異能者の朝食

有濱小道

異能者の朝食(脚本)

異能者の朝食

有濱小道

今すぐ読む

異能者の朝食
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋谷のスクランブル交差点
  街頭モニターでアナウンサーが喋っている
  ──お次は『今日の隕石』のコーナーです!
  二年前、地球に向かってくるあの隕石が発見されました
  それから一日も欠かすことなく、本コーナーでは隕石の様子をお伝えしてきましたが、本日が最終回!
  いよいよ明日、隕石は地球に衝突します。肉眼でも、こんなにハッキリと隕石が見えます──
  みなさん、最後の一日を悔いのないようにお過ごし下さい
  では、次のニュースです、全世界で略奪や暴動が相次いで──
朝丘「本当に明日、地球は終わっちゃうんですね・・・」
竹田「ああ、だがギリギリなんとか間に合った・・・」
朝丘「とうとう見つけたんですもんね。我々の機関が追い続けていた『異能者』を」
竹田「これで世界は救われる・・・」
竹田「『異能者』とのコンタクトの前に確認をしておく、これまで歴史上に現れた異能者は・・・」
朝丘「『物質系』と『記憶系』と『時間系』でしょう。もちろん覚えてますよ」
竹田「1000年に1人『異能者』は現れる。 人々を救って、祝福を与えるか──」
竹田「あるいは逆に恐怖で支配し、大虐殺を行なう存在・・・」
朝丘「おとぎ話だと思ってましたが、本当に見つかるなんて・・・」
竹田「できることならば、今回の異能者は『物質系』であることが望ましい」
竹田「物体を破壊したり、転送したりできるからな、あの隕石にも対処できる可能性が高い」
竹田「次点は『時間系』、時間停止やタイムリープができれば、隕石衝突の解決方法を見つけるまでの時間稼ぎができる」
竹田「最悪なのは異能者が『記憶系』だった場合だ」
朝丘「『記憶系』記憶を奪ったり書き換えたりする異能者でしたね・・・」
竹田「『記憶系』も超人に変わりはない。だが、今の事態ではクソの役にも立たん」

〇中規模マンション
朝丘「こんなところに、人類の救世主が?」
竹田「ああ、信じられんが、諜報部の報告は確かだ」

〇マンションの共用廊下
朝丘「あの・・・そのスーパーの袋なんですか?」
竹田「異能者から要求された物だ。話を聞く代わりにこれを持ってこいと」
朝丘「卵、牛乳、食パン・・・中身は普通の買い物って感じですね」
竹田「世界の終わりだっていうのにな。理解できんよ」
朝丘「302号室・・・この部屋ですね」
竹田「いくぞ・・・」
  竹田、インターホンを鳴らす
異能者「やあ、来たな」
朝丘(この人が、異能者?)

〇整頓された部屋
竹田「約束通り、指定の物を持ってきた。この世界を救ってくれ」
異能者「はあ・・・」
竹田「人類の危機なんだ!! 力を持つ物はそれを世の中のために使う義務がある」
竹田「この際、『物質系』でも『時間系』でも、どちらでもいい! さっさとあの隕石をなんとかしてくれ!」
異能者「義務ね・・・でもそれは無理だな」
朝丘「なぜです?」
異能者「だって俺、『記憶系』の異能者だから」
竹田「終わったーーーーー!!」
竹田「人類の歴史、今終わったよ!!」
異能者「何なんだ、アンタ失礼な奴だな」
朝丘「ど、どうにかならないんですか!?『記憶系』の異能者でも少しぐらい他の能力が使えたりしないんですか?」
竹田「無理だ・・・『異能者』が持つ異能は一種類までだ」
朝丘「そんな・・・」
異能者「お前ら・・・朝っぱらから、ムチャクチャ言いやがって」
  『異能者』、右手を朝丘に向け、指を鳴らす
朝丘「・・・あれ? 私何してたんでしたっけ?ここは一体・・・」
竹田「おいっ!貴様何をした!」
異能者「その女の隕石に関する記憶を消してやった」
朝丘「隕石ってなんですか?なんでこの人、ずっと自分の首を押さえているんですか?」
異能者「それには触れるな」
竹田「そういうことじゃないだろ! 我々が望んでるのは根本的な解決だ!」
異能者「いや、違うな。正しい記憶に『戻して』やった」
竹田「何・・・!?」
異能者「今日は2027日目の地球最後の前日なんだよ。人類にとって」
竹田「ど、どういうことだそれは」
異能者「隕石なんて存在しない」
異能者「『明日が地球が最後の日』と言う記憶を、毎日俺が全人類に植え付けてるだけなんだよ」
竹田「そんなはずは・・・隕石は映像にだって映っている!」
異能者「俺の『異能』は認識にも作用するからな、全員が同じ幻を見れば、それは現実みたいなもんだ」
竹田「そんな・・・そんなことが・・・」
異能者「明日になれば、人類はすべてを忘れてまた新しい地球終末の前日を始める」
異能者「もっと言うと、こうしてアンタと話をするのも422回目だ」
竹田「なぜ・・・なぜ、そんなことを!?」
異能者「『今日が最後の日』って思ったら、みんな有意義に過ごそうとするだろ」
異能者「これは俺からの人類への救済なんだよ」
竹田「こんなことは・・・許されない!」
  竹田、異能者に銃を向ける
竹田「あれ、なんだっけ、これ・・・?」
異能者「あんたから銃に関する記憶を消した」
竹田「い・・・いつか『物質系』か『時間系』の異能者が現れて、お前を倒す!」
異能者「ああ、『物質系』とか『時間系』って俺が植え付けた設定。面白いかなって思って」
異能者「いないから、そんなの。異能者は過去にも未来にも『記憶系』の俺ただ1人」
竹田「そんな・・・希望は無いのか・・・」
異能者「なんかだるくなってきたな」
異能者「そろそろあんたたちには眠ってもらって、次の世界最後の前日に行ってもらおうかな」

〇整頓された部屋
  テレビにニュースが流れている
  では、お次は『今日の隕石』のコーナーです!
  いよいよ明日、隕石は地球に衝突します・・・
  異能者、皿にフレンチトーストを載せ、フォークで口に運ぶ
異能者「うまい!」
異能者「最高だなフレンチトーストは・・・」
異能者「やれやれ、なぜみんなこの一瞬を楽しまないのかね」
異能者「・・・だいぶ肌寒くなってきたな」
異能者「次はあの男に鍋の材料でも持って来させるか」

コメント

  • 全人類の記憶を操作できるってすごいですよね。
    「今日を悔いなく生きてほしい」って気持ちはわかるのですが、たぶんパニックになった人間はそれどころではなくなるような気もします。

  • この異能者は人類の味方なのですね。実際、地球最後の日の区切られたら私達はどんな事でも頑張れて、メリハリのある一日を送れそうです。

  • 竹田さんのシャウトで声を出して笑ってしまいました。異能者さんは何回でも竹田さんのツッコミが聞けるんですね。羨ましいです。全ての事態のからくりを理解している人がいるなんて圧倒されてしまいますが、その状態でも飽きることなく料理の味を楽しめるとは…。異能者さんは本当に人生の楽しみ方を知っていらっしゃるんですね。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