いつかの僕らへ

深都 英二

約束(脚本)

いつかの僕らへ

深都 英二

今すぐ読む

いつかの僕らへ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ダイニング(食事なし)
カケル「ヒナー!朝ご飯できたよ」
カケル「早くしないと幼稚園に遅れるぞ」
ヒナ「は〜い!」
ヒナ「いただきま〜す!」
カケル「ん?誰か来た」
ヒナ「また怖い人?」
カケル「見てくるから、ヒナは隠れてな」
ヒナ「うん・・・」

〇マンションの共用廊下
カケル「・・・」
RFE-9M「ええー!」
RFE-9M「むう・・・」
カケル「・・・何ですか?」
RFE-9M「はっ!」
RFE-9M「アンドロイド協会から来ました」
RFE-9M「今日からお世話になります!」
カケル「えっ?」

〇大きい研究施設
  アンドロイド協会 本部

〇近未来の開発室
職員「ありえない!」
職員「どうした?」
職員「保護対象の子ども、今週だけでもう10人よ」
職員「それはひどいな・・・」
職員「世の中クソ親が多すぎる!」
職員「子どもは親を選べないからな」
アンドロイド博士「今こそ世の中がアンドロイドを必要としているんだ」

〇アパートのダイニング
  育児放棄や虐待など、様々な事情によって親と暮らせない子どもたち
  そんな子どもたちを保護・養育する目的で
  アンドロイドが親代わりとなって子どもを育てる制度
  「親アンドロイド」が導入された

〇近未来の開発室
職員「初めはアンドロイドに子育てなんか無理って思ってたけど」
職員「人間よりもはるかに優秀だわ」
アンドロイド博士「僕が開発したアンドロイドは限りなく人間に近い」
アンドロイド博士「人間らしく振る舞い、人間のあらゆる行動にも冷静に対処できる」
職員「まさに完璧な人間ね」
職員「さて、今日のアンドロイドの派遣先は・・・」
職員「5歳の女の子と10歳の男の子の兄妹の家ね」
職員「ちょっと待って!」
職員「これは・・・どういうことですか!?」
アンドロイド博士「実は派遣予定の親アンドロイドが急に故障してしまってね」
アンドロイド博士「RFE-9Mしか手が空いてなかったんだ」
アンドロイド博士「しばらくは彼で我慢してもらおう」
職員「大丈夫かしら・・・」

〇ダイニング(食事なし)
カケル「親代わりのアンドロイドって聞いてたけど」
カケル「何でくまのロボット?」
RFE-9M「色々と事情があるみたいで・・・」
RFE-9M「あっしが代わりに行くことになりました」
カケル「何だよそれ」
RFE-9M「カケルくん、よろしくね」
カケル「お世話ロボットなんかいらない!」
RFE-9M「えっ!」
カケル「二人で暮らしていける」
カケル「だから帰ってくれ!」
ヒナ「わあ!くまさんだ〜!」
カケル「なっ!」
RFE-9M「ヒナちゃん!」
ヒナ「えっ!ヒナのこと知ってるの?」
RFE-9M「これから一緒に暮らすことになりました!よろしくね」
カケル「おい!勝手に話を・・・」
ヒナ「くまちゃんと一緒に住むの!?」
ヒナ「わ〜い!うれしい!」
ヒナ「お兄ちゃんもうれしいよね?」
カケル「うーん・・・」
ヒナ「くまさん!お名前は?」
RFE-9M「名前は・・・ないです」
RFE-9M(型番ならあるけど・・・)
ヒナ「えー!お名前ないの?」
ヒナ「じゃあ、ヒナがつけてあげる!」
RFE-9M「えっ!」
ヒナ「しろくまさんだから・・・」
ヒナ「ロック!」
RFE-9M「うっ・・・」
ヒナ「お名前、いやだった?」
RFE-9M「違う・・・うれしくて・・・」
ヒナ「泣かないで!ヒナも泣いちゃう〜!」
カケル(カオスだ)

〇幼稚園
ヒナ「やだ〜!ロックと遊ぶ!」
カケル「今はダメ。帰ったら遊ぼうな」
幼稚園の先生「あらあら、どうしたの?」
カケル「駄々こねてるだけです。気にしないでください」
ヒナ「ぶーっ!」

〇ダイニング(食事なし)
ロック「ヒナちゃんの送迎、お疲れさまでした!」
ロック「あれ?カケルくん、学校は?」
カケル「今日はリモート」
カケル「うちはこんな感じだから、特別対応してくれてるんだ」
ロック「なるほど・・・」
ロック「これからは家のことは、あっしにお任せください!」
カケル(大丈夫かな・・・)

〇和室
ロック「よし!掃除するぞ!」
ロック「楽しいな〜」
ロック「ぎゃあっ!」
カケル「何やってるんだよ!」
ロック「ごめんなさい!」

〇安アパートの台所
ロック「よし!料理を作るぞ!」
ロック「まずは火をつけて・・・」
ロック「ぎゃあっ!」
カケル「うわっ!」
カケル「大丈夫か!?」
ロック「くまの丸焼きができるとこでした」
カケル「冗談言ってる場合か!」
ロック「すみません、早く料理覚えます」
カケル(お世話されるどころか、仕事増えてるし!)

