読切(脚本)
〇黒背景
恋なんてわからなかった
愛なんて知りもしなかった
ただ一緒にいるだけで楽しい
それだけだった幼き頃
そんな僕の口から零れた
自分でも想像のつかなかった言葉
これは僕の少年時代の
淡い恋の物語・・・
〇農村
ひろき「着いたー!」
父「渋滞で、疲れた・・・」
母「パパ、お疲れ様。運転、ありがと」
父「ありがと、ママ」
母「ひろき、まずはお婆ちゃんの所に挨拶ね」
ひろき「うんっ、わかった!」
ひろきーっ!
ひろき「かなっ!!」
かな「ひろき! 来てくれたんだ!!」
ひろき「もちろんだろ!」
かな「じゃあ、遊びに行こっ!!」
ひろき「おっけー!」
毎年、夏は田舎に帰り、
同い年のかなと遊んだ
それは何よりも楽しくて、
僕にとっての大イベントだった
母「こら、まずはお婆ちゃんに挨拶でしょ?」
父「しっかり挨拶したら、遊んでいいからな」
ひろき「わかった!」
かな「じゃあ、いつもの場所で待ってるね!」
ひろき「うんっ!」
〇小さい滝
ひろき「今日は、何する?」
かな「ヘビ取り!」
ひろき「ヘビ!?」
かな「苦手?」
ひろき「いや、その・・・」
かな「ヘビ、可愛いよー!」
ひろき「うーん・・・」
かな「せい!」
かな「ほらっ!」
ひろき「うわっ!!」
かな「ひろき、大丈夫!?」
かな「ほら、手、掴んで!」
ひろき「あ、ありがと・・・」
〇黒背景
ただ仲の良い友達
一緒にいると楽しいだけ
そう思っていた
でも気がついたら・・・
目が合うと、顔が熱くなっていた
笑顔を見ると、ドキドキしていた
いつしか、手を繋げなくなっていた
そんなある日・・・
〇実家の居間
ひろき「来年から、ここに来ないの・・・?」
母「ひろき、ごめんね・・・」
父「婆ちゃんが東京に来ることになってな」
ひろき「ぃやだ・・・」
母「ひろき・・・」
父「ひろき、ごめんな。 でも、決まったことなんだ」
父「だから、思い残すことが無いように。 いいな?」
ひろき「っ!!」
〇田園風景
ひろき「かな、結婚して!!」
かな「っ!!」
ついに言った
僕の初めての告白
鼓動が高鳴る中
薄目でかなを見た
かなは照れ臭そうに・・・
かな「返事は、次会った時ね・・・///」
〇田園風景
それから
僕とかなは
遊べるだけ
遊んだ
楽しくて
楽しくて
楽しくて
楽しくて・・・
〇黒背景
でも、やっぱり寂しかった
だって、かなの返事は
もう、絶対に
聞けないから・・・
〇一人部屋
あれから、10年。夏の日は決まって
香奈のことを思い出してしまう
弘樹「あ、はーいっ!」
〇玄関内
香奈「弘樹、久しぶりっ!!」
弘樹「え、香奈っ!!??」
香奈「あの時の返事、言いに来たの」
香奈「私も、弘樹のこと・・・」
小さい頃は「ひろき」「かな」で、10年後は「弘樹」「香奈」に。物語の中で名前が漢字になったことで、二人が大人になったことが伝わりました。第一章「幼き頃の恋心」が終わって、二人の人生の第二章「青春の恋物語」が始まる予感ですね。
何だか懐かしい気持ちになって胸がキューってなりました☺️💓
毎年会えるのが当たり前と思っているのにいきなりそれが終わるのは寂しすぎますよね。
でも、かなちゃんがちゃんと覚えていたのが感動でした。