明日の境界 ~彼女が笑うその瞬間~

浜松春日

君が笑うその瞬間(脚本)

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浜松春日

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〇まっすぐの廊下
  「はぁ! はぁ!」
  スマホの画面を見ると、時刻は午後11時半を回っていた。
  「くっそー! 昼間てこずったからなあ! 間に合うか!」

〇階段の踊り場

〇学校の屋上
  屋上の冷たい空気。
  誰もいないはずのそこに、人影があった―
知多希望「・・・・・・・」
  フェンスの向こうに広がる暗がりを見つめる一人の少女。
知多希望「はっ・・・・・・!?」
  まさか人が来るとは思ってなかったんだろう。
  彼女はこちらを振り返って驚いた様子を見せる。
知多希望「誰・・・・・・?」
  「君の救世主」
  そう俺が自己紹介すると、彼女は思い切りこちらを警戒した。
知多希望「・・・・・・近寄らないで」
  「飛び降りるつもりなんだろ」
知多希望「っ!?」
  「・・・別に止めないよ。知多希望(ちたのぞみ)ちゃん」
  「驚いてるけど。実を言うとその顔も見るのは初めてじゃないんだ」
知多希望「え・・・でも・・・」
知多希望「私、あなたなんて知らない」
  「だろうね。だって俺と君が出会うのは、あと十分後くらいの話だったから」
知多希望「???」
  「君が12時ちょうどに飛び降りた下にさ、俺がいたんだよね」
知多希望「え!? 嘘!」

〇血しぶき
  ドサッ!!
  「ぶべらっ!?」

〇学校の屋上
  「・・・とまあ、君に直撃して即死したんだよね、俺」
知多希望「学校に泥棒にでも入るつもりだったの・・・?」
  「そんなところ」
  「それで、目が覚めたらきっかり前日の夜12時に巻き戻ってたんだ」
知多希望「え・・・ちょ・・・そんな・・・」
知多希望「前日から巻き戻りなんて・・・あるわけないじゃない!」
  「知多希望ちゃん、15歳。家族は父親が労災事故で死亡。母親も病死で天涯孤独の身」
  「この学校で人から離れて孤独でいたせいでいじめグループに目を付けられる」
  「連中から脅迫され自殺を決意・・・」
  「その時刻は今日の12時きっかり」
  「遺書は遠くに引っ越した親友に1通のみ郵送した、でしょ?」
知多希望「どうして・・・それを・・・!?」
  「少しは信じる気になったかな?」
  「前日からここまでの24時間もない時間で色々調べるのは大変だったさ」

〇様々な蝶
  「君が誰なのかも知らないところからスタートしたからね」

〇学校の屋上
知多希望「ちょ、ちょっと待って。どうして私を調べたの・・・?」
知多希望「私なんか放っておけば・・・」
  「どうしてって、君が死ぬと俺も死ぬからさ」
知多希望「死っ・・・!?」

〇開けた交差点
  「最初は俺もそう思って、校舎には近寄らずにいたんだけど・・・」
  「でも駄目だったんだ」

〇走行する車内
  キキィー!!
  ドンッ!!
  「君が死んだ瞬間、道を歩いていれば飲酒運転の車が突っ込んでくるし・・・」

〇殺人現場
  「部屋にいれば強盗が踏み込んできて殺された」

〇学校の屋上
  「20回目くらいだったかなあ・・・ようやく気付いたのは」
  「君を救わないとこの無限の〝前日〟から抜けられないって」
知多希望「私を・・・救う・・・」
知多希望「救うって何・・・?」
知多希望「どうやって!?」
知多希望「知ってるんでしょ!? 私にもう〝明日〟なんてないって!」
  「・・・知ってるよ」
  「君の酷いいじめのことも、大人が誰も助けてくれなかったことも・・・」

〇教室
  「だから、色々とケリを付けてきた」
  「君をいじめのターゲットにした同級生」
  「君のいじめを黙認して、それどころかわいせつ画像をいじめグループから買っていた担任教師」
  「自称・暴力団組長の息子でやりたい放題のグループのリーダー」

〇学校の屋上
  「今頃、ネット上でも現実世界でも〝炎上〟してるよ」
知多希望「え・・・?」
  そう告げた頃、遠くから無数のサイレン音が風に乗って聞こえてきた―

〇炎
  「ネットに拡散される前に、君や他の被害者の子のデータを物理的に焼却してきた」
  「今燃えてるのは自称・組長の息子のとこの家だよ」

〇学校の屋上
知多希望「え・・・まさか、放火・・・したの?」
  「したよ。捕まるだろうね俺」
  警察の方ならまだいいけど、ヤクザの方だと詰みだ。

〇ネオン街
  「いじめを始めた同級生は他の子をカツアゲしてる現場を撮影してSNSに拡散しておいた」

〇事務所
  「あとは淫行教師が一番簡単だったな」
  「警察とマスコミに証拠集めてリークしただけで逮捕秒読みだ」

〇学校の屋上
知多希望「・・・それで?」
知多希望「あいつらが罰を受けたからって・・・」
知多希望「私が今更・・・心変わりするとでも思ったの・・・?」
知多希望「私の中では・・・もう全部終わってるの・・・」
  「言ったろ・・・別に止めないよ・・・」
  「どの道、俺は・・・」
  「明日まで生きられない」
知多希望「っ!?」

〇血しぶき
  彼女に告げた瞬間、思い切り吐血した。

〇学校の屋上
知多希望「きゃあっ!?」

  「あの自称・組長の息子の奴」
  「生意気に拳銃なんか持ってやがって」
  「腹に一発喰らったんだ・・・」
  しかもホローポイント弾だったのか、貫通しないで腹に残ったままだ。
  摘出手術しない限り確実に死ぬ。

〇学校の屋上
  「もしかしたら・・・」
  「死ぬ運命があったのは、君じゃなくて・・・」
  「俺の方だったのかも」
知多希望「そんなはず・・・」
  「あるさ」
  「俺が最初にこの校舎に来たのも・・・」
  「俺もここで死ぬつもりだったからだ」
知多希望「え!?」
  俺はスマホの時刻を確認する。
  「あと少しで12時だ」
知多希望「・・・・・・・・・」
  彼女は俺のスマホの画面をじっと見つめた。
知多希望「教えて」
  「何を?」
知多希望「どうして死のうと思ったの?」
  「説明したくても・・・残りの時間じゃ足りない」
知多希望「そっか・・・」

「もしもし・・・」
  朦朧とする意識の中・・・
「はい・・・救急です・・・場所は・・・・・・」
  スマホに写された翌日の日付と・・・
  彼女の微かな笑顔が見えた気がした―

コメント

  • なんというか…周りがひどすぎますね。
    死のうとしてる彼女と、それを阻止しようとしてる彼、両方の気持ちが伝わってきます。
    本当にいじめた側も教師も腐ってますね。

  • 2人が自殺志願者だという共通点がありながら、その行為を実行したもの、受け止めたもの、それぞれの立場を時空間を上手く用いて表現できていて迫力がありました。なにより、受け身の彼が、彼女をそれを阻止しようと努めたことが心に響きます。

  • 短いお話しの中にストーリーの展開がとてもきれいにされていて、集中して最後まで読ませて頂きました。「リミット」を意識しながら読み、時間の大切さを妙に感じさせられたお話しでした。

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