〇ダイニング(食事なし)
ロック「はあ・・・全然ダメだ」
ヒナ「ねえ、ロック!」
ロック「何でしょう?」
ヒナ「見て!ヒナの宝物」
ヒナ「うさっぴだよ!かわいいでしょ?」
ロック「かわいいですね」
ヒナ「今度ヒナね、発表会で主役をやるの!」
ロック「えっ!すごい!」
ヒナ「ロック、見に来てくれる?」
ロック「見に行っていいんですか!?」
ヒナ「もちろん!」
ロック「行きます!」
ヒナ「ほんと!?」
ヒナ「うれしい〜!」
ロック「ヒナちゃん」
ヒナ「なあに?」
ロック「主役おめでとう!」
ヒナ「わあ!びっくりした!」
ロック「あっし、演芸用ロボットなんで、こういうの得意なんです」
ヒナ「すごい!すごい!」
ヒナ「もっとやって!」
ロック「じゃあ、こんなのとか」
ヒナ「すご〜い!」
カケル「・・・」

〇川沿いの道
カケル「ヒナ、あいつのこと好きか?」
ヒナ「あいつって?」
カケル「ロックだよ」
ヒナ「好き〜!」
カケル「・・・」
カケル「あんまりあいつのこと信じるなよ」
ヒナ「え?なんで?」
カケル「結局あいつも俺らを裏切るんだ」
ヒナ「うらぎる?」
カケル「俺らを捨てるってこと!」
ヒナ「えっ・・・」
カケル「とにかくあいつを信じるな。いいな?」
ヒナ「うん・・・」

〇安アパートの台所
ロック「ただいま!」
ロック「今日はお買い得品がたくさんありました」
ヒナ「えーん!」
ロック「どうしました!?」
ヒナ「うさっぴがないの!」
ロック「うさっぴ?」
ロック「ああ!」
カケル「やっぱり幼稚園に置いてきたんじゃないの?」
ヒナ「違うもん!幼稚園を出る時は持ってたもん!」
ロック「どこか心当たりはないんですか?」
カケル「色々探したけど、見つからなかった」
ロック「むう・・・」
カケル「もう諦めな。今度新しいの買ってやるから」
ヒナ「やだ!うさっぴがいい!」
カケル「見つからないんだから、仕方ないだろ」
ヒナ「やだあああ!」

〇ダイニング(食事なし)
ロック「ヒナちゃん、泣き疲れて寝ちゃいましたね」
カケル「うん・・・」
ロック「ヒナちゃんの宝物ですもんね」
ロック「ショックだろうな・・・」
カケル「母さんが買ってくれたものなんだ」
ロック「えっ・・・」
カケル「いつもヒナが大事に持ち歩いてたんだけど・・・」
カケル「仕方ないよな」
カケル「ヒナは俺がなだめておくよ」
ロック「・・・」

〇ダイニング(食事なし)
ヒナ「お兄ちゃん!早く起きて!」
カケル「どうした?」
ヒナ「ロックがいないの!」
カケル「えっ?」
カケル「散歩にでも行ったんだろ」
ヒナ「今まで何も言わずにいなくなったことないのに」
カケル「心配するな。すぐ帰ってくるよ」
ヒナ「・・・」
ヒナ「ヒナのこと、嫌いになったのかな」
カケル「えっ?」
ヒナ「ヒナがワガママ言うから、ロックに嫌われちゃったのかな」
カケル「違うよ!出かけてるだけだって」
カケル「そのうちフラっと帰ってくるさ」

〇ダイニング(食事なし)
ヒナ「ロック、帰ってこない・・・」
カケル「・・・」
カケル「やっぱりあいつも同じだ」
ヒナ「えっ・・・」
カケル「俺らを捨てて、出ていったんだよ」
カケル「だから信用するなって言っただろ」
ヒナ「やだ!帰ってくるもん!」
「えっ!」

〇安アパートの台所
ロック「遅くなりました」
「ロック!」
カケル「どこ行ってたんだよ!」
ヒナ「心配したんだよ」
ロック「これ・・・」
ヒナ「うさっぴ!?」
カケル「これ!どこで!?」
ロック「川沿いの草むらの中にありました」
ヒナ「もしかして、ずっと探してくれてたの?」
ロック「すみません。思ったより時間がかかっちゃいました」

