケンジ「空に何かあるのかな?」
ケンジ「ワッ!?」
ケンジ「空が割れた!」
ケンジ「人が落ちてくる!!」
???「キャーーー!!!」
ケンジ「間に合えー!!」
僕は咄嗟に駆け出す
ケンジ「!!」
鶴の翼が空の破れ目から落ちてきた彼女の身体をタオルで包むようにふわりとキャッチした
ケンジ「ナイキャッ! 鶴さん流石だね」
イザベル「はあ、地球の重力にあてられて驚きました なんて重いのでしょう」
ケンジ「えっと 大丈夫? けがは?」
イザベル「大丈夫。ありがとう」
ケンジ「僕はケンジ。君は?」
イザベル「イザベル。空の国に住む翼人です。 翼がないのは生まれつきです」
ケンジ「なんで落ちてきたの?」
イザベル「地球に生まれていれば、翼がない私でも馴染めるかなと思ったら、突然空が割れて地球に吸い込まれてしまいました」
ケンジ「ええ・・・帰れるの?」
イザベル「帰りたいと思ったら帰れるかも?」
ケンジ「今は帰りたくない気分?」
イザベル「うん」
ケンジ「そうなんだ せっかくだし遊んでいけばいいよ」
イザベル「遊ぶって・・・具体的に何をしたらいいんでしょう」
ケンジ「鶴をつかまえよう!」
ケンジ「それ!」
僕は鶴の翼に包まれて寝転んだ
イザベル「逆に捕まえられているようにも見えます」
ケンジ「どっちでもいいじゃん! 楽しいよ」
イザベル「私もやってみます」
イザベル「・・・・・・(じりじり)」
ケンジ「そんなに警戒してたら逃げられちゃうよ」
イザベル「どうしたら・・・?」
ケンジ「おいでおいでってしたらいい」
イザベル「おいで、おいで・・・」
イザベルは手を広げて鶴の前に屈む
イザベル「こう・・・?」
ケンジ「そうそう!」
イザベル「わっ!」
イザベルは鶴の翼に包まれて寝転んだ
ケンジ「ほら、捕まえた!」
イザベル「捕まえられている気がする・・・」
ケンジ「いいじゃんどっちでも 楽しいから」
イザベル「たしかに、楽しいです」
ケンジ「・・・深い事情はわからないけど地球でも、空の国でも、馴染もうとしなくていいんじゃないかな?」
ケンジ「僕は鶴しか友達がいないけど地球に馴染んでる気がするよ」
イザベル「意外だわ。ケンジ君って人当たりがいいから人間の友達もたくさんいそう」
ケンジ「ぜーんぜん、クラスメイトとか、親とか、テレビとかの話についていけないんだよ」
イザベル「私はケンジ君の話についていけるよ」
ケンジ「ありがとう! ヒト型の友達第一号ってことにしてもいい?」
イザベル「私からもお願い 友達になって!」
ケンジ「あはは!」
イザベル「ふふふ!」
イザベル「げほっ・・・」
ケンジ「ちょっ 大丈夫? 身体が薄くなってきてるよ・・・?!」
イザベル「やだ 地球に長くいられる身体じゃないのね・・・」
ケンジ「イザベル、おいでおいで」
イザベル「うん」
ケンジ「・・・・・・」
ケンジ「来てくれてありがとう」
「ヒト型の友達第一号」って言語化するとシュールですね。地上のお友達のツルには羽があるのに、天界のお友達イザベルには羽がないなんて、なんだか不思議で切ない世界。
きれいなイラスト、そしてストーリーですね。
不思議な小さな奇跡の物語でした。
彼にとってはまさに空からの贈り物でしたね。イザベルが舞い降りてきたのは、まるで地上の国に吸い寄せられたかのようで。ラストは切ないけれど何か温かいものを感じました。