トラベラー

それいゆ

愛のない場所(脚本)

トラベラー

それいゆ

今すぐ読む

トラベラー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇貴族の応接間
ヘレン・サリヴァン「・・・あなた、今少しいいかしら」
カルロス・サリヴァン「何だ?今取り込んでいるのが分からんか?」
ヘレン・サリヴァン「ごめんなさい・・・」
ヘレン・サリヴァン「マイケル、熱があるみたいなの。 だから少し静かに・・・」
カルロス・サリヴァン「はぁ? 別室にいるんだから関係ないだろ」
ヘレン・サリヴァン「でも、流石にこんな人数で・・・ マイケルだってまだ産まれたばかりなのよ」
ヘレン・サリヴァン「大きな物音は身体に悪いわ」
カルロス・サリヴァン「うるさいなぁ・・・ 子供の面倒を見るのは女であるお前の仕事だろ?」
カルロス・サリヴァン「さっさと医者でも呼んで診てもらえ」
ヘレン・サリヴァン「・・・・・・!」
ヘレン・サリヴァン「わ、わかったわ・・・」

〇貴族の部屋
「ほぎゃあ、ほぎゃあ・・・」
ヘレン・サリヴァン「ごめんねマイケル・・・ 今お医者様が来るからね」
ヘレン・サリヴァン「・・・・・・」
ヘレン・サリヴァン「もっと・・・もっと愛情でいっぱいの場所に産んであげられたら・・・」
ヘレン・サリヴァン「どんなに恵まれていようと、愛のない場所なんて貧しいも同然だわ」
ヘレン・サリヴァン「私は何がなんでも、あなたを心から愛し続けるからね・・・」

〇豪華な部屋
  _ハミルトン家 一室
アンナ・ハミルトン「まぁヘレン!とっても可愛らしいわ!」
ジョージ・ハミルトン「これなら、カルロス様にお会いしても恥ずかしくないな」
ネイト・ハミルトン「流石ぼくの妹だ。美しいよ。 お前もそう思うだろ?」
アイリス・ハミルトン「ええ、とっても綺麗だわ」
アイリス・ハミルトン(私の時より立派なドレス・・・)
アンナ・ハミルトン「ささ!もう準備は万全よ。 早くしましょ、待ち遠しいわ!」
ヘレン・ハミルトン「・・・・・・」
  生まれた時からずっと、こうだった。
  愛なんてどこにもない。
  ただただ、一家の地位向上のためだけに媚びを売って
  ただただ、一家の地位に天狗になって庶民を馬鹿にして
  ・・・それでも、私にも同じ血が流れている。
  それが、たまらなく嫌になる時がある。

〇貴族の応接間
  _サリヴァン家 応接間
執事「ハミルトン家御一行が到着されました」
ジェイコブ・サリヴァン「ようこそお越しくださいました! お待ちしておりましたぞ!」
ジョージ・ハミルトン「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます!お会いできて光栄です」
ジェイコブ・サリヴァン「こちらが息子のカルロスでございます」
カルロス・サリヴァン「初めまして。カルロスです。 以後お見知り置きを」
ジョージ・ハミルトン「おお、なんと美しい青年だ・・・!」
ジョージ・ハミルトン「さあ、私の娘も紹介に上がろう」
ジョージ・ハミルトン「ほらヘレン、挨拶なさい」
ヘレン・ハミルトン「ヘレン・ハミルトンです・・・ どうぞよろしくお願い申し上げます」
ジェイコブ・サリヴァン「おお・・・!想像以上に美しいお嬢様ではないか!」
ジェイコブ・サリヴァン「我が息子にもふさわしい・・・! 今後が楽しみだな!はっはっはっ!」
ジョージ・ハミルトン「いやぁ、本当に。 はっはっはっ!」

〇大広間
  _サリヴァン家 広間
ジョージ・ハミルトン「いやぁ、このような歓迎会を開催して頂き光栄です」
ジェイコブ・サリヴァン「お易い御用です。 思う存分、お楽しみください」
アンナ・ハミルトン「サリヴァン家主催のパーティーに参加できるだなんて夢のようだわ!」
アンナ・ハミルトン(これでヘレンがカルロス様と結婚したら、ハミルトン家の繁栄は間違いなしね・・・!)
アイリス・ハミルトン「・・・・・・」
ネイト・ハミルトン「どうした?顔が暗いぞ?」
アイリス・ハミルトン「い、いえ。大丈夫よ。 あまりの規模の大きさに驚いただけ」
ネイト・ハミルトン「はは!そうだな。 お前をこの場に連れてこれて僕も嬉しいよ」
アイリス・ハミルトン「・・・!」
アイリス・ハミルトン「そうね・・・」
カルロス・サリヴァン「・・・良かったら少し話さないか?」
ヘレン・ハミルトン「あ、はい・・・!」
カルロス・サリヴァン「さて、ここら辺でいいか」
カルロス・サリヴァン「改めて、君のいいなづけのカルロスだ。 よろしく」
ヘレン・ハミルトン「初めまして。ヘレンです」
ヘレン・ハミルトン「いいなづけの・・・」
カルロス・サリヴァン「これから家族になるわけだ。そんなに気を使うな」
ヘレン・ハミルトン「は、はい。ありがとうございます」
カルロス・サリヴァン「・・・それにしても、綺麗な子で安心したよ」
ヘレン・ハミルトン「・・・え?」
カルロス・サリヴァン「名前は知っていたし結婚することも決まっていたけど、」
カルロス・サリヴァン「会ってみて醜い子だったらどうしようと思っていた」
ヘレン・ハミルトン「・・・・・・っ!」
執事「失礼致します。 お飲み物をお持ち致しました」
カルロス・サリヴァン「・・・!!」
カルロス・サリヴァン「おい、前にその飲み物は嫌いだと言ったはずだぞ!」
カルロス・サリヴァン「そんなことも覚えてないのか!無能め!」
執事「大変失礼致しました。 すぐに別のものにお取替え致します」
ヘレン・ハミルトン(こんな人と一緒にならなくてはいけないの・・・?)

〇豪華な部屋
  _ハミルトン家 一室
ジョージ・ハミルトン「いやはや、実に楽しい歓迎会であったな」
アンナ・ハミルトン「ええ、本当に! わたくしも大満足ですわ」
アンナ・ハミルトン「これで安心して、愛するヘレンを送り出してあげられるわね」
ヘレン・ハミルトン(嘘ばっかり・・・ 本当は愛してなんかない)
ヘレン・ハミルトン(都合のいい存在でいれば認められる・・・)
ヘレン・ハミルトン(そんなの・・・本当の家族なんかじゃないわ・・・!)
ヘレン・ハミルトン「・・・」
アンナ・ハミルトン「へ、ヘレン!? 泣いているの・・・!?」
ジョージ・ハミルトン「どうしたんだ一体・・・!」
ヘレン・ハミルトン「こんなの・・・こんなの私は望んでいません・・・」
ヘレン・ハミルトン「今までずっと、2人の思うままに、理想の娘として生きてきました」
ヘレン・ハミルトン「でも、もう限界です」
ヘレン・ハミルトン「カルロスさんとの結婚はできません」
ジョージ・ハミルトン「な、何を言っている・・・!!」
ジョージ・ハミルトン「この家に生まれた以上、サリヴァン家との結婚は絶対だ!お前の義務なんだぞ!」
アンナ・ハミルトン「そ、そうよヘレン。 もっと立派な暮らしができるようになるんだもの、あなたのために言ってるのよ」
ヘレン・ハミルトン「義務?私のため?」
ヘレン・ハミルトン「あなたたちのためでしょう?全て」
ヘレン・ハミルトン「あなたたちの地位向上のために、私はおもちゃのように扱われてきただけです!」
ヘレン・ハミルトン「こんな愛のない家庭、私は大嫌い!」
ヘレン・ハミルトン「・・・っ!」
ジョージ・ハミルトン「それ以上無駄口を叩いたら、今度は気絶させるぞ」
ジョージ・ハミルトン「いいか?お前はな、どう抗ってもハミルトン家の長女なんだ」
ジョージ・ハミルトン「仮に出ていったとして、お前の居場所なんかどこにもない」
ジョージ・ハミルトン「ここが、ここだけがお前の居場所なんだ」
ジョージ・ハミルトン「与えられた場所であるべき姿でいること、それの何が不満なのだ?」
ジョージ・ハミルトン「皆そうやって生きているではないか!」
ジョージ・ハミルトン「だからな、お前がなんと言おうとサリヴァン家との結婚を否定することは許さない」
ジョージ・ハミルトン「今日のことは今日限りで許してやる だからこれからはハミルトン家の長女として、あるべき姿であれ!」
ヘレン・ハミルトン「・・・・・・!」
ヘレン・ハミルトン「っっ・・・!!!」
  ダダ!!!
ジョージ・ハミルトン「おい!こらどこへ行く!!」
アンナ・ハミルトン「ヘレン!!ちょっと待ちなさい!!」

〇華やかな裏庭
  _ハミルトン家 庭
  タッタッタッ・・・!
ヘレン・ハミルトン「うう、うう・・・!!」
ヘレン・ハミルトン(こんなところ、もう出て行きたい・・・!)
ヘレン・ハミルトン(でも、お父様の言う通り)
ヘレン・ハミルトン(私に、他に居場所なんてないんだわ・・・!)
  コツ、コツ・・・
「そんなところで泣いていては、風邪をひいてしまいますよ?」
ヘレン・ハミルトン「え・・・?」
ヘレン・ハミルトン「あなたは・・・・・・」

コメント

  • 個人の意思や都合よりも優先される政略結婚、なかなか難しいものですよね。そんな中で、ヘレンさんがどう動くことになったのか、続きが気になるヒキですね。

  • 昔の貴族の政略結婚は本当にこんな感じだったのかもしれませんね。現代社会と違って娘が家出しても暮らしていく場所も手段もないでしょうし。さてこれからヘレンがどうなるのか、まさにその瞬間にお話が終わり、続きは次回ですね。リアルなドラマを見たような気分になりました。

成分キーワード

ページTOPへ