読切(脚本)
〇女性の部屋
心の霧が晴れた
モヤモヤしてたのが
一瞬で吹き飛んだ
アサミ「ああ、スカッとしたぁ!」
アサミ「気持ちよかったなぁ!」
アサミ「はあ・・お腹減っちゃった」
アサミ「ついでに、食べ物買ってくればよかったな」
アサミ「ん?誰だろ」
アサミ「インターホンあるのにな」
アサミ「どうしよ」
アサミ「しつこいな」
「はい、なんですか?」
「・・岩谷です」
「え?岩谷・・」
「・・・あ、どうも、初めまして」
「上がるわよ」
「・・・どうぞ」
アサミ「・・・・・・」
リエ「ねえ?」
リエ「私に言うことない?」
アサミ「え?」
リエ「何の話か判ってるでしょ?」
アサミ「・・・はい」
リエ「もう終わりにしてね」
アサミ「・・・あの」
アサミ「こんな事、言える立場じゃないんですけど」
リエ「何よ?」
アサミ「言い訳に聞こえるかも知れないんですが」
アサミ「私、ずっと悩んでました」
アサミ「こんな事してちゃダメだって・・」
リエ「どうでもいいわ、アナタの事なんか!」
アサミ「はい・・そうですよね」
アサミ「でも、私も苦しくて」
アサミ「勝手なんですけど」
アサミ「さっき、自分なりにケジメをつけました」
リエ「だからどうでもいいって、言ってるでしょ!」
アサミ「・・はい」
アサミ「すみません」
リエ「ねえ」
リエ「今ここで、私に約束して」
アサミ「何をですか?」
リエ「もう、二度と会わないって!」
アサミ「・・・はい」
アサミ「もう、会いません」
リエ「絶対だよ」
リエ「約束破ったら、タダじゃすまないよ!」
アサミ「はい」
アサミ「もう、会いません」
アサミ「もう・・・会えません」
18分前
タカシ「ごめん」
タカシ「妻にバレた」
タカシ「ここにも来るかもしれない」
タカシ「悪いけど、もう会えない」
タカシ「終わりにしよう」
タカシ「じゃあ」
アサミ「・・・え、なに?」
アサミ「なんなの?」
アサミ「たったそれだけ?」
アサミ「自分勝手な人」
アサミ「付き合った時間、ムダじゃん」
追いかける女
終
会えなくなった原因のシーンそのものを描かずに、何があったのかを想像させられる構成がいいですね。最後はゾッとさせられました!
もう、会いません、会えません、会いたくありません・・・と続きそうな移ろう女心がぞっとするほど怖いです。時間を無駄にしたのは彼だけが悪いわけではないのに、と思う私は女ですが。
確かに二度読むとアサミの「楽しかった、スカッとした、さっきケジメをつけた」でゾワっとして「もう会いません」じゃなくて「会えません」でゾワゾワっとしますね。時間軸を少しずらしただけで濃厚なサスペンスホラーに仕上げた作者さんのアイデアに感服。