26.人と怪異の行く先は。(脚本)
〇魔法陣のある研究室
観崎「本当に、大丈夫なんだね?」
時雨「うん、今度は絶対成功させる」
時雨(待ってて、玲奈ちゃん)
〇寂れた村
今はあの時と違う
〇旅館の和室
キミは変わらず側にいてくれると分かってるから
〇魔法陣のある研究室
時雨(今度こそ力を取り戻し──)
時雨(キミだけのために神になる)
観崎「それじゃあ始めるよー!」
観崎「3・2・1──」
〇東京全景
〇荒廃したセンター街
玉藻の前「無駄な抵抗をするのう」
玉藻の前「大人しく妾に屈服すればよいものを」
補佐員A「ななななんで狐守さんが俺達を攻撃するんだよ!?」
補佐員C「アレは狐守さんを取り込んだ玉藻の前だ! さっき連絡来てただろ!」
補佐員B「お前ら集中しろ! じゃないと結界が──」
玉藻の前「はははは! ただの人間が作る結界など 薄氷よりも脆いわ!」
市民「きゃあああ!!」
市民「だ、誰か助けてくれ!!」
???「はああぁぁぁああああっ──!!」
補佐員A「酒巻さんに茨木さん、それに部長!!」
玉藻の前「・・・なんじゃ、また其方らか」
酒巻「狐守さんを返せ!」
玉藻の前「無理じゃな。妾が取り込んだ時点で あの半身の魂は消滅しておるからのう」
須佐川「そんなはずはない。まだ狐守の力が お前の身体から探知できてるんだから」
玉藻の前「・・・はぁ。諦めの悪いやつらじゃ」
玉藻の前「ならばもう一度遊んでやろう」
玉藻の前「弄ばれて逃げ回り、最期は羽虫らしく 無様に潰れて死ぬがよい」
〇黒背景
???「狐守さんを返せ!」
玲奈「今、誰かに呼ばれたような・・・?」
玉藻の前「ほう、本当にまだ残っておったのか」
玲奈「玉藻の前・・・!」
玲奈(そうだわ。私はこいつに捕まって・・・)
玲奈「ここ、どこなのよ」
玉藻の前「妾の中じゃ。どうやら其方をすぐに 吸収できなかったようでのう」
玲奈「あなたの中? それに吸収って・・・」
玉藻の前「忘れたか? 其方は妾に取り込まれたのじゃ」
玲奈「──!!」
玉藻の前「今の其方は力無き残滓に過ぎぬ。 せいぜい最期の時を迎えるまで、指をくわえて成り行きを見ているがよいわ」
〇荒廃したセンター街
怪異「はははは! 結界が壊れればこっちのもんだ!」
母親「もう嫌! なんで私達がこんな目に 遭わなきゃならないの!?」
子供「うわあああん! 怖いよおおお!」
玉藻の前「さあ行くのじゃ。妾達の存在を 羽虫どもに知らしめてやれ」
酒巻「させない・・・!」
酒巻「茨木!」
茨木「承知しました」
酒巻「ありがとう! ──《風の剣・疾風》!」
「ぎゃあああああ!!!!」
須佐川「おい、結界の修復はまだか!」
補佐員「や、やってますけどなかなか進まなくて──」
怪異「死ねえええ!!」
補佐員「ひぃ!?」
〇黒背景
玉藻の前「ふふふ。無様じゃのう」
玉藻の前「人は我ら怪異を己の規則に当てはめて、 都合が悪い者を排除してきた。 支配者気取りでな」
玉藻の前「じゃが、おかしいと思わんか? 人間は弱者、本来支配される側であるはずなのに」
玉藻の前「故に妾はそれを正しい形に戻す。怪異が人を支配する世を、今度こそ作り上げて見せようではないか」
玲奈「・・・そんなの、間違ってるわ」
玉藻の前「は?」
玉藻の前「人間は本当に身勝手な生き物よな」
玉藻の前「今まで怪異を支配しておいて、いざそれが覆されるとなれば、間違っていると言い出すとは」
玲奈「分かっているわ。人間も今までずっと間違いを犯してきたことは」
玲奈「でも、だからこそこのやり方は間違っているって言えるの」
玲奈「争いで相手を屈服させれば、その相手はいつか支配を手に入れようと立ち上がるわ。 そのループは、きっと永遠に終わらない」
玉藻の前「ならばどうしろと言うのだ? 仲良く手を繫いで生きろとでも?」
玲奈「そこまでしろとは言わないわ。お互いに争わないでくれたらそれでいい」
玉藻の前「ふん、似たようなものではないか」
玉藻の前「其方が言うことはただの夢語りに過ぎぬ。 実現することは永遠にない」
玲奈「そうかしら?」
〇荒廃したセンター街
怪異「死ねえええ!!」
補佐員「ひぃ!?」
???「えいっ!」
怪異「ぐああああ!?」
管野「今のうちに!」
補佐員「あ、ああ!! ありがとう!!」
〇荒廃したセンター街
補佐員「嘘だろ、符が足りない・・・ これじゃ結界を張り直せないぞ・・・」
猫「仕方ないなぁ」
補佐員「えっ、猫がしゃべった!?」
猫「しゃべったら悪いか? せっかく来てやったのに」
座敷童「結界、わたしたちも手伝うよ」
〇黒背景
玲奈「見えるでしょう?」
〇荒廃したセンター街
きっかけさえあれば、人と怪異は同じ目的のために戦える
同じ世界に住む者として、共存できると思うから
両者を理解し橋渡しをする誰かがいれば
きっと未来は切り開けるはず
〇黒背景
玲奈「私は、人と怪異の普通の生活を守りたい」
玲奈「互いに争うことなく安心して暮らせるような、「普通の」生活を」
玲奈「そのために、私は戦う。 必ずあなたに勝ってみせるわ!」
玉藻の前「ふん、残滓の分際で戯れ言をほざきおって」
玉藻の前「取り込まれた其方ができることはなにもない」
玉藻の前「加えて外の連中も力無き雑草どもに過ぎぬ。妾に勝つなど不可能じゃ」
玲奈「決めつけるにはまだ早いわよ」
玲奈「気付いていないの? 私達の仲間が、ここに1人だけいない事を」
〇東京全景
〇荒廃したセンター街
補佐員A「くそっ、こんな時に雨かよ!?」
補佐員B「最悪だ。余計に戦いづらくなるぞ」
管野「・・・いえ、そうでもないかもしれませんよ」
「──!!」
酒巻「この雨は・・・」
茨木「ええ。あの方です」
須佐川「ようやく来たか」
〇空
玉藻の前「なんじゃ、この神気を孕んだ雨は──」
玉藻の前「──まさか!?」
時雨「暴力主義のイカレ女狐め、 今すぐ玲奈ちゃんを返してもらう!!」