マッチョと仕事とスーツと私。

ぽむ

エピソード8(脚本)

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〇大会議室
松岡くん「以上で、プレゼンを終わります」
  パチパチパチパチパチパチパチ
  「いやー素晴らしかった。これでプロジェクトを、進めてくれ。」
松岡くん「はい、ありがとうございます」
カズエ(ハァ・・・ また、私のプレゼンが通らなかったわ・・・)
まどか「松岡さ〜ん♡ きょう、パパが〜 一緒に食事しましょうって〜」
松岡くん「まどかさん、スミマセン。 僕は仕事で遅くなるので、お食事は、お二人で行ってください」
まどか「え〜 そんな〜」
重役「まどか、松岡くんを困らせたらダメだろう。 プレゼン良かったよ。 期待してるからね」
松岡くん「ありがとうございます、頑張ります」

〇オフィスのフロア
  カタカタカタカタ
松岡くん「こんなに遅くまで、まだやってたんですか」
カズエ「松岡くんこそ」
松岡くん「まぁ僕は・・・ このプロジェクトの責任者ですから。 いつも手伝っていただいて、ありがとうございます。」
カズエ「そうよね・・・ 私のプレゼンは通らなかったし。」
カズエ「・・・もう帰るわ」
松岡くん「あっ、送りましょうか?」
「結構よ。さよならまた明日。」
  カッカッカッカッカッ
松岡くん「なんか悪いこと言ったかな・・・?」

〇公園のベンチ
カズエ「ううっ。うう・・・ なにが「いつも手伝ってくれてありがとう」よ。 どんだけ嫌味なの。」
カズエ「またダメだった・・・ うぇーん」
  タッタッタッ
  
  トレーニング中の
  通りすがりの謎マッチョがあらわれた。
謎マッチョ「どうしたんですか?」
カズエ「いえ・・・なんでもないんです」
謎マッチョ「そんなに目を腫らして泣いていて、なんでもなくは、ないだろう?」
謎マッチョ「よし。 そこに美味しいドリンクを出してくれるマスターがいるから、一杯奢ってあげよう!」
カズエ「えっ、ちょ、ちょっと」
  謎マッチョは、お姫様抱っこをした。
カズエ「ううっ、大丈夫〜ぅぅ〜ですってば〜」
謎マッチョ「大丈夫。 ちゃんと、つかまってなさい」
  謎マッチョは、
  お姫様抱っこで、連れて行った。
カズエ(でも、たくましい腕・・・ 子供の頃にパパに抱っこされたのを思い出すわ・・・ くすん…)

〇奇妙な屋台
店主「あら〜いらっしゃい」
謎マッチョ「マスター、いつものドリンク! あれ?きょうは、パティシエさんが一緒にいるの?」
パティシエ「バレンタインの時にね、 ウチのチョコが売れなくて、 この店にお客を取られたと思って直談判しに来たんだけど」
パティシエ「試食させてもらったら、めちゃくちゃ美味しくて。その味に惚れてしまったの」
パティシエ「そしたら ジブンが、悔しくて、情けなくなっちゃって」
カズエ(なんか・・・ワタシが 松岡くんに思ってた感情と似てる? 嫉妬っていうか…悔しいっていうか。)
パティシエ「次の瞬間、 「本当に美味しいです! 弟子にしてください!!!」 って、言っちゃってた。 それで弟子にしてもらったのよ〜」
店主「そうなの〜 ワタシはプロじゃないって言ってるのにね〜 ハイ、ドリンクどうぞ。」
謎マッチョ「ありがとう、さぁ飲んでみよう」
カズエ「ゴクリ。 冷たい飲み物のはずなのに、 なんだか・・・体が温かい・・・」
パティシエ「ここの店主はね〜。なんでもお悩み解決しちゃうのよ〜」
店主「そんなことないわよ、失敗も、するんだから。 でも、お話だけでも聞かせてくれたら、少しは、気が晴れるのではないかしら」
カズエ「そうですね・・・」

〇大会議室
  ワタシはデザイン企画の仕事をして、いつも社内プレゼンがあるのですが、同期の松岡くんに、いつもプレゼンで負けてしまう。
  いつも通るのは彼のプレゼンばかり。確かに、彼の企画は良いです。
  でも彼のプレゼンばかり通るのおかしくない?と思って
  偉い人は、男の人ばっかりだし、
  
  重役の娘さんで受付嬢の
  まどかさんに気に入られていることで、出世すると言われているし。
  ワタシは女だから、舐められてるの?とか、考えてしまう。
  ブランドもので身を固めて、ジブンを強く見せるようにしたわ。
  寝る間も惜しんで、すごく頑張った、認められると思ってた。
  
  でもアナタの仕事じゃないでしょ、って言われ、ショックを受けた
  もちろん、最初に企画立案を通したのは、ワタシじゃないわ。彼のプランが通ったんだもの。
  でも、それを実現化したのはワタシ。

