ユウになれない僕ら

シロニ

貴方になりたい僕ら(脚本)

ユウになれない僕ら

シロニ

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ユウになれない僕ら
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〇黒
  ...1736番、これから君には花園家のユウ君になるためのお勉強をしてもらうよ
  ?「はい!!」
  良い返事だ、じゃあまず始めに...
  ?「これは僕が彼と出会うずっと前の話、とある研究室での事」
  ?「長い時間をかけてユウさんの体もほとんど再現出来た時期の話」
  ?「研究員さんが僕にユウさんの記録を見せてくれた」
  ?「そこで見たユウさんはしっかり者で、気弱な一面もあって、読書が好きで」
  ?「エビフライが好きで、ゴーヤが嫌い」
  ?「『これから僕の兄になる人』と喧嘩もして」
  ?「でも仲直りをして二人で遊んで、二人で一緒に寝て、二人共同じ場所にそっくりな寝癖を付けて」
  ?「そんな仲睦まじい二人兄弟」
  ?「これが兄弟なのかと強い『憧れ』を抱いたのを僕は今でもはっきりと覚えてる」
  ?「でもユウさんは何年も前に亡くなってしまったらしい、だから僕が『ユウ』として頑張るんだって研究員さんが言ってた」
  ?「そして僕はこれから『ユウさん』として新しいお家で頑張るんだ」
  ?「笑わなくなってしまった『彼』にまた笑ってもらうんだって」
  ?「僕が遠くに行ってしまった『貴方』の代わりに彼を笑顔にしてみせるって」
  ?「そう思ってたのに...」

〇おしゃれなリビングダイニング
  ○□◇◎年▽月◎日
ヒナコ「おはよう、そうちゃん」
ツツジ「おはようそうた!!」
そうた「・・・ん」
ひなた「おはようそうた!!」
そうた「・・・」
ツツジ「こらそうた、母さんにちゃんと挨拶しなさい」
ツツジ「挨拶は大事なんだぞ?」
そうた「・・・嫌」
ひなた「あはは・・・そうたはツンデレだからなぁ〜」
ツツジ「・・・」
ヒナコ「そ、そうだツツジ君、そうちゃんにプレゼントがあるのよね?」
ツツジ「・・・!!」
そうた「・・・プレゼント?」
ツツジ「あぁ・・・そうだ忘れてた、ありがとう母さん」
ツツジ「そうた、君に私達からプレゼントがあるんだ」
ツツジ「・・・入っておいで!!」
そうた「・・・!!」
ユウ「「久しぶり」兄ちゃん!!」
ツツジ「見てみろ!!そうた!!」
ツツジ「ユウが「帰ってきた」ぞ!!」
そうた「・・・!!」
ユウ「えへへ・・・これから「また」よろしくね!!」
ヒナコ「そうちゃん、ユウちゃんが帰ってきたのよ!!」
ひなた「どう?私達からのプレゼント!!」
ひなた「そうたはユウが居なくて寂しかったんだよね?」
ひなた「でももう大丈夫!!これからはまた「家族一緒に」仲良く暮らそ・・・」
ツツジ「・・・?そうた?」
ツツジ「苦しそうにしてるが大丈夫か!?具合が悪いのか!?」
ヒナコ「そうちゃん!?どうしたの!?」
ヒナコ「苦しいの!?救急車を呼ばないと!!」
そうた「ハァ・・・ハァ・・・!!」
ユウ「え・・・?」
ユウ「に・・・「兄さん」?」
ユウ「だ、大丈夫?」
そうた「・・・るな」
ツツジ「え?」
ユウ「・・・え?」
そうた「ふざけるなぁぁ!!!!」
ツツジ「な・・・!?」
ユウ「・・・!?」
そうた「何がユウが「帰ってきた」だ!!」
そうた「そんなのただの「偽物」だろ!!」
そうた「俺は「偽物」が欲しいなんて頼んでない!!」
そうた「「偽物」なんていらない!!」
そうた「「そんなの」ユウじゃない!!」
そうた「お前らなんか・・・」
そうた「お前らなんか大っ嫌いだ!!!!!!」
ツツジ「そんな・・・!!そうた!!」
ヒナコ「そうちゃん!!」
ユウ「僕が・・・偽物・・・?」
ユウ「僕は「本物」になれないの?・・・?」
ユウ「どうして・・・?」
ユウ「分からない・・・」
ユウ「分からないよぉ・・・」
ユウ「待って兄さん・・・」
ヒナコ「・・・!!」
ヒナコ「待って!!ユウちゃん!!」

〇住宅地の坂道
ユウ「兄さん・・・どこに行ったの?」

〇公園の入り口
ユウ「ハァ・・・ハァ・・・」
ユウ「兄さん・・・」

〇見晴らしのいい公園
ユウ「ハァ・・・ハァ・・・」
ユウ「兄さん・・・どこにいるんで・・・」
ユウ「・・・!!」
ユウ「ゼェ・・・ハァ・・・」
そうた「お前・・・」
ユウ「に・・・ハァ・・・ゼェ・・・さん」
ユウ「ゼェ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
そうた「・・・」
ユウ「ハァ・・・ハァ・・・」
そうた「・・・これ飲め」
ユウ「・・・!!」
ユウ「・・・ありがとうございます!!」
そうた「・・・いや、あんなに苦しそうにしてたらね・・・」
そうた「体とか動かしたことないの・・・?」
ユウ「は、はい!!僕、数ヶ月前まで丸っこいスライムみたいな体でしたし!!」
ユウ「走ったのは今日で初めてです!!」
そうた「マジだったよ・・・」
ユウ「あ、あの・・・そうたさん・・・」
そうた「・・・?」
ユウ「ご・・・」
ユウ「ごめんなさい!!」
そうた「・・・」
ユウ「僕、次はそうたさんが納得出来る様に頑張ります!!」
ユウ「ユウさんの喋り方だったり、癖だったりも勉強してもっと上手になります!!」
そうた「・・・」
ユウ「だから・・・!!」
そうた「もう・・・いいよ・・・」
ユウ「・・・え?」
そうた「もう・・・「ユウ」になろうとしなくて良いよ」
ユウ「え・・・!?」
ユウ「で、でもそうしたら・・・!?」
そうた「どう頑張っても君は偽物だよ」
ユウ「・・・」
そうた「誰がどう演じようとユウはこの先あいつ一人だけだ」
ユウ「・・・」
そうた「だからもう戻ってくる事は永遠に無いとしても、たった一人しかいない俺の「ユウ」の居場所を奪わないでくれ」
ユウ「・・・」
ユウ「・・・はい」
そうた「・・・君さ」
ユウ「・・・?」
そうた「なんで家に来たの?」
ユウ「そ、それは・・・」
ユウ「花園家の皆さんからそうたさんにプレゼントとして「メタモル社」で」
ユウ「「ユウさん」になるために生まれて、育てられて、その過程で「ユウさん」に憧れて」
ユウ「花園家でそうたさんの「ユウ」さんになり、そうたさんを幸せにするために来ました!!」
そうた「・・・君はそれで幸せになれるのか?」
ユウ「・・・え?」
そうた「だってそれ一生「君自身」として生きる事は無いって事だぜ?」
そうた「それで良いのか?」
ユウ「・・・」
ユウ「僕自身として生きる・・・?」
ユウ「か、考えた事もありませんでした!!」
そうた「・・・それとさっき「ユウ」に憧れたって言ったけどさぁ」
ユウ「は、はい!!」
そうた「それほんとに憧れたのは「ユウ」なのか?」
ユウ「・・・」
ユウ「あ・・・」
そうた「・・・」
ユウ「そう・・・ですね・・・」
ユウ「考えてみれば・・・」
ユウ「僕は・・・」
ユウ「研究室でユウさん達の家族写真や映像を見て、ユウさんとそうたさんの兄弟という関係に興味が湧いて・・・」
ユウ「記録のユウさん達はとても楽しそうで、僕もユウさんみたいになりたいなって・・・」
ユウ「考えてみればこれって・・・」
そうた「・・・うん」
そうた「君が憧れたのは「家族」だね」
ユウ「・・・」
そうた「・・・」
そうた「・・・名前欲しい?」
ユウ「・・・!?」
ユウ「・・・はい!!」
そうた「じゃあ君は今から「ハマ」君ね」
ハマ「・・・!!はい!!」
ハマ「えへへ・・・名前・・・」
そうた「(嬉しそう・・・)」
ハマ「よし!!」
そうた「・・・?何してるんだ?」
  ハマ「僕はこれから自分自身を生きます!!なので『ユウ』としての自分自身は捨て去ります!!」
そうた「へぇ〜」
  ハマ「なのでこのスーツも捨てちゃいます!!」
そうた「・・・ん?」
そうた「ここで脱ぐの?」
  ハマ「はい!!僕は早く新しい自分になりたいんです!!」
そうた「ねぇハマ君・・・そのスーツの下って何か着てる?」
  ハマ「いいえ?このスーツだけですよ?」
そうた「・・・え」
  ハマ「それじゃあスイッチオフ!!」
そうた「ちょ待ったぁぁ!!!!」
  聞こえていますか?ユウさん、僕はやはり貴方にはなれません。
  僕は大事な事を教えてもらいました、それは誰だって「誰か」ではなく「自分」を生きて良いということです。
  研究所では「ユウ」になれと教えられましたがこれから僕は「自分」を生きるし生きたいと言います。
  居場所を奪おうとしてごめんなさい、ですが僕達メタモルは「自分」が無いので誰かに憧れないと生きていけないのです。
  でも、今日僕は「名前」を手に入れました、貴方の兄がくれた大切な名前です。
  これからも僕は手に入れた「自分」を大切にして毎日を生きていきます、ですのでどうかこれからも遠いどこかで。
  「youになれない僕ら」を見守っていてください。
  to be continued

コメント

  • 海外では亡くなった犬のクローンを作って同じ犬として迎え入れて可愛がるという事例が既にありますね。同じ命は二つとないから命を大事にするんであって、複製品でいいならどんどん死んでもいいってことにもなりかねないから危険。生命倫理の観点からもユウくん複製はタブーなのでは、と思います。

  • 確かに居なくなった人の代わりなんて中々受け入れるのが難しいですよね。混乱と共に怒りが来るのも理解できます。
    それでも新たな道を歩もうとする姿はとてもカッコいいと思いました!

  • 私も過去に、亡くなった人や動物と全く同じ状態のロボットが現れたりした時の想像をした事がありますが、やっぱりそれは、どう頑張っても本人では無いよねって思ったことを思い出しました。

    ハマくんが、この先自分自身の人生を楽しく歩んで行けたら良いなあと思いました😌

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