〇川に架かる橋
ロック「ここらへんのはずだけど・・・」
ロック「ダメだ。センサーの検知範囲が狭い」
ロック「地道に探すしかないか」

〇水中
ロック「うーむ。さすがに水の中はないか」

〇川沿いの原っぱ
ロック「はあ・・・はあ・・・」

〇川沿いの道
ロック「ダメか・・・」
ロック「いや、諦めるな!集中しろ!」
ロック「これは・・・!」

〇安アパートの台所
ヒナ「ロック・・・」
ヒナ「ありがとう!」
カケル「何でそこまでして・・・」
ロック「カケルくんとヒナちゃんは、あっしの大切な仲間ですから」
カケル「っ・・・!」
ロック「それに・・・」
ロック「大切な人が悲しむ姿、もう見たくないんです」
カケル「・・・」
カケル「誰か来た」

〇マンションの共用廊下
職員「アンドロイド協会の者です」
職員「いや〜すまなかった!」
職員「くまのロボットが迷惑をかけたね」
職員「代わりのアンドロイドを届けに来たよ」
ヒナ「えっ?」
カケル「どういうことですか?」

〇マンションの共用廊下
母型アンドロイド「今日からよろしくね」
父型アンドロイド「これからは家族4人で暮らしていこうね」
ヒナ「家族・・・?」
母型アンドロイド「私がヒナちゃんのママで、この人がパパよ」

〇マンションの共用廊下
職員「今日からこの親アンドロイドと暮らすんだ」
職員「くまのロボットはもう必要ないだろ?」
職員「引き取らせてもらうよ」
ヒナ「ロックを連れて行かないで!」
職員「ロック?」
カケル「くまの名前です」
職員「あれは育児用じゃないんだ」
職員「家事すらまともにできない」
職員「ちゃんとした親アンドロイドの方がいいだろ?」
ヒナ「ロックじゃなきゃやだ!」
職員「まいったな・・・」
職員「カケルくん、君はどう思う?」
カケル「えっ?」
職員「ヒナちゃんの面倒を見ながら学校に通うのは大変だろう?」
職員「親アンドロイドなら、親代わりになって身の回りの世話をしてくれる」
職員「君たちの将来のことを考えたら、悪くない話だと思うよ」
カケル「俺は・・・」

〇ダイニング(食事なし)
ロック「・・・」
ヒナ「ロック!遊ぼ〜!」
ロック「ヒナちゃん・・・」
ロック「今までありが・・・」
カケル「ぼーっとしてないで、ご飯作るの手伝ってよ」
ロック「えっ・・・」
ロック「でも、あっしはもう・・・」
カケル「何言ってんだよ」
カケル「ヒナの発表会、見に行くんだろ?」
ロック「えっ?」
カケル「約束は守ってもらわないとな」
ヒナ「ロック、どこにも行かないでね」
ロック「あっし、ここにいていいんですか?」
ヒナ「もちろん!ずっと一緒だよ!」
ロック「っ・・・!」

〇車内
職員「まあ、そう落ち込むな」
父型アンドロイド「せっかく家族になれると思ってたのに」
職員「次の子どもたちが君たちを必要としているさ」
母型アンドロイド「そうね・・・」
職員(さて、上にはどう報告しようかな)

〇ダイニング(食事なし)
ヒナ「わあ!」
カケル「いつの間に料理覚えたんだよ」
ロック「料理情報をインストールして、こっそり練習してました」
ヒナ「すごい〜!」
ロック「早くお役に立ちたくて」
カケル「・・・」
カケル「役になんか立たなくていい」
ロック「えっ?」
カケル「だから、そばにいてよ」
カケル「仲間としてさ」
ロック「っ・・・!」
ロック「はい・・・!」
ヒナ「ほら、みんなでご飯食べよ!」
カケル「そうだな」
「いただきまーす!」

コメント

  • 涙出ました!😭✨感動しております・・・✨
    凄く心温まるお話ですね・・・✨
    そしてロックが可愛くて、優しくて、とても好きですね✨😊

  • クマのアンドロイドなのに繊細な喜怒哀楽が文章でもビジュアルでも表現できていて感心しました。ロックの一人称が「あっし」なのは演芸用ロボットだからかな。そもそも演芸用ロボットてなんだろ。ロックが親代わりに授業参観や運動会に出たら人気者になりそうですね。

  • 話の設定も展開も好きでした!!憎めないくまのアンドロイドはアンドロイドらしからぬ人間味があって情が湧く気持ちも分かるなと思いました。面白かったです!

成分キーワード

ページTOPへ