〇奇妙な屋台
カズエ「ワタシのした事、ワタシ自体が無くなってしまったようで、悲しかったの」
謎マッチョ「ひとりで戦って頑張ってたのか、偉いな」
カズエ「わかってくれて、ありがとう」
謎マッチョ「だがな、君が無くなってしまうことは、決してないさ。」
謎マッチョ「鍛えた筋肉が身につくように、君にも身についた筋肉のような強い経験が、あるはずなんだ。君にしかできないこともあるんだ」
カズエ「ワタシにしか・・・できないこと?」
店主「そうね。 あなたにしか書けない物語を書くのですよ、それはアナタを救う物語」
店主「そこに、アナタの物語を書いてご覧なさい。アナタのシアワセの物語をね。」
パティシエ「ワタシにもいわせて」
パティシエ「あのね、お菓子の世界は繊細で、混ぜ方ひとつ、測り方も、ミリグラム単位でも違ってしまうと、味や食感が変わってしまうの」
パティシエ「必ず、アナタだけのオリジナルの風味が、あるはずなのよ。 そういうことでしょ、マスター?」
店主「そうね。 現実が厳しいから、ワタシは物語はハッピーエンドで終わって欲しいと想う派なのよ」
店主「確かに、厳しいから、世の中全部が崩壊してほしいと思う人もいると思うけど。 あまりにも悲しいじゃない?」
店主「ワタシは人と関わる以上は、ジブンに関わったひとくらいは、小さなシアワセでも、感じて欲しいのよ」
店主「アナタのシアワセの物語を、書いてご覧なさい。 したいこと、なりたいこと、全部」
カズエ「ありがとう、ワタシ・・・書いてみるわ」

〇オフィスのフロア
カズエ「えーと、実現してほしいこと・・・ まずは、私のプレゼンが通るでしょ。 みんなに認められて・・・」
カズエ「そしたら・・・なんだろう。 会社の偉い人や、まどかさん、 同期の松岡くんを見返してやりたいのかな・・・」
カズエ「そうじゃないかも。 私のデザインに触れることで、その商品で、皆をシアワセにしてあげたいんだ」
カズエ「元々の、望みはそうだったじゃない デザインを目指してた頃の自分は・・・」
松岡くん「カズエさん・・・」

〇大会議室
  プレゼン当日。
  
  パチパチパチパチパチパチパチ
  いや〜素晴らしかった。今までで一番良いプレゼンだったよ。
  
  君にそんなアイデアがあるとは思わなかった。よろしく頼むよ。
カズエ「ありがとうございます」
カズエ(やったわ!はじめて認められた!!!)
松岡くん「素晴らしかったよ、きょうのプレゼン。今までも、良いと思っていたけど、今日のは感動したよ。 僕にぜひ手伝わせてくれないか?」
カズエ「ええ、もちろん」
松岡くん「あと・・・よかったら、これを、」
カズエ「これは、展示会のチケット?」
松岡くん「よかったら、一緒に行ってくれないかな、参考にと思って。 前から誘おうと思ってたけど、なかなか言えなくて」
カズエ((あのクールな松岡くんが、誘ってくれるなんて、どんな風の吹き回し?))
カズエ「ありがとう、一緒にいきましょう」
まどか「きー!悔しい、憧れの松岡くんを独り占めするなんて。 思い通りにさせないわ!!!」
まどか「松岡くーん、探したのよー」
まどか「一緒にご飯食べるって約束だったじゃないですか〜↑ いきましょう〜↑」
  キラリラリーン
まどか「って、あれ?見えない壁が・・・通れない・・・ なんで!?!? 松岡くーーーーん・・・」
カズエ「なにかあったかしら?」
松岡くん「気のせいだろう」
まどか「なんで近づけないのー!くやしいー!」

〇奇妙な屋台
店主「それで、ノートを返しに来たのね」
カズエ「はい、ありがとうございます」
店主「無理はしなくていいのよ。 少しずつできることを、続けることが大事なの」
店主「身についたモノは失くならない。 それは覚えておいて」
「はーい、師匠。 また明日〜」
  タッタッタッ
店主「ふぅ、帰ったかしら。」
店主「素材集めも ラクじゃないわよね〜」
店主「サテ、そろそろ 店じまい店じまい」

コメント

  • 店主さんは人々の幸せを素材としてお店で食べ物や飲み物にしてるのかな?まどかの前に急に壁ができて物理的にシャットアウトしたのには驚き。「彼と私の間には見えない壁があるの」とかいうドラマのくさいセリフの具現化という感じで面白かったです。

  • 何て素晴らしいタイトル!(全部好物ですw)
    それはさておき、燻ぶっていたカズエさんですが、今までの努力と熱意があったからこそ、一歩ポジティブな方向に踏み出すとすぐ結果に結びついたのでしょうね。その一歩をアシストしたノート、その真相は……

  • 今回は店主の言葉が特に胸に刺さりました。『自分が関わった人に少しでも幸せを感じさせることができる・・』そんな事、サラッと言える人に私も成りたいです。

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