父来たる

まあやん

父来たる(脚本)

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〇二階建てアパート
  とあるアパート

〇女の子の部屋
美里「大掃除、明日までに間にあうかなあ」
爽馬「美里ちゃん、僕の荷物が全く見当たらないんだけど・・・」
美里「押し入れに隠したに決まってるでしょ!」
爽馬「なんでぇ?」
美里「言ったでしょ! お父さんが明日上京してくるって だから片付けてんの!」
爽馬「このままで十分部屋じゃん 僕、ご挨拶しちゃおっかな 美里ちゃんとお付き合いしてる、柳生爽馬で~すって」
美里「バカ!」
美里「とても厳格な人なの! 短大のために一人暮らしするの説得するのだって、大変だったんだから」
美里「ましてや彼と同棲だなんて知ったら・・・」
爽馬「どうなるの?」
美里「恐ろしくて言えない・・・ とにかく同棲の痕跡を消す 爽馬、悪いけど明日はどっかに泊まって」
爽馬「そんな~ 僕はいったいどこに行けば・・・」
美里「お父さんもお父さんよ! 突然電話で明日来るからって、全くもう~ 急すぎるよ!」
  教師だったお父さんは現在小学校の校長をしている
  お母さんが亡き後、私を男手ひとつで大切に育ててくれた
  
  いい人だけど面倒くさい
  ピンポーン🎵
美里「大家さん」
大家さん「大根と手羽の煮物、多く作りすぎちゃって 良かったら」
爽馬「うまそう♪」
美里「いつもありがとうございます」
大家さん「こちらこそ、いつもお父様から色々送って頂いて、娘がお世話になってますって」
大家さん「美里ちゃんの礼儀正しさは、きっとお父様譲りね」
美里「そんなあ」
大家さん「あらっふたりで掃除? 相変わらず仲いいのね~ 手伝おうっか?」
美里「めっそうもない、大丈夫です お心遣い、ありがとうございます」
大家さん「何かあったら遠慮なく言ってね 私、独身だけど2人の事、我が子のように思ってんだから」
爽馬「本当に大家さん、いい人だね 分かったよ 僕、明日ネットカフェでも行ってるよ」
美里「助かる」
爽馬「明日のために何か買い物してくるよ」
美里「さあ、掃除掃除」
  ピンポーン🎵
美里「爽馬、忘れ物かな? はーい」
厳吾「何だ、この部屋は! 散らかってるじゃないか!」
美里「お父さん!!! な、何でえ!!?」
厳吾「美里を驚かせようと思って 抜き打ちだよ、抜き打ち」
美里「抜き打ちって・・・ ここは学校じゃないのよ」
厳吾「1日でも早く娘の顔が見たくなるのが 親心ってもんだろ 美里は嬉しくないのか?」
美里「そ、そんな事ないけど・・・」
美里(ちょっと、どうしよう 爽馬が帰ってきちゃう なんとかゴマかさなきゃ・・・)
美里「お父さんを気持ち良く迎えようと思って、掃除してたの」
厳吾「そうか、それは感心だ でも掃除っていうのは、隅が大事だ」
厳吾「丸く掃くな、四角く掃けって何度も言ってるだろ」
美里(来てそうそう、説教? 勘弁してよ)
美里「それより今から外に出ない? おいしい定食屋さんあるの」
厳吾「ほうきを貸しなさい 掃除のお手本みせてやるから」
美里「大丈夫だから」
厳吾「遠慮するな」
美里「本当いいってっ!」
厳吾「強情だな 手を離しなさい」
爽馬「だ、だ、だっ誰だ! かっ彼女から離れろ! カタギに手をだ、出すな!」
  バン!
  
  (スリッパが当たる音)
厳吾「イテッ!!!」
爽馬「美里ちゃん、今のうちだ さ、逃げて!」
美里「違うの」
爽馬「グズグズしないで! さあ!」
美里「その人、お父さんなの!」
爽馬「ええっ!」
美里「見た目は極道だから誤解されちゃうけど、 お父さん善良なカタギなの」
厳吾「イテぇだろ! 人の娘となれなれしくしやがって、 お前こそ誰だ!」
爽馬「これは失礼いたしました わ、わたくし、美里さんとお付きあ」
美里「わーわーわー!!!」
厳吾「な、なんだ?」
美里「この人、大家さんだからぁ!」
爽馬「えっ?」
厳吾「嘘つくな、大家さんは女性だろ 俺は彼女と電話でやり取りしてんだから、ごまかさねえぞ」
爽馬「ご、ごめんなさ・・・」
美里「違うの、彼は大家さんの甥っ子さんなの」
爽馬「そ、そ、そうなんです さ、先程は失礼しました」
爽馬「お、叔母が留守ですので、僕が代わりに住人の安全をお守りするのが責務だと思い、 あのような行動に・・・・・・」
厳吾「そうだったのか 感心な心掛けだな」
厳吾「大家さんに直接、ご挨拶申し上げたかったのだが・・・ 非常に残念だ・・・・・」
爽馬「伝えておきます」
厳吾「そういえば、さっき娘に『美里ちゃん』と、なれなれしく呼んでたよな」
爽馬「そ、それは・・・・・・」
美里「『住人はファミリー』 っていうのが大家さんのモットーで」
美里「私達住人がさびしい思いをしないよう、 大家さんは下の名前で呼んで、家族のように接してくれている 甥っ子さんもそう」
厳吾「そうだったのか! いやあ、さすがだ 君は素敵な叔母さんを持ったね」
爽馬「あ、ありがとうございます では私はこれにて失礼しま・・・」
  ピンポーン🎵
大家さん「ポテトサラダも作りすぎちゃって、よかったら・・・ って、あれ?爽馬くんどこか出かけるの?」

〇黒
「大家さん!!」

〇女の子の部屋
厳吾「美里の父です いつも娘がお世話になりまして」
大家さん「お父様! まあ、どうしましょう! スッピンで来てしまって」
厳吾「電話の声も素敵ですが、 充分お美しいですよ」
大家さん「そんなあ~」
爽馬「美里ちゃんあの二人、なんかいい雰囲気なんだけど」
美里「ちょっと、のんきに見てないで」
美里「大家さん、ちょっと話が」
大家さん「美里ちゃんも爽馬くんもいい子で、 素敵なカップルですね~」
厳吾「いやいや大家さんこそ、頼もしい甥っ子さんをお持ちで」
厳吾「えっカップル?!」
大家さん「甥っ子?! いえ、私には甥っ子なんていませんよ」
美里「お父さん、これには訳が・・・・・・」

〇雷
「(厳吾の声) おい、こらあ どういう事だあーーーー!!!!!!!!」
  この後、大嵐が吹き荒れるのであった
  
  
  
  了

コメント

  • 抜き打ちで来るあたり、お父さんも疑ってたみたいですね。笑
    親が子を思う気持ちはいくつになっても変わりないもので、正直に言っていたら…やっぱりあのお父さんなら怒りそうです。

  • 抜き打ちは誤魔化せないですよ…、不運だったとしか笑
    それに嘘を嘘でカバーしようとするとどんどん辻褄が合わなくなって…まぁ、誰しも経験あるかもしれません。

  • 読みながらもうずっとドキドキハラハラしっぱなしでした!やっぱりきまづくても嘘つくとあとが大変だなぁって最後泣きたくなるくらい、現実にありそうな感じがよく表現されていて、つい感情移入してしまいましたよ。